清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第173話)

第173話:変化を「みる」マーケティング眼を磨く。

 「現在の市場環境をつぶさにみて、今後の戦略を考えよう」。といった声は、マーケティングの分野で日常的によく発せられる言葉です。ここで言う「みる」とはどのような意味を持っているのでしょうか。漢字で表記すればさまざまあります。「見る/観る/視る/診る/看る」・・・、それぞれに意味を持っています。市場の様子を“みる”のは、これらの複合的な意味になるでしょう。

 先ずは、「見る」ことから始まります。現実に起きている事実を、自分の目で確かめること。単に他人の書いた報告書を読むことで、何となくわかったつもりになるのではなく、実際に起きていることを確認する行為でもあります。

 続いて必要なスタイルは「観る」こと。観劇・観賞という言葉もあるように、対象を明確にして、楽しみながらみることです。問題意識を持って、不思議を発見する姿勢でもあります。更に自らの問題意識を深めるためには「視る」ことが必要になります。細かなチェックリストをもって見直すことです。何を調べるべきか、どこで確認するのかといった視点を鮮明に持っておかないと、時折国会議員の行動が槍玉に上がる物見遊山の視察になってしまいます。

 更にマーケティング・スタッフには「診る」姿勢が必要です。診察の言葉があるように、課題解決の方策を考えながら、現状を再度確認する行為です。そして、実行した後の成果を「看る」ことが続きます。状況の変化がどのような様子であったかを、自分の目で確かめることです。

 マーケティング・スタッフとして、何を見るか、何を感じるか。変化の波は、誰に対しても押し寄せてきています。問題は、その変化をどのような見方で「みて」いるかの姿勢が問われるのです。

 新しい「子の年」も、自らの目と心眼をもって、時代の変化を「みつづけて」いたいと思います。(第174話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第239話)

第239話:2020年のマーケット展望

 2020年のマーケットを展望するうえで最大の注目は、トランプ大統領と民主党候補者の経済政策である。トランプ大統領の経済政策の特徴を勘案すれば、更なる拡張的な財政政策への期待と保護主義的な通商政策の懸念が残る。

 一方、民主党候補者の一人であるバイデン前副大統領はトランプ政権の保護主義を批判しており、通商面で不透明感が少ないと見られている。また、企業に対する規制に対しても前向きでない点が、金融市場にとってポジティブだろう。しかし、同じ民主党候補者のウォーレン上院議員は、反自由貿易主義で企業や高所得者への増税、企業への規制強化を打ち出しているため、民主党候補者が誰になるのかも金融市場の大きな焦点となろう。

 日本経済への影響としては、ウォーレン上院議員が勝ち上がり、米国経済が大きく落ち込むことになれば、日本の経済成長率もかなり押し下げられることになるだろう。また、トランプ大統領が再選を果たしたとしても、トランプ政権の政策運営もリスクだろう。というのも、次の再選はないため、経済そっちのけで米中通商摩擦が激化することになれば、米国経済が景気後退に陥り、円高・株安を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性がある。

 2019年のマーケットは、夏ごろまで長期金利が低下トレンドにあったことに加えて、不安定な株式市場でリスクを取りにくい状況にあった。

 こうした中、FRBが2019年7~10月のFOMCで、立て続けに利下げに踏み切るとともに、ECBも9月に緩和にかじを切ったことも、株式・債券市場にポジティブに作用した。しかし、すでにFRBは10月に利下げを打ち止め、様子見の姿勢に転じている。このため、米中貿易協議の進展次第では、世界の株価や長期金利が更なる上昇を試す可能性もある。

 2020年の相場環境については、トランプ大統領が再選を目指すべく、経済重視に政策がシフトすることが予想される。また、日本でも東京五輪特需が期待されることに加えて、中国が2010年比でGDPを倍増する目標期限年でもある。このため、リスクオン気味に推移するとの見方が強まれば、世界の株式市場の押し上げ圧力となる可能性がある。

 ただし、年後半以降はこれらの重要インベント効果が剥落することが意識されるだろう。特に米国では、大統領次第で米中の覇権争いが再び激化することが懸念され、任期満了に近づく安倍首相が経済政策後回しで憲法改正に邁進するリスクも警戒される。年後半はリスクオフに伴う株価の下落が金利低下・円高を後押しする展開になるかもしれない。

 なお、リスクは金融市場のバブルである。特に米国経済は景気後退の前に必ず見られる逆イールド(長期金利が短期金利を上回る)の状況にあったため、予防措置的な利下げに動いた。しかし、98年のLTCMショック(米国大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻)後の逆イールド発生時の様にFRBが利下げをしすぎるようなことになれば、99年以降のITバブルのように、今回も短期的に金融市場でバブルが発生しその後崩壊する可能性もあり、その場合には日本経済への悪影響も無視できないことになろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
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永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第172話)

第172話:マーケティング思考の基本は「対」を考えること。

 マーケティングを企業行動に取り込もうと考えている経営者もスタッフも、改めて振り返ってみて欲しいことがあります。共に企業で日々汗をかいていても、いざ仕事を離れれば、皆、消費者であり家庭人です。企業行動のガイドとしてのみマーケティングを捉えてしまうと、人間不在になってしまいます。

 「送り手」である企業の思考は見えてくるのに、「受け手」である顧客の思考が欠落してしまう恐れがあります。マーケティングは、「送り手」と「受け手」の良好な関係を生み出すことを主題にして、ビジネスを考える思考のガイドなのです。であるならば、「送り手」思考を持っただけでは、一方通行になってしまうことになります。自分自身が「受け手」の思考をもって、はじめて両者の関係の中に自分を置くことが出来るのです。つまり、何事においても相手があって初めて「交換」が成り立つと考えれば、マーケティングの基本思考は常に「対」で考えることが必要であることを教えているのです。

