清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第172話)

第172話:マーケティング思考の基本は「対」を考えること。

 マーケティングを企業行動に取り込もうと考えている経営者もスタッフも、改めて振り返ってみて欲しいことがあります。共に企業で日々汗をかいていても、いざ仕事を離れれば、皆、消費者であり家庭人です。企業行動のガイドとしてのみマーケティングを捉えてしまうと、人間不在になってしまいます。

 「送り手」である企業の思考は見えてくるのに、「受け手」である顧客の思考が欠落してしまう恐れがあります。マーケティングは、「送り手」と「受け手」の良好な関係を生み出すことを主題にして、ビジネスを考える思考のガイドなのです。であるならば、「送り手」思考を持っただけでは、一方通行になってしまうことになります。自分自身が「受け手」の思考をもって、はじめて両者の関係の中に自分を置くことが出来るのです。つまり、何事においても相手があって初めて「交換」が成り立つと考えれば、マーケティングの基本思考は常に「対」で考えることが必要であることを教えているのです。

 ある現象を知るためには、全体を見るために細かく分けて考える「分析」する力が問われます。Analysisの力です。でも、細かく分けて詳細が分かっても全体が見えなければ新たな姿は見えてきません。「総合・統合」Synthesisが必要です。

 「売る」ことができるのは「買う」人がいるから。「つくる」人は「つかう」人のためにつくっていることになります。

 では「ありがとう」の対は何でしょうか。ありがたいを漢字で書くと、「有ること難し」です。あることがほとんどないから「有難し」です。これを反対から見てみると、あることが「あたりまえ」ということになりますから「当然」が対ということになります。お店とお客様との関係でいえば、「ありがとう」を発信するのは「めったに出会うことのない商品を買うことができた、ありがたい」で「ありがとう」とお客様が言う。それに対して「私どもでは、いつもお客様が新しい出会いを感じて頂けるように心がけております」。口には出さねど「当然のことをしたまでのこと」という対の関係が出来てきます。

 お客様からどれほどの「ありがとう」を頂けるかが、マーケティングの基本行動になると考えられるのです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第171話)

第171話:一年を思い起し、次の年を思う「望年」の時。

 ここ数年、ネットを介した年賀状も多く見られるようになりましたが、年始の変わらぬスタイルとして、今も私は年賀状を送っています。人によっては、住所確認の意味合いもあるかと思うのですが、私は、個人的に思う一年の抱負を短文で書き綴ってきました。

 改めて今読み直してみると、その時代時代のビジネスの様子を伺い知ることが出来るものです。この3年間に書き綴った年賀文を並べてみると、その時代の想いが透けて見えることがあり、ここ数年の環境変化を思いながらも、変わらぬ志を語り続けています。想いは不変であることを実感します。

2017年
小さなモンスターを探し回って時を刻むより、身の回りの不思議な現象を考える時をもつこと。重ねた経験で解決策を探すことを善しとせず、一つひとつ丹念に取り組むことを心してきました。
「器用にこなす能力」と「頭に汗する脳力」に悩む力も活かしながら次代に続く明日を見つめ、地に足つけたマーケティング・スタッフとして、変わらず元気な歩みを続けていこうと思います。

2018年
考えることは楽しいことと心に刻んで長き時。歩み来たたくさんの過去と会話をすることよりも、まだ見ぬ未来と会話をしながら歩を進める日々。
昨日までに刻んだ時は、明日への道のガイド役。多分野の知と出逢い、学び行く志を胸にだき、小さなことにも「頭に汗する」ことを忘れずに、重ねた知を今に活かした次代への伝承役として、着実に未来への歩を刻んで行こうと思います。

2019年
巡りくる暦の日々の長さは同じと知りつつも刻まれる時のテンポを倍速に感じて歩む今。画面を通じた短い言葉でのやり取りよりも、人との出逢い話し合いを大切にしています。
来し方に紡いだ知が、行く先を照らします。学ぶ志と拓く熱を忘れることなく心に刻み、「時代の知を次代へと繋ぐ」スタッフとして地に足つけて未来に続く道を進み行きます。(第172話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第170話)

第170話:社会のお目付け役「世間さま」はどこに行ったのでしょう。

 今を生きていながら、日々のちょっとしたことに変化を感じることがあります。今まで自分なりに当たり前と思っていたことが、そうではない状況として見えてくる時、何故だろうと不思議な想いが巡っていくもの。そのきっかけが何であったのかが、後になってわかることもあります。社会の変化は、時計の秒針的にコツコツと眼に見えて動きのわかるものと、長針的に日々の変化に眼をやるもの。そして短針的に何となく気がつけば変わっていたということがあるようです。余り秒針的なことばかりを追い求めていると、肝心な数年前との大きな変化を見落としてしまいます。

