清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第150話)

第150話:生活コストは生活者の目線で考えることがビジネスの大前提です。

 日常の生活においてもビジネスにおいても、何事にもお金の動きがついて回ります。まさにコストのかかることばかりです。しかし、使うお金も納得できるものと、必ずしも納得できず何とも理不尽と思ってしまうものとがあります。

 自宅で使っていた家電製品のひとつに不具合がおきた時のこと。さしたることもなく、部品が古くなったので新しいものを購入しなければならなくなっただけでした。しかし、長く使ったものなので、交換したい部品があるかどうかが判然としません。昔であれば、近所の電器屋に行き製品番号を確認して貰い純正部品を頼んでおけば、1週間から10日ほどで店を経由して手許に届いたものです。しかし、最近は頼むべき電器屋がありません。

 しからばと、インターネットで製造メーカーのホームページを検索してみます。該当製品の写真が見つかり、更にクリック。やっと行き当たった先のコメントは「製造中止」の一行でした。止む無しと問合せすべき部署を探してみます。「お客様相談」のコーナーが記述され、0120の電話番号も書かれていました。早速掛けてみます。番号案内の声。なかなか人の肉声に出会うことが出来ません。やっと繋がって案内係の人に聞いてみる。「こちらは新製品に関する案内をしております。部品のお問合せは受け付けておりません」と、つれない答が返ってきました。であればどこに掛けるのか。教えてもくれません。再び、購入時のパンフレットに眼をやると、小さな数字が眼に入ってきました。電話番号です。そこに問い合わせる。やっとの思いでたどり着きました。

 部品は取り寄せてくれるとのこと。値段は400円。やれやれ助かった。送って貰えればと頼むと、「送ることは出来ません。取りに来て下さい」とのコメント。何たることと思いつつも、その場所を尋ねます。同じ区内ですが、バスで向かえば往復で420円程かかります。しかし、他に手立てはありません。部品到着の連絡を待つだけです。

 この間にかかった時間は約3時間。購入する部品代は400円。取りに行く交通費が420円。はてさて、部品一つが手許に届くのに、どれ程の生活コストを費やしたことになるのでしょうか。家電メーカーのマーケティング・スタッフは、先ずその制服を脱いで、生活者の目線で計算をして欲しいものです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」

今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第190話)

第190話:暖冬をもたらすエルニーニョ

 世界的に異常気象を招く恐れのあるエルニーニョ現象が発生している。気象庁が11月9日に発表したエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖の海面水温が高くなるエルニーニョ現象の影響等で暖冬となる見込みとされており、気象庁が11月21日に公表した向こう3か月の予報でも、全国的に気温が高くなりがちと予想している。

 エルニーニョ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度高くなる状況が1年から1年半続く現象である。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。

 近年では、2015夏から2016年春にかけて発生し、北海道を除く北日本で平年より10日-14日以上遅い初雪・初冠雪、沖縄では12月に長期的な高温を観測した。また12月は日本国内のみならず、国外の多くで北半球最大規模の大暖冬となった。

 気象庁の過去の事例からの分析では、エルニーニョ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが遅くなることで夏の気温は低めとなり、冬の気温は高めとなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

 実際、エルニーニョ現象の発生時期と我が国の景気局面には関係がある。というのも、過去のエルニーニョ現象発生時期と景気後退局面を図にまとめると、90 年代以降全期間で景気回復期だった割合は26.1%となる。しかし驚くべき事に、エルニーニョ発生期間に限れば46.7%の割合で景気後退局面に重なっており、エルニーニョ発生時の景気後退確率は1.8倍となることがわかる。

 特に、2015年のエルニーニョ発生局面では記録的な暖冬に舞われた。気象庁の発表によると、10-12月期の全国平均の気温は前年より+1.2℃程度高くなった。この暖冬の影響で2015 年10-12 月期の消費支出(家計調査)は前年比▲3.2%の減少に転じた。特に、被服履物が冬物衣料の売り上げが不調となったことから、同▲11.5%の落ち込みを記録した。また、交通関連を見ても、暖冬の影響は明確に表れた。同時期の交通・通信支出は暖冬の影響で冬のレジャーやタクシー利用が落ち込み、車関連でもスタッドレスタイヤ等の冬物商材が落ち込んだことで売り上げが低迷した。保険医療の支出動向も製薬関連が落ち込み、全体として低調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、暖冬の影響が及んだ。2015年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+0.3%と伸びが急速に鈍化し、家計調査同様に被服履物の支出額が大幅に減少した。また、冬のレジャーの低迷により娯楽・レジャー関連でも暖冬がブレーキとなった。

 以上より、エルニーニョ現象により今年の冬も暖冬となれば、各業界に影響が及ぶ可能性があるといえよう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


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PR 清野裕司 氏 新刊のご紹介

11月に出版されました10冊目の清野裕司先生のご本をご紹介させていただきます。

清野裕司著:「ビジネス心論」

マーケティングに出逢ってより何年もの時が流れ、知を重ねてきました。長き道々で、自分自身が思い描いたマーケティング・スタッフワークの問題意識を取り纏めて上梓する機会も有難く頂戴してきました。

今般は単著10冊目の機会です。学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へ歩み行く方々に伝承したいとの想いを書のタイトルにしました 。

マーケティング・センスアップを導く「ビジネス心論」(泉文堂):2,300円[税別]

今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
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文脈稚拙にして読みにくいこと多々あると存じますが、本書を手にして下さった方にとって、何がしかの「気づき」があればと願っております。私のオフィスからも発送できるように致しました[送料込:2,500円]。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第189話)

