清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第26話)

第26話:食べ物への「感動」は、出会いの大切さを教えてくれます。

 人それぞれに、思い出の中の食べ物があるのではないでしょうか。家庭内での食事の思い出もあります。私にとっては、母がつくってくれた「巻き寿司」「ばら寿司」「いなり寿司」の味が、郷愁の世界へと誘ってくれます。それ以上に外食での思い出が、今も鮮明に浮かんでくることがあります。

 5歳の頃、親の転勤で上京した折、初めて旅館で「卵焼き」を食べたこと。鶏卵自体が高級な食材で、めったに食卓に乗るような時代ではなかったからでしょう。その甘さと共に、味わい深い風味が体中を駆け巡っていった感動が残っています。今も出張時の朝食に「卵焼き」を食べている自分がいます。同じく卵にかかわるものですが「オムライス」があります。浅草に現在もあるセキネという食堂で、食べさせて貰ったもの。ふんわりした焼卵で、程よく炒められたチキンライスが包まれている。しかもその上にケチャップが彩りを添えている。味わいと共に、はじめて見る美しさは、7歳の自分にとって衝撃でした。「カツ丼」の甘辛いしょうゆ味に出会ったのは、その後しばらくたった時。「牡蠣フライ」は、小学4年生のとき。「天津麺」は、小学6年生。そして、中学生の時に初めてカウンターの前に座って寿司を食する機会を得ました。

 でも最近は、ついぞ感動の食に出会うことがなくなってしまいました。自分自身の食体験が深まったからでしょうか。いや、それ以上に、余りにも準備され尽くした食が、日常の食卓に出回ってしまっているからではないかと思います。人の感性を高める教育の一つに「食育」があると言われます。今の小学生たちは、20年後、30年後にどのような「感動」を食にもって、語っているのだろうかと思います。(第27話に続きます)

kiyonosense2015

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第4話)

第4話:四半世紀に一度の好環境

 今後の物価の伸びが鈍化する理由の一つに、原油価格の下落がある。日本のような原油の大量輸入国は、円建ての原油価格が下落すると、所得の海外流出が急激に減ることになる。仮に年末にかけて原油価格が60~70ドル/バレルまで戻ったとしても、今年は所得の海外流出が年間9~10兆円抑制されることになり、家計への影響を計測するだけでも消費税率を1%程度引き下げるのと同等の効果となる。

 さらに春先以降は、今年度の補正予算3.5兆円の効果が出てくることが期待される。昨年度の補正予算ではかなりの部分が公共事業に回され、家計向けの減税は6000億円ほどにとどまったが、今回はアベノミクスの副作用で割を食っている家計や中小企業、地方に半分程度割り当てられることになっている。

 更に、4月以降は実質賃金がプラスになることで個人消費も力強さを増すことが予想されるため、今年の景気は年半ば頃から勢いを増すことになりそうである。

 以前も指摘したことがあるが、2014年は1986年と状況が非常によく似ている。1986年の日本は、前年のプラザ合意によって円高不況に陥った。そこで、それまでの輸出主導ではなく内需主導の経済成長を目指すべきだということで、金融・財政政策が積極的に打ち出された。これに対し、今回も消費税率アップによる景気後退を受け、さらなる引き上げを先送りして経済対策を打ち出し、日銀もサプライズ緩和といった形で金融・財政政策を積極的に行っている。

 更に似ているのが、原油価格の暴落とその背景である。86年当時は原子力発電の台頭により産油国が意図的に増産して価格を下げたといわれているが、今回もシェールオイルの台頭により産油国がシェアを確保するために価格を下げているといわれている。シェア確保が目的であれば、1980年代後半がそうだったように当面原油価格が元の水準に戻ることはないだろう。

 また、自民党が選挙で大勝したという点も同じである。このような経済の好環境を受けて、80年代後半にはバブルが起こった。しかし、今回は土地神話がなく人口オーナス期に転じているため、バブルになる可能性は低いと考えている。

 このように、少なくとも国内の経済面でいえば四半世紀ぶりの好環境が整っているといえる。一方で2017年4月に消費税率の引き上げが控えていることからすれば、こうした好環境は来年頃までは続くと期待される。その間に、岩盤規制の打破や人口対策を中心とした成長戦略、痛みを伴う社会保障の効率化等をいかに進められるかが、アベノミクスの命運を握っていると言えよう。(第5話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
第一生命経済研究所 
主席エコノミスト 永濱 利廣

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第25話)

第25話:人がもつ「感動尺度」が生活センスを高めます。

 何を食べても、どこに行っても余り驚きの声を発しない人がいます。最近の10代の若者と話をしていると、特にそのようなことを感じてしまうことがあります。幼い時から、生活環境の中に現在の暮らしを満たすモノが豊富にある中で育ったからでしょうか。新しい出会いに感動をしない。新しい店が新しいメニューや商品を始めたからといって、その内容がかなり前から情報誌に掲載され、実体験のないままに知識だけが吹き込まれています。

 まだ見ぬもの、知らぬものを、特段に見たり知ったりするための努力をしようとはしない。何らかの商品や店に対する感想を求めても「別に~」のコメントがかえってきます。不感症的な価値観が蔓延しているのでしょうか。

 かといって、自分にとって遠くの存在でありながらも、何となく情報先行でテレビや雑誌がはやし立てると、直ぐに群がる行動も見られます。いつの頃からか、日本人の多くに「感動」という言葉が、その生活辞書から消えてしまったような気がします。

 団塊世代に属する私などにとっては、初めて口にしたメニューが、いつどこで、どのようなシチュエーションだったのかも鮮明に覚えているもの。ある面では思い出の中にある多くの感動が、その後の暮らしの判断尺度になっているような気がします。

