清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第177話)

第177話:気も心も「明るく」なる詩(うた)に触れる日々を思う今。

 オリンピックイヤーの今年。海外への逃避行や新型ウイルスの話と、余り楽しくなる話題のないままに時が刻まれているように思えます。

 春一番も吹いて、漂う空気に間もなく「春」の気配を感じるようになります。季節の移り変わりに、時の流れを感じるもの。

 時の流れと言えば、歌があります。「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉もあるように、その時々の世相をも反映して流行りすたりを繰り返す。まさに「流行歌」。

 幼かった頃の自分を思い起すには、昔の写真を見ることもあれば、昔の友との会話もあります。それぞれに懐かしさがこみあげて来るもの。そしてまた、往時の歌を口ずさむのも良いもの。時を超えて、自分自身が10代の若者に返ったような気になることがあります。その時に思ったこと、考えたこと、感じたこと。楽しいことだけではない。嫌なことも思い起こし、その折の自分の気分が浮かんできます。

 テレビ視聴者の高齢化があるからか、昔の流行歌がテレビを通じて流れる機会が以前よりも多くなったような気がします。思い出の歌謡曲といった類の番組です。昭和の時代に歌われたものが多く、更には自分の両親が口ずさんでいた歌もあります。

 今の時代に流れる歌と、往時の歌との違いは、幾つかあるように思います。何よりも、歌詞が違う。日常的な自分の心を語るところは同じですが、昔の歌の方が、素直に自分自身の想いを告げようとしているように聞こえてきます。そして内容に違いを感じさせるのは、「つらい」という言葉と「明るく」という言葉をよく耳にするところです。

 「つらい今日(今)を見つめながらも、明るく(明日を)生き抜こう」といった内容のもの。なかには“明るく~、明るく~、生きるのよ♪”といった歌詞もありました。今日の繰り返しに未来を見ていた昭和。今日の繰り返しは今日と同じに過ぎない、と思う現在。流行歌の歌詞に、時の流れを感じることがあります。(第178話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第247話)

第247話:新型肺炎が日本経済に及ぼす影響

 日銀の黒田総裁は、4日の参院予算委員会で新型肺炎による日本経済への影響がSARSの時よりも大きくなる可能性を指摘した。

 単純に比較すれば、震源地である中国経済への影響が大きくなることが想定されるが、そう単純には比較できないだろう。というのも、日・中の製造業PMIを比較すると、中国は昨秋から情報関連財の在庫調整終了や5G関連の堅調な需要等により拡大に転じていたのに対し、日本は消費増税や台風の影響などもあり、悪化が続いている。このため、回復の頭を抑えられる中国よりも、悪化が増幅される日本の方がタイミングが悪かったといえよう

 内閣府の景気動向指数に基づけば、日本経済はすでに2018年11月から景気後退に入っている可能性があり、当初は中国経済にけん引されて循環的に日本経済も底打ちする可能性があった。従って、新型コロナウィルスによりそれが後ずれする可能性があるといえよう。

 さらに、これから本格化する春闘への影響も心配される。2020年度は新型コロナウィルスの影響がなくても、4月から中小企業に残業規制が導入されることや、大企業で同一労働同一賃金制度が導入されること等により、正社員を中心に賃金が上がりくいことが予想される。したがって、今回の新型コロナウィルスがさらに賃金の下押し圧力になる可能性もあろう。

 今回の「新型コロナウィルス」は中国の春節の時期に拡大したため、日本の中国人観光客が激減した。特に、中国の旅行会社が団体旅行を当面中止した1月27日の時点で日本旅行業協会が調べたところ、1月27日から3月末までに団体旅行で来日する予定だった中国人向けに日本の旅行会社が「身元保証書」の申請を受けたのはおよそ40万人分に上り、これらの旅行のほぼすべてがキャンセルになる可能性があるとのことである。

 仮にこれが現実となれば、中国人観光客の平均消費額は2019年10-12月期時点で21.1万円(観光庁)だったことからすると、それだけで▲800億円以上のインバウンド消費が失われることになる。

 SARSの時は3月末から感染が拡大し、7月に終息宣言となった。このため、これらはSARS同様の前提では今年5月にも新型コロナの終息宣言が出ることが期待される。しかし、訪日中国人観光客が毎年夏場に最も盛り上がることもあり、仮に夏に控える東京五輪まで長引くことになると、その影響はさらに甚大なものになるだろう。

