清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第15話)

第15話:「知識」は必要ですが、それ以上に「意識」が重要。

 何かを成し遂げようとした時、人は不安に駆られることがあります。今のままで良いのか、他にもっと良いやり方があるのではないか・・・。確認する術を持たず、今までに自分が知り得たことを基本に、もう一度筋道立てて、自分のやろうとしていることを説明しようとします。そこに働く力としては、ある時は累積された個人的な知識がものを言うことがあります。

 しかし一方で、知識だけでは解決できないことがあります。蓄積してきた知識では、今起きている現象を説明することが出来ず、また暗闇の中に入り込んでしまうこと、あの時に、もっと学んでおけば良かったと反省すること時です。そのような時に大いに発揮されるのが、本人の意識です。過去は問題ではなく、今起きている現実にどのように対処しようとするのかの、自分自身の意欲や対応の姿勢を問われているのだと、はっと気づきます。すると、それまでに思いもつかなかった方法が浮かんでくることがあります。誰かに習った方法ではなく、自分自身が編み出した道筋の発見です。

 理屈だけでは解決できないことが多く登場してくるのが、マーケティングの現場です。このような施策を展開すれば、顧客は間違いなく動いてくれるはずだと思うのですが、その通りの結果が生まれてこない。予期せぬことだらけ。そのような時には、過去に学んだことの、何とも脆弱なことかを思い知らされるものです。

 単なる表層的な「知っている事実」よりも、心底思い込んだ「まだ見ぬ未来」を実現しようとする意識が、どれ程の力になるかを知るときです。マーケティングが、「学」として存在するのではなく「論」として存在するのも、そこに意味があります。マーケティングは、自分自身が実行する「未来への道案内」なのです。(第16話に続きます)

清野 裕司 氏
清野 裕司 氏

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第5話)

第5話:相手を思い遣る心こそがマーケティング思考

 マーケティングが日本の産業界に紹介されたのは1955年と言われています。既に60年近い時が流れました。その間の日本経済の変遷と共にマーケティング自体も変化・進化の道を辿ってきました。今も、人によってさまざまなマーケティングの解釈がされるのも、それだけ時代環境変化に敏感に反応しつつ発展をして来たからともいえます。販売支援型のマーケティング、流通形態対応型、広告優位型・・・。その一つひとつに、今までの日本経済の歩みそのものにも似た動きをみることが出来ます。

 60年代から70年代のマーケティングは、「つくる」ことに主眼を置いたものでした。モノ不足の時代に始まり、モノをいかに大量につくり、大量に届けるかと、企業の経営もモノ主導型発想に主眼が置かれました。効率的なモノづくりをリードして、販売を円滑にする手段として、マーケティングは拡大成長のガイド役を果たしました。

 80年代のマーケティングは、「伝える」ことに主眼が置かれていました。多くのモノやサービスが、高い品質を維持してつくられる環境で、自らの差別性をいかに理解してもらうか。広告のコピー1行を書くのに何千万円といったコピーライターが、社会的にも認知され注目されていた頃です。

 時流れて90年代以降、特に21世紀に入ってから、マーケティングは一段と企業経営の根幹的な位置づけで語られるようになっています。一方的に企業サイドの論理だけではなく、顧客の真の想いを辿りながら、必要とされるものを一緒に「生み出し」無駄のない経済活動を進めようとする考え方です。「顧客主導」の発想。「つくる-つかう」「伝える-聞く」の対極的な考えではなく、「共に生み出す」考え方です。

 マーケティングの今日のテーマは、自らの相手を今まで以上に思いやる幅広いものへと拡張し、過去を分析することに止まらず、未来を語る役割までが求められているのです。(第6話に続きます)

株式会社マップス  代表取締役 清野 裕司
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第4話)

第4話:変化に「気づく力」を高めよう

 「マーケティングは市場の変化に対する創造的な適応行動」と言われます。変化に適応するためには、自分自身が変化に敏感でなければなりません。ぼんやりと流れ去る時の中に身を置いていたのでは、車窓から眺める景色の移り変わりを見ているようなものです。企業活動の対象者であるお客様(顧客)は変化をし、企業の経営に影響を及ぼしてきます。

 そのために必要なことは、変化そのものに「気づく」力を高めることです。現在の市場の動きを察知する感性とも言えます。何かを見て、今までとどこか違う、自分の過去の経験だけでは判断できない、書物を通じて知ったこととも何かが違う・・・、と先ずは思う。そこからどうするのかが分かれ道です。何故かと考え込む。しかし、いつか考えたこと自体を忘れてしまうことがあります。でもそれでは「気にする」レベルで止まってしまいます。肝心なことは、「気にして動くこと」です。動きを伴うかどうかが「気づく」力を持っているかどうかの分岐点になるのです。