 歳を重ねたから、ということだけがその理由とも思えません。欠乏の中で育ったから、というのも一理あるでしょう。しかし、どうもそのようなモノの乏しい中での関与体験でのみ、感性が高まったわけではなさそうです。個人的なものを見る、感じる鮮度感覚のように思います。

 「なんでだろ~」の声を良く耳にします。「何故」の質問を発して、自らの体験で感動する。その機会と感度が薄れた社会は、どことなく感度の鈍い、無感動な驚きに乏しい社会に思われます。(第26話に続きます)

kiyonosense2015

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第3話)

第3話:実質賃金プラスへの期待

 個人消費については消費税率アップのダメージがまだ残っているが、家計に絡むデータを調べると、家計は確実に潤っていることが確認できる。アベノミクスが始まってからこの2年で、家計の金融資産は140兆円以上も増えている。中でも株価は2年で2倍になり、家計の株・出資金も50兆円以上増えている。一方で、現預金も30兆円以上増えているが、これは株で儲けたお金のほか、この2年で働く人が100万人以上増えたことが大きな要因となっている。非正規労働者しか増えていないという批判もあるが、マクロ経済全体では正規であれ非正規であれ、今まで給料を全くもらっていなかった100万人以上の人が給料をもらうようになったわけであるから、明らかにプラスである。

 更に言えば、実際に増えた雇用はさらにその人数を上回る可能性が高い。なぜなら、今の日本では15歳以上の人口は減っているため、労働参加率が変わらなければ雇用は減って当たり前だったはずである。それがネットで100万人以上増えているということからすれば、仮に労働参加率が変わらなかった場合と仮定すると、この2年で実質150万人以上雇用が増えていることになる。これはまさにアベノミクスのプロビジネス的な政策の効果であると言っても過言ではない。

 また、正社員についても増加の兆しが見えている。正社員の雇用に関してはどうしても時間を要するので、直近の7-9月の雇用者数でようやく前年比10万人増という状況だが、このまま景気回復が持続すれば今年は正社員の数が更に増えることが期待されるため、家計の収入も更なる増加が期待できる。

 今年の日本経済を予測する上で最大のポイントは、春闘でどれだけ賃上げが実現できるかであろう。報道を見る限り、組合は昨年以上の要求をしており、経営者側からも前向きな発言が相次いでいるため、最低でも昨年以上の賃上げが達成され、今年は実質賃金がプラスになると期待される。

 実質賃金は18か月連続でマイナスであることから、アベノミクスの効果が出ていないと批判する向きもあるが、今年度から1人当たり賃金は15年ぶりの勢いで増え始めている。正に近年稀に見る状況なのだが、それ以上に物価が上昇したために個人消費が落ちこみ、実質賃金もマイナスになってしまったのである。ただし、一時は4%を超えていた物価上昇率のうち2%分は消費増税分であるため、消費増税がなければ実質の雇用者報酬は昨年6月からプラスになっていたはずである。

 ただ、消費増税の影響を除いた物価の伸びは足元で鈍化してきているため、今年前半には一時的に物価がマイナスになる可能性がある。その一方で、1人当たり名目賃金は最低でも昨年程度は上がることが期待されるため、実質賃金も今年4月からは前年比でプラスに転じると予想される。(第4話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
第一生命経済研究所 
主席エコノミスト 永濱 利廣

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第24話)

第24話:マーケティング能力の一つは「語彙」豊富になること。

 文字に限らず、画像のやり取りが手元でできるようになりました。確かに、自分の今の気分を伝えようとすれば、言葉で説明するよりも、表情や態度を見せた方が相手に素直に伝達できることもあります。その状況を文章に表現しようと思えば、何枚にもわたるレポートが必要でしょう。街並みや景観,その地における天候を知るのではなく、実感度を高めるのはやはり視覚情報の方が勝っていると考えられます。

 ただ、マーケティングを考えるときに忘れてならないことは、ある現象や事実をどのように読み解くかという発想です。同じことに出会ったとしても解釈はさまざまあります。異なる環境を見るのは、「個となる」事実を読むことに通じるもの。「見た」結果を「読む」こと、それは言語での表現の必要性を言っています。いかに言い表すかということです。文学的表現の必要性を問うているのではありません。さまざまな表現方法を問うているのです。

 マーケティング・スタッフに表現力が問われるのも、顧客の行動や店舗の動きを、動画像に限らず自らの言葉で他者と共有することで、次なる戦略展開糸口を発見する必要があるからです。しかし、これが難しい。言語を持たずに感覚論が横行する風潮があるからです。「~って言うか・・・○○的には・・・」の自己解釈。「マジっすか?」の疑問詞。何でも「超」のつく評価語。歳を重ねたので、このような表現についていけない、というのではなく、市場の事実に関して、共通の認識をもつことが困難になってしまうことへの危惧があります。

 ここ数年、日本語に関する書籍も多く出版されています。その意味するところは、学習する「国語」ではなく、この国にある文化や自らの意志を伝える根本にある「語彙」豊富な日本語への注目です。ある現象を、どのように読み解くのか。自らの心の奥底にある思いを、どう説明するのか。表出を言葉ですることの意味を、マーケティング・スタッフは常に考え、表現力を高めることを忘れずにいたいもの、と私は考えています。(第25話に続きます)

マーケティング・スタッフを志向する若者に清野先生が贈る言葉は、年々積み重なってきています。(画面をクリックすると拡大します)
マーケティング・スタッフを志向する若者に清野先生が贈る言葉は、年々積み重なってきています。(画面をクリックすると拡大します)

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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