 このように、今回の新型コロナウィルスの影響で中国を中心としたインバウンドが日本経済を下支えしている実態が浮き彫りになったが、そもそもインバウンドに頼らざるを得ない日本経済の長期停滞が問題である。日銀の若田部副総裁は、リスクが大きくなって物価上昇の勢いが失われる恐れが高まれば、躊躇なく追加緩和する旨発言しているが、金融政策のみでは限界に近付いていることも確かである。このため政府は、感染拡大を一刻も早く食い止めると同時に、大胆なワイズスペンディングで少なくとも経済活動が正常化するような経済環境に戻すことが最優先といえよう。(第248話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第246話)

第246話:新型肺炎が中国経済に及ぼす影響

 新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない。中国本土だけで感染者数は4万人を超えており、日銀の黒田総裁も、4日の参議院予算委員会の発言でその影響がSARSの時よりも大きくなる可能性を指摘している。

 これに対して、新型コロナウィルスに対する日本政府の対応を経済的な観点から見れば、中国の初動が遅れる中で、最大限やれることはやっているように映る。しかし、メディアの過剰報道などもあり、消費者心理や経済に悪影響を与えている部分もあるため、政府は正しく恐れるように情報発信を強化すべきだろう。

 中国の民間シンクタンク「恒大研究院」の試算によれば、飲食や小売り、娯楽・観光産業など春節関連の損失だけで▲1兆元(▲16兆円)以上の損失となり、2020年の中国GDP成長率は5~5.4%と試算している。また、中国社会科学院の張明氏によれば、このままサービス業や消費へのダメージが続けば、2020年1-3月期の中国経済成長率は5%台を下回る可能性も排除できないと指摘している。

 そこで以下では、2003年SARS当時を振り返り、中国の経済成長率がどれだけ押し下げられた可能性があるかを試算した。具体的には、最もSARSが流行した2003年度に経済成長率がそれまでの水準からどの程度乖離したかを調べた。

 計測結果によると、SARSの際には2003年度の経済成長率が▲0.9%以上押し下げられたことになる。当時はSARS以外にイラク戦争の影響も加わっているが、今回も当時と同程度の影響が出現すると仮定すると、上述の中国の民間シンクタンクの試算はリーズナブルな数値といえよう。ただし、当時の中国GDPの世界シェアが4%だったのに対して、昨年には18%程度まで拡大していることからすれば、世界経済への影響が今回の方が大きくなることは容易に想像できよう。

 特に「新型コロナウィルス」の影響で止まっている中国のサプライチェーン稼働の見通しが立たないと、日本をはじめとした世界経済への影響も大きくなろう。場合によっては、部品や製品の供給減により、製品が値上げされる可能性も否定できない。一方で、原油価格が急落しているため、エネルギー価格が下がる恩恵が部分的に生じるだろう。

 こうした「新型コロナウィルス」の影響を抑えるために、中国人民銀行は公開市場操作で3日に1.2兆元(約18.7兆円)、4日に0.4兆元(約6.2兆円)を金融市場に供給した。その後、上海市場はいったん落ち着いたことからすれば、迅速な対応で株価の底割れを最小限に食い止めたという意味で評価できよう。

 さらに、中国政府は「新型コロナウィルス」で落ち込んだ中国経済を立て直すべく、さらなる財政出動に舵を切ることが予想される。しかし、中国は地方政府や民間部門の債務が膨張しており、今回の対応で景気対策をやりすぎると、リーマンショック後の4兆元景気対策の後にチャイナショックが生じたように、来年以降に予想される景気対策後のデレバレッジ(債務の削減)局面で急減速するリスクがあることには注意が必要だろう。(第247話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第245話)

第245話:大幅改定相次ぐGDP統計

 GDP統計の改訂が相次いでいる。昨年12月9日に発表された2018年度GDPの第一次年次推計値では、実質成長率が+0.3%とそれまでの速報値の+0.7%から▲0.4%ポイントも下方修正された。また、同日発表された2019年7-9月期の四半期GDP二次速報値では、実質成長率がそれまでの前期比年率+0.2%から+1.8%へ実に+1.6%ポイントの改定となり、市場関係者の混乱を招いた。一方、米国のGDPも改定が行われるが、2019年7-9月期の改定状況(速報同+1.9%→改定+2.1%)を比較しても日本の改定が異常に大きいことが分かる。

