清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第164話)

第164話:ビジネスパーソンは、今いる「場」を知ることが大切です。

 ビジネスの世界に身を置いていると、実にさまざまな人に出会います。発想豊かな人。発想は旧来型で面白みは何も無いのですが、いざ行動するとなると素早さを見せる人。アイデアも行動力もさしたることは無いけれども、決められたことを地道に実行するとなると、ルールにのっとって大過なくやり過ごすことの出来る人。多士済々です。

 ビジネスの世界では、その誰かが欠けても、ある一つの道筋がつくりにくいといったことがあります。また逆に、あの人は別にいなくても、他の誰も困ることはない、といった存在の人もいるもの。なぜ、あの人がこのメンバー(部門)に存在しているのだろう、と疑問に感じるような人もいます。

 これが、それぞれ個人の生活となるとさらに様々です。ビジネスの空間では活かされるキャラクターも、日常生活になると全く正反対の性格を見せる人がいます。ビジネスでは行動力溢れる人も、一歩離れると全くといって良いほど動きの鈍い人。その逆にもであいます。ビジネスの中にあっては動きが鈍い人が、いざ自分の家庭や家族のことになると、疾風怒濤の行動力を発揮する。

 そのような人が、お互いの生活観や人生観の話をし始めると、全く話の筋が通じなくなってしまいます。何故わからないのだろう?と疑問に思いつつ、これ以上議論しても止む無しと、何となく合意すること無いままに自分の思いのたけを一方的に話をして終わってしまうことが多いようです。

 どうやら、自分の立っている「場」がお互いに違うようです。立っている場とは、自分が見ている世界でもあります。職場にあっては、共通のビジネス目標を提示され、それに向かって自らの能力や個性を発揮していく「ビジネス場」があります。しかし、個人生活では自分の立場は自分で目標を設定した「生活場」になります。目標が違うのですから、当然振舞いも異なります。

 「場」をわきまえるのは、まさに今自分の立っている「場」を知ることです。「場違い」な振る舞いは、その場の空気すら悪くしてしまうものです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第163話)

第163話:「やすい」は、「安い」だけではなく「易い」もあります。

 世界規模での経済停滞を感じるからでしょうか、販売の一線では、どうしてもモノを「安く」売ることが当たり前のような空気が流れているようです。売りの仕掛けでもありますが、かつて携帯端末を「0円」でばら撒いた時をほうふつとさせる場面に遭遇することすらあります。

 そのような時代環境にあってふと振り返ると、果たしてそれが社会的な善なのかを思ってしまいます。

 確かに、機能的な差がないモノの場合には、全く同じモノを少しでも安く購入しようとする心理は働くでしょう。何もわざわざ、同じものを高く買う必然性が無いことは確かです。しかし、購買に至る際の心理は「安さ」だけがポイントなのでしょうか。

 価格の「安さ」だけで、人は店に出向こうとするのでしょうか。もちろん今は、店に行くことなく買い物が出来る環境ではありますが。ここで一度「安い」の反対語は何かを考える必要があるのではないかと思っています。

 交換行為を想定していると、「安い」-「高い」の構図を描いてしまいそうです。であれば「高い」の反対語は何でしょうか・・・。

 「低い」も当てはまります。敷居が低い/腰が低いといった表現があります。つまり、顧客との関係がなかなかうまくつくれずにいる店や仕組みは、どこかに近づきがたいような要素があるのでしょう。

 そう考えていくと、「やすい」の反対語は「難い(にくい)」でもあります。「入りやすい・選びやすい・話しやすい」店と、「入りにくい・選びにくい・話しにくい」店になります。

 マーケティングの発想は、多元的視点の複合です。何も価格の「安い」だけではなく、仕組み自身の「易い」も考えることを忘れていないかを、自問自答していたいものです。(第164話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第162話)

第162話:「知情意」のバランス感覚がマーケティング力を高めます。

 夏目漱石の「草枕」の冒頭に次の一節があります。「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引っ越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。・・・」人が生きて行くためには、「知・情・意」の三つのバランスが必要なようです。

 個々に見てみれば、「知」は知識、理屈、道理、分別であり、「情」は人情、気持、感情、情緒、そして「意」は意思、意志、意地の意味を持つものです。

 人の日常生活は、まさに知情意のバランスであることを感じます。自分自身が今何をしなければならないかということを「知」っていても、いざ取り組もうとした時に目的に対して「情」熱が高まってこなければ、なんとなく惰性でこなすような行動に陥りやすくなります。しかも、やり始めたならばやり遂げる「意」志がなければ、途中で挫折もします。

 学校の教育現場においても、「知識」ばかりを詰め込んでも、所詮社会生活には何の役にも立たないと思う「感情」が走ってしまう場合が見られます。決して日常の生活行動は、ある公式で動くわけではなく、人それぞれの「意志」に基づいて行われるものであり、その判断を更に高次なものへと引き上げるために、新たな「知識」が必要になるのですが、目の前にある難解な文章や公式に拒絶反応を起こす人がいます。学ぶチャンスの放棄であり、もったいない。

