清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第182話)

第182話:今、時代変化の「節目」に立っているような気がします。

 マーケティング思考の枠組みは、1900年代初頭にアメリカで誕生して、日本には、1955年に紹介されたと言われます。

 戦後経済の復興期と言われていた頃のマーケティング思考の基本は、他とは異なる製品を生み出すためのもの。顧客も、次々と紹介される商品を見て、自分の暮らしに取り込みたいと思う時代環境だったと捉えられます。

 その後、企業のものづくりに対する仕組みは進化を遂げ、多様な製品を生みだすことが出来るようになりました。そうすると、生み出した製品を評価してくれる相手のことをもっと知らなければならなくなりました。調査手法が進化を遂げていった時代です。

 更に、前世紀最後半から今世紀に入ってからは、今までにはない新たな機能や使用を考える「価値」の見方が問われるようになってきました。良い悪いを考え決めるのも、送り手である企業ではなく、それらを購入して使用するお客様であるという原点的なことが再確認される時代になりました。

 そして今、もはや製品・サービスのレベルの高さといった見方ではなく、顧客自身が自分の人生観や価値観にあっているか、必要かどうかでモノやサービスを峻別するようになってきています。自分の暮らしや人生における価値の判断が進んでくることも想定されます。今までも言われていたことではありますが、いよいよ「個別化」「個性化」が現実のテーマになってきそうです。

 このような時代の変革について、マーケティングを担当するスタッフは常に気にしておくことが必要です。変化にこそ新しいチャンスがあるからです。

 今われわれは、時代の大きな変革期に立っているような気がします。(第183話に続きます)

2016-11-16%ef%bc%9a%e4%b9%9d%e5%b7%9e%e7%94%9f%e7%94%a3%e6%80%a7%e2%91%a0

 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

※内容の案内/購入手続きはコチラ

Amazon からのご購入はこちら  をクリックしてください。

その他の書籍は下の写真をクリックしてください。

DSC_0165
その他の著書は上の写真をクリックしてアマゾンからご購入ください。

 

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第256話)

第256話:需要喚起には消費減税が効果的

 コロナ対策に対して減税を求める声も多い。しかし、所得税減税ということになると、働けない人には何ら恩恵がないため、あまり意味はない。また、消費減税は減税前の買い控えにより、家にとどまる人が増え、ウィルスの拡散が抑えられる可能性もあるが、早急な対応が困難であることからすれば、消費減税と所得減税や給付金の良しあしを単純に乗数の高さのみでは判断できないといえよう。実際、ハーバード大学のマンキュー教授も、手始めに全国民に現金もしくは小切手を可能な限り早急に送るのが良いとしている。

 ただし、現金補償はあくまで一時的な生活保障である。従って、ウィルス収束後には、個人消費を支える需要喚起策として、すでに予定されているマイナポイント事業等に加えて、期間限定の全品目軽減税率導入が有効だろう。そもそも2019年10月の消費増税の際には「リーマン級のことがない限り消費増税を行う」と、政府は言っていた。「現状はリーマンショック以来の不況が来る可能性があり、したがって、例えば今年7月から年度末までの時限措置として全品目に8%軽減税率を導入することで、消費者の負担軽減と家計の購買意欲を高めることも検討に値する。その際、導入前の買い控えは、現金給付と6月に期限を迎えるキャッシュレスポイント還元で補い、来年4月の消費税率を戻す際の駆け込み反動策として、キャッシュレスポイント還元の拡充復活等で対応できるだろう。また、消費税は社会保障財源として紐づいているという意見もあるが、消費税率5%から10%引き上げで確保した財源13.2兆円のうち社会保障支出に紐づいているのは8兆円程度であり、残りの5兆円以上は政府債務の返済に回っているため、この部分を使えば社会保障財政に影響は及ばない。

 なお、自民党内の一部で出ている「消費税率0%」案は、短期間の時限措置であれば、かなりの消費押し上げ効果が期待できるかもしれない。しかし、仮に新型コロナウィルスの終息宣言が出るまで、というように期限を区切ったとしても、それが1年続くと、消費税収に代わる27兆円以上の財源が必要になる。したがって、仮に9カ月続いても財源が4.3兆円程度で済む全品目への軽減税率適用で、昨年10月の消費税率10%引き上げ前の8%の税率に時限措置で戻す案の方が現実的といえよう。

 以上をまとめれば、需要喚起を目的とした財政政策の効果は乗数効果をどう考えるか次第であるが、それは同時期の自国の金融政策のみならず、海外の財政・金融政策の動向に大きく左右されるものと考えられる。また、中長期的な乗数効果以前に、今回は短期的な視点からウィルスの感染がいかに医療崩壊と経済崩壊のバランスをとって収束に向かわせることができるかといったことも財政政策の効果を評価する際には大きなポイントになるといえよう。(第257話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

MMTとケインズ経済学

21世紀版のケインズ革命は、今まさに起こっているのか?
例外的な環境下において、赤字財政を推進したケインズの学説は、経済学に大きな影響を与え、ケインズ革命と呼ばれた。MMTはインフレ率に注意さえすれば、赤字財政は際限なく出すべきと主張する。本理論は21世紀のケインズ革命となるのか?

