清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第22話)

第22話:「話題」を広げる「話材」をもつこと。

 毎朝のビジネスモードへの入口が、PCを開いてメールを読むシーンが当たり前になってきました。電話が主流の時代では、相手の就業時間後は連絡が取れず、朝一番での連絡が当たり前でした。しかし今は、夜中の時間であっても、とりあえず連絡文だけは送っておこうとするマインドが働くようです。送信された時間を見ると、このような時間まで仕事をしていたのかと、ため息が出そうな時間のメールもあります。そして、朝から「どうでもe-mail」の山。削除するのも手間な「どうでもいい」モノばかりです。

 メールに眼をやった後は、少しの時間新聞に眼をやります。ネットでも情報は入ってきますが、「受信」と言うくらい「受身」の感が強いもの。能動的に情報を獲得するマインドで新聞を読みます。まさに「見る」のではなく「読む」行為です。幾つか気になるテーマにぶつかる。そこで得たちょっとした記事が、今日の「話材」です。コラム的な囲み記事に書かれていた、新しい街のこと、店のこと、人のこと。どのひとつをとってみても、他人と会話をする際の材料になります。

 仕事の上でのコミュニケーションには、「主題」に絡むさまざまな話が出てきます。何を語り合うかの基本的な題材は「話題」。その主題を語り合うだけでは、お互いの理解が進まないときがあります。コミュニケーションの場では、世の動き、人の動きなどを糧にして、話自体が円滑に進むときがあります。雑談に聞こえてくることが、ミーティングに参加をしているメンバーの相互理解を進めるものです。情報発信者の独りよがりの話では、同席するメンバーからの共感は期待できません。

 「話材」を集めるには、受信のモードだけでは不十分です。積極的に情報源に働きかけることが必要です。新たに市場に投入した商品も、多くの人の「話材」になることを考えることが必要です。そこにマーケティングを展開する意味がありそうだ、と私は考えています。(第23話に続きます)

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株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
Eメール: maps@mapscom.co.jp
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第21話)

第21話:「こなす」ことよりも「取り組むこと」が求められています。

 どのような分野にも当てはまることですが、仕事には「こなす」ものと「取り組む」ものがあります。慣れ親しんだ仕事は、どうしても日々目の前に登場してくることを、素早く手際よく「こなそう」とする意識が働きます。「今日中に目の前にある300枚の伝票を処理しなければ」、「午前中に書類のコピーを100セット準備しなければ」・・・・といった仕事です。そこには、効率を求める意識が働いています。今まで正しいといわれてきたやり方を壊すことなく坦々と「こなす」ことが良い仕事であると評価されます。しかし、「そのやり方が正しい」ということが前提です。

 最近は、それだけでは済まなくなってきています。こなす力が高まったからといって、それ程の評価は得られなくなった場面があります。昨日まで正しいと思っていたやり方が、今日からは違うことがあります。今日の経営環境にあっては、新たな方法やものの見方が求められているのです。従来型の発想だけでは、成果が期待できないことも多くなってきました。そこで必要になるのが「取り組む」姿勢です。

 マニュアルがあるわけではなく、先人が教えてくれるものでもなく、自分自身が生み出すことを考えていかなければなりません。「こなす」ことは過去の結果を導き出すことが多くなります。それよりも、難問・奇問に「取り組む」姿勢が求められるのです。

 どのような職業にあっても、「こなす」術を高めても、なかなか顧客満足には繋がらないようです。何よりも顧客の抱える課題に、一緒になって「取り組む」姿勢を忘れてはならない、と私は考えています。(第22話に続きます)

清野先生のマーケティングの著書です。
清野先生のマーケティングの著書です。

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第20話)

第20話:買物行動には「Shopping」と「Getting」があります。

 日本人の日常生活に、スーパーマーケットが根付いて既に40年強の時が流れました。業種別に分化された小売店が、消費者の購買態度に合わせた業態店へと変貌し、まさに様々な買い物に合わせた空間が登場してきています。スーパー(Super)を超越したハイパー(Hyper)や、相対的な低価格を売りものにするディスカウンター、ある分野(カテゴリー)での徹底的な商品の幅広さと奥行きを見せるカテゴリーキラー等々、百花繚乱の感があります。

 買い物行動には、目的的なものと衝動的なものがあります。全てを計画的に自らの生活に取り込むべく買い揃えるのではなく、何となく買ってしまい、後になって後悔の念に駆られた体験は誰もが持っているのではないでしょうか。あるひとつのものを購入するために、いくつもの店を見たり情報を集めて比較検討することもあるでしょう。検討の結果、目的物を獲得するために店に走ることもあります。前者的な行動が、店を見て回る“Shopping”、後者の行動は、獲物を得る“Getting”にあたります。

