エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第193話)

第193話:2019年の海外経済リスク

 トランプ政権の政策運営は2019年もリスクとなろう。減税や保護主義等によりインフレ率が加速すれば、FRBが物価の安定のために利上げを急がざるを得なくなり、中立水準を上回る金利上昇により米国経済が景気後退に陥る可能性もある。そうなれば、日本経済も後退を余儀なくされるだろう。

 更に、新興国経済も重荷となる。特に新興国の民間非金融法人の債務残高/GDPはリーマンショック以降、過去にないほど膨張しているため、米国資金の本国還流などにより、経常赤字の新興国が経済危機や通貨危機に陥るようなことになれば、日本経済への悪影響も無視できないことになろう。

 以上のように、2019年も引き続き海外経済には注意が必要となろう。最大の注目は、米国のねじれ議会の誕生である。トランプ氏の経済政策は、減税やインフラ投資をはじめとした財政政策の計画があったが、ねじれ議会ではこの法案が通りにくくなることが予想される。このため、財政悪化に伴う米国の長期金利上昇リスクは軽減したといえるだろう。

 一方でトランプ氏は2020年の大統領選で再選を目指しているが、財政政策で有権者にアピールしにくくなるため、外交や通商政策でのアピールを強めることが予想される。特に、通商政策は大統領権限を発揮しやすい分野であり、議会の制御が効きにくいという意味では、更なる保護主義化のリスクは小さくない。従って、外交や通商政策において、トランプ氏がどこまで過激な大統領令を発動してくるかも焦点となろう。

 日本経済への影響としては、自動車の追加関税発動等で対米貿易黒字の大幅縮小を余儀なくされれば、経済成長率がかなり押し下げられることになろう。また、中東やロシア等の産油国等に対して更なる経済制裁の強化が実行されれば、原油価格の上昇を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性もある。

 欧州でも、政治の波乱要因が目白押しである。いずれの国でも反EU的な世論の勢いが増しており、欧州政治不安への懸念が燻っている。英国ではブレグジット交渉が内憂外患となっており、ブレグジットを巡って英国保守党内でも意見が対立している。こうした英国の不確実性上昇は円高ポンド安要因となろう。

 ユーロ圏でも、ドイツのメルケル首相の求心力低下や、イタリアの2019年度予算案を巡る財政赤字拡大懸念でイタリア国債利回りが急騰している中、ECB(欧州中央銀行)は量的緩和政策を2018年内で終了することを決定している。

 したがって、こうした欧米政治の不確実性の高まりが、日本企業のセンチメント悪化を通じて、2019年の賃上げ抑制や設備投資先送り等から日本経済の下押し要因になりうることが懸念される。また、今後のトランプ氏の言動や欧州政局次第では、中国をはじめとした新興国経済が大きく悪化するリスクもあることには注意が必要だろう。(第194話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)