清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第146話)

第146話:同類の中の「差異性」とは何かを考えてしまいます。

 小学生の教科書にも掲載された「世界に一つだけの花」の歌詞に、“No.1にならなくてもいい。もともと特別なOnly one。♪”の一節があります。相対的な価値観よりも、絶対的な価値観。無益な競争よりも独自の生き方をつくりだすという、現在の「ものを見る選択尺度」を言っているようにも聞こえます。

 かつてよりマーケティングは、競争環境の中で自らの「差別的優位性」をいかにつくり出すかの重要性を言ってきました。顧客の選択基準に合致しなければ、たとえ店頭に多く商品を並べても、類似商品から一つに絞られることは至難です。コンビニエンスストアに行っても、お茶や菓子類にいたっては、どれも皆同じ商品に見えて特段の違いを感じることがありません。一つのことが受け容れられると知るや、こぞって横並びの商品が誕生してきます。チョコレートのポリフェノール効果が注目されると、一気にチョコレートの種類が増え、茶カテキンが注目されると、健康茶が横並びに。「差異」はどこにあるのかと迷ってしまいます。

 私のオフィスは麹町駅の側にあります。地域内には多くのオフィスが立ち並び、その影響でしょうか、ビジネスパーソンを対象にしたコーヒーショップが林立しています。徒歩1分圏内に「ドトールコーヒーショップ」「カフェベローチェ」。2分圏内に「スターバックス」「エクセルシオールカフェ」「カフェ・プロント」「タリーズ」。「クロワッサンカフェ」も徒歩圏内です。それぞれの店舗が、我こそが王道の「コーヒーショップ」であるかのごとき存在感を示そうとしています。

 林立するコーヒーショップの差別的優位性はどこにあるのでしょうか。「空間的ゆとり」「人的サービス」「メニューの豊富さ」「立地(便宜性)の良さ」「商品提供の仕方」「価格の適正さ」「支払いの容易さ」・・・思えば多岐にわたります。しかし、外延的なものにいかなる差をもってしても、コーヒーの味という原点の差は動かしようがありません。であれば、「差異性」とは何をもって言うべきでしょうか。どうやら各店(社)が発信する差異は、顧客の味覚の嗜好的優位性にあるようにも見えてきてしまいます。(第147話に続く)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第178話)

第178話:携帯料金4割引き下げの負担軽減額は消費増税負担額を上回る

 今回の菅官房長官の携帯料金4割引き下げ発言については、2019年10月の消費増税を前に家計の負担を減らすことができる分野として携帯料金がターゲットになったと指摘する向きもある。

 そこで、次回の消費増税の負担額を試算すると、前回の四分の一程度になると試算される。参考のために97年度と2014年度、それから次回2019年10月に2%ポイント引き上げた場合のそれぞれについてマクロの負担額を見ると、97年度は消費税率の引上げ幅自体は2%で、負担増は5兆円程度と限定的であった。しかし、特別減税の廃止や年金医療保険改革等の負担が重なり、結果的には8兆円以上の大きな負担となった。更に、景気対策がない中で同年6月にアジア通貨危機が起こり、同年11月に金融システム不安が生じたため、景気は腰折れをしてしまった。

 確かに、97年度は消費増税以外の負担増の要因もあったため、消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない。しかし、前回の消費税率3%引き上げ時は8兆円以上の負担増になり、家計にも相当大きな負担がのしかかった。

 次回の消費増税の負担額は、日銀の試算によれば、2019 年10月から軽減税率を導入せずに消費税率が10%に引き上げられると、最終的に税収が5.6 兆円増えることになる。これは、一方で酒類・外食を除く食料を軽減税率の対象品目とした場合の必要な財源が1兆円、教育無償化に伴う必要な財源が1.4兆円となることなどから、家計全体では2.2兆円程度の負担にとどまることを示唆している。つまり、単純に携帯電話の料金が4割下がれば、次回の消費税率引き上げの負担を相殺して余りある負担軽減と試算される。

