エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第205話)

第205話:予想通り盛り上がってきた景気後退の判断

 正確な景気の山谷は、政府の景気動向指数研究会によって、ヒストリカルDI(以下HDI)を計算して決められる。HDIはDIの一致指数として採用されている9系列の山・谷を決定し、景気拡張期は+、後退期は-に変換して新たにDIを作り直すことにより求められる。そして、HDIが 50%を切る直前の月が景気の転換点となる。

 なお、各指標の山谷は、全米経済研究所(NBER)が開発したブライ・ボッシャン法という手法を用いて設定される。この手法では、3種類の移動平均をかけたデータについて検討を行い、①山やその後のデータの値より高いこと(谷はその逆)、②山や谷が系列の終了時点から6か月以上離れていること、③山と山、谷と谷が15か月以上離れていること、④山と谷が5か月以上離れていること、等の条件を考慮して山谷が確定される。このため、実際の景気の山・谷は、発生してから1年以上の期間をおいて十分なデータが得られたところで決定されることになっている。

 そこで、今回の局面について簡便的にHDIを推定してみた。ただ、データにかなりぶれが生じやすくなっているため、今回はブライ・ボッシャン法の移動平均の一つにも採用されている3か月移動平均値も用いて考慮した。

 一致指数を構成する9の系列を見ると、有効求人倍率を除く8系列が 2018年10月までに山をつけたと事後的に判断される可能性がある。このため、この8系列が2018年10月にピークアウトしたと判断されれば、9系列中過半の8系列以上が山をつけることになる。こうなれば、日本経済はHDIが50を下回る可能性のある2018年10月あたりが景気の山となり、翌11月あたりから景気後退局面入りと機械的に判断される可能性がある。

 ただ、政府の公式な景気動向指数研究会で景気の山・谷を設定するに当たっては、HDIの試算に加えて、①転換点を通過後、経済活動の拡大(収縮)が殆どの経済部門に波及・浸透しているか(波及度)、②経済活動の拡大(収縮)の程度(量的な変化)、③景気拡張(後退)の期間について検討する。併せて、念のため、参考指標の動向が整合的であるかどうかについても確認する。

 そこで、これらについても具体的に見てみると、波及度については8/9系列が2018年10月にピークを付けている可能性がある。また量的な変化については、1月の鉱工業指数の結果などから一致CIが2019年1月に大きく低下している。

 したがって、これらの指標の動向を勘案すれば、機械的に判定したHDIが50%を下回っても、景気の波及度や量的な変化といった観点から2014 年4月~2016年2月までHDIが 50%を割ったのに景気後退と認定されなかったが、今回こそは景気後退局面入りと最終的に判断される可能性があると判断できよう。ちなみに、今後の景気が更に悪化し、2018年9月期が景気の山となれば、今回の景気拡大局面は70か月となり、戦後最長の景気回復 73か月は更新できないことになる。(第206話に続きます)

*合わせて前回のコラム「第204話:昨年11月の懸念が現実のものに」もお読みください。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第189話)

第189話:2018年4-6月期が景気の山となる可能性

 正確な景気の山谷は、政府の景気動向指数研究会によって、ヒストリカルDI(以下HDI)を計算して決められる。HDIはDIの一致指数として採用されている9系列の山谷を決定し、景気拡張期は+、後退期は-に変換して新たにDIを作り直すことにより求められる。そして、HDIが50%を切る直前の月が景気の転換点となる。

 そこで、今回の局面について簡便的にHDIを推定してみた。ただ、一致系列の4/9を占める鉱工業指数関連のデータが今月基準改定を控えており、データにかなりぶれが生じやすくなっている。このため、今回はブライ・ボッシャン法の移動平均の一つにも採用されている3か月移動平均値も用いて考慮した。

 一致指数を構成する9の系列を見ると、今後のデータ次第ではあるが、営業利益と有効求人倍率以外の7系列が2018年5月までに山をつけたと事後的に判断される可能性がある。このため、この7系列のうち5系列以上が2018年4-6月期にピークアウトしたと判断されれば、9系列中過半の5系列以上が山をつけることになる。こうなれば、日本経済はHDIが50を下回る可能性のある2018年4-6月期が景気の山となり、翌7-9月期から景気後退局面入りと機械的に判断される可能性がある。

 ただ、政府の公式な景気動向指数研究会で景気の山谷を設定するに当たっては、HDIの試算に加えて、①転換点を通過後、経済活動の拡大(収縮)が殆どの経済部門に波及・浸透しているか(波及度)、②経済活動の拡大(収縮)の程度(量的な変化)、③景気拡張(後退)の期間について検討する。併せて、念のため、参考指標の動向が整合的であるかどうかについても確認する。

 そこで、これらについても具体的に見てみると、波及度については依然として営業利益と有効求人倍率が拡大及び上昇を続けている。また量的な変化については、一致CIが2017年12月の直近ピークから2018年7月の直近ボトムまで▲2.4%程度の低下にとどまっている。また、参考指標の動向として日銀短観の業況判断DIを見ると、全規模全産業ベースで現状判断DIは2018年6月調査以降2期連続で低下しているが、まだ水準はプラスを維持している。

 したがって、これらの指標の動向を勘案すれば、機械的に判定したHDIが50%を下回っても、景気の波及度や量的な変化といった観点からとらえると、2014年4月~2016年2月までHDIが50%を割ったのに景気後退と認定されなかったこともあり、今回も景気後退局面入りと最終的に判断されるかは微妙な状況と判断できよう。ちなみに、今後の景気が更に悪化し、2018年4-6月期が景気の山となれば、今回の景気拡大局面は60か月台半ばとなり、戦後最長の景気回復73か月は更新できないことになる。(第190話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第180話)

