エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第240話)

第240話:経済活動を停滞させる暖冬

 今年度も昨年度に引き続き、今のところ暖冬となっている。気象庁が11月25日に公表した12月から2月までの3か月予報でも、1月にかけて気温は全国的に平年並みか高いと予想している。

 近年では、2015年に記録的な暖冬となり、北海道を除く北日本で平年より10日-14日以上遅い初雪・初冠雪、沖縄では12月に長期的な高温を観測した。また12月は日本国内のみならず、国外の多くで北半球最大規模の大暖冬となった。

 気象庁の発表によると、2015年10-12月期の全国平均の気温は前年より+1.2℃程度高くなった。この暖冬の影響で同時期の消費支出(家計調査)は前年比▲3.2%の減少に転じた。特に、被服履物が冬物衣料の売り上げが不調となったことから、同▲11.5%の落ち込みを記録した。また、交通関連を見ても、暖冬の影響は明確に表れた。同時期の交通・通信支出は暖冬の影響で冬のレジャーやタクシー利用が落ち込み、車関連でもスタッドレスタイヤ等の冬物商材が落ち込んだことで売り上げが低迷した。保険医療の支出動向も製薬関連が落ち込み、全体として低調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、暖冬の影響が及んだ。2015年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+0.3%と伸びが急速に鈍化し、家計調査同様に被服履物の支出額が大幅に減少した。また、冬のレジャーの低迷により娯楽・レジャー関連でも暖冬がブレーキとなった。

 以上より、今年の冬も暖冬が続けば、各業界に影響が及ぶ可能性がある。過去の経験によれば、暖冬で業績が左右される代表的な業界としては冬物衣料関連や百貨店関連がある。また、電力・ガス等のエネルギー関連のほか、製薬会社やドラッグストア等も過去の暖冬では業績が大きく左右されている。自動車や除雪関連といった業界も、暖冬の年には業績が不調になりがちとなる。鍋等、冬に好まれる食料品を提供する業界やスーパー、食品容器等の売り上げも減少しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの悪影響も目立つ。

 一方、屋外娯楽関連サービスや鉄道、外食に加え、コールド系の飲食料品の販売比率が高いコンビニなどには恩恵が及ぶ可能性がある。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第239話)

第239話:2020年のマーケット展望

 2020年のマーケットを展望するうえで最大の注目は、トランプ大統領と民主党候補者の経済政策である。トランプ大統領の経済政策の特徴を勘案すれば、更なる拡張的な財政政策への期待と保護主義的な通商政策の懸念が残る。

 一方、民主党候補者の一人であるバイデン前副大統領はトランプ政権の保護主義を批判しており、通商面で不透明感が少ないと見られている。また、企業に対する規制に対しても前向きでない点が、金融市場にとってポジティブだろう。しかし、同じ民主党候補者のウォーレン上院議員は、反自由貿易主義で企業や高所得者への増税、企業への規制強化を打ち出しているため、民主党候補者が誰になるのかも金融市場の大きな焦点となろう。

 日本経済への影響としては、ウォーレン上院議員が勝ち上がり、米国経済が大きく落ち込むことになれば、日本の経済成長率もかなり押し下げられることになるだろう。また、トランプ大統領が再選を果たしたとしても、トランプ政権の政策運営もリスクだろう。というのも、次の再選はないため、経済そっちのけで米中通商摩擦が激化することになれば、米国経済が景気後退に陥り、円高・株安を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性がある。

 2019年のマーケットは、夏ごろまで長期金利が低下トレンドにあったことに加えて、不安定な株式市場でリスクを取りにくい状況にあった。

 こうした中、FRBが2019年7~10月のFOMCで、立て続けに利下げに踏み切るとともに、ECBも9月に緩和にかじを切ったことも、株式・債券市場にポジティブに作用した。しかし、すでにFRBは10月に利下げを打ち止め、様子見の姿勢に転じている。このため、米中貿易協議の進展次第では、世界の株価や長期金利が更なる上昇を試す可能性もある。

