清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第76話)

第76話:マーケティングは顧客との「貸し借り」のバランスづくりです。

 消費者金融が発するメッセージに「ご利用は計画的に」があります。借りたものは返す、世の道理です。返せないなら借りるな。これも道理でしょう。しかし、今の世情はどうやらそうではないようで、「返せそうもないが、まあ何とかなるだろう」といったお気楽モードも一部見られます。30年ほど前でしょうか、“Play Now,Pay Later”のキャッチフレーズがクレジット会社から流れていたことがあります。これも、楽しみは先に、但しその借りは返すように言い聞かせていたものです。

 最近は「勝ち組/負け組」に代表される二者択一的な判断基準が横行しているように感じます。どちらを選ぶかと言われれば、多くは負の状況よりも正の状況を選択したくなるのも人情です。しかし、一方の極があればその対極が必ずあります。両者のバランスによって人生は創り出されています。一方の極にのみ身を置いていると、どうしても思考の回路や、何よりも暮らしの姿勢自身が偏ったものになってしまいます。「偏見、偏狭、偏食、偏屈・・・」ほめられた言葉は並びません。

 ビジネスの世界も、経済的な対価のやり取りに限らず、業務上の貸し借りが常に存在します。なぜ自分だけがこんな思いをしなければならないのか、と苦渋に満ちた顔で現在の仕事を語る人がいます。しかし、終生そのような状況が続くわけではありません。その仕事は多くの人に貸しを作っているはずです。いつか利息がついて返ってくることがあります。ただ、その返済に気づかぬままでいることがあり、自分は貸しばかり作っていると思い込んでしまうようです。

 借りを作るよりも貸しを作った方が、将来が楽しみだと私は思っています。借りると返さなくてはなりません。それよりも、今の仕事がいつか廻って戻ってくることを楽しみにしていたいもの。マーケティングは、顧客への一方的な貸付ではなく、顧客から「ありがとう」の言葉が返ってくる、貸し借りのバランス行動ですから。(第77話に続きます)

 

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第75話)

 

第75話:感じたままに書かれた文章には、発信者の想いが溢れます。

 ビジネスのさまざまな場面で「提案力」「企画力」を良く聞きます。従来からも、企画することの重要性は唱えられてきました。現在の経営環境にあっては、従来にはない新しい発想が待たれています。

 提案することは、まだ知られていないこと、思いついていないことを「気づかせる」ことから始まるもの。既に分かっていることを改めて言われても、さしたる驚きもなく、「言われるまでもないこと」と無表情な答えが返ってくるでしょう。「気づき」を提示することは、聞く側にとっての感動を演出することに繋がります。そこに企画提示の楽しさ、面白さがあります。何も知ったかぶりをして告げることではありません。新しい見方や考え方を提示することです。マーケティング・スタッフに求められるのは、自分自身の「気づき力」です。

「世の中にある現象や事実に対して、自らが先ず疑問符を投げかけて考えてみる。なぜこのようなことが起きるのか、なぜ今、このような商品や店が受け入れられるのか・・・」幾つもの疑問を自分自身に投げかけてみる。何がしかの解釈が浮かんでくる。それからが問題です。書き残しておかなければ、自分の気づきがどこかに飛んでいってしまいます。忘れてしまうのです。

 折角思いついたのに、あの考えは何だったか。後になって思い出します。そして企画書に自分の想いを書き込もうとすると「作文」になってしまいます。抽象的な文章が並び、現象や事象は丁寧に説明しているのですが、感動を呼びません。心が揺れないのです。作り込まれた文章は、説明的です。必要なことは、自分が感じたことをそのままに表現する「感文」です。美しいものを「美しい」と書き込む力。感じたものがそのままに表現されることが、人への気づきを提供します。

 マーケティングは、未来を予見し、まだ見ぬ世界を描き出すビジネス・アプローチ。作り込まれた「作文」よりも、自分自身の感じた心から発信された「感文」にこそ夢の説明力が内在しているのです。(第76話に続きます)

 

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

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