エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第103話)

第103話:雇用の岩盤規制は発破できるのか?

 日本の将来の成長を阻む大きな障害が、雇用、医療、農業におけるいわゆる岩盤規制である。

 「日本は成長の余地がせっかくあるのに、規制によって成長が押さえ込まれている」といわれて久しく、安倍政権にはこの岩盤規制に大きな穴をあける大胆な改革が期待される。

 まずは雇用だが、2014年に打ち出された成長戦略の中では、ホワイトカラーエグゼンプションが注目されてきたが、実は市場が最も注目しているのは、「正社員の解雇ルールの明確化」に安倍政権が踏み込めるかどうかである。

 特に外国人投資家の目には、日本の労働市場が流動化していないことが、日本経済発展の妨げの権化のように写っている。

 例えば、人口の減少が日本経済発展を妨げる諸悪の根源のひとつだが、そもそもその人口減少をもたらす最大の問題が労働市場の流動化が進んでいないことにあると考えられている。

 正社員の解雇ルールが明確化されていないことによって、日本企業はデフレの最中、若年労働者の雇用、特に正社員としての採用を必要以上に抑えてしまった。その結果、非正規労働者など経済的にゆとりのもてない若者層を大量に生み出すことになり、若年層世代の雇用・所得環境が著しく悪化してしまった。

 そのため、本来であれば結婚して家庭を持ち、子を産み育てるはずだった若年層に、経済的な余裕のない人が増えてしまい、少子化に拍車をかけてしまったと考えられている。

 現在の日本では、一度雇用した正社員は滅多やたらなことでは解雇することはできない。そのため、多くの企業では、景気の先行きが見通せない段階では、正社員を増やすことに二の足を踏む一方、雇用の調整弁として非正規雇用を増やして対応してきた。その結果、経済的にゆとりのもてない若者層が増えてしまったのは、残念な現実として存在する。

 そこで、例えば金銭を支払うことにより、企業側の都合で正社員が解雇できる仕組みができれば、企業が正社員の雇用に過度に慎重になることが避けられ、労働市場自体も流動化するという考えのもと、検討が進められている。

 日本人の場合、長く終身雇用が当たり前だと信じてきたため、企業都合で解雇されるということ自体にアレルギーを感じて抵抗する人も少なくないのだが、欧米では当たり前のことである。

 日本の企業もグローバルな競争に勝ち抜くことが求められている現在、雇用に関しても世界と同じレベルの効率性の高い雇用の仕組みが求められてしかるべきである。(第104話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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