エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第233話)

第233話:臨時国会中に打ち出される観測の経済対策

 政府は自然災害の復旧作業に対応すべく、10月4日に開会となった臨時国会中に経済対策をまとめることが期待される。特に経済対策の規模については、台風19号の復旧・復興に対して、大型の補正予算が組まれることが予想される。

 そこで以下では、必要な経済対策の規模から計測してみよう。

 経済対策の規模を設定する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPのかい離を示すGDPギャップ率である。直近の2018年のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば+0.4%とプラスを維持している。

 しかし、直近の民間エコノミスト経済成長率平均予測(ESPフォーキャスト10月調査)に基づいてGDPギャップ率を延伸すると、2021年1-3月期時点で▲0.9%のデフレギャップが生じることになる。従って、このGDPギャップを解消するのに必要な規模の経済対策を前提とするだけで5兆円規模の追加の経済対策が必要になる。

 ただし、今回発生した台風、豪雨によって、巨額な資本ストックの被害が発生していることが予想される。実際、国土交通省によれば、西日本豪雨などがあった昨年の水害被害額を1.35兆円(うち西日本豪雨で1.16兆円)と試算しており、発生年度に打ち出された補正予算の規模は3.9兆円となっている。これに対し、総務省消防庁によれば、台風19号に伴う住宅被害は全体で5.6万棟となり、2018年の西日本豪雨の5.1万棟を越えている。また国土交通省によると、今回の台風による浸水被害は2.5万haを超え、西日本豪雨の1.85万haを上回っている。こうした状況に基づけば、すでに国土強靭化関係3か年緊急対策として今年度予算で1.3兆円強の予算を計上しているが、これに加えて需給ギャップの解消に必要な需要創出額5兆円規模の補正予算が必要となる。

 つまり、今回の被害規模からすれば、国土強靭化関係の予算の上乗せを加味しても、災害の復旧・復興の費用に需要不足解消を加えることで、最低でも5兆円程度の規模が必要となろう。(第234話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第232話)

第232話:開催後に判断されるラグビーW杯の成否

 ラグビーW杯が盛り上がった背景には、ラグビー強豪国の訪日客一人当たり旅行支出の効果も大きかったものと思われる。観光庁によれば、昨年の訪日客一人当たり旅行消費額は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、一部アイルランドを含む英国が約22万円、オーストラリアが約24万円と、平均の約15万円を大きく上回っていることがわかる。

 また、2009年度からの家電エコポイントの対象となったテレビの駆け込み需要が2009~2011年にかけて発生しており、2019年はそこから9年を経過していることに加え、10月に消費税率の引き上げを控えていたことから、その時に販売されたテレビの買い替え需要も出現したようだ。

 特にテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んだため、買い替えの潜在需要はかなりあったことが想定される。ラグビーワールドカップのみならず、2020年に東京五輪が控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しした可能性があるだろう。

 しかし、地方のスタジアム等のインフラ整備等に貢献したラグビーワールドカップ特需の勢いは、既に大会開催前の2018年中にピークアウトしている可能性が高い。

 このため、最も注意しなければならないのは、開催後の開催都市経済の反動減だろう。2次利用できない施設は、負の遺産となる可能性もある。消費増税に伴う需要の先食いと実需の減少も相まって、開催後の開催都市の経済には反動減が生じることが予測され、その対策が求められよう。

 また、インフラ整備の名を借りて、無駄なものを作りすぎてしまっている場合には、財政の健全化にマイナスに働くことも考えられることには注意が必要だろう。

 こうしたことから、興行的に成功で終わるかどうかは、国際的な注目が集まったことで、大会後にも世界各国からの旅行者や企業を呼び込むきっかけになったかどうかで判断すべきだろう。

 政府は2020年に訪日外客数4000万人の誘致を目指している。このため、今回のラグビーワールドカップ開催により、開催都市を中心に外国人が訪問しやすい環境が進捗したことが期待される。

 こうした課題の進捗は、実は外国企業の誘致にもつながる可能性がある。日本に進出希望の企業にアンケート調査を行うと、ビジネス環境に求める改善点と観光客の不満点は共通している。「世界で最もビジネスをしやすい国をつくる」ことはアベノミクスの目標の一つであるため、ラグビーワールドカップ開催を契機にどれだけビジネス環境が整うかが成否を左右するだろう。

 来年に東京五輪開催を控え、食や農産物等にもビジネスチャンスがあり、各地域は情報発信の仕組みづくりに更なる重点を置くべきである。東京五輪開催後も反動減の少ない分野を狙い、今から市場開拓を進める取り組みも期待されよう。(第233話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)