エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第185話)

第185話:厳しい日本経済 生き残るために企業が活用すべき法律

 日本の景気回復は、アベノミクスによって曲がりなりにも戦後2番目の長さとなっている。ただ、筆者の見通しではあと1年以内に景気が悪くなる可能性が高いと予測している。

 その要因としては、既に戦後2番目の長さになっている米国経済が今後景気後退に転じる可能性があることや、東京五輪特需のピークアウト、2019年10月の消費税率引上げ等が考えられる。中でも消費税増税については、注意が必要だろう。実際、近年の日本の個人消費が大きく下振れした時期はリーマンショック、東日本大震災、2014年の消費増税の3度あった。下振れの時期は、リーマンショックは2年、東日本大震災は1年にとどまったのに対し、2014年4月の消費増税の時は3年かかった。

 更に、個人消費のトレンドという面でみれば、前の2つの際には上方トレンドが維持されたが、消費増税時は上方トレンドが下方屈折してしまった。このことからも、消費増税時には経済の勢いが大幅に削がれることが経験的にわかっている。

 なお、消費税増税の負担額については、2014年に3%引き上げられたときには家計の負担は8兆円以上だった。来年10月の増税では上げ幅自体は2%だが、子育て世代への1.4兆円の還付や軽減税率などを考えると、トータルの負担は2.2兆円となり、負担額だけで見れば前回の4分の1程度だろう。更に、景気対策も実施するため、消費増税のみで日本経済が腰折れすることはないとみられる。

 しかし問題は時期である。過去の経験に基づけば、2020年の東京五輪の特需のピークは来年夏が予想される。建設需要の勢いがピークアウトすることが予想されるためである。つまり、東京五輪特需の勢いがピークアウトするタイミングで消費税増税に突入する。つまり、ピークが過ぎた後の増税はタイミングとしては最悪であると考えている。

 こうした状況を勘案すれば、2020年には経済環境は悪くなっている可能性が高い。こうした中、中小企業では事業承継、新規事業展開、人手不足が課題になっている。こうした課題に対処するには、採用にこだわらずに外部に業務委託することや、IoT(モノのインターネット)の導入といった新たな選択肢を取り入れる等の生き残り策も必要となろう。

 特に現在、生産性向上の取り組みを政府は積極的に紹介し、法的なサポートも行っている。例えば、中小企業の経営力向上のための人材育成・財務管理・設備投資等の取組みに対して固定資産税の減免や金融支援が受けられる中小企業等経営強化法の施行はその例である。この制度を活用して生産性を挙げた例としては、ITやロボットを積極的に導入して職員負担を減らした企業、付加価値を増加させるため新規自社製品のブランディングをアウトソーシングして売上を伸ばした企業などがある。他にも、人手不足に対応するため作業の見える化と人事評価の明確化を実施し、1人3役制度で職場環境を改善した企業など成功例は数多く存在している。

 このように今後、景気後退局面となり、企業経営が厳しくなると予測される中で、企業が生き残るポイントはやはり生産性の向上にあるといえよう。(第186話に続きます)
永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第184話)

第184話:2019年経済界展望

 2019年の景気を占う上では消費税率の引き上げが大きなカギを握るだろう。特に、耐久財の買い替えサイクルに伴う需要効果は大きいと思われる。なぜなら、内閣府の消費動向調査によれば、テレビと新車の平均使用年数は9年強となっている。

 テレビや新車の販売は2014年4月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で盛り上がったが、更に前に遡ると、2009~2010年度かけてはそれ以上に販売が盛り上がった。背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下でエコカー補助金や家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで、自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生しており、2019年はそこから9年を経過していることに加え、10月に消費税率の引き上げを控えていることから、その時に販売された家電や自動車の買い替え需要が期待される。

 特にテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んだため、買い替え需要はかなりあることが期待される。2020年に東京五輪が控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しする可能性があるだろう。なお、2019年の新天皇の即位に伴って、同年のゴールデンウィークが10連休となる可能性もある。もしこれが実施されれば、レジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性があろう。

 なお、今回の消費税率引き上げのマクロ的な負担増加額は、引き上げ幅が2%にとどまることに加え、軽減税率導入や子育て世帯への還付などもあるため、前回8兆円/年の約四分の一の2.2兆円/年にとどまることになる。それでも、恒久的な負担増になるため、消費増税後の景気悪化は避けられないだろう。また、2018年の建設投資をけん引した東京五輪特需も、過去の経験則を踏まえれば、その勢いのピークは五輪開催1年前の2019年夏ごろに訪れる可能性がある。

 また、来春の統一地方選や夏の参議院選挙の結果次第で第三次安倍政権の政権基盤の揺らぎが生じることになれば、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は6割以上が外国人投資家であり、安倍政権の政権基盤が盤石なほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。したがって、来年夏の参議院選挙の行方次第では、アベノミクスが終了する可能性もあり、そうなれば日本経済も後退を余儀なくされるだろう。

 トランプ政権の政策運営もリスクだろう。減税や保護主義等によりインフレ率が加速すれば、FRBが物価の安定のために利上げを急がざるを得なくなり、中立水準を上回る金利上昇により米国経済が景気後退に陥る可能性もあろう。

 また、新興国経済もリスクである。特に新興国の民間非金融法人の債務残高/GDPは過去にないほど膨張しているため、米国資金の本国還流などにより、経常赤字の新興国が経済危機や通貨危機に陥るようなことになれば、日本経済への悪影響も無視できないことになろう。(第185話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

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〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

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