 最近の店を見ていると、多くGetting指向の狩猟場的な店に出会うことが多くなってしまいました。他者との差別的優位性を、圧倒的な商品数の陳列や低価格に求め、選択自由度を奪い去ったような店。「たくさんあるから買え!」「安いから買え!」の声が、そこからは聞こえてきてしまいます。

 購買行動は、目的物を獲る行為でしょうか。本来、自らが判断し選択する行為です。差別性とは、選択者である消費者に、選べる楽しさを見せる「魅せ(店)」なのです。ゆったりと見て回るShoppingを忘れたGetting行動では、購入したものへの愛着が生まれるでしょうか。私は疑問です。(第21話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第19話)

第19話:「変えず・変わらず」にある正月で想い新たに。

 新しい年を迎えると、何事にも気分一新したくなるのが人の常なのかもしれません。しかし最近は、必ずしもそうではないケースに多く出逢います。「正月気分を感じない」といった声はよく聞くことですが、街の動き自身が日常とさして変わらぬ動きを見せているからだと思います。かつては、正月は多くの店がシャッターを閉め、少なくとも元旦には、家の物干しに洗濯物がぶら下がる光景は殆どありませんでした。日常の時の流れや作業を止めて、過ぎた年を省みて、合わせてこの年への想いを馳せるのが通常であったように思います。
 
 しかし今、街は通常の時の流れで動いているように見えます。店もいくつかは開いている。コンビニエンスストアは大晦日も元旦もなく、煌々と電気がついている。日常の食品が、何事も無いように平然と並んでいる。何も普段と違うことをしなくてもいいではないかと言われているようです。正月気分というのは普段とは違うと思うのですが、街の景観が一気に変わるわけではなく、日常の延長線上に正月があるようです。

 時の流れをたまに止めてみるのも良いのではないかと思います。今までとは違った世界が見えてくることがあるもの。通常の生活では殆ど縁のない神社仏閣に足を運ぶ。改めて、清新な気が宿る気分になります。お参りの帰りに、普段立ち寄る店が閉まったままの街並みを歩く。今まで見過ごしていた店の看板や案内が、ふと眼に留まることもあります。新しさの発見とは、相手が変わるのではなく、自分のモノの見方を変えることから始まることを知ります。

 今まで、脈々と続いていたことを無理に変えることはありません。多くの人が受容していたものを、一方的な考えで壊してしまう必要もないのです。重要なことは、見方を変えることです。すると、今までとは変わった世界が見えてくるもの。正月とは、自分自身のモノの見方や考え方の偏りを是正するための、日常とは異なる時の流れなのかもしれません。(第20話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第18話)

第18話:新商品の提案に必要なことは「慈しむ心」を持つことです。

 これ程同類の商品が必要なのかと思わせるほど、毎週のように新しい商品が紹介されます。どこに味の違いがあるのかと、一度全てを飲み比べてみようかと思ってしまう「缶コーヒー」や「お茶」などの飲料の氾濫。基本的な機能は、それ程大きく変わったとも思えないが、大きさや色を含めた見た目の変化は感じる「スマホ・携帯」数々。

 知らされる情報の多さと速さが、地球規模で巡っている今、確かに時の流れも早く感じます。知らないことも、インターネットで検索すれば瞬時にガイドして貰え、じっくりと考えるいとまを与えて貰えないほどです。逡巡していうるうちに、次の場面へと自分の周りの景色が変換し、自分自身が時代に乗り遅れているのではないかと、要らぬ心配をする人も出てきてしまいます。周りの景観が異なったものになったからといって、決して時代に乗り遅れているわけではありません。新しく登場してくる商品を、自ら取り込むことをしないからといって、時代遅れでもないのです。自分なりの評価基準を持っているかどうかが問われます。

 長く身につけているもの、以前より繰り返し使用している商品。変わらぬサービスを提供してくれるなじみの店。日本の文化の底流には、身の回りのものを「慈しむ:いつくしむ」感性がありました。かわいがって大事にする感性です。新しいモノやコトを否定しているのではありません。無為に古くからあるものを捨て去るような感覚の貧しさを憂えています。古いものを「愛おしむ:いとおしむ」愛着を感じて大切にする思いは、モノに対してだけではなく、自分の周りの多くの人に対しても働く愛情です。

 新商品を開発するための絶えざる革新は、マーケティングの主要テーマです。しかしそれは、従来のものの否定から始まるのではなく、今を真摯に見つめて、未来への予兆を汲み取る崇高な行為であり、多くの人に慈しんで貰えるものの提案でもあるのです。(第19話に続きます)

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