清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第143話)

第143話:状況を説明するには、実感を伴った「感字」の力も活用できる。

 ここ数年の夏は例年暑さが厳しい。そのような様子を表現するには、どのような言葉が似合うのでしょうか。既定の熟語では当てはまらない気がします。その時の想いを言い当てるならば、その時に浮かんでくる文字で表現するしかありません。幾つかを思いつくままに・・・。

 「酷暑連々」「湿潤飽和」「発汗辟易」「麦酒礼賛」「身体倦怠」「動作緩慢」「冷菓想起」「冷茶暴飲」「胃腸痛感」「早朝颯爽」「夕刻脱力」・・・さしたる重みも無い文字の羅列ですが、何となくそうか、と感じることはないでしょうか。

 更に暦の上では秋を告げる9月に入ってからも変わらぬ陽気で、夏の尻尾をひきずったままであれば、「残暑延々」「涼風恋慕」「秋日炎天」「疲労延伸」「回復遅延」「四季喪失」・・・等々が浮かびます。

 例年、その年の漢字一文字が年末に京都の清水寺で披瀝されます。漢字一文字から、そのときの様相が浮かび上がってくるといった経験をした人もいるでしょう。子どもの頃に何度も間違えて書いてしまい、今もなお間違ったままで覚えている漢字もあると思います。まさに個人的な想いがそのまま文字になった感字です。

 漢字はカタチ・意味・音とさまざまな要素を源として今に生きています。そこには、単なる音としての記号を超えた意味を持ち、コミュニケーションに力を与えています。ひらがなで記述すると平易な印象を与えはしますが、かといってその言葉の裏側にある書いた人の心までは言い表わしていないもの。文字そのものの誤記はほめられませんが、正確な文字で自分の心を表現してみると、語呂合わせではない本当の意味がわかってきます。

 マーケティングも「市場論」と置き換わった途端に、何やら古典的学問に出会ったような気分になってしまいます。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第142話)

第142話:備える前に「クリアランス:整理」が始まります。

 春夏秋冬があることを当たり前に思って、季節感が実感できる風土の中で暮らしてきたわれわれとしては、ここ数年の夏の到来が1・2ヶ月早いような気がします。モノを購入するきっかけも、基本は季節の節目によっているところが多くみられます。「そろそろ夏になる。その備えに夏物を買い揃えよう」「寒さが間もなくやってくる。冬ものの防寒衣料を買い込んでおかないと、いざという時には困ってしまう」というのが、旧来の日本人の消費行動の基本パターンでもある「備える」消費です。

 季節だけではなく、「社会人になったからそれに合わせて自分の身なりをそれなりに整えよう」といった社会的なステージに「備える」といった行為もありました。あったと過去形で言うのも、最近は少なくなったことを実感するからです。ただ、人の暮らしの中での基本的な行為として、何がしかこれから起きることへの「備え」は少なからず残っているものです。

 しかし、販売の現場に行くと、備える前の「クリアランス」です。何かが起きる前に「整理」が始まる状況を目の当たりにします。それではなかなか「備え」の購買動機は起きようにもなくなってしまいます。日常生活における季節感すら希薄になってしまいますし、かつ、衝動的に生活を考える癖が出来てしまうような気もします。

 最近の生活行動が、どこか落ち着きがなく、どっしりと次を見据えた行動をとるというよりも、刹那的な消費行動が多くなっているのも、「備える」前に起きる「クリアランス:整理」の現場が生み出しているようにも感じます。(第143話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第141話)

第141話:「落ちる」と「落とす」。主人公を忘れていることがあります。

 比較的昔から人気の焼鳥屋でのこと。30代と思しきビジネスマンの集団の一人が大声で「箸が落ちたので取り替えて下さ~い。」焼鳥屋で箸とは、串焼き以外に何かを食べながらのことかと思いつつ、瞬間的に耳に入ってきた言葉です。

 ふと、箸は「落ちる」ものなのかと・・・、誰かが「落とした」のではないかと思いました。それとも、テーブルがひどく傾いていて、自然と転がり落ちたのでしょうか。いや、先の言葉は何のためらいもなく発せられています。主体が箸になり、そこに働きかけた何がしかの力が何であったのかが不明瞭なままです。

 主体者は自分であり、自分のミスにより箸を落としてしまった、との思いは見られません。しかし、日常生活では当たり前のように使う言い回しです。「何もしないのに傘が壊れた。だから新しいものを買って。」子どもの言葉。「知らないうちにカメラが壊れた。買い換えなければ。」父親の言葉。

