清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第166話)

第166話:良い「モノ」には、相応しい「モノ語り」があります。

 自分自身の生活空間を見回してみると、実に様々なモノに囲まれていると感じます。狭い自宅の一室には、TVやPCが置いてある。仕事をする際に着用するスーツやネクタイも同じ部屋です。もう何年も使ったことのないモノまでが同居しています。他人から見ればガラクタに過ぎないモノも、自分にとっては捨てがたく身の回りに取り置く結果になっています。どうしても空間自体が狭まってしまい、そのことを承知で、たくさんのモノに囲まれて時が流れます。

 思えば長く消費者として生きてきた自分。そして、多様なモノを購入してきました。その時々で無用とは当然思わずに購入したモノです。しかし、時は流れます。自らの生活スタイルも変わるもの。時々に輝きを見せていたモノたちが、いつの間にかその輝きを失い、今の自分にとっては無用のモノになってしまっています。生活循環の宿命でしょうか。存在しているモノが、過去から今までの「物語り」を思い出として語っていくようになります。

 仕事柄もあるとは思いますが、いつも街や店を見ていると「こんなモノがあればよいのに」「便利になるモノを見つけた」と悦にいることがあります。しかし、それらをどのような場面でいつ使うのかとなると、判然としないコトがあります。モノは手に入れてしまえば自らの保有物になりますが、使い始めて価値を生み出します。そこでのモノの持つ意味や役割がはっきりしなければ、「事始め」にはなりません。使ってみてはじめてそのモノの良さを再認識するコトがあります。もちろんその逆に、即刻無用の長物と化してしまうモノもある。

 企業の製品開発において、「モノ発想」ではなく「コト発想」の重要性が言われます。もの言わぬモノに「物語り」を語らせるためにも、そのモノの存在する時間と空間を想定し、合わせて登場する人間を考えておかなければ、コトは始まらないのです。(第167話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

10冊目の新書が出ましたので是非お読みください。

清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第223話)

第223話:製造業が悪い一方で非製造業が底堅い景気指標の背景

 日銀短観について、業況判断指数の推移を過去に遡って眺めてみると、2015年度後半以降のチャイナショック局面では、製造業・非製造業とも悪化していたことがわかる。 しかし、今回の年明け以降の調整局面では、製造業が大きく悪化している一方で非製造業が底堅い動きをしている。

 そこで、鉱工業生産指数を用いて2014年後半~2016年前半にかけて消費増税からチャイナショックに伴う調整局面の要因分解をすると、消費増税に伴う駆け込み需要の反動等により、輸送機械や電気・情報通信機械といった最終需要財の生産調整が牽引役となっていることがわかる。それに対し、2019年前半の生産調整局面では、電子部品デバイスや汎用・業務用・生産用機械といった情報関連の中間財や資本財の落ち込みで殆ど説明できる。

 そこで今回は、業種の違いで製造業が悪化することによる国内産業への影響について、産業間の取引活動が確認できる最新の総務省「産業連関表(2015年)」を用いて分析する。

 まず、他業種への影響を見るべく業種別の中間投入率を見ると、前回の製造業悪化の主因であった「輸送機械」がもっと高く、「電気機械」や「情報通信機械」も上位を占めていることがわかる。それに対して、今回の調整局面のけん引役である「電子部品」や「はん用機械」「生産用機械」「業務用機械」は、製造業の中ではやや低めの順位となっている。

 そこで、他産業への影響力を見るべく、1単位の最終需要があると全体の産業に何倍の生産波及があるかを見ると、前回の調整局面で最大の押し下げ要因となった「輸送機械」の生産波及力が2.5で最も大きいことがわかる。これ対して、今回の調整局面で最大の押し下げ要因となっている「電子部品」は1.8と製造業の中では比較的低めとなっている。

 更に、最新の産業連関表の逆行列係数表を用いて、各部門の影響力係数と感応度係数を見ると、前回の調整局面の主因となった「輸送機械」の影響力係数は1.40に対して感応度係数は1.09となる。つまり、「輸送機械」は他部門の生産活動に大きく影響を与える一方で、他部門の生産活動からの影響も受けやすいことがわかる。