 多くの企業人と、さまざまなマーケティング・テーマの研究や研修をする際に、これら三つの意味と要素のバランスの重要性を感じます。一般的に研修というと、「知識」を深めたり自らの技能レベルを確認したり、新たな「情報」や手段の習得を目的にしています。したがって、どうしてもその時間の中で何がしかの成果を得ようと必死になる「意志」が働くものです。しかし、短期間では何となく理解できたと思えることも、いざ自らのビジネス現場に戻ると、また違った感情になり、あれはあくまでも研修での出来事だったと、元の鞘に収まる人もみられます。

 マーケティングは本来、人の暮らしの中に新たな「知恵」を提供することに「情熱」を持って取り組み、変化に適応した「意思」決定を繰り返す、「知情意」のバランスの中で行われるものだと思っています。(第163話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第161話)

第161話:通勤電車は、さながら動物園にいるような気分になります。

 何ともなくやり過ごしている日常の景観も、ふと不思議を思いつくことがあります。日々、私鉄に乗りオフィスに向かいますが、その移動中に眼に入ってくることが、今の世相を凝縮して見せているように感じます。車内にはさまざまな人がいるもの。その小さな行動は、その人にとっての日常でしょうから、今の世相が見えてくることは、当然でもあります。

 辺りかまわず自分の上辺を整えようと化粧に熱心な人。さながら「タヌキ」。

 昨日の仕事疲れが残ったままなのか、周りを気にせず大あくびする人。まるで「カバ」。

 少しの隙間を虎視眈々と狙って、素早く席に座ろうとする若者。これは「イタチ」。

 他人の読む書類に、巧みに眼を動かしながら時には顔の向きも変わる紳士。「フクロウ」を思う。

 どっしりと構えて、乗降がどれ程あろうがお構い無しに大荷物を置いたままの方。あなたは「クマ」のようです。

 通勤時間に似つかわしくない、昨夜からの遊びを引きずったままの若者集団。朝を迎えた「昆虫集団」でしょうか。

 駅に着くや否や回りには眼もくれず一路改札口に突進するビジネスパーソン。「サイ」のようです。

 プラットホームでは、電車を待つのではなく疲れを癒そうと、朝からベンチで眠る「キツネ」のような方。

 周りの様子を気にするよりも携帯の窓の方が大事そうな人たちは、「サル」の軍団でしょうか。

 こうみてくると、まさに動物園の状況です。今、この国は疲れているのでしょうか。元気溌剌と草原を駆け抜ける動物に出会うことがなかなかありません。何となく生気の無い動物に会うために、毎朝の通勤電車に乗っているように感じてしまう、朝の通勤動物園の一コマです。(第162話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第160話)

第160話:お客さまとの「自律契約」をしていますか。

 私は今「契約」をして現在のビジネスを展開しています。誰と何を契約しているのかといえば、「自分自身」と「マーケティング・スタッフ・ビジネス展開」の契約です。それ程、縛りのきつい契約ではありません。少なくとも今後数年間、「元気に」次代を描くマーケターに「正道的にマーケティング思考・実践を伝承する」ことが基本契約です。

 先ずは「日々の元気」が契約の第1条。そして正しくマーケティングを学ばなければなりません。第2条が「正道的なマーケティング伝承」にあるからです。表層的なことを言葉巧みに語るのではなく、本質的なことを、自らをメディアとして伝えることを心しなければならないと考えています。現在の契約は1年。その後、いつまで出来るかはわかりませんが、毎年契約更改に臨もうと考えています。そのためにも、自らが学ぶことを忘れてはならないと心しています。

 学ぶとは「知らないことをわかるようにする」「自分なりの解釈をする」「学問を体系的に理解する」と、さまざまなレベルがあります。どの段階にあっても、さまざまなアプローチがあるものです。学校で一般的な学問体系を「習う」。先人の残した知の集積を書物を読むことによって「辿る」。他者の考え方や理解の内容を会話を通じて「聴く」。これらのことは日常生活で繰り返していることです。

 企業のマーケティングも実は契約関係によって成り立っているように思います。それは「顧客」との契約です。「顧客を裏切ることなく、正しい商品やサービス、情報などのモノや知を提供し続ける」契約。それを、何年契約とするのか。その後の契約更改の条件を、顧客が間違いなく提示してくれるかどうかが問題です。再契約不要との答えが返ってきたのでは、市場からの撤退を余儀なくされるからです。

 契約を継続するためには、先ずは自らを律していく必要があります。契約を正しく履行しようとする想いが無ければ、契約の更改は無いと思った方が良いでしょう。してみると、契約の履行・不履行の判定は、契約を取り交わした相手に対する自らの「自律」の度合いで決まるのかもしれません。(第161話に続きます)

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