エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第147話)

第147話:今冬の厳冬、日本経済に多大な恩恵

 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生している。気象庁が12月11日に発表したエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖の海面水温が低くなるラニーニャ現象の影響等で厳冬となる見込みとされており、気象庁の予報でも、東日本と西日本を中心に気温が低くなりがちと予想している。

 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象である。ラニーニャ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。近年では、2016年夏から17年春にかけて発生し、北海道を中心とした8月の長期的な大雨・豪雨 となったほか、1951年に気象庁が統計を取り始めて以来、初めて東北地方の太平洋側に台風が上陸した。また北日本では平年より7~10日早い初雪・初冠雪を観測し、関東甲信越では16年11月に初雪・初冠雪を観測した。このほか、17年1月中旬と2月中旬、3月上旬は日本国内のみならず、国外の多くで10数年に1度の北半球最大規模の大寒波が襲来した。

 気象庁の過去の事例からの分析では、ラニーニャ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが早まることで夏の気温は平年並みから高めとなり、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある、ということなどが指摘されている。

 実際、ラニーニャ現象の発生時期と我が国の景気局面の関係を見ると、1990年代以降全期間で景気回復期だった割合は73.9%となる。しかし驚くべきことに、ラニーニャ発生期間に限れば89.5%の割合で景気回復局面に重なることがわかる。

 実際、2005年のラニーニャ発生局面では記録的な寒波に舞われた。気象庁の発表によると、10-12月期の東京の平均気温は前年より1.37℃低くなった。この寒波効果で2005年10-12月期の消費支出(家計調査)は前年比+1.3%の増加に転じた。特に、暖房器具の売り上げが好調に推移したことから、家具家事用品が同+9.4%の伸びを記録した。また、冬物衣料を見ても、寒波効果は明確に表れた。同時期の被服及び履物支出は寒波の影響で季節商材の動きが活発化し、大型小売店でも冬物商材が伸長したことで回復が進んだ。保険医療の支出動向もインフルエンザ関連がけん引し、全体として好調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、寒波の恩恵が及んだ。05年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+2.3%と伸びが加速し、家計調査同様に家庭用機器の支出額が大幅に増加した。また、冬のレジャーの活況により娯楽・レジャー関連でも寒波が追い風となった。(第148話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第146話)

第146話:2018年以降の経済展望(リスク編)

 これまで世界経済が好調だったのも、アメリカ経済が長く拡大してきたからこそ続いてきた部分も大きい。アメリカ経済は景気が拡大を始めてから8年以上が経過している。過去のアメリカの景気回復期間の平均は5年程度であることからすれば、そろそろアメリカ経済も景気回復の終盤に差し掛かっているとの見方もある。当然、アメリカも景気後退期に入れば金融緩和の方向に向かうため、ドル安円高により株価が下落し、日本経済の足かせになる可能性があるだろう。

 実は、近年のアメリカの景気循環には法則がある。アメリカのGDPギャップのデータによれば、需要が供給能力を上振れすると物価が上がるため、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレの加速を抑えるために金融引き締めを強化することにより、GDPギャップがプラスになってから2~4年後に景気後退に入っている。リーマン・ショックで大変な需要不足が生じたため、8年間景気回復が続いてもGDPギャップはマイナスが続いていた。しかし、2017年7-9月期にいよいよ米国のGDPギャップもプラスに転じた。従って、2018年に法人税減税やインフラ投資の効果が出現すれば、需要が刺激されることになるため、需要が供給を上回ることになる。従って、その後の金融引き締め方次第では、早ければ2019年後半頃にアメリカ経済が景気後退に入ってもおかしくないという見方もできる。

 日本経済を考えても、東京オリンピック・パラリンピックの効果は主に建設投資であり、ピークは開催年の1年前の2019年半ばに訪れる可能性が高い。このため、2019年10月に消費増税も予定されているが、本当に上げられるのかわからない。ただ、景気に関係なく消費税を上げてしまう可能性もあり、これが目先の日本経済の最大のリスクだと思われる。

 また、安倍政権の政権基盤の揺らぎが市場を通じて日本経済に悪影響を及ぼす可能性もある。日本株の売買は約6~7割が外国人投資家であり、安倍政権の政権基盤が盤石なほど、外国人投資家が日本株を買い、基盤が揺らぐほど日本株は売られる。従って、2018年9月の自民党総裁選の行方次第では、アベノミクスが終了する可能性があり、そうなれば日本経済も後退を余儀なくされる可能性がある。

 一方、日銀が行っている10年国債利回り0%をターゲットにしたイールドカーブ・コントロールや、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)を買い入れる金融政策は、金融機関や金融市場への副作用も大きいと捉える向きもある。このため、今後は日銀が金融政策の出口に向かう可能性もあろう。

 日銀の金融政策については、2018年3~4月に執行部が交代することから、枠組みが変更されるリスクもあり、マーケットにとってネガティブになるとの見方もある。従って、米国FRBも金融政策の正常化を市場の見通しより加速させるという見方が強まれば、日本の長期金利上昇を通じて円高・株安の圧力がかかる可能性もあることには注意が必要だろう。(第147話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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