清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第3話)

第3話:「顧客」は誰ですか

 さまざまなモノや情報がお客様と出会う場や装置が「市場」。その変化を常に気にした経営をすることがマーケティングとお話ししました。では、お客様=顧客とはどのような意味を持ったものでしょうか。

 経営をする際には、顧客開発,顧客管理,顧客主導,顧客志向という言葉や「顧客は企業の資産である」と言われるように、「顧客」という言葉は普段からよく使っています。

 企業にとって「顧客」とは誰のことを指しているのでしょうか。そして、どこにいるのでしょうか。そもそも「顧客」というのは、どんな意味を持っているのでしょうか。何ごとも基本を知っておくことが大切です。

 「顧客」は「顧(かえりみる)」と「客」から出来た熟語です。更にこれは、「雇」と「頁」/「ウ冠」と「各」に分化できます。そして、「雇」=古い/「頁」=頭・顔/「ウ冠」=家・店/「各」=来る、の意味を持っているのです。個別の要素を続けて読んでみると、「古顔が店に来る」になります。

 馴染みの人の来店や来宅ということが元々の意味です。一度限りの顔見せではなく、一度の関係(来店)が長く続いて、また顔を見せてくれる人が「顧客」なのです。

 昨今マーケティングでは、顧客との関係づくりが重要と言われます。顧客をいかに維持するのかが経営の主題がおかれるのも、店や企業と顧客との長期的友好関係の形成の大切さを言っていることです。「顧客」は一度として「開発」されたり「管理」されたりしたいと考えたことはないのです。回を重ねて利用しようと考えるのは、そこに何か魅力があって魅かれるからに違いありません。

 顧客との関係づくりとは、店や企業サイドが、何度となく利用していただける魅力を提供しつづけ、馴染みの顔を理解することに始まるということは、もともとの「顧客」の意味をたどれば言うまでもないことなのです。(第4話に続きます)

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

株式会社マップス
代表取締役 清野 裕司

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株式会社マップスURL: http://www.mapscom.co.jp

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第2話)

第2話:「市場:Market」の意味を知ること

 マーケティングは、市場(Market)の現在進行している(ing)変化状況を読み、その動きを自分自身の経営の姿勢や行動に取り込むことを基本の思想としています。ところで、ここで言う「市場」とは何を指しているのでしょうか。その意味を知ることが、マーケティングを理解するスタートにもなります。音としては、「いちば」と「しじょう」の二つがあります。

 先ずは「いちば」。まさに「場」のこと。モノや人が、そして情報や金が出逢い交換される「場所」であり「装置」のことです。その昔、10日毎や20日毎に開催された交換の場所は、今も地名に残る十日市や廿日市です。また、装置としては、現在のインターネット環境の申し子のような「楽天市場(いちば)」をご存知でしょう。

 さらに「しじょう」という場合はどうでしょうか。高齢者市場、女性市場という言い方や自動車市場、パソコン市場といった言い方があります。つまり、交換対象者であり、交換対象物を指すときにも「市場(しじょう)」という言葉が使われます。交換された結果(需要の規模)を示すこともあります。「○○市場は100億円」といった表現です。

 こうして見てみると「市場(Market)」という言葉も、「交換の場や装置/交換の対象/交換の結果」の意味をもったものであることがわかるのではないでしょうか。マーケティング思考では、これらの要素の変化をどのように読み解いたらいいのかが問われるのです。

 従来は手売りが当たり前だった飲み物を、今は自動販売機という装置でも購入できます。まだ行ったこともない国の名産を、インターネットという仕組みを使って購入できます。かつて若者市場にいた人も、年とともに高齢者市場に組み込まれます。モノの持つ意味も変わると、交換の結果の需要量も変化します。まさに変化は各「市場」現場で起きるのです。

その変化の中に身を置きながら、常に今の「市場」状況を考えること。自らも変化し続けなければ、市場の今を読むことは出来ないのです。まさに、今を生き続けることが「マーケティングすること」でもあるのです。(第3話に続きます)

kiyono

株式会社マップス
代表取締役清野裕司

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第1話)

株式会社マップス代表取締役清野先生に寄稿していただき「マーケティング・コラム/風を聴く」をスタートました。先生は「寺子屋式 手習いマーケティング」など多くのマーケティング書を出されているマーケティングプランナーです。

第1話:マーケティングは「市場」変化を感じるガイド

 21世紀になって既に10年以上の時が積み重なりました。世の中にはさまざまな変化が起きています。変化する状況に合わせて生きていくために、経営にも新たな思考力が求められています。過去のやり方や考え方を頑強に守ろうとするだけではなく、現実を直視して、変化適応型の柔軟な経営の仕組みをつくることです。

 会社は生き物です。生き物は自分が生きていく環境に合わせて生命を維持し進化します。変化にうまく乗り切れずに進化を止めてしまうことを、最近は進化を止めた島の名前を使って「ガラパゴス」などとも言われます。自分の周りが変わっているのに、自分は変わらない。それでは時代に取り残された存在になってしまいます。その時々に起きている変化が、いつの間にか社会の当たり前の風景になる時代です。

 そのような変化に適応した経営を実践するためのガイドが「マーケティング」の考え方です。マーケティングは「Marketing」。分解すれば「市場(Market)=交換の場」の「現在進行形(ing)=変化」に、交換の主体者として積極的に関わっていこうとする経営のことです。

 市場には息遣いがあります。財や情報を提供し、受けいれて貰おうとする送り手(主に企業)の熱い息吹。多様なモノを取捨選択して自分らしいものを取り込もうとする受け手(お客さま)の熱い想い。その両者の出会う「場」こそが「市場」です。そこには、両者がぶつかり合って、風が吹いていると見ることが出来るでしょう。時代の息吹です。

 今、市場にはどのような風が吹いて動いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、経営の舵取りの道標が浮かんでくるかもしれません。

 マーケティング・コラム「風を聴く」は、今の時代の息吹や息遣いを、マーケティング思考で聞きとるために、その基本的な考え方をとりまとめたものです。読者の皆様と一緒に、今の時代の風の音色を聞き取りたいと思います。(次回第2話に続きます)

kiyono

清野裕司 (せいの ゆうじ)略歴

1947年  香川県高松市生まれ。5歳から東京
1970年  慶應義塾大学 商学部 卒業 マーケティングを専攻
同  年  キョーリン製薬㈱入社(マーケティング室)
1973年  三井物産㈱食品部食糧総括室 入社 外食産業のマーケティングを担当
1976年  十和㈱(現㈱アスティ)入社 マーケティング部,販売促進部
1981年  ㈱マップス創設
現在、同社の代表取締役 業種業界を超えたマーケティング・プランナーとして、
2,500種類のプロジェクト実績。

books
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著(訳)書
「寺子屋式 手習いマーケティング  201312月/泉文堂
「市場を拓くマーケティング・エクササイズ」  2008年10月/生産性出版
「スーツを脱いだマーケティング」  2006年12月/泉文堂
「主観マーケティング」  2001年4月/泉文堂
「マーケティング発想力のつく本」  1994年9月/泉文堂
「知的腕力によるマーケティング・プレゼンテーション」  1991年1月/泉文堂
「究極のCI戦略」  1988年5月/泉文堂
「ビジネス参謀のパソコン活用法」  1981年11月/泉文堂
「現代マーケティング論」 (共訳)   1973年12月/有斐閣