第189話:2018年4-6月期が景気の山となる可能性

 正確な景気の山谷は、政府の景気動向指数研究会によって、ヒストリカルDI(以下HDI)を計算して決められる。HDIはDIの一致指数として採用されている9系列の山谷を決定し、景気拡張期は+、後退期は-に変換して新たにDIを作り直すことにより求められる。そして、HDIが50%を切る直前の月が景気の転換点となる。

 そこで、今回の局面について簡便的にHDIを推定してみた。ただ、一致系列の4/9を占める鉱工業指数関連のデータが今月基準改定を控えており、データにかなりぶれが生じやすくなっている。このため、今回はブライ・ボッシャン法の移動平均の一つにも採用されている3か月移動平均値も用いて考慮した。

 一致指数を構成する9の系列を見ると、今後のデータ次第ではあるが、営業利益と有効求人倍率以外の7系列が2018年5月までに山をつけたと事後的に判断される可能性がある。このため、この7系列のうち5系列以上が2018年4-6月期にピークアウトしたと判断されれば、9系列中過半の5系列以上が山をつけることになる。こうなれば、日本経済はHDIが50を下回る可能性のある2018年4-6月期が景気の山となり、翌7-9月期から景気後退局面入りと機械的に判断される可能性がある。

 ただ、政府の公式な景気動向指数研究会で景気の山谷を設定するに当たっては、HDIの試算に加えて、①転換点を通過後、経済活動の拡大(収縮)が殆どの経済部門に波及・浸透しているか(波及度)、②経済活動の拡大(収縮)の程度(量的な変化)、③景気拡張(後退)の期間について検討する。併せて、念のため、参考指標の動向が整合的であるかどうかについても確認する。

 そこで、これらについても具体的に見てみると、波及度については依然として営業利益と有効求人倍率が拡大及び上昇を続けている。また量的な変化については、一致CIが2017年12月の直近ピークから2018年7月の直近ボトムまで▲2.4%程度の低下にとどまっている。また、参考指標の動向として日銀短観の業況判断DIを見ると、全規模全産業ベースで現状判断DIは2018年6月調査以降2期連続で低下しているが、まだ水準はプラスを維持している。

 したがって、これらの指標の動向を勘案すれば、機械的に判定したHDIが50%を下回っても、景気の波及度や量的な変化といった観点からとらえると、2014年4月~2016年2月までHDIが50%を割ったのに景気後退と認定されなかったこともあり、今回も景気後退局面入りと最終的に判断されるかは微妙な状況と判断できよう。ちなみに、今後の景気が更に悪化し、2018年4-6月期が景気の山となれば、今回の景気拡大局面は60か月台半ばとなり、戦後最長の景気回復73か月は更新できないことになる。(第190話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第188話)

第188話:景気後退瀬戸際の日本経済

 足元の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、10月の株価の下落速度がアベノミクス以降で見ると非常に大きかったことがある。

 実際2012年12月のアベノミクス始動以降の日経平均株価の月間下落率を大きい順に並べると、最大の下落幅を記録したのがイギリスの国民投票で予想外のEU離脱が決まった2016年6月であり、実にその次が2018年10月の株価下落である。つまり、2016年2月のチャイナショック第二弾、2015年8月のチャイナショック第一弾を上回る非常に大きな株価の調整が起こったことがわかる。

 こうした状況は、既に実体経済にも影響が出ている。事実、街角景気指数とされる景気ウォッチャー調査を見ると、現状判断DIが今年1月分から10か月連続で好不調の分かれ目となる50割れとなっている。また、経済成長率が鉱工業生産の変化率と関係が深いことから見れば、日本経済は2018年7-9月から2期連続でマイナス成長になる可能性も出てきた。実際、2018年10月分の生産予測指数の経産省試算値と同11月分の生産予測指数を基に、2018年10-12月期の前期比を機械的に計算すると、2018年7-9月期の前期比▲1.6%に続いて前期比▲0.2%と2期連続マイナスになると試算される。この結果に基づけば、既に7-9月期にマイナス成長となっている経済成長率が10-12月期もマイナスになる可能性もあり、非常に厳しい状況といえる。

 一般的に、景気がピークアウトしたことを簡便的に判断するには、経済成長率が2期連続でマイナスになったか、もしくは景気動向指数の一致CIや鉱工業生産がピークアウトしたか、等により判断される。こうした中、過去の景気回復局面と比較すると、このまま景気後退が認定されなければ、2018年12月には戦後最長の景気拡大期間となる73か月に並ぶことになる。

 一方、景気の現状を示す代表的な指標とされる一致CI・鉱工業生産指数とも昨年12月をピークに低下基調にあることからすると、今後もこの環境が続けば、景気後退時期に関する議論が盛り上がることになろう。なお、足元の景気動向に関しては、自然災害に伴う一時的な悪化と判断する向きもあるが、今後の景気動向を見通す上では、米国の金利上昇や保護主義の悪影響といった押し下げリスクが潜んでいることには注意が必要であろう。

 特に、米国の金利上昇に関しては、このままいけば来年前半中にもFFレートが中立金利を上回る可能性があり、米経済や新興国経済の足を引っ張るとみられる。また、米中貿易摩擦についても、年内に米中の歩み寄りがなければ、年明け以降は追加関税の幅が引き上げられることになっている。従って、国内の自然災害の影響も合わせて、今後の海外経済の動向次第で日本経済の景気後退局面入りの可能性が高まれば、来年10月に控える消費税率引き上げを先送りする理由になる可能性もあろう。消費増税の行方を見る上でも今後の景気動向からは目が離せない。(第189話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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