エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第237話)

第237話:東京五輪で個人消費活性化

 2020年の景気を占う上では、2020年の国内最大イベントである東京五輪の開催が大きな鍵を握るだろう。既に建設特需は2019年中にピークアウトしている可能性が高いが、2019年のラグビーW杯でも開催期間中に内外の観光客の増加により、組織委員会が当初想定していた4,300億円を上回る経済効果が発生した可能性がある。東京五輪の開催時期は8月となるため、他の外部環境にもよるが、夏場にかけて東京五輪関連の消費特需が盛り上がる可能性が高い。

 特に、インバウンドの拡大に伴う需要効果は大きいと思われる。なぜなら、政府は2020年の訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の目標をそれぞれ4,000万人、8兆円としているからである。

 2019年の訪日外客数は日韓関係の悪化による韓国人観光客減少の影響等もあり、3,300万人台にとどまりそうだが、2020年は政府目標の4,000万人までは行かずとも、3,500万人は超えそうだ。これに訪日外国人一人当り消費額の約15万円を乗じれば、5兆円を大きく超える旅行消費額の出現の可能性がある。

 更に、東京五輪観戦のための国内旅行やテレビの買い替え等の特需が発生することが予想され、特に6月末にはキャッシュレスのポイント還元の期限を控えていることから、年前半に駆け込み需要が発生することが予想される。

 中でも、五輪特需としてテレビの買い替えサイクルに伴う需要効果も大きいと推察される。内閣府の消費動向調査(2019年3月)によれば、テレビの平均使用年数は9.7年となっている。

 テレビの販売は2019年10月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で少し盛り上がったが、更に前に遡ると、2009年度~2010年度にかけてはそれ以上に販売が盛り上がった。背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下で家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生しており、2020年はそこから10年を経過していることに加え、一昨年末から4K・8K放送が始まっていること等もあり、その時に販売された家電の買い替え需要が期待される。

 中でもテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んでから、買い替えサイクルの9年以上が経つため、買い替え需要はかなりあることが期待される。なお、2020年の東京五輪が実施されれば、日本人のレジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性が高いだろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第171話)

第171話:一年を思い起し、次の年を思う「望年」の時。

 ここ数年、ネットを介した年賀状も多く見られるようになりましたが、年始の変わらぬスタイルとして、今も私は年賀状を送っています。人によっては、住所確認の意味合いもあるかと思うのですが、私は、個人的に思う一年の抱負を短文で書き綴ってきました。

 改めて今読み直してみると、その時代時代のビジネスの様子を伺い知ることが出来るものです。この3年間に書き綴った年賀文を並べてみると、その時代の想いが透けて見えることがあり、ここ数年の環境変化を思いながらも、変わらぬ志を語り続けています。想いは不変であることを実感します。

2017年
小さなモンスターを探し回って時を刻むより、身の回りの不思議な現象を考える時をもつこと。重ねた経験で解決策を探すことを善しとせず、一つひとつ丹念に取り組むことを心してきました。
「器用にこなす能力」と「頭に汗する脳力」に悩む力も活かしながら次代に続く明日を見つめ、地に足つけたマーケティング・スタッフとして、変わらず元気な歩みを続けていこうと思います。

2018年
考えることは楽しいことと心に刻んで長き時。歩み来たたくさんの過去と会話をすることよりも、まだ見ぬ未来と会話をしながら歩を進める日々。
昨日までに刻んだ時は、明日への道のガイド役。多分野の知と出逢い、学び行く志を胸にだき、小さなことにも「頭に汗する」ことを忘れずに、重ねた知を今に活かした次代への伝承役として、着実に未来への歩を刻んで行こうと思います。

2019年
巡りくる暦の日々の長さは同じと知りつつも刻まれる時のテンポを倍速に感じて歩む今。画面を通じた短い言葉でのやり取りよりも、人との出逢い話し合いを大切にしています。
来し方に紡いだ知が、行く先を照らします。学ぶ志と拓く熱を忘れることなく心に刻み、「時代の知を次代へと繋ぐ」スタッフとして地に足つけて未来に続く道を進み行きます。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第236話)

第236話:世界との経済的な結びつき

 日本と中国の実体経済の結びつきがどの程度あるのかを見るべく、日本の国別輸出入を見てみよう。日本の主要国別輸出のウェイトを見ると、最大の輸出相手先は中国で2割弱を占める。2番目がアメリカで、次いでASEAN、EU、そして韓国が7%となっている。

 しかし、2017年までは、日本の最大の輸出相手国はアメリカだった。この背景の一つには、アメリカがトランプ政権になって保護主義に傾斜したことがある。輸送用機器を中心に、一般機械や電気機器等、いわゆる加工組み立て品をアメリカに大量に輸出してきた。特に、アメリカに最も輸出している品目は自動車である。それが、トランプ大統領誕生以降、保護主義が深刻化し、生産拠点がアメリカにシフトしたことによって、日本のアメリカ向け輸出が減ってしまった。

 一方、中国は世界の工場といわれてきたが、近年は国内需要が拡大している。このため、日本で作られた工業部品が生産拠点の中国に輸出され、これまでのように中国で作られた完成品が欧米に輸出されるだけでなく、中国国内でも消費されるという傾向が強まっている。

このため、保護主義で中国から米国向けの輸出が減少しても、日本から中国向けの工業部品の輸出等は減らず、むしろ中国内需の拡大により中国向け輸出のウェイトが拡大したのである。

