エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第168話)

第168話:日本経済の実力を反映しないGDP

 2018年1~3月期の実質GDPは2次速報で前期比年率▲0.6%となり、9四半期ぶりのマイナス成長となった。しかし、民間在庫品増加(民間企業の売れ残った在庫の増加分)を除いた最終需要ベースで見ると、前期比年率+0.1%とプラスとなり、少なくとも最終需要面から見た経済規模はそこまで悪化していないとする見方もある。しかしGDPは、必ずしも現在の日本経済の実力を反映しているとは言えない。

 GDPとは、期間内に国内で生み出された付加価値の合計である。「生産」「需要」「所得」という三つの側面のどこから見ても等しくなる「三面等価の原則」があり、通常は実質GDPに変化が生じれば、それと連動して実質所得にも変化が生じるはずである。

 しかし、現在の日本の所得から見た実質的な経済規模は、生産面や需要面からの変化に加え、実質GDPに反映されない交易条件(輸出品と輸入品の交換比率)の変化にも大きく左右されるため、「三面等価の原則」が働きにくいという、特有の経済構造となっている。

 輸出価格が輸入価格を上回ると、その国の交易条件は有利になるため所得(交易利得または損失)が増え、反対に不利になると所得は減る。2017年10~12月期以降、原油をはじめとする資源価格の高騰により、日本の交易条件は大きく悪化。GDPに交易利得(損失)を加えた、国内の実質的な所得を示す指標である実質国内総所得(GDI)を押し下げている。つまり、実質的な日本の経済規模を見るには、交易条件の変化を加えたGDIで見るべきであり、GDPだけを見ていると、現在の日本経済を過大評価してしまうことになる。

 交易条件を含む経済指標として、GDIの他に国民総所得(GNI)がある。交易条件を加えて見るのであれば、GNIで見ることもできるのではとの意見もある。

 二つの指標の大きな違いは、GDIは国内に落ちる所得を表し、GNIは国民を対象としている点だ。また、グローバルな経済活動の動向を示す経常収支は、貿易収支やサービス収支、第1次所得収支、第2次所得収支に分けられるが、GDIには貿易・サービス収支のみ計上されているのに対し、GNIは海外への投資で得た配当などの第1次所得収支も含む。従って、GDIは国内の所得規模を測る指標である一方で、第1次所得収支も含んだGNIは、国民全体の所得状況を見る指標となる。

 なお、第1次所得収支は「投資収益」と「雇用者報酬」に分けられ、現在、収支の99%以上を投資収益が占めている。これは海外の金融資産から生じる利子や配当の受け取りや、海外への支払いも含む、第1次所得収支や企業の海外展開を反映した投資収支が黒字となっているためである。(第169話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第139話)

第139話:国内総生産からみた日本経済

 一国の経済活動を観察する上で最も総合的な経済指標として、国内総生産(GDP)がある。GDPは一国の経済規模を示したもので、国内でどれだけの財やサービスが生み出されたかを示す。このため、経済活動が活発になればGDPは拡大し、逆に後退すればGDPは縮小する。このことから、景気判断の際にも重要な経済指標の一つとなっている。

 また、国内で生み出された生産の合計を示すGDPは、国内で分配された所得の合計、国内で発生した需要の合計にもなる。このように、国内の経済活動や海外との取引によって生み出されたいわゆる付加価値を集計したGDPは、生産、所得、需要といった三つの側面から測ることができ、この関係を「三面等価の原則」という。

 日本のGDPは内閣府が公式に推計・公表しており、2016年度の名目GDPは538兆円と5年連続で増加している。また、我が国のGDPを国際比較してみると、ドル換算ベースで2016年は4兆9386億ドルとなり、米国と中国に次ぐ世界第3位を維持している。しかし、世界のGDPに占める日本の比率を見ると、1994年時点では17.7%だったが、長期の景気低迷や中国をはじめ巨大な新興国の台頭や円安などの影響により縮小を続けた。そして2016年時点では拡大に転じたものの、依然としてその水準は6.6%にとどまっている。更に、2016年時点で38,917ドル(円換算で約423万円)となった日本の一人当たり名目GDPに至っては、中国の約4.8倍の水準にあるが、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では93年の2位から22位にまで低下している。

 このように、日本のGDPは、これまでの国内経済の停滞と世界経済に占める新興国シェア拡大等により、地盤沈下から抜け出し切れていないことを示している。

 続いて、日本経済の現状をとらえるため、我が国の国内総生産(GDP)を需要(支出)側から見てみよう。2016年度の速報値に基づいて名目GDPの主要項目を見ると、構成比は個人消費が56.0%、住宅投資が3.1%、設備投資が15.3%、公共投資が4.8%、輸出が16.5%、控除項目である輸入が15.5%となっており、米国に比べて個人消費が小さく設備投資が大きい構造になっていることがわかる。これをアベノミクス以前の2012年度と比較すると、最も構成比が上がっているのが輸出であり、アベノミクス以降の景気回復局面では輸出がけん引していることがわかる。ただ、もう一つの特徴として、戦後二番目の景気回復が続く中で、個人消費と政府消費の抑制度合いが強いとの見方もできる。

 一方、2015年の名目GDPを生産面から見ると、主要産業のシェアは農林水産業で1.1%、製造業で20.4%、建設業で5.5%、卸売・小売業で13.9%、金融・保険業で4.4%となっている。これをアベノミクス以降の時系列で見ると、東日本大震災で大きく落ち込んだ電気業や、輸出の影響を受けやすい製造業、公共投資の影響を受けやすい建設業のシェアが拡大基調にあるのに対し、個人消費の影響を受けやすい卸売・小売業やその他サービスのシェアが縮小しており、消費税率引き上げや社会保障の効率化が産業構造にも影響を及ぼしていることが分かる。(第140話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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