エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第93話)

第93話:日本経済を占う上で、2017年の着目すべきイベント

 2016年の日本経済は実質GDP成長率が3期連続でプラス成長になる等、表面上持ち直しの動きを見せた。しかし、プラス成長の主因は輸入の減少や個人消費の底入れであり、一方で海外経済の減速や円高等に伴う設備投資の停滞が成長率の足を引っ張ったため、自律的な回復とは言えない。

 こうした中、2016年秋以降になって漸く主要国の生産循環が上向き始めてきた。背景には政策効果等による中国経済の回復や原油価格の戻しがある。従って、世界的な生産循環の好転と期待インフレ率の上昇を加味すれば、2017年の日本経済は2016年よりやや好転することが見込まれる。

 しかし、トランプ大統領就任による政策の不確実性には注意が必要だ。後に指摘するが、金融市場の変動や通商政策の行方を通じた米国経済次第では、上振れ・下振れ双方のリスクがある。

 このため、2017年の着目すべきイベントは海外が中心となろう。最大の注目イベントは1月の米国新議会・新政権の誕生である。トランプ氏の経済政策は、大型の減税やインフラ投資等をはじめ、大型の財政政策を計画している。このため、トランプ政権の大型財政政策の規模やメニュー等を巡る議会との調整には注目だろう。

 一方でトランプ氏は、NAFTA再交渉やTPPからの撤退等、貿易障壁の導入や厳格な移民政策も主張している。こうした保護主義的な傾向の強さ等は、議会共和党と距離がある。ただ、通商政策は大統領権限を発揮しやすい分野であり、議会の制御が効きにくいという意味では、保護主義化のリスクは小さくない。従って、トランプ氏の過激な提案を議会がどこまで修正できるかも焦点となろう。

 日本経済への影響としては、大規模な財政支出の期待で円安株高が持続されれば日本経済を押し上げる一方で、NAFTA脱退や厳格な移民政策が実行されれば、世界貿易の下押しを通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性もあるので注意が必要である。

 欧州でも、2017年は議会選挙などの政治イベントが目白押しだ。いずれの国でもEUに懐疑的な政党の勢いが増しており、欧州政治不安への懸念が燻っている。3月には英国とEUの離脱協議開始やオランダの下院選挙があり、EU会議政党である自由党が第一党となる可能性がある。4~5月にかけてはフランスで大統領選挙があり、こちらもEU会議政党である国民戦線のルペン党首が決選投票に進む可能性が高い。更に8~10月にかけてはドイツ議会選挙があり、現与党が議席を減らす可能性が高い。更に、今月4日の国民投票で憲法改正案が否決されたイタリアでも政局が流動化している。

 従って、こうした米欧政治の不確実性の高まりが、賃上げ抑制や設備投資先送り等を通じて日本経済の下押し要因になりうることが懸念される。また、今後のトランプ氏の言動や欧州政局次第では市場が大きく変動するリスクもあることには注意が必要だろう。(第94話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。
60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
(ご購入はお近くの書店か本の表紙をクリックしてください。)