 また、2017年の総務省『家計調査』を用いて、具体的に次回消費税率引き上げが平均的家計に及ぼす負担額を試算すれば、年間約4.4万円の負担増となる。そこで、世帯主の年齢階層別の消費増税負担増と携帯4割値下げの軽減額を比較すると、世帯主の年齢が20~50代の二人以上世帯では携帯料金の負担軽減額が消費税率負担額を上回るも、世帯主が60 代以上の二人以上世帯になると、消費増税の負担額が携帯料金の負担軽減額を上回る。同様に、世帯の年収階層別では、年収が350万円未満と1250 万円以上の二人以上世帯では消費増税負担額が携帯料金の4割負担軽減額を上回るも、年収350万円以上1250万円未満の二人以上世帯ではその携帯料金の4割の負担軽減額が消費増税負担額を上回ることになる。

 しかし、一律的な値下げとなると、家計部門への直接的な恩恵はあるが、通信会社の売り上げは値下げ分減少することが想定されるので、その分の悪影響も考慮しなければならない。

 携帯料金引き下げ策は、家計支援策として議論を進めるというよりも、移動通信事業者の競争環境の整備を通じて、いかに料金引き下げを図るかという観点で議論を進めるべきものと考えられる。(第179話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第177話)

第177話:携帯料金4割引き下げで国民一人当たり2万円以上の負担減

 8月21日に札幌市内で開かれた講演で、菅官房長官が日本の大手携帯事業者には競争が働いていないと指摘し、携帯電話の料金は今より4割程度下げる余地があると述べた。実際、総務省の統計によれば、携帯通信料の価格は低下傾向にあるものの、携帯通信料が家計支出に占める割合が拡大していることがわかる。

 まず、移動通信端末は生活必需性が高まっているため、これが引き下げられれば低所得世帯により恩恵が及ぶ可能性がある。また一方で、移動通信端末は若年層の使用頻度が高いことが予想されるため、相対的に若年層の負担軽減効果が高い可能性がある。

 実際、総務省の家計調査を用いて、二人以上の世帯主の年齢階層別と年収階層別に分け、2017年の消費支出に占める移動通信通話使用料の割合を算出した。結果は当然のことながら、世帯主の年齢階層が若いほど移動電話通信料の割合が高く、料金引き下げの恩恵を受けやすいということになる。また、年収階層別でみると、18歳未満人員割合の比較的高い年収450~1000万円で移動通信通話料金割合が平均を上回る。なお、地域別に比較すると、特に地域の違いによって大きな差は見受けられなかった。

 従って、移動通信通話料金が引き下げられれば、全国まんべんなく恩恵があり、中でも若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなる可能性が高い。

 また、移動通信通話引き下げは、移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ないという特徴もある。実際に、世帯主の年齢階層別の移動通信通話料金比率をみると、70代の利用率は20代の三分の一以下となり、おそらく年収階層別の年収300万円未満の利用率が低くなっているのも、労働市場から退出して年金収入を頼りに生活している高齢層世帯が含まれていることが影響しているものと推察される。

 一方、2017年度の家計消費状況調査を用いた試算では、移動通信端末を使用していない人も含めると、一人当たり年平均52,371円を移動通信通話料に費やしていることになる。これは、仮に移動通信通話料金が4割安くなると国民一人当たり20,948円の負担軽減につながるため、家計全体では2.6兆円以上の負担軽減になることを示唆している。

 また、2017年平均の総務省家計調査を用いて世帯主の年齢階層別の負担軽減額を算出すると、世帯主の年齢が50代以下の世帯では6万円/年を上回るも、世帯主が60代以降になるとその額が5万円を大きく下回る。同様に、世帯主の年収階層別では、年収が650万円以上の世帯では6万円/年を上回るものの、年収200万円未満ではその額が2万円を下回ることになる。

 以上より、携帯料金引き下げの影響は、各世帯の世代別や年収別で大きく異なるといえよう。(第178話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第176話)

第176話:経済が正常化する前に日銀が金融緩和の出口に向かう可能性

 先進国間での経済正常化には時間差がある。IMFが公表する先進国のGDPギャップの見通しによれば、米国は既に2017年に需給ギャップが解消されているが、ユーロ圏は2018年に解消することになっている。一方、日本は2020年代半ばに遅れることに鑑みれば、日本は今後も相対的に低インフレ低金利の長期化をイメージさせるものとなっている。

 しかし、この解釈には注意が必要だ。なぜなら、IMFのGDPギャップがプラスになるまで金融政策の出口に向かわないわけではないからである。したがって、このようにGDPギャップが推移しても、日本の金融政策も財政政策も制約されるとは限らないだろう。

