清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第97話)

第97話:「良品」は廉価ではなく、本来「適価」であるはずです。

 昭和30年代に起こった「流通革命」。その波の中で注目されたのは「良いもの、お安く、どんどん」の考え方です。「品質向上」に努力し、かつ生産性を高めるために展開されたTQC運動。その思想の背景にもやはり、良い物を安く提供するといった考えがありました。

 その後の高度経済成長の中にあっても、基本的な指向性は変わることなく維持されてきたと見るべきでしょう。わが国の成長神話の裏側には、「良品を廉価で大量販売」の思想が染み付いてきたようです。しかし今、その思考回路自体を再考する必要があるのではないでしょうか。

 そもそも、「良いもの」とは何でしょう?それは、自分にとって好ましいものだと思います。他人がどう言おうが、自分自身の身の回りや生活にとって欠かせないものは、良いものです。決して与えられるものではありません。ましてや、提供者に強制されるものでもありません。購入者自身が自分の判断で自らが決めるものです。その全ては安いものでしょうか。自分の懐との相談で決めることではないかと思います。また、今までに無かったような良いものであれば、安いことの必然性はありません。自分自身が納得するものは、高くてもいいはず。お仕着せの安さは、本来の自分をつくらないのではないでしょうか。

 そろそろ、思考回路を変える時です。提供者側も受容者側も。良品は「適価」のはず。受容者は安さだけを求めているのではありません。自分にとって良いものを求めているのです。安逸なる値下げ。そして、たちまちの再値上げ。そのような行為は、提供者側の論理の押し付けでしかありません。受容者は決して望んではいないと思います。

 マーケティング思考の原点ともいえる4P(Product/Price/Place/Promotion)の核でもあるProduct & Price。そこには、良品廉価の言葉はありません。常に受け手の立場で、提供物の価値を見直すことを教えています。「良品」は「適価」の思考回路をもったマーケティング展開が問われる時代です。(第98話に続きます)

法政2015年最終講義:2015.12.21

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

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