清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第163話)

第163話:「やすい」は、「安い」だけではなく「易い」もあります。

 世界規模での経済停滞を感じるからでしょうか、販売の一線では、どうしてもモノを「安く」売ることが当たり前のような空気が流れているようです。売りの仕掛けでもありますが、かつて携帯端末を「0円」でばら撒いた時をほうふつとさせる場面に遭遇することすらあります。

 そのような時代環境にあってふと振り返ると、果たしてそれが社会的な善なのかを思ってしまいます。

 確かに、機能的な差がないモノの場合には、全く同じモノを少しでも安く購入しようとする心理は働くでしょう。何もわざわざ、同じものを高く買う必然性が無いことは確かです。しかし、購買に至る際の心理は「安さ」だけがポイントなのでしょうか。

 価格の「安さ」だけで、人は店に出向こうとするのでしょうか。もちろん今は、店に行くことなく買い物が出来る環境ではありますが。ここで一度「安い」の反対語は何かを考える必要があるのではないかと思っています。

 交換行為を想定していると、「安い」-「高い」の構図を描いてしまいそうです。であれば「高い」の反対語は何でしょうか・・・。

 「低い」も当てはまります。敷居が低い/腰が低いといった表現があります。つまり、顧客との関係がなかなかうまくつくれずにいる店や仕組みは、どこかに近づきがたいような要素があるのでしょう。

 そう考えていくと、「やすい」の反対語は「難い(にくい)」でもあります。「入りやすい・選びやすい・話しやすい」店と、「入りにくい・選びにくい・話しにくい」店になります。

 マーケティングの発想は、多元的視点の複合です。何も価格の「安い」だけではなく、仕組み自身の「易い」も考えることを忘れていないかを、自問自答していたいものです。(第164話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第216話)

第216話:今年度は増収減益の見込み

 6月13日に公表された4-6月期法人企業景気予測調査は、5月下旬にかけて金融・保険を除く資本金10億円以上の大企業約4千社に対して行った景気予測調査であり、今期業績計画の修正度合いを予想するための先行指標として注目される。

 そこで今回は、7月下旬からの四半期決算発表で堅調な今年度計画が見込まれる業種を予想してみたい。

 まず売上高を見ると、19年度は前回調査から上方修正となるものの、直近2年間の同時期計画よりも増収率が低い計画となっている。このことから、四半期決算でも売上高が上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。

 一方、経常利益は前回調査でも前年比▲0.4%の減益計画となっていたものの、減益率は同▲3.3%と前回調査から大幅に下