 このように、GDPは国の経済成長や景気動向を示す重要な統計であり、世界的にも注目度が高いにもかかわらず、日本のGDPは一次速報と二次速報、さらに確報の各時点で大きく改定されるケースが目立つ。なぜそうしたことが起こるのか。そこで今回は、GDP統計の推計方法の問題点を改めて振り返る。

 結論から述べれば、第一年次推計値(年度末から約9ヶ月後)の改定は、それまでの速報値が需要側と供給側の両面から簡便的に推計されるのに対し、速報値とは異なるより充実した供給側のデータのみから新たに推計し直されることが主因である。

 GDP第一次年次推計値の算出手法を簡単に説明すると、経産省の「生産動態統計」「商業統計表」「事業所統計」等、各種カバレッジの広い供給側の年次データを使用したコモディティー・フロー法(以下 コモ法)と呼ばれる手法によって算出される。これは、品目ごとに当該年度における生産、輸出入、在庫増減等を把握して総供給を推計し、これらの品目を流通段階ごとに消費、投資などの需要項目別に金額ベースで把握する方法である。

 一方、GDP速報値の個人消費と設備投資は、①需要側統計と②供給側統計の両面から算出される。①は前期の実績をベンチマークとして、総務省「家計調査」「家計消費状況調査」や財務省「法人企業統計季報」等の四半期別に得られる需要側統計の前期比で延長して推計している。これに対し、②は第一次年次推計値と同様コモ法により算出される。しかし、第一次年次推計値で用いられる基礎統計は年次データしか取れないため、速報では経産省「生産動態統計」や総務省「サービス統計」、国交省「国土交通月例経済報告」等、四半期別に得られる供給側の統計を使用し、品目数も確報から大幅に束ねて算出している。そして、この前期比を用いて前期の実績をベンチマークとして延長推計することで算出される。

 こうして得られた①と②の推計値が統合され、最終的な速報値となる。従って、第一次年次推計値が改定されるのは、家計(消費状況)調査や法人企業統計季報といった需要側の基礎統計から推計された推計値と、コモ法によって供給側統計から推計された推計値にかい離が生じることが原因と言える。(第246話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第176話)

第176話:「ブランド」は自己納得の証として存在するようです。

 決して時に追われるような生活をしているわけではありませんが、私はいつも左腕に時計をしています。最近はスマホに時刻表示があるので、腕時計を持たない人も多くいるようですが、私の場合は腕に時計をすることが習慣化しています。そして状況に応じて身につける時計も違っています。仕事をしている時、休日で家にいる時、気軽な外出の時・・・。それ程の高い意識は無いものの、場に応じて腕時計をつけ替えています。

 仕事の時にしているものと、休日の時計とでは、そもそもその値段が違うのです。仕事の時以外では、1,980円のものが2個。更に、実は480円のものも持っていました。この時計はせっかちなのか一日に20分も進んでいました。それだけ狂ったのでは、日常の生活行動が狂ってしまうので使うのはやめ捨ててしまいました。電池を換える手間と時間と直接コストを考えれば、止む無しだったと思っています。

 一方、仕事の折に身につけているのは、1万円強のもの。驚くほどの値段ではありませんが、私個人の想いとしては、仕事の場は「公」。自分自身が「これなら善し」と思わなければならないと考えています。その際に選択したブランドは「SEIKO」でした。これも、さしたる意味があるわけではありません。中学校入学時に叔父が私に贈ってくれたのが「SEIKO」だったからかもしれません。

 その折の感動記憶がよみがえってくるのか、他にいくらでも時計があるにもかかわらず、自分自身のONの時間を刻むのは、「シチズン」や「リコー」などのメーカーが送り出している情報を耳にすることもなく「SEIKO」です。刻まれる時の正確さが実感できれば良い、との想いを超えた「自己納得」がそこにはあります。他者の声を受け容れようとしない姿勢すら感じさせます。

 ここ数年、マーケティングの領域で語り議論される「ブランド」論も、受け手側に立って自分自身を見直せば、思い入れと思い込みの深耕度合いと見ることが出来るものです。(第177話に続きます)

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清野裕司の「ビジネス心論」


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学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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