エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第88話)

第88話:来年は経済成長加速の期待

 今年の日本の経済成長率は1~3月期、4~6月期と2期連続のプラス成長であった。しかし、景気の方向性を決めるのは企業活動がメインであり、円高・株安の影響から4~6月期は外需と設備投資が芳しくなく、少なくとも今年前半は企業の心理が冷え込んでいたことがわかる。

 そんな中、明るい材料は個人消費である。小売販売額は底堅い。株価の底打ち効果も出ている可能性があり、財布の紐の堅さをみる「消費者態度指数」は改善傾向にある。公共投資も増えている。年明けには今年度2次補正予算の経済対策4.5兆円の効果も出てくるはずである。

 今年度の春闘賃上げ率はプラス圏を維持したが、伸びは鈍化した。今期の企業業績が悪化することや、生鮮食品を除く物価が下落していることからすれば、来年度はプラス幅が縮まる可能性が高い。一方で個人消費が堅調な背景には、自動車や家電などの耐久財がある。耐久財は2009~10年度にエコカー補助金や家電エコポイントを受けて好調だった。内閣府の消費動向調査によれば、家電や車の平均使用年数は7~9年であることからすれば、今は買い替え時期が到来しつつあるため、賃上げ率が鈍っても底堅い動きが続くとみる。

 消費税再増税の延期も来年度の景気に追い風になる。更に、政府は複数年にわたり28兆円の景気対策を予定し、対策は国内総生産(GDP)を今年度0.2%、来年度0.3%程度押し上げると試算されている。景気対策がない場合と比べ、来年度のGDPは累積で0.5%上がることになり、金額にして2.5兆円の押し上げ効果になる。

 9月以降の主要国の製造業景況指数は米国、ユーロ圏、日本、中国がいずれも改善している。製造業景況指数は最も先行するデータであり、来年にかけて海外経済が良くなると予測できる。輸出の回復力が弱かった要因は急激な円高にあるが、現在は円高是正の局面に入りつつあり、来年にかけて1ドル=110円程度まで円安に進む可能性もある。事実、鉱工業指数を見ると10~11月にかけて増産計画となっており、海外経済の持ち直しを反映していると推察される。

 米国は12月に利上げする可能性が高まっている。米国はGDPの70%以上が個人消費で、消費者信頼感指数、失業率がいずれも改善基調にある。12月に予定通り利上げが行われる状況になれば、円安ドル高が進むとみられる。現在の欧州経済の不安材料は個別の銀行が原因となっており、リーマン・ショック程の影響は想定しにくい。中国は景気対策と人民元の下落が効いており、最悪の状況を抜けだしつつある。

 こうした中、上振れシナリオとしては安倍首相が解散総選挙をすることである。長期安定政権となれば歴史的に景気が良くなりやすくなり、与党が勝てばマーケットは好感するだろう。更に解散総選挙となれば、3次補正で景気対策を実施する可能性があり、そうなれば来年度の成長率も1%を超えると期待できるだろう。(第89話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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