 2020年の相場環境については、トランプ大統領が再選を目指すべく、経済重視に政策がシフトすることが予想される。また、日本でも東京五輪特需が期待されることに加えて、中国が2010年比でGDPを倍増する目標期限年でもある。このため、リスクオン気味に推移するとの見方が強まれば、世界の株式市場の押し上げ圧力となる可能性がある。

 ただし、年後半以降はこれらの重要インベント効果が剥落することが意識されるだろう。特に米国では、大統領次第で米中の覇権争いが再び激化することが懸念され、任期満了に近づく安倍首相が経済政策後回しで憲法改正に邁進するリスクも警戒される。年後半はリスクオフに伴う株価の下落が金利低下・円高を後押しする展開になるかもしれない。

 なお、リスクは金融市場のバブルである。特に米国経済は景気後退の前に必ず見られる逆イールド(長期金利が短期金利を上回る)の状況にあったため、予防措置的な利下げに動いた。しかし、98年のLTCMショック(米国大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻)後の逆イールド発生時の様にFRBが利下げをしすぎるようなことになれば、99年以降のITバブルのように、今回も短期的に金融市場でバブルが発生しその後崩壊する可能性もあり、その場合には日本経済への悪影響も無視できないことになろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第238話)

第238話:目まぐるしく変わる家計の負担状況とマーケット

 2020年の消費を占う上では、家計の負担増も大きなカギを握っている。今年10月に引き上げられた消費増税については、軽減税率の負担軽減を加味しても、2019年対比で3.5兆円の家計負担増となる。しかし一方で、年金生活者に対する支援給付金により2019年対比で0.4兆円の負担軽減となる。また、消費増税の使い道として増収分の一部が10月から幼児・保育無償化に充当されており、2020年4月から大学無償化へも充当されることになっている。このことから、子育て世帯を中心に2019年対比で1.2兆円の負担軽減になると計算される。

 ただし、消費増税に伴う負担軽減の時限措置の多くが2020年に期限を迎えることにも注意が必要だろう。例えば、プレミアム付き商品券と次世代住宅ポイントが3月までで終了する。また、キャッシュレスポイント還元も6月末に終了の予定である。さらに、自動車税環境性能割軽減も9月末で終了する。

 加えて、年明けから給与所得控除の見直しや、10月にたばこ増税といった負担増が予定されている。このため、こうした税制改革が家計に及ぼす影響を試算すると、トータルで2019年に比べて年間1.6兆円の負担増となる。

 なお、企業経営への影響としても、消費税の仕入税額計算などの特例の適用期限が2020年9月末となっている。このため、2019年同様に消費の現場では混乱が生じ、中小の小売業等では廃業が増加する可能性もあろう。

 こうした中、リスクは政治と金融市場だろう。安倍首相が自民党総裁として在任できる最長期限は2021年9月末だが、その翌月10月21日が衆議院議員任期満了となることからすると、自民党総裁選前の2020年中に解散総選挙を行う可能性もあろう。また、安倍政権は憲法改正と改正後の憲法施行の目標時期を2020年12月としている。

 このため、憲法改正案や解散総選挙の状況次第で安倍政権の政権基盤の揺らぎが生じることになれば、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は約6割以上を外国人投資家が占めており、安倍政権の政権基盤が盤石で政治的に安定的であるほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。マーケット環境が悪化すれば、日本経済も困難を強いられることになるだろう。

 また、11月に控える米国大統領選挙に対する不確実性も、日本経済に大きく影響を及ぼすだろう。前回の大統領選のように、世論調査の信頼性が低下すれば、市場関係者は積極的なポジションを取りにくくなり、株安等を通じて米国経済に悪影響を及ぼす可能性があろう。(第239話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第237話)

第237話:東京五輪で個人消費活性化

 2020年の景気を占う上では、2020年の国内最大イベントである東京五輪の開催が大きな鍵を握るだろう。既に建設特需は2019年中にピークアウトしている可能性が高いが、2019年のラグビーW杯でも開催期間中に内外の観光客の増加により、組織委員会が当初想定していた4,300億円を上回る経済効果が発生した可能性がある。東京五輪の開催時期は8月となるため、他の外部環境にもよるが、夏場にかけて東京五輪関連の消費特需が盛り上がる可能性が高い。