もう一つは、米中摩擦の影響もあろう。古紙等のように、追加関税の掛け合い等により中国が米国から日本に調達先を変えたことも一部影響している可能性がある。

 こうしたことが重なって、2018年には中国が日本の最大の輸出相手国に返り咲いた。なお、輸入で見ると、元々中国が最大相手先である。ただし、安い人件費を梃子に完成品を大量に生産し、それを日本に輸入する役割はASEANにシフトしており、むしろ東南アジアでは作れない高付加価値な電気機器等の比率が上がっている。

 このように、2018年は輸出入とも中国が最大のウェイトを占めた。以前は、日本から輸出された部品は中国で完成品となり、それがアメリカに輸出されるため、アメリカ経済の影響のほうが大きいといわれてきたが、今はそうではない。最初の推計で示したとおり、日本の製造業は中国の製造業より非製造業のほうに影響を受けやすくなっている。むしろ近年は経済規模が拡大した中国内需に左右される要素が大きくなっている。そう考えると、経済規模の大きさだけでは単純には測れず、日本経済と中国経済との結びつきは、実際の経済規模以上に大きいといえる。(第237話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第235話)

第235話:強まる日本製造業に対する中国内需の影響

 中国経済の重要度を見るべく、日本の製造業PMI(購買担当者景気指数)に対する中国PMIの弾力性を製造業と非製造業に分けて計測してみた。すると、直近5年では中国の製造業よりも非製造業の弾力性の方が高いことがわかる。これは、特に中国内需と日本経済が密接に連動しており、日本経済の行方を探る上で、中国内需を知ることはこれまで以上に重要になっていることを示している。

 ただし、以前からここまで連動していたわけではない。今から6年以上前の2009~2013年における日本の製造業PMIに対する中国PMIの弾力性を計測すると、製造業のほうが高かった。背景には、当時は中国内需というよりも、中国の製造業を通じた最終需要地である米国経済の影響が大きかったことが推察される。

 当時は、あくまで日本から中国に輸出する製品の多くは中国で加工され、米国に輸出されていた。こうした中国国内の生産拠点としての機能が大きかった一方で、日本経済は中国内需の影響を現在ほど大きく受けることはなかったといえよう。

 また、直近5年程度で連動性が高まることとも関係してくるが、今から6年以上前はそれほどインバウンド需要が多くなかったという点も上げられる。このため、2000年代までであれば、日本経済の予測をするときには、ある意味では米国の状況さえ見ておけば良かったといえる。

 このように、最近の日本経済を予測する場合に中国経済の重要度が高まった背景には、中国経済の規模が大きくなったという要因がある。世界最大の経済大国は紛れも無くアメリカであり、世界のGDPの24%以上を占めている。このため、当然それだけ日本経済に及ぼす影響も大きい。それに対して、日本は世界第三位の経済規模だが、世界GDPの6%弱を占めているに過ぎない。2009年まで2位だったが、中国に抜かれたのは記憶に新しい。つまり、米国の次に大きい国は中国であり、中国の経済規模は2018年には世界GDPの約16%を占めるまでに大きくなっている。

 また、ドル建てで比較すると、日本のピーク時のGDPは6兆ドルを超えていたが、現時点では5兆ドル前後である。それに対してアメリカはGDPの規模が日本の4倍強の20兆ドル以上、中国は13兆ドル以上となる。

 つまり、米中二カ国だけで、世界経済の4割以上を占める。また2018年の世界経済規模の拡大で見れば、中国の寄与率が約3割と最も大きいため、やはり中国経済は世界経済を見る上で非常に重要ということになろう。(第236話に続きます)

永濱 利廣 氏

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永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第170話)

第170話:社会のお目付け役「世間さま」はどこに行ったのでしょう。

 今を生きていながら、日々のちょっとしたことに変化を感じることがあります。今まで自分なりに当たり前と思っていたことが、そうではない状況として見えてくる時、何故だろうと不思議な想いが巡っていくもの。そのきっかけが何であったのかが、後になってわかることもあります。社会の変化は、時計の秒針的にコツコツと眼に見えて動きのわかるものと、長針的に日々の変化に眼をやるもの。そして短針的に何となく気がつけば変わっていたということがあるようです。余り秒針的なことばかりを追い求めていると、肝心な数年前との大きな変化を見落としてしまいます。

 1970年代初頭に登場したファストフードは、それまで、歩きながら、しかも手に持ってモノを食べることを、はしたないと教えられてきた呪縛を解き放ちました。80年代初頭のOA(パソコン)革命は、難解なコンピュータ言語を遠くへ追いやり、90年代後半からのIT革命やインターネットは、個人の情報行動の範囲を広げ、自分自身の判断による情報選別の必要性を強く持たせるようになりました。こうしてみてくると、何となくこの10年近くで我々は自分の殻の中に納まり、他との干渉を拒絶する自己中心的な生活価値観を持つようになってしまったように思えることがあります。

 周りに眼をやることをせず、自分の生活行動をそのまま公共の場に持ち込むような「車内化粧」や「車内スマホ」。自分の欲求を瞬間的に発現する「性的犯罪」。この世の中は二人を中心に動いていると誤解する「車内抱擁」。取り上げれば、秒針的な変化は、あたりかまわずです。

 元号を飛び越しても、それ程の昔ではない「昭和」という時代には、この国に「世間」とういお目付け役がいたように思います。どうやら最近「世間さま」はどこかに行ってしまって、あたりかまわぬ気風がこの国を覆っているように感じます。寒さは、冬に向かう季節のせいだけではなさそうな「世間」です。(第171話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
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代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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