エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第49話)

第49話:2015年は中国経済の失速と所得低迷が予想外

 2015年の経済状況を振り返ると、予想通りとなったのは米国の利上げである。利上げ時期までは予想通りではなかったが、2015年末に利上げが行われた。全般的には、ある程度の円安水準が維持される一方で、原油価格が低水準で推移したこともあり、企業業績が最高益を更新する可能性が高まっている。株価も2014年末の1万8,000円弱から4月に15年ぶりに2万円を超え、世界同時株安もありその後下回ったが、2015年末には1万9000円程度にまで回復している。この部分はほぼ想定通りといえる。

 その一方、経済成長率が4-6月期にマイナス成長となったことは予想外であった。これだけ企業業績が良ければ、成長率はもう少し上がると考えていた。

 この背景には大きな誤算が2つある。1つは中国経済の減速である。中国経済の減速は予想以上となり、それに伴って輸出が弱くなり、いわゆる生産調整的な動きもあって、4-6月期にマイナス成長となった。2つめは賃金が思った以上に伸びなかったことである。企業業績も良く、2015年春闘も良い結果となったわりには、ボーナスを含めて賃金が期待ほど増えず、それが個人消費の抑制につながった。加えて、企業側をみても設備投資計画は強いわりに設備投資が増加しなかった。企業業績が良いわりには企業マインドが好転しなかったことも予想と異なった。

 ただし、その後をみると7-9月期はプラス成長に転じ、在庫がマイナス寄与となったことから、在庫調整が進んだことで10-12月期もプラス成長が持続する可能性が高い。

 そういった意味では景気後退とはいえないものの、7-9期までの状況をみれば回復とはいえない。2015年度としては1%程度成長すると予想されるが、当初はもう少し高い成長率になると思っていた。やや期待外れである。

 単純に賃金・所得が増えない以上に、2014年4月の消費税率の3%引上げの影響が大きかったと考えられる。賃金が本格的に回復しない中での消費税率3%の引上げが、単純な駆け込み需要と反動だけでは説明できない家計への重石となったことをあらためて実感した。

 消費税率は2017年4月に10%への引上げが予定されているが、消費税率引上げの前までに、経済活動をいかに力強くするかが重要になる。

 2016年の日本経済で最大のカギを握るのは賃上げであり、GDPの約6割を占める個人消費の回復が重要課題で、黒田日銀総裁も春闘の動向には非常に注目していると発言している。

 懸念しているのは、中国発の世界同時株安もあって、足元の設備投資、機械受注も一時的に冷え込んでいることもあり、2016年の春闘はあまりいい結果とならない可能性がある。そうなった場合、2017年4月の消費税率引上げに耐えうる経済環境が整わない可能性がある。安倍首相のこれまでの発言を聞く限りでは、2017年4月の消費税率の引上げはよほどのことがない限り、実施される可能性が高いことから、2017年の景気はさらに心配になるだろう。(第50話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

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