 特に、インバウンドの拡大に伴う需要効果は大きいと思われる。なぜなら、政府は2020年の訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の目標をそれぞれ4,000万人、8兆円としているからである。

 2019年の訪日外客数は日韓関係の悪化による韓国人観光客減少の影響等もあり、3,300万人台にとどまりそうだが、2020年は政府目標の4,000万人までは行かずとも、3,500万人は超えそうだ。これに訪日外国人一人当り消費額の約15万円を乗じれば、5兆円を大きく超える旅行消費額の出現の可能性がある。

 更に、東京五輪観戦のための国内旅行やテレビの買い替え等の特需が発生することが予想され、特に6月末にはキャッシュレスのポイント還元の期限を控えていることから、年前半に駆け込み需要が発生することが予想される。

 中でも、五輪特需としてテレビの買い替えサイクルに伴う需要効果も大きいと推察される。内閣府の消費動向調査(2019年3月)によれば、テレビの平均使用年数は9.7年となっている。

 テレビの販売は2019年10月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で少し盛り上がったが、更に前に遡ると、2009年度~2010年度にかけてはそれ以上に販売が盛り上がった。背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下で家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生しており、2020年はそこから10年を経過していることに加え、一昨年末から4K・8K放送が始まっていること等もあり、その時に販売された家電の買い替え需要が期待される。

 中でもテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んでから、買い替えサイクルの9年以上が経つため、買い替え需要はかなりあることが期待される。なお、2020年の東京五輪が実施されれば、日本人のレジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性が高いだろう。(第238話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第236話)

第236話:世界との経済的な結びつき

 日本と中国の実体経済の結びつきがどの程度あるのかを見るべく、日本の国別輸出入を見てみよう。日本の主要国別輸出のウェイトを見ると、最大の輸出相手先は中国で2割弱を占める。2番目がアメリカで、次いでASEAN、EU、そして韓国が7%となっている。

 しかし、2017年までは、日本の最大の輸出相手国はアメリカだった。この背景の一つには、アメリカがトランプ政権になって保護主義に傾斜したことがある。輸送用機器を中心に、一般機械や電気機器等、いわゆる加工組み立て品をアメリカに大量に輸出してきた。特に、アメリカに最も輸出している品目は自動車である。それが、トランプ大統領誕生以降、保護主義が深刻化し、生産拠点がアメリカにシフトしたことによって、日本のアメリカ向け輸出が減ってしまった。

 一方、中国は世界の工場といわれてきたが、近年は国内需要が拡大している。このため、日本で作られた工業部品が生産拠点の中国に輸出され、これまでのように中国で作られた完成品が欧米に輸出されるだけでなく、中国国内でも消費されるという傾向が強まっている。

このため、保護主義で中国から米国向けの輸出が減少しても、日本から中国向けの工業部品の輸出等は減らず、むしろ中国内需の拡大により中国向け輸出のウェイトが拡大したのである。

もう一つは、米中摩擦の影響もあろう。古紙等のように、追加関税の掛け合い等により中国が米国から日本に調達先を変えたことも一部影響している可能性がある。

 こうしたことが重なって、2018年には中国が日本の最大の輸出相手国に返り咲いた。なお、輸入で見ると、元々中国が最大相手先である。ただし、安い人件費を梃子に完成品を大量に生産し、それを日本に輸入する役割はASEANにシフトしており、むしろ東南アジアでは作れない高付加価値な電気機器等の比率が上がっている。

 このように、2018年は輸出入とも中国が最大のウェイトを占めた。以前は、日本から輸出された部品は中国で完成品となり、それがアメリカに輸出されるため、アメリカ経済の影響のほうが大きいといわれてきたが、今はそうではない。最初の推計で示したとおり、日本の製造業は中国の製造業より非製造業のほうに影響を受けやすくなっている。むしろ近年は経済規模が拡大した中国内需に左右される要素が大きくなっている。そう考えると、経済規模の大きさだけでは単純には測れず、日本経済と中国経済との結びつきは、実際の経済規模以上に大きいといえる。(第237話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
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