 それに対して、今回の調整局面の主因である「はん用機械」「生産用機械」「業務用機械」等は影響力・感応度のいずれの係数も「輸送機械」よりも大幅に低く、他部門の生産活動に与える影響も、他部門の生産活動からの影響も「輸送機械」より低いことがわかる。(第224話に続きます。)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第222話)

第222話:IoT積極導入で成長する地域密着企業の事例

 技術革新による製品ライフサイクルの短縮化や情報技術の発展による消費者行動の変化等、中小企業の市場環境は大きく変化している。特に、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット等といった新技術が発展しつつあり、これにより産業構造が急激に変化する可能性がある。

 このような状況の中で、官邸に設置された「ロボット革命実現会議」を元に、中堅・中小企業へのIoT導入の促進を図るため、ロボット革命イニシアティブ協議会に「中堅・中小企業アクショングループ」が立ち上げられた。実際にIoTの実装に取り組む中小企業の経営者、ITベンダー、各種の支援機関等の様々な関係者で構成されている。そして、中小企業のIoT実装やIoTツール導入を促進するための対象方針を整理し、具体的なアクションを定め、実行に移している。

 こうした中、中小企業白書でも、IoTを積極導入することで顧客満足度を高め、成長する地域密着企業の成功事例が紹介されている。この会社は北海道帯広市にあり、1926年創業のバス事業者である。

 この企業は元来、北海道十勝管内の1市13町村にてバス事業者を運営してきた。人口減少による需要の停滞や他の運輸業界との競争激化を受けるも、バス利用者の減少を自然減とあきらめず、利用者の増加を目指した。

 まずこの事業者が取り組んだのは、2008年にバスの沿線世帯への個別訪問により営業を開始し、なぜバスの利用者が減っているのかその理由を探った。そうしたところ、最寄の停留所や経路がわからないという利用者の不安があることがわかり、その不安を解消すべく、ITベンダーと共同でバスの乗り換え案内サービスを開発した。

 これにより、停留所名がわからなくても、目的地のみで経路検索が出来るシステムをアプリで提供することに成功した。更にこの企業が取り組んだのが、IoT技術を活用してバスのロケーションが利用者にリアルタイムでわかるようなシステムを導入したことである。これにより、アプリ上で運行状況が見えるようになり、利用者に到着時刻を通知するサービスを提供することに成功した。

 結果として、特に寒冷地の北海道で問題になる冬季のバスの到着時刻のばらつきというバス利用者の不安が解消され、顧客満足度が高まったとのことである。

 こうした各種取り組みが功を奏し、この事業者は3年後の2011年に増収を達成した。また、今後はバスに取り付けたセンサーで乗降客数を計測し、ダイヤ改正に生かすことを検討しているほか、アプリ上で十勝管内の観光地情報やその目的地までのバス経路を紹介する等、観光地の増加による地域活性化にも取り組んでいる。

 このような、IoT等の技術革新による新たな仕組みについて、現時点での中小企業における活用度合いはまだ低い。しかし、活用している企業は売上高の増加や業務コストの削減等の効果を感じており、中小企業にとっても成長に機会につながる可能性がある。(第223話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第221話)

第221話:高齢無職世帯の平均収支状況

 家計調査(2018年)によれば、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)は、実収入が月平均で222,834円となっている。そして、その内訳を見ると、社会保障給付が203,824円と全体の91.5%を占め、大部分を公的年金等が占めていることがわかる。

 一方で、消費支出が235,615円、税金や社会保険料等の非消費支出が29,092円となっており、月間の収支では41,872円の不足が発生している。そして、月平均の不足額は前年比で大幅に減少しており、過去3年で見ても減少傾向にある。

 しかし、二人以上の高齢無職世帯の実支出は、世帯主の年齢で変化していることには注意が必要だろう。毎月の不足分は世帯主の年齢階層別によって変わってくる可能性がある。そこで以下では、総務省の家計調査年報(2018年)を基に、60歳から5歳刻みで家計の収支を見てみる。

