過去20年間の「今年の漢字」を振り返ってみる。

第17回:漢字一文字でも、世相を感じさせることがある。

 毎年12月になると、その年の世相を表す漢字一文字が発信されます。京都清水寺の貫主の筆文字を見て、一年を思い起すこともあったのではないでしょうか。
 たかだか一文字の漢字でも、その時を生きた自分にとっては、幾つか思い当ることが浮かんできたりするものです。
 文字には意味があります。その意味から何が想起されるかは、人によって様々です。ただ、単純な絵記号ではないだけに、背景までを深く連想したりするものです。
 してみると、一文字の漢字は、一人ひとりにとって「感じ入る文字=感字」なのかもしれません。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第113話)

第113話:平均消費性向低下の背景

 平均消費性向が低下している。この背景としては、①原油価格の下落などによるガソリンを含む「自動車等維持」や「電気代」の支出減、②2014年4月の消費税率引き上げに伴う需要の先食いを通じた「自動車等購入」やリフォームなどの「設備修繕・維持」の支出減‐‐が主因となっている。

 しかし、昨秋以降は循環的に景気が回復しつつあり、原油価格が昨年以降の減産合意等から持ち直し傾向で推移する一方、主要国のインフレ率上昇を受けて、市場の期待インフレ率も上昇している。こうなると、世界のマネーの流れは、安全資産の国債からリスク資産の株やコモディティーに流れやすくなることに加え、為替もリスク回避通貨とされる円が買われにくくなり、今後も昨年より高水準のガソリンや電気代の価格が維持される可能性が高い。したがって、今後のガソリン等を含む「自動車等維持」や「電気代」の支出は昨年よりも増加すると見ておいたほうが良い。

 一方、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減も永遠に続かない。需要の先食いといっても、5年も10年も先の需要まで前倒しできないためだ。事実、経済産業省「商業動態統計」によれば、自動車や機械器具小売業の販売額指数は、いずれも昨年中に底打ちをして、持ち直し基調にある。従って、ガソリンや光熱費が上昇する中で消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が軽減すると、特に車や家電、リフォーム等の支出を中心に全体の消費支出の拡大要因となる。

 更に重要なのは、耐久財の買い替えサイクルも到来しつつあることがある。事実、経産省の商業販売統計で自動車や機械器具小売業の販売額指数を見ると、2009~2010年にかけたエコカー補助金や減税、地デジ化、家電エコポイント等により指数が盛り上がっており、その後反動減となっている。こうした耐久消費財の中でも、新車やカラーテレビについては平均使用年数が9年程度となっており、2017年以降に買い替えサイクルが本格化することを表していると言えよう。そして、こうした買い替えサイクルの到来は平均消費性向のさらなる上昇を招くと言える。

 こうした状況に対し、世間では2015年以降の平均消費性向の急低下について「節約志向」との見方がされている。しかし、原油価格の下落に伴う余分なエネルギー出費の減少により平均消費性向が低下しても、それは節約とは言えず、駆け込み需要の反動による一時的な平均消費性向の低下も割り引いて考える必要がある。

 つまり、本当の意味での節約には、単純な消費支出の減少だけでなく、家計の実収入の減少や増税等による非消費支出の増加等を通じた可処分所得の減少により消費支出がやむなく減少することが不可欠といえよう。従って、消費者心理を評価する場合は、単純な可処分所得と消費支出の関係だけではなく、その背景にある要因を分解して慎重に判断すべきではないだろうか。(第114話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第115話)

第115話:どこで学んだかよりも、何を学んだかが「学歴」です。

 公人の学歴詐称が問題になることがあります。選挙の折など、学歴がどれ程の選択基準に作用するのかはよく判りません。過去来歴も必要ですが、それ以上に本人の人となりや、主義主張が判断の基準になるのではないかとも思います。かといって、あやふやなままで善しとしているのではありません。本人自身の属性表明に対する責任の所在は明らかにしなければならないと思います。ただ、私が思うことは「学歴」に関することです。

 「学歴」とは、「学校」の履歴なのでしょうか。むしろ「学問」の履歴ではないかと考えています。自分自身が、どのような学校に在籍し卒業したのかということは、むろん本人にとっても、また他者にとっても、その人を判断する幾つかある尺度の一つであることには違いないでしょう。しかし、われわれはそのことだけで人を判断したり、仕事においてパートナーになっているわけでもありません。学校よりも、その人がどのような意識や態度で「学問」に対応してきたのかに興味・関心があります。

 一般的に著名な学校を卒業したからといって、明快な学問の経路を持っていなければ、いつかそれは表層的な記号に対する評価になってしまいます。また、「学問」は何も学校だけで行うものではなく、それ以外の場の方が逆に、学ぶべき機会は多いものです。

 どうも最近は、「学問」というと、他者から何かを「習う」ことと思っている風潮があるような気がします。そうではなく、自らが「学ぶ」ことだと思います。自分の頭で考えることです。考える道筋を自分自身で発見すること。その基本的な眼差しを得るのに「学校」は大いに役立ちます。しかし問題は、何を学ぶのかにあります。

「学歴」は「学校」歴ではなく「学問」歴だと思います。その視点を履き違えてしまうと、おかしげな議論が起きてしまいます。(第116話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第112話)