 そして「売上が落ちた。何とかしなければ。」経営者の言葉。「売れなくなった。なぜだろう。」企画マンの言葉・・・。取り上げればきりがありません。主体者がいるにもかかわらず、何となく客体化した言い回しです。

 本来は、「これといった手を打たなかったので、売上を落とすことになってしまった。」「顧客のことを考えることもなく商品化を進めて、失敗してしまった。」と言うべきところなのです。

 主・客の気づきは、自分の思いの中にもあります。そもそも箸は、誰かが何がしかの力を与えなければ「落ちる」ことはありません。明らかに「落として」しまったのだと思うのですが。(第142話に続きます)

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第140話)

第140話:店の予約対応にサービスの意味を知りました。

 渋谷の百貨店食品売り場での体験談から、顧客の声をどう解釈して対応するかが、サービス品質の差につながることを知りました。

 翌週に開催予定の月例勉強会用に、私の秘書が弁当の予約に出向きました。「カツサンド」で著名なとんかつ屋です。軽食なのですが、値段との関係で見れば、程よい量と彩りで今までも評判の良かったものを11個オーダーするのが目的です。

 2日後の夕刻受け取りに来る旨を告げて予約の依頼をしました。途端に販売員の目つきが変わったと言います。明らかに「めんどう」と思わせる顔つきになる。早々に彼女の後ろでサンドイッチをつくっている年長の男性と一言二言。振り返りざま、おもむろに口を開いて、「ご予約の場合は3日前までとなっております」との発声。もし、店でそのように決まっているのであれば、後ろの人との密談は何だったのかと首を傾げます。店頭には、そのようなガイドラインを示す案内一つあるわけではありません。

 秘書は止む無しと考え、同じ百貨店内の「のれん街」にある同じ店へと向かい、同じことを告げたそうです。そこにいた販売員の女性が申し訳なさそうな顔をして、「ご予約は3日前までになっているのですが、2日後の夕刻であればご準備できるかもしれません。ちょっと電話で確認をしてみます」との言葉。早速に電話をとり、なにやら頭を下げている姿。

 待つこと約2分。「ただいま確認を致しまして、準備が出来るとのことです。改めましてお客様のお名前とご連絡先を・・・」と無事にオーダーすることが出来たとのこと。

 同じ店である。同じブランドである。同じ商品である。つくっている所が違うのでしょうか。老舗名店の文字が、混迷した文字に見えてしまう予約対応の一コマです。(第141話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第139話)

第138話:「縁の連鎖」を見直して「知層」を発掘することも大切です。

 それにしても、ビジネスは「縁の連鎖」構造だと思います。さまざまな出会いの中で自分自身は生かされていることを実感します。自分が出来ることの何と狭く小さいことかということも思い知らされます。だからこそ、プロジェクトを円滑に進めるためには、専門性を持った人を知り、その知見やノウハウをいかにうまく使うかということが鍵になります。「分析脳」が中心の人や「発想脳」が中心の人などの多様な脳が、ある目的によってお互いの力を出し合おうと働きかけると、そこに連鎖構造が生まれて、新たな知見が偶発的に生まれてくることがあるものです。そんな原子の融合のような連鎖もあれば、違った縁もあります。

 人との出会いが「縁」のスタートです。何回か会って話をし、相手を深く知ると、まるで幼い時からの友人のような関係になることがあります。そこまではないまでも、ちょっとした会話から自分のビジネスへのヒントになる発想を得ることもあります。現在のビジネスは、過去に蓄積されたモデルを繰り返し学習するといった環境にはないと思います。そうではなくて、自分の頭で創造(想像)することが求められる環境です。今まで以上に、知恵の連繋が求められているのではないでしょうか。単なる情報を超えた、人的なネットワークも必要です。だからこそ、ビジネス縁の連鎖構造を創出した者が、マーケティングのリーダー役を担うことになるのです。

 知見が積み重なると、単なる経験を超えた自らの知恵になって重なり合っていくものです。さながら幾層にも積まれた地(知)層のようなものです。古代の遺跡を発掘するときに、どの地層から発見されたものかによって、おおよその年代を推定するそうですが、それと同じように、自らが持つ知識や積み重なって生み出された自分なりの解釈は、いつ、どのような学習を通じて重ねられたのかを、時に再発掘するのも良いかもしれません。

 マーケティングを手段として捉えてしまうと、新しい市場は早々拓けるものではありません。それよりも、自らの人生の「縁」を思い起こしながら「知層」を発掘すると、何か新しい発見があるものです。(第140話に続きます)

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