清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第91話)

第91話:顧客との関係は、相手を邪魔しない「緩繋(かんけい)」です。

 マーケティングのパラダイムが変わったと言われます。ある刺激に対しての反応を待つ、「瞬発力」の高い「刺激-反応」のビジネスモデルから、一度出来た顧客との関係を、長く強くその結びつきを維持していこうとする、「持続力」が問われるビジネスモデルへの注目です。関係性マーケティングが基本の発想として取り上げられています。確かに、新たな顧客を獲得することは、かつて程たやすいことではありません。それ以上に、一度でも知り合うことの出来た顧客と長くその関係を維持することを考えた方が、圧倒的に効率的です。

 しかし、問題は移り行く顧客をどのように繋ぎ止めておくのかということの施策の創造にあります。企業(送り手)サイドから考えれば、一度でも購入・利用・消費・来店してくれたお客様が、次回の機会にも間違いなく自分たちを選択対象にして欲しいと思うもの。

 継続は企業経営に力を与えます。だからこそ、企業は顧客を「管理」したいと思ってしまうのです。「顧客管理部」といった何とも珍妙なセクションが登場したりします。顧客は誰一人として「管理」されたいと思ってはいません。顧客の関係づくりが大切だと言っている企業に訪問して、そのような名称の部署に出会うと何とも笑ってしまいます。企業にある部署は、実は全て「顧客部」なのです。お客様への価値提供のために、さまざまな役割を持って相互に連携しているのが「会社」という集団です。

 お客様との関係は、意図的にある形を持って生み出されるのではなく、人と人の信頼関係のように、お互いの十分な理解のうえに成立すると考えられます。絆は太いロープのように、お互いの身体をグルグル巻きにしたものではありません。もう少し、緩やかな結びつきです。「縛る・囲い込む」といった逃げ場の無いような状況を創造するのではなく、いつも何となく側に居てくれるような存在になることが、今企業マーケティングの基本テーマ。「関係性」パラダイムでは、「緩やかな繋がり」の「緩繋」の実態化が問われているのです。(第92話に続きます)

 

法政2015年最終講義:2015.12.21

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

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