エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第156話)

第156話:景気が「後退局面入り」を示すかもしれないアノ指標

 企業の景況感は景気循環の源となる在庫投資や設備投資を大きく左右することから、景気自体をも大きく左右する。

 企業の景況感を表す統計としては、日本銀行「短観」の業況判断DIが最も代表的である。年に4回調査が行われ、3、6、9月調査の結果は翌月初に、12月調査の結果は12月中旬に公表される。中でも、在庫の影響が大きい製造業の景況感の方が非製造業よりも景気に敏感に変動することから、大企業(資本金10億円以上)製造業の業況判断DIが最も注目される。事実、製造業と非製造業の業況判断DIを比較すると、製造業の方が景気拡張期に上昇し、景気後退期に低下する傾向が明確である。

 業況判断DIは、収益を中心とした業況について「最近」と「先行き」の全般的な判断について、「良い」「さほど良くない」「悪い」のうちから回答を求め、「良い」と「悪い」の回答者割合の差が0を中立とするDIとなる。これまでの大企業製造業の業況判断DIの動きを見ると、2013年6月調査からプラスを維持しており、2018年3月調査では+24、つまり「良い」と答えた企業の割合が「悪い」と答えた企業の割合を24%ポイント上回っていることになる。しかし、2017年12月調査からは▲2%ポイント低下している。

 この要因としては、世界的な金融市場の不安定化に伴う円高や株安、米トランプ政権が保護主義的な動きを強めていること等により企業マインドが悪化したことが考えられる。通常、業況判断DIの低下は企業活動の低下を意味するため、景気も後退局面入りすることが多い。事実、2四半期連続で大企業製造業の業況判断DIが悪化して景気後退入りしなかったのは1980年以降で1989年後半と2004年度後半の2回だけである。更に、3四半期連続で悪化して景気後退にならなかったのは1989年後半のみであり、結局その時も最終的にはバブル崩壊で景気後退入りした。

 4月短観以降、トランプ政権の保護主義的な動きが弱まり、報復合戦に伴う貿易戦争勃発が避けられ、金融市場の動揺が後退すれば、次の6月短観における大企業製造業業況判断DIは上向くかもしれない。しかし、先行きDIでは▲4%ポイントの悪化が予測されている。したがって、見通し通り6月調査の大企業製造業業況判断DIが悪化すれば、日本経済に対する強気な見通しがやや後退する可能性もある。つまり、景気局面の鍵を握る企業マインド次第では、景気も後退局面入りする可能性があるといえよう。(第157話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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