第180話:戦後2番目の景気回復はいつまで続くか

 日本の景気回復は、曲がりなりにも2017年9月から戦後2番目の長さとなっている。ただ、筆者の見通しでは2019年度後半あたりから景気が悪くなる可能性が高いと予測している。その要因としては、既に戦後2番目の長さになっている米国経済が今後景気後退に転じる可能性があることや、東京五輪特需のピークアウト、2019年10月の消費税率引上げ等が考えられる。

 実際に「ESPフォーキャスト調査」では、2018年度から2019年度にかけて経済成長が緩やかに減速していくと予測されている。尚、2018年度の減速の一因は、2017年度は4年ぶりに増加に転じた公共事業が減少に転じるためである。また世界経済についても、2017年末にかけて欧米の生産活動が良すぎた反動もあり、2018年の生産活動の回復は少し緩やかになっている。ただし特に、米国は2017年末に決まったトランプ減税の効果で、少なくとも2019年前半頃までは好調が続くだろう。

 数少ない期待される消費の分野としては、2009年に導入されたエコカー補助金と省エネ家電の購入を促すエコポイント制度から9年が経過しており、当時売れたテレビや車の買い替え需要が期待できよう。特にテレビについては、2011年の地デジ化の影響もあり、2019年10月に控える消費税率引き上げ前の駆け込み需要も合わせると、かなり大きな買い替え需要が見込まれる。

 しかし、経済は循環しているため、いつかは景気後退局面が訪れよう。その要因としては、米国経済の減速や景気後退、東京五輪特需の剥落、消費税増税などがある。中でも消費税増税の時期については、注意が必要だろう。実際、近年の日本の個人消費が大きく下振れした時期はこれまでリーマンショック、東日本大震災、2014年の消費増税の3度あった。下振れの時期は、リーマンショックは2年、東日本大震災は1年にとどまったのに対し、2014年4月の消費増税の時は3年かかった。更に、個人消費のトレンドという面でみれば、前2つは上方トレンドが維持されたが、消費増税時は上方トレンドが下方屈折してしまった。このことからも、消費増税時には経済の勢いが大幅に削がれることが経験的にわかっている。

 なお、消費税増税の負担額については、2014年に3%引き上げられたときには家計の負担は8兆円以上だった。来年10月の増税では上げ幅自体は2%だが、子育て世代への1.4兆円の還付や軽減税率などを考えると、トータルの負担は2.2兆円となり、負担額だけで見れば前回の4分の1程度だろう。更に、景気対策も実施するため、消費増税のみで日本経済が腰折れすることはないだろう。しかし問題は時期である。過去の経験に基づけば、2020年の東京五輪の特需のピークは来年夏が予想される。建設需要の勢いがピークアウトすることが予想されるためである。つまり、東京五輪特需の勢いがピークアウトするタイミングで消費税増税に突入するため。つまり、ピークが過ぎた後の増税はタイミングとしては最悪であると考えられている。(第181話に続きます)

永濱 利廣 氏

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経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第175話)

第175話:2019年後半から世界の経済成長率は鈍化も21年に復調

 2008年9月に発生した「リーマンショック」以降、米国は負のGDPギャップの着実な縮小が続き、経済は正常化に向かっている。そうした正常化は今後も進展することが期待されるため、米国は経済の成長力を取り戻し、ユーロ圏経済も遅れながら正常化に向かうことが注目される。

 ただし、米国経済の景気回復が長期化していることは、米国の景気回復局面が終盤に差し掛かっていることも意味する。過去の経験則に基づけば、米国経済はGDPギャップがプラスになってから2~4年で景気後退になるため、米国経済は2020年前後の景気後退が想定される。その後は米国の迅速な金融・財政政策により1年程度で景気後退は脱し、平均2%程度の潜在成長率に見合った経済成長を取り戻すことを想定している。

 一方のユーロ圏は、中期的には1%台半ば程度の安定した経済成長が続く見込みである。2018年のユーロ圏経済は引き続き+1%台の潜在成長率を上回るペースで拡大しており、賃金上昇圧力が高まる中、インフレ率は緩やかに上昇することが予想される。欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策は年内に終了し、来年中にもECBは政策金利の引き上げを開始すると予想する。

 他方、これまで世界経済をけん引してきた中国は、人口動態の推移通り緩やかな減速過程が続く。中国の人口ボーナス指数はすでにピークアウトした。こうした人口動態の変化はすでに経済成長率の鈍化に表れている。しかし、中国の経済成長率は、依然として6%台を上回っている。従って、中国経済のけん引力は低下するものの、2020年代後半でも4%台の経済成長を維持するだろう。

 この関係を念頭に、今後の主要地域の経済成長率の中期展望を示すと、2010年代後半は先進国が停滞を脱して正常化に向かう傾向を見て取ることができる。一方、新常態を標榜する中国の経済成長率は低下傾向を辿り、2020年代後半は4%台に低下する。こうしたことから、2020年代後半には、経済大国での生産年齢人口の伸び鈍化などから世界経済全体の成長率もやや鈍化する可能性が高い。

 また、今後も先進国と新興国の経済成長率見通しについて、IMFデータを元にした筆者の予測では、2019年後半以降に先進国は米国の景気後退局面入りで成長率が減速に向かい、新興国も先進国向けの輸出減速等により減速することになる。

 しかし、2020年以降は先進国が金融緩和に転じることなどにより、比較的早期に世界経済の減速は収束することになろう。このため、2021年以降は新興国経済の持ち直しも相俟って、世界経済も緩やかに正常化路線に復帰することが予想される。(第176話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

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