清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第162話)

第162話:「知情意」のバランス感覚がマーケティング力を高めます。

 夏目漱石の「草枕」の冒頭に次の一節があります。「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引っ越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。・・・」人が生きて行くためには、「知・情・意」の三つのバランスが必要なようです。

 個々に見てみれば、「知」は知識、理屈、道理、分別であり、「情」は人情、気持、感情、情緒、そして「意」は意思、意志、意地の意味を持つものです。

 人の日常生活は、まさに知情意のバランスであることを感じます。自分自身が今何をしなければならないかということを「知」っていても、いざ取り組もうとした時に目的に対して「情」熱が高まってこなければ、なんとなく惰性でこなすような行動に陥りやすくなります。しかも、やり始めたならばやり遂げる「意」志がなければ、途中で挫折もします。

 学校の教育現場においても、「知識」ばかりを詰め込んでも、所詮社会生活には何の役にも立たないと思う「感情」が走ってしまう場合が見られます。決して日常の生活行動は、ある公式で動くわけではなく、人それぞれの「意志」に基づいて行われるものであり、その判断を更に高次なものへと引き上げるために、新たな「知識」が必要になるのですが、目の前にある難解な文章や公式に拒絶反応を起こす人がいます。学ぶチャンスの放棄であり、もったいない。

 多くの企業人と、さまざまなマーケティング・テーマの研究や研修をする際に、これら三つの意味と要素のバランスの重要性を感じます。一般的に研修というと、「知識」を深めたり自らの技能レベルを確認したり、新たな「情報」や手段の習得を目的にしています。したがって、どうしてもその時間の中で何がしかの成果を得ようと必死になる「意志」が働くものです。しかし、短期間では何となく理解できたと思えることも、いざ自らのビジネス現場に戻ると、また違った感情になり、あれはあくまでも研修での出来事だったと、元の鞘に収まる人もみられます。

 マーケティングは本来、人の暮らしの中に新たな「知恵」を提供することに「情熱」を持って取り組み、変化に適応した「意思」決定を繰り返す、「知情意」のバランスの中で行われるものだと思っています。(第163話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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