第1章  ケインズ経済学の衝撃

第2章  MMTとは

第3章  ケインズ経済学とMMTの違い

第4章  MMTの考え方(MMTは日本で実現するのか?)

第5章 アベノミクスの検証

第6章 日本の財政の誤解

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第255話)

第255話:生活保障と需要喚起は分けて考えるべき

 財政政策の効果は、乗数で計られるのが一般的である。乗数効果とは、経済資源に余裕がある不完全雇用の経済を前提とした場合、例えば政府が給付金や減税を通じて負担を減らすことで国民所得が増加すると、それによって個人消費や設備投資といった民間支出が誘発されることを通じて更に国民所得が増大し、そこからまた民間の支出が誘発される…といったように等比級数的に国民所得が拡大することを意味する。そして、最終的に有効需要1単位当たり何単位の国民所得が拡大するかといった比率が乗数となり、これが財政政策の効果を示すことになる。

 ただ、乗数効果を持ち出す際に必ず議論となるのが、給付金や所得減税と消費減税による乗数効果の違いである。理論的に考えれば、消費減税は直接需要に結びついて初めて減税効果が出るのに対して、給付金や所得減税の場合は民間の限界支出性向(所得が1単位増加した際に支出がどれだけ増加するか)次第で需要の増分は異なる。

 しかし、一般的に給付金や所得減税分の一部は貯蓄に回ることから、我が国では所得減税よりも消費減税の乗数の方が高いとされている。事実、内閣府の短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の乗数分析においても、所得減税(給付金)と消費減税の乗数効果を比較すれば、消費減税の方が1年目に2.4倍も大きくなっていることがわかる。

 このように、財政政策の効果を検証する方法としては、マクロ計量モデルを用いて消費減税や所得減税(給付金)の乗数効果を計測することが一般的であり、程度の違いはあれ、家計向けの財政支出はいずれの乗数も1を下回る結果となる。

 なお、日本では日銀のYCC導入によりクラウディングアウトは回避でき、財政の助けで金融緩和がより効果を発揮するという状況になっている。実際、内閣府の最新マクロモデルの乗数を用いても、消費減税や所得減税とYCCの合わせ技がGDPに与える影響をシミュレーションできる。そして、名目長期金利を固定すれば、消費税率2%ポイント引き下げたケース(5.7兆円減税)で0.8程度、所得税を名目GDP1%相当額5.5兆円減税したケースで0.7程度、それぞれ財政乗数が上昇することが示唆される。

 ただし、現実的には単純に乗数効果が高いというだけで財政政策として消費減税のほうが給付金よりも好ましいという結論にはならない。なぜなら、この状況下では医療危機の緩和が最優先課題となるためである。現状では、人々の現下の経済的困難に対して手を差し伸べることで家にとどまる人を増やし、ウィルスの拡散が抑えられる可能性が高くなるメリットを需要喚起よりも最優先すべきだろう。(第256話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

MMTとケインズ経済学

21世紀版のケインズ革命は、今まさに起こっているのか?
例外的な環境下において、赤字財政を推進したケインズの学説は、経済学に大きな影響を与え、ケインズ革命と呼ばれた。MMTはインフレ率に注意さえすれば、赤字財政は際限なく出すべきと主張する。本理論は21世紀のケインズ革命となるのか?

第1章  ケインズ経済学の衝撃

第2章  MMTとは

第3章  ケインズ経済学とMMTの違い

第4章  MMTの考え方(MMTは日本で実現するのか?)

第5章 アベノミクスの検証

第6章 日本の財政の誤解

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第181話)

第181話:「店」は「魅せ」。その位置付けは時代とともに変わります。

 マーケティング分野で「流通」というと、昭和の時代に起きた「流通革命」という言葉があります。1960年代のことです。それまでは、取り扱っている商品ごとで個別のお店に分かれていました。その日その日の夕食準備のために、野菜・肉・調味料等を買おうとすれば、「八百屋」「肉屋」「乾物屋」と、それぞれに回らなければ必要なものが揃わないという時代があったのです。そのような買物行動を激変させたのが「スーパーマーケット」の出現でした。

 お店の人と会話をすることもなく、自分の必要なものを自分で選んでレジで支払い。時間的な効率性も高くなる買物スタイルが進んでいきました。その後の店の形態変化やサービス変化は目を見張るものがあります。いよいよ、人との会話はどこかに行ってしまいました。他人からのお薦めが無いままの自己判断が求められる買い物が当たり前になっています。