 つまり、米国のようにIMFのGDPギャップがマイナスの局面であっても金融引き締め的政策を取る可能性が十分にあると解釈することが出来る。実際、日本のマネタリーベースの増加ペースはすでに2017年から縮小方向にある。

 また海外を見ても、必ずしもインフレ目標を達成するまで緩和を続けているわけではない。米国がインフレ目標2%に到達する前にテーパリングを進めた時期は2014年1月~10月であり、2015年12月から利上げを実施している。

 その間のPCEコアデフレーターのインフレ率は一度たりとも2%に到達しておらず、インフレ目標に対して柔軟に対応している。つまり、日銀も円安の進行などをきっかけに金融政策の正常化に向けた動きが強まる可能性が十分にある。

 金融・債務危機への対応と再発防止が進展したことによって、欧米は経済政策の正常化が進んでいる。このため、日本経済も欧米経済の正常化の動きを反映するだろう。

 更に、バブル崩壊後の長期停滞に陥っていた日本も、労働力人口の減少圧力が弱まる中で、デフレ均衡からの離陸が進みやすい環境にある。加えて2020年に向けて、東京五輪特需の相乗効果や海外経済の回復が期待される。

 この点を合わせて考えると、バブル崩壊によって低下した日本の潜在成長率はバブル崩壊前の水準には至らないが、2020年に向けて徐々に高まっていく見通しとなる。

 2020年代前半もデフレ圧力は完全に払拭されないものの、人口減少圧力緩和と海外経済に支えられて平均1%程度の経済成長を維持することが可能となるだろう。具体的には、アジアを中心としたインフラ需要や第四次産業革命、経済連携の進展などの押し上げ効果を期待することができるだろう。これは2020年代以降の経済成長率が人口動態の悪化ほどは減速しないことを意味する。

 しかし、一般的に各国の経済成長率は同国の人口動態に大きく左右される。今後の日本経済も人口動態に従うのであれば、日本の経済成長率については2020年代後半に人口減少圧力の拡大に下押しされて経済成長率が鈍化する可能性がある。そのため、将来を見据えた予防的な政策運営が求められるといえよう。(第177話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第145話)

第145話:音から広がる「想像力」も創造のきっかけになります。

 3ヶ月を一つの区切りにして、テレビのドラマが幾つか変わっていきます。自分自身はそれ程テレビのドラマは見ることもなく、いつの頃からか、テレビを見るのはニュース番組が中心で、それ以外を視聴することのない生活習慣が身についてしまいました。仕事柄もありますがCMは良く見るのですが、他の番組となると目を凝らして見入ることがありません。テレビから流れる喧騒を離れて、活字に眼をやっています。しかしオフィスでは、映像を見ることよりもFM放送から流れる音楽やニュースが自然と耳に入ってきます。

 その昔、昭和30年代の頃、一日の始まりは映像ではなく「音」であったように思います。牛乳ビンがぶつかる音、母がガタガタと立て付けの悪くなった雨戸を開ける音。そして、ラジオから流れる音楽や時報を聴きながら朝の身支度をしていたように記憶しています。帰宅して夕刻になれば、子ども向けのラジオドラマが始まりました。女性の銭湯が、がらがらになったという「君の名は」というドラマも、ラジオの番組です。そこには映像の情報はありません。音声だけの情報です。

 映像がないので、聴取した内容から自分なりの想像が広がっていきます。ヒーローも原作は漫画で、後になって映画にもなったものがあります。映画より前に、胸躍らせて動画を描いたのは自分の想像力です。状況の解説と台詞だけですが、それでも周囲の情景は自分の脳裡に鮮やかに描かれていたものです。翌日学校に行けば、そのラジオドラマの話が弾みます。10人いれば10人のヒーローが活躍していました。想像の世界のぶつかりあいがあったのです。

 時流れて今や、情報はその殆どが映像です。想像の世界を遮断しているようにも感じることがあります。一人ひとりが勝手に想いを広げることよりも、これこそが真といったスタイルが見えてきます。これほど映像が当たり前になってくると、「想像力」を「創造力」に繋ぐメディアとして、ラジオの役割も今一度見直す必要があるように思えてきます。(第146話に続きます)

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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