第112話:エンゲル係数で示される生活水準の低下

 経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が、我が国では2015年から急上昇している。特に2016年には総務省「家計調査」の勤労者世帯ベースで前年に比べて+0.6ポイント高い24.2%となっている。この背景には、家計の節約や食料品価格の上昇があるといわれている。

 エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされている。

 エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合とされているが、その変動には、いずれも数量と価格が関係している。つまり、消費者物価(総合)に対して相対的に食料品価格が上昇すれば、エンゲル係数の押し上げ要因となる一方で、相対的に食料費以外の支出抑制もエンゲル係数の押し上げ要因となる。

 また、分母の消費支出は可処分所得と平均消費性向すなわち家計が自由に処分できる所得と世帯の消費意欲に分解できる。そして、可処分所得は実収入すなわち世帯の現金収入を合計した税込み収入に左右される一方で、非消費支出すなわち税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出にも左右される。従って、こうした要因に分解すれば、エンゲル係数がなぜ上昇したかを分析できる。

 2016年のエンゲル係数は前年比で+0.6ポイント上昇し、2014年から+1.8ポイントの上昇を記録した。しかし、食料品の値上げが相次いでいる一方で、食料品の消費量は減っているように見える。そこで、エンゲル係数の上昇率を食料品の消費量と相対価格および実収入と非消費支出、平均消費性向に分けて要因分解してみた。すると、食料品の相対価格が+0.9ポイントの押し上げに働く一方で、平均消費性向の低下要因がそれを上回る+1.0ポイントの押し上げ要因になっていることが分かる。

また、可処分所得の内訳では、実質実収入の増加と非消費支出の増加が相殺され、トータルで▲0.1ポイントの押し下げ要因となる。一方、実質食料品消費の要因は+0.0%ポイントの押し上げに止まる。つまり、家計の可処分所得の低下ではなく、食料品の相対価格上昇と消費者の平均消費性向の低下が、近年のエンゲル係数上昇の実態だ。

 まず、相対価格上昇の主因を探るべく、総務省「消費者物価指数」を用いて2015年以降の食料品価格上昇率を品目別に寄与度分解してみると、野菜・海藻の押し上げ寄与が最大となる。一般的には、日本の熱量供給ベースの食料自給率は近年39%で推移していることから、アベノミクスで円安が進み、これが食料品の輸入物価上昇をもたらし、食料品価格上昇に結びついていると言われている。しかし、2016年における飲食料品の輸入物価はむしろ円高で前年比▲11.8%も下落している。そして、野菜・海藻の押し上げ寄与度1.1%のうち1.0%分が生鮮野菜価格の上昇で説明できる。その結果、野菜の国内自給率が8割であることからすれば、食料品価格上昇の主因は円安というよりも、天候不順に伴う生鮮野菜価格が上昇した要因が大きいと推察される。(第113話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
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永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第111話)

第111話:アベノミクスの行方

 これまでのアベノミクスのけん引役は日銀の金融政策であったが、数年以内に日銀は試練のときを迎える可能性がある。リーマン・ショック以降、米国経済は8年以上、景気拡張を続けている。米国株式市場も多少の調整はあるとはいえ、同期間、ブル相場が続いている。しかし残念ながら、永遠に上昇し続ける相場はない。

 イールドカーブコントロール政策は、世界経済が好調なときは威力を発揮するが、反対にリセッションに陥ったときはどうするのか。米国が金融引き締めを行っているときは、大きくプラスに働くが、リセッションを迎えた米国が金融緩和に転じれば、今のスキームでは円高を抑え込めない可能性がある。そのときに何をやればいいのか。

 海外からの批判を度外視すれば、外債購入等の選択肢があると思われるが、現実的には難しい。となれば、緩和のために吸い上げる国債が足りないことになり、ヘリコプターマネーに近い政策を採る可能性も全くないわけではないと思われる。

 そうした意味では、米国経済が好調なうちに、いかに日本経済も正常に近づけることができるかが最大のポイントだと思われる。あと2〜3年のうちに米国経済がリセッションに陥れば、2019年10月に消費税を引き上げることは難しいだろう。

 2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられたが、その後の内需低迷はご存知の通りである。いずれにせよ、増税後の消費低迷は想定以上となり、消費税増税は拙速だったことになっている。

 筆者は、アベノミクスが始動するより前に『男性不況』という本を執筆しているが、男性不況克服のためのマクロ政策の主張内容がたまたまアベノミクスと類似していた。このため、アベノミクスにはもちろん肯定的であり、言葉を選ばずに言えば、日本の政策当局が初めてグローバルスタンダードに近い政策を実行しただけである。つまり、海外では一般的な経済政策を体現しているのがアベノミクスである。

 リーマン・ショック後にFRBは大胆な金融緩和を実施した。しかし、日銀は平成バブル崩壊以降も大胆な金融緩和を行ってこなかった。つまり、デフレという異常な経済状況を長期間放置してしまったことが最大の罪だと思われる。

 このように、アベノミクス自体の方向性は正しいと思われるが、20年間デフレを放置してしまったがゆえに、企業・家計ともに、普通の国ではありえない心理的萎縮が続いてしまっている。すなわち、20年間デフレを放置した弊害がいまだに残っており、アベノミクスの効果を減退させていると考えられる。(第112話に続きます)

永濱 利廣 氏

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