 オフィスのデスクの上に置いてあったティッシュがなくなっているようだと思い、新しいボックスを買う(またはストックを取りに行く)、という行為が「気づく」ということです。

 「気」は人の精神が外に出る様子をいいます。現在のビジネス環境では、「気づく」力が新しいビジネスの可能性を産み出すと言われます。昨日と今日では、何が違いますか。自分の身の回りに、どんな変化が起きていますか。気づくのは、何としてもそうしなければと、固く構えていれば良いということではなく、気軽な気分で四方に眼をやって、何となく今までにない何かを感じることです。「気」とは眼に見えないもの。自分の心の動きや状態・働きなのです。(第5話に続きます)

株式会社マップス  代表取締役 清野 裕司
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第3話)

第3話:「顧客」は誰ですか

 さまざまなモノや情報がお客様と出会う場や装置が「市場」。その変化を常に気にした経営をすることがマーケティングとお話ししました。では、お客様=顧客とはどのような意味を持ったものでしょうか。

 経営をする際には、顧客開発,顧客管理,顧客主導,顧客志向という言葉や「顧客は企業の資産である」と言われるように、「顧客」という言葉は普段からよく使っています。

 企業にとって「顧客」とは誰のことを指しているのでしょうか。そして、どこにいるのでしょうか。そもそも「顧客」というのは、どんな意味を持っているのでしょうか。何ごとも基本を知っておくことが大切です。

 「顧客」は「顧(かえりみる)」と「客」から出来た熟語です。更にこれは、「雇」と「頁」/「ウ冠」と「各」に分化できます。そして、「雇」=古い/「頁」=頭・顔/「ウ冠」=家・店/「各」=来る、の意味を持っているのです。個別の要素を続けて読んでみると、「古顔が店に来る」になります。

 馴染みの人の来店や来宅ということが元々の意味です。一度限りの顔見せではなく、一度の関係(来店)が長く続いて、また顔を見せてくれる人が「顧客」なのです。

 昨今マーケティングでは、顧客との関係づくりが重要と言われます。顧客をいかに維持するのかが経営の主題がおかれるのも、店や企業と顧客との長期的友好関係の形成の大切さを言っていることです。「顧客」は一度として「開発」されたり「管理」されたりしたいと考えたことはないのです。回を重ねて利用しようと考えるのは、そこに何か魅力があって魅かれるからに違いありません。

 顧客との関係づくりとは、店や企業サイドが、何度となく利用していただける魅力を提供しつづけ、馴染みの顔を理解することに始まるということは、もともとの「顧客」の意味をたどれば言うまでもないことなのです。(第4話に続きます)

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第2話)

第2話:「市場:Market」の意味を知ること

 マーケティングは、市場(Market)の現在進行している(ing)変化状況を読み、その動きを自分自身の経営の姿勢や行動に取り込むことを基本の思想としています。ところで、ここで言う「市場」とは何を指しているのでしょうか。その意味を知ることが、マーケティングを理解するスタートにもなります。音としては、「いちば」と「しじょう」の二つがあります。

 先ずは「いちば」。まさに「場」のこと。モノや人が、そして情報や金が出逢い交換される「場所」であり「装置」のことです。その昔、10日毎や20日毎に開催された交換の場所は、今も地名に残る十日市や廿日市です。また、装置としては、現在のインターネット環境の申し子のような「楽天市場(いちば)」をご存知でしょう。

 さらに「しじょう」という場合はどうでしょうか。高齢者市場、女性市場という言い方や自動車市場、パソコン市場といった言い方があります。つまり、交換対象者であり、交換対象物を指すときにも「市場(しじょう)」という言葉が使われます。交換された結果(需要の規模)を示すこともあります。「○○市場は100億円」といった表現です。

 こうして見てみると「市場(Market)」という言葉も、「交換の場や装置/交換の対象/交換の結果」の意味をもったものであることがわかるのではないでしょうか。マーケティング思考では、これらの要素の変化をどのように読み解いたらいいのかが問われるのです。

 従来は手売りが当たり前だった飲み物を、今は自動販売機という装置でも購入できます。まだ行ったこともない国の名産を、インターネットという仕組みを使って購入できます。かつて若者市場にいた人も、年とともに高齢者市場に組み込まれます。モノの持つ意味も変わると、交換の結果の需要量も変化します。まさに変化は各「市場」現場で起きるのです。

その変化の中に身を置きながら、常に今の「市場」状況を考えること。自らも変化し続けなければ、市場の今を読むことは出来ないのです。まさに、今を生き続けることが「マーケティングすること」でもあるのです。(第3話に続きます)

kiyono

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