 1970年代初頭に登場したファストフードは、それまで、歩きながら、しかも手に持ってモノを食べることを、はしたないと教えられてきた呪縛を解き放ちました。80年代初頭のOA(パソコン)革命は、難解なコンピュータ言語を遠くへ追いやり、90年代後半からのIT革命やインターネットは、個人の情報行動の範囲を広げ、自分自身の判断による情報選別の必要性を強く持たせるようになりました。こうしてみてくると、何となくこの10年近くで我々は自分の殻の中に納まり、他との干渉を拒絶する自己中心的な生活価値観を持つようになってしまったように思えることがあります。

 周りに眼をやることをせず、自分の生活行動をそのまま公共の場に持ち込むような「車内化粧」や「車内スマホ」。自分の欲求を瞬間的に発現する「性的犯罪」。この世の中は二人を中心に動いていると誤解する「車内抱擁」。取り上げれば、秒針的な変化は、あたりかまわずです。

 元号を飛び越しても、それ程の昔ではない「昭和」という時代には、この国に「世間」とういお目付け役がいたように思います。どうやら最近「世間さま」はどこかに行ってしまって、あたりかまわぬ気風がこの国を覆っているように感じます。寒さは、冬に向かう季節のせいだけではなさそうな「世間」です。(第171話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第169話)

第169話:「景気」の変動は身近なところで感じるもの。

 消費税率の2%アップもあり、これからの景気はどのような変化をみせるのでしょうか。

 報道のメッセージで「景気回復」の言葉を聞いても、ここ数年は余り実感がありません。自分の身の回りの様相を見ても、これといった大きなうねりを感じさせないからです。小さな変化は日常的に起きるものの、人が皆活き活きとした眼で動いている様子を感じさせません。携帯でメールを読んでいるからだけではなく、何となく下向きの人に出会うことの方が多い気がします。繁華街での客待ちのタクシーの数は、日に日に増加しているように見えます。

 そもそも「景気」とは何でしょうか。三省堂「大辞林 第二版」によれば、「(1)社会全体にわたる経済活動の活発さの程度。(2)「好景気」に同じ。「あの店は最近すごい―だ」(3)威勢のいいこと。元気なこと。(4)けはい。ようす。ながめ。」といった整理がある。経済学的な定義もあろう。しかし、今ひとつ忘れてはならないポイントがあります。それが「景色」と「気分」の合成です。

 自らの行動が、今の環境に照らして似つかわしいことなのかどうか。まさに「景色」にあった行動を取っているのかどうか。普段行ったこともないような高級レストランに友人共々で行くと、勝手を知らないが故になぜか落ち着かないといった経験は無いでしょうか。自分にとって、周りの景色がうまく調和していない証拠です。何かを購入しようとして、その気になり店に出向くまでは良いのですが、実際に購入する段になって急に「気分」が盛り上がらず止めてしまったことは無いでしょうか。購買行動を後押しし、かつ引き上げる力が欠落している状況で、まさに「気分」が高まらないのです。

 マクロ経済の視点からすれば、一時期の停滞感は脱出したようにも感じます。しかし、日常のマーケティング活動は、マクロの視点で行われているのではなく、ミクロの見方です。新しい生活環境を具体的に提示できる「景色」と、購入しようとする「気分」を高める情報の提供。まさに、マーケティングは「景色」と「気分」を高める提案を継続する思考と行動の体系と考えるべきだと思います。(第170話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第168話)

第168話:「マーケティングの役割は何ですか?」に自分の答えをもとう。

 長きにわたってマーケティング・スタッフの仕事をしていると「そもそも」の本質的な質問を受けることがあります。「マーケティングの役割は何か」というのも、その内のひとつだと思います。答えは様々です。

「驚きと感動を与えてくれる/生活に潤いと癒しを与えてくれる/時間消費、空間消費の無駄を無くしてくれる/情報の選別の基準を示してくれる/調べたいことが直ぐに分かる/自分が何をしたいか選択肢を準備してくれる/自分の秘書代わりになってくれる/購買環境を整備し、簡単に買い物ができる/安全、安心を提供してくれる」といったことから、「自らの日々の行動を見直すインデックスである。/仲間を増やす思考・態度のアドバイザーである。/仲間(顧客)を生み出す仕組みである。/過去を振り返り、未来を描くガイドである。/自らの生長の尺度である。」といった答えまでに広がっていく。

 そのようなやりとりをしていると、マーケティングに対する自分なりの定義も浮かんでくるものです。私にとってのマーケティングは、次のように定義しています。

 マーケティングとは、「常に相手の立場に立って自らの行動を見つめ直す思考の体系」。組織行動に限らず個人の行動にもまた、マーケティングは内在すると考えられる。自らの行動を評価し判断を下す相手は誰かを理解することから、マーケティングは始まる。

 自らを取り巻いている環境の変化を如何に自分自身の問題として意識し、そのために今自分達は何をしなければいけないのかを常に見極めていくことが必要である。自分が相対している対象者(企業にとってみれば顧客=生活者)は、何をしてくれたならば喜んでくれるのだろうかという発想を忘れてはならない。

 マーケティングは、企業が市場を操作する為の手段体系ではなく、いつも相手の立場に立って自らの行動を見直し、その行動自身を律して行く思想体系とも考えられる。(第169話に続きます)

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