 ある現象を知るためには、全体を見るために細かく分けて考える「分析」する力が問われます。Analysisの力です。でも、細かく分けて詳細が分かっても全体が見えなければ新たな姿は見えてきません。「総合・統合」Synthesisが必要です。

 「売る」ことができるのは「買う」人がいるから。「つくる」人は「つかう」人のためにつくっていることになります。

 では「ありがとう」の対は何でしょうか。ありがたいを漢字で書くと、「有ること難し」です。あることがほとんどないから「有難し」です。これを反対から見てみると、あることが「あたりまえ」ということになりますから「当然」が対ということになります。お店とお客様との関係でいえば、「ありがとう」を発信するのは「めったに出会うことのない商品を買うことができた、ありがたい」で「ありがとう」とお客様が言う。それに対して「私どもでは、いつもお客様が新しい出会いを感じて頂けるように心がけております」。口には出さねど「当然のことをしたまでのこと」という対の関係が出来てきます。

 お客様からどれほどの「ありがとう」を頂けるかが、マーケティングの基本行動になると考えられるのです。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第238話)

第238話:目まぐるしく変わる家計の負担状況とマーケット

 2020年の消費を占う上では、家計の負担増も大きなカギを握っている。今年10月に引き上げられた消費増税については、軽減税率の負担軽減を加味しても、2019年対比で3.5兆円の家計負担増となる。しかし一方で、年金生活者に対する支援給付金により2019年対比で0.4兆円の負担軽減となる。また、消費増税の使い道として増収分の一部が10月から幼児・保育無償化に充当されており、2020年4月から大学無償化へも充当されることになっている。このことから、子育て世帯を中心に2019年対比で1.2兆円の負担軽減になると計算される。

 ただし、消費増税に伴う負担軽減の時限措置の多くが2020年に期限を迎えることにも注意が必要だろう。例えば、プレミアム付き商品券と次世代住宅ポイントが3月までで終了する。また、キャッシュレスポイント還元も6月末に終了の予定である。さらに、自動車税環境性能割軽減も9月末で終了する。

 加えて、年明けから給与所得控除の見直しや、10月にたばこ増税といった負担増が予定されている。このため、こうした税制改革が家計に及ぼす影響を試算すると、トータルで2019年に比べて年間1.6兆円の負担増となる。

 なお、企業経営への影響としても、消費税の仕入税額計算などの特例の適用期限が2020年9月末となっている。このため、2019年同様に消費の現場では混乱が生じ、中小の小売業等では廃業が増加する可能性もあろう。

 こうした中、リスクは政治と金融市場だろう。安倍首相が自民党総裁として在任できる最長期限は2021年9月末だが、その翌月10月21日が衆議院議員任期満了となることからすると、自民党総裁選前の2020年中に解散総選挙を行う可能性もあろう。また、安倍政権は憲法改正と改正後の憲法施行の目標時期を2020年12月としている。

 このため、憲法改正案や解散総選挙の状況次第で安倍政権の政権基盤の揺らぎが生じることになれば、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は約6割以上を外国人投資家が占めており、安倍政権の政権基盤が盤石で政治的に安定的であるほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。マーケット環境が悪化すれば、日本経済も困難を強いられることになるだろう。

 また、11月に控える米国大統領選挙に対する不確実性も、日本経済に大きく影響を及ぼすだろう。前回の大統領選のように、世論調査の信頼性が低下すれば、市場関係者は積極的なポジションを取りにくくなり、株安等を通じて米国経済に悪影響を及ぼす可能性があろう。(第239話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第237話)

第237話:東京五輪で個人消費活性化

 2020年の景気を占う上では、2020年の国内最大イベントである東京五輪の開催が大きな鍵を握るだろう。既に建設特需は2019年中にピークアウトしている可能性が高いが、2019年のラグビーW杯でも開催期間中に内外の観光客の増加により、組織委員会が当初想定していた4,300億円を上回る経済効果が発生した可能性がある。東京五輪の開催時期は8月となるため、他の外部環境にもよるが、夏場にかけて東京五輪関連の消費特需が盛り上がる可能性が高い。

 特に、インバウンドの拡大に伴う需要効果は大きいと思われる。なぜなら、政府は2020年の訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の目標をそれぞれ4,000万人、8兆円としているからである。

 2019年の訪日外客数は日韓関係の悪化による韓国人観光客減少の影響等もあり、3,300万人台にとどまりそうだが、2020年は政府目標の4,000万人までは行かずとも、3,500万人は超えそうだ。これに訪日外国人一人当り消費額の約15万円を乗じれば、5兆円を大きく超える旅行消費額の出現の可能性がある。

 更に、東京五輪観戦のための国内旅行やテレビの買い替え等の特需が発生することが予想され、特に6月末にはキャッシュレスのポイント還元の期限を控えていることから、年前半に駆け込み需要が発生することが予想される。

 中でも、五輪特需としてテレビの買い替えサイクルに伴う需要効果も大きいと推察される。内閣府の消費動向調査(2019年3月)によれば、テレビの平均使用年数は9.7年となっている。

 テレビの販売は2019年10月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で少し盛り上がったが、更に前に遡ると、2009年度~2010年度にかけてはそれ以上に販売が盛り上がった。背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下で家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生しており、2020年はそこから10年を経過していることに加え、一昨年末から4K・8K放送が始まっていること等もあり、その時に販売された家電の買い替え需要が期待される。

 中でもテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んでから、買い替えサイクルの9年以上が経つため、買い替え需要はかなりあることが期待される。なお、2020年の東京五輪が実施されれば、日本人のレジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性が高いだろう。(第238話に続きます)

永濱 利廣 氏

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