エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第148話)

第148話:幅広い寒波効果

 前回、ラニーニャ現象により今年の冬も厳冬となっており、各業界に恩恵が及ぶ可能性があることを指摘した。

 事実、過去の経験によれば、厳冬で業績が左右される代表的な業界としては冬物衣料関連や百貨店関連がある。また、ガス等のエネルギー関連のほか、医薬品やマスク等のインフルエンザ関連も過去の厳冬では業績が大きく左右されている。そのほか、車等の防寒や凍結対策関連といった業界も厳冬の年には業績が好調になることが多い。さらに、鍋等冬に好まれる食料品を提供する業界や外食、コンビニ等の売り上げも増加しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの好影響も目立つ。

 過去の気象の変化が家計消費全体にどのような影響を及ぼしたのかを見るべく、国民経済計算を用いて10-12月期の実質家計消費の前年比と東京・大阪平均の気温の前年差の関係を見た。すると、10-12月期は気温が低下した時に実質家計消費が増加するケースが多いことがわかる。従って、単純に家計消費と気温の関係だけを見れば、厳冬は家計消費全体にとっては押し上げ要因として作用することが示唆される。

 そこで、1995年以降のデータを用いて10-12月期の東京・大阪平均気温前年差と家計消費支出の関係を見ると、10-12月期の気温が▲1℃低下すると、同時期の家計消費支出が+0.54%程度押し上げられる関係がある。これを金額に換算すれば、10-12 月期の平均気温が▲1℃低下すると、同時期の家計消費支出を約+3,235 億円程度押し上げることになる。

 従って、この関係を用いて今年10-12月期の気温が94 年および2010 年と同程度となった場合の影響を試算すれば、平均気温が前年比でそれぞれ▲0.6℃、▲0.7℃低下することにより、今年10-12月期の家計消費はそれぞれ前年に比べて+2,098 億円(+0.3%)、+2,430 億円(+0.4%)程度押し上げられることになる。このように、厳冬の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 なお、05年の時のように年明け以降の厳冬は、豪雪に伴う交通機関の乱れや農作物の生育などへの悪影響を通じて経済活動に悪影響を与える可能性があることには注意が必要だろう。

 また、異常気象は世界的な現象であることから、海外にも影響が及ぶことにより、穀物価格高騰を通じた悪影響も考えられる。世界的なラニーニャ現象により穀物価格が高騰すれば、08 年当時のように我が国食料品の値上げラッシュをもたらし、家計の購買力低下を通じて経済に悪影響をもたらしかねないことにも注意が必要だろう。(第149話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第147話)

第147話:今冬の厳冬、日本経済に多大な恩恵

 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生している。気象庁が12月11日に発表したエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖の海面水温が低くなるラニーニャ現象の影響等で厳冬となる見込みとされており、気象庁の予報でも、東日本と西日本を中心に気温が低くなりがちと予想している。

 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象である。ラニーニャ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。近年では、2016年夏から17年春にかけて発生し、北海道を中心とした8月の長期的な大雨・豪雨 となったほか、1951年に気象庁が統計を取り始めて以来、初めて東北地方の太平洋側に台風が上陸した。また北日本では平年より7~10日早い初雪・初冠雪を観測し、関東甲信越では16年11月に初雪・初冠雪を観測した。このほか、17年1月中旬と2月中旬、3月上旬は日本国内のみならず、国外の多くで10数年に1度の北半球最大規模の大寒波が襲来した。

 気象庁の過去の事例からの分析では、ラニーニャ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが早まることで夏の気温は平年並みから高めとなり、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある、ということなどが指摘されている。

 実際、ラニーニャ現象の発生時期と我が国の景気局面の関係を見ると、1990年代以降全期間で景気回復期だった割合は73.9%となる。しかし驚くべきことに、ラニーニャ発生期間に限れば89.5%の割合で景気回復局面に重なることがわかる。

 実際、2005年のラニーニャ発生局面では記録的な寒波に舞われた。気象庁の発表によると、10-12月期の東京の平均気温は前年より1.37℃低くなった。この寒波効果で2005年10-12月期の消費支出(家計調査)は前年比+1.3%の増加に転じた。特に、暖房器具の売り上げが好調に推移したことから、家具家事用品が同+9.4%の伸びを記録した。また、冬物衣料を見ても、寒波効果は明確に表れた。同時期の被服及び履物支出は寒波の影響で季節商材の動きが活発化し、大型小売店でも冬物商材が伸長したことで回復が進んだ。保険医療の支出動向もインフルエンザ関連がけん引し、全体として好調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、寒波の恩恵が及んだ。05年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+2.3%と伸びが加速し、家計調査同様に家庭用機器の支出額が大幅に増加した。また、冬のレジャーの活況により娯楽・レジャー関連でも寒波が追い風となった。(第148話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第74話)

第74話:猛暑、厳冬をもたらすラニーニャ

 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生している。気象庁が6月25日に発表した7-9月の3か月予報によると、ペルー沖の海面水温が低くなるラニーニャ現象の影響等で猛暑となる見込みとされており、内閣府が公表する景気ウォッチャー調査でも効果を期待するコメントが出ている。

 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象である。ラニーニャ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。最近では2014年夏から冬にかけて発生し、スリランカで大雨となった。日本では西日本〜北日本の日本海側で10月を中心に暖秋となり、12月から翌年の2月上旬までを中心に寒波と長期的な降雪となった。最も影響が拡大したのは94年と2010年の夏である。94年は日本で過去最高・観測史上1位の猛暑・暖秋となり、2010年は21世紀日本で観測史上1位の猛暑となった。気象庁の過去の事例からの分析では、ラニーニャ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが早まることで夏の気温は平年並みから高めとなり、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

 実際、2010年のラニーニャ発生局面では記録的な猛暑に見舞われた。気象庁の発表によると、6~8月の全国の平均気温は平年より1.64度高くなり、1898年の統計開始以来最高の暑さとなった。この猛暑効果で7月のビール系飲料の課税数量は前年比2カ月連続プラスとなった。コンビニ売上高も麺類や飲料など夏の主力商品が好調に推移したことから、既存店前年比で7月以降2ヶ月連続プラスとなった。

 また、小売業界全体を見ても猛暑効果は明確に現れた。7月の小売業界の既存店売上高伸び率は猛暑の影響で季節商材の動きが活発化し、百貨店・スーパーとも盛夏商材が伸長したことで回復が進んだ。家電量販店の販売動向もエアコンが牽引し、全体として好調に推移した。

 小売業界以外でも、猛暑の恩恵が及んだ。外食産業市場全店売上高は7月以降の前年比で2ヶ月連続のプラスとなり、飲料向けを中心にダンボールの販売数量も大幅に増加した。また、ドリンク剤やスキンケアの売上好調により製薬関連でも猛暑が追い風となった。さらに、乳製品やアイスクリームが好調に推移した乳業関連も、円高進行による輸入原材料の調達コスト減も相俟って好調に推移した。化粧品関連でも、ボディペーパーなど好調な季節商材が目立った。一方、ガス関連は猛暑で需要が減り、医療用医薬品はお年寄りの通院が遠のいたこと等により、猛暑がマイナスに作用したようだ。

 以上の事実を勘案すれば、仮にラニーニャ現象により今年の夏も猛暑となれば、各業界に恩恵が及ぶ可能性がある。(第75話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
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