 更には、今や店という存在すらもなくなってきています。ネットの進化です。買物に出向くというのではなく、多様な情報を「検索」して「選択」するというスタイルです。

 他人との出逢いや商品・サービスとの出逢いも、そのスタイルは時代と共に変化をしてきています。これから先、生活行動における買物は、どのように変化をし、その変化に流通の役割はどのようなものになっていくのでしょうか。

 店とは本来、未来の暮らしを見せる「魅せ」としての存在がありました。新しい商品やサービス、そして、その場での会話がきっかけで購買が促進される。多くの店が「売り場」ではなく「買い場」という言葉を使って、来店するお客様への鮮度高い情報を発信しようと競い合ってきました。

 しかし今、Afterコロナの社会を夢想してみると、それぞれが思い浮かぶ「店」の未来図は異なるのではないでしょうか。多分野のメンバーと共に、「店=魅せ」のスタイルを描いてみたいと思います。(第182話に続きます)

2016-11-16%ef%bc%9a%e4%b9%9d%e5%b7%9e%e7%94%9f%e7%94%a3%e6%80%a7%e2%91%a0

 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

※内容の案内/購入手続きはコチラ

Amazon からのご購入はこちら  をクリックしてください。

その他の書籍は下の写真をクリックしてください。

DSC_0165
その他の著書は上の写真をクリックしてアマゾンからご購入ください。

 

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第254話)

第254話:なぜ財政出動が有効か

 新型コロナウィルス感染拡大による悪影響が強まる中、世界各国で財政措置による景気対策に向けた動きが相次いでいる。主要国における財政措置の規模を概観すると、米国の規模が他国を圧倒して大きいことがわかる。米国のトランプ政権は、事業規模で2.2兆ドル(GDP比9.9%)、財政措置で1.4兆ドル弱(GDP比6.1%)の大型経済対策法案を成立させている。

 欧州でも、EU首脳が加盟国に課す財政ルールを一時棚上げし、各国の大胆な財政出動を認めている。こうした中で日本政府も、生活保障のための現金給付や助成金支給にコロナ収束後の需要喚起のためのクーポンやポイント発行等も組み合わせて、リーマンショック時を上回る対策を講じるとしている。

 そもそも財政政策とは、国の歳出や歳入を通じた総需要の操作によって実体経済に影響を及ぼす政策であり、マクロ経済学の教科書を紐解けば、金融政策と並ぶ経済政策の柱となっている。そして、歳出面による総需要の操作として公共投資や政府サービスの増減が行われ、歳入による総需要の操作として減税や増税がそれぞれ行われる。期待される効果としては、一般的に需要創出によって失業を減らすことによる社会の安定や、公共事業によるインフラの充実により国の競争力向上等に結びつけること等があげられる。

 こうした中で、世界各国が積極的な財政政策を打ち出している背景には、特に先進国経済が長期停滞に直面しており、金融政策のみではこの危機に対応できないという事情がある。というのも、リーマンショック以降、先進各国はマイナス金利になるまで金融緩和を行ってきたが、長期停滞を克服できておらず、金利操作による伝統的な金融政策が効力を失ういわゆる「流動性の罠」に陥っている。また、財政赤字の拡大により金利上昇や自国通貨高を通じてクラウディングアウト(民間投資需要の抑制)が起こるというマンデルフレミングモデルの観点からすると、今回のように世界各国が財政政策を採れば、自国通貨が押し上げられるという効果は限定的となろう。更に、先進国を中心に世界的にインフレが起こりにくくなっていることを背景に長期金利が上がりにくくなっており、結果としてクラウディングアウトが生じにくいということも財政政策を容認する一因になっているといえよう。

 そして何よりも、過剰貯蓄により特に日本や欧州の中立金利がマイナスの状態にあり、金融政策のみではこの危機に対応できない中では、元米財務長官のサマーズ氏や元FRB議長のバーナンキ氏、ノーベル経済学者のクルーグマン氏、元IMFチーフエコノミストのブランシャール氏、等の主流派経済学者が指摘しているように、積極的な財政政策を打ち出すことは、経済主体が長期的には合理的でも市場の失敗は財政で補うという新しいケインズ経済学(ニューケインジアン)の視点からも正当化されつつあることが背景にある。(第255話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

MMTとケインズ経済学

21世紀版のケインズ革命は、今まさに起こっているのか?
例外的な環境下において、赤字財政を推進したケインズの学説は、経済学に大きな影響を与え、ケインズ革命と呼ばれた。MMTはインフレ率に注意さえすれば、赤字財政は際限なく出すべきと主張する。本理論は21世紀のケインズ革命となるのか?

第1章  ケインズ経済学の衝撃

第2章  MMTとは

第3章  ケインズ経済学とMMTの違い

第4章  MMTの考え方(MMTは日本で実現するのか?)

第5章 アベノミクスの検証

第6章 日本の財政の誤解

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)