 まず、収入面を見てみると、「実収入」と年金等の「社会保障給付」に分けてみることができる。そして、実収入に占める社会保障給付の割合を見ると、世帯主が60歳以上の「高齢無職世帯」の収入の柱は「社会保障給付」であることがわかる。

 現在の年金制度は、64歳以前の年金は満額の受給とはならない。このため、世帯主が65歳以上世帯の社会保障給付は平均19万円台と安定して推移しているが、世帯主が60-64歳世帯の社会保障給付は11万円台と少なくなっている。このため、二人以上の高齢無職世帯の実収入は、世帯主が60代前半では年金を中心に少なめだが、世帯主が60代後半以降は20万円を上回る安定した収入が続いている。

 続いて、支出面からみてみると、税金等の「非消費支出」を除いた「消費支出」は、世帯主が60代前半で最も高く、月平均で27万円を超えている。しかし、それ以降は徐々に消費支出が減り、世帯主が85歳以上では20万円を若干上回るところまで下がる。

 また、毎月の不足額を見ると、世帯主が60代前半では11万円を上回るが、世帯主が60代後半から70代前半では6万円前後に縮小し、世帯主が85代後半以降に至っては、6,000円以上の黒字になっていることがわかる。

 つまり、仮に世帯主が60代前半まで働き、60代後半からは無職になり、それまでの貯蓄を切り崩して30年間生活すると仮定すれば、今後の年金支給額が不変とすると、((5.8万円+6.0万円+4.2万円+2.3万円)×5年-0.6万円×10年)×12か月=1,029万円の貯蓄が必要と試算される。このため、現役世代も老後のどこかでは無職になることを想定し、退職金も含めて蓄えを形成していくことも重要と言えるだろう。(第222話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第165話)

第165話:夏休みの「疲労感」に「ガンバレ」一声。

 仕事柄、月に数回の出張がありますが、夏の出張は普段のそれとは若干様子が異なります。いつもの新幹線、いつもの飛行機で、小さな子どもを連れた家族と一緒になります。夏休みという時期です。その光景に何の違和感もありません。ただ、こちらは書類の入った大きなバッグ。一方は、やはり大きなバッグを片手に、そして片方の手は子どもの手を持つ、そんな父親。いつもは、スーツ姿であろうと思われる男性が、今日はもうひとつの顔を見せています。

 子どもは、なかなか親の言うことを聞かないもの。空港に着く。雑踏の中、不安そうな顔は父親。子どもは、さもその混雑を楽しむように動き回る。好奇心を止めることは出来ない。危険の度合いをどのように測るべきかは、そのときの状況によります。何に対しても「駄目」を繰り返していたのでは、新しい発見や発明をしようとする心を抑えてしまうことになってしまいます。父親はあきらめて、待合コーナーの椅子に腰を下ろす。母親が不安と、子どもを叱らぬ父親への不満を顔に表しながらも隣に座る。

 搭乗時間が近づく。子どもの姿が見えない。ちょっとした隙に、売店かどこかに行ってしまったようだ。父親の出番。周りを小走りに動き回る。見つけたようだ。また片方の手はしっかりと子どもの手を持っている。それだけの動きで、額に汗をかいている。家族旅行出発前から、既にして疲れている。

 幼い子どもを連れた旅行。それなりに骨が折れます。疲れる。荷物も重い。しかし、周りを見れば、殆どが同じような境遇の男性諸氏。個別の状況は違っても、立場は同じ。大きな荷物は、出張者も同じ。精神的な疲労感も、子どものことか仕事のことかの違いだけで、同じかもしれない。

 夏が過ぎれば、同じ境遇での仕事の時間が待っているもの。せめて夏休み、家族が原因の疲労感の蓄積をもって秋を迎えた方が、仕事の疲労感を持ってのそれよりも、よほど健全でしょう。夏休みの父親に、「ガンバレ!」の声をかけた空港での一こま。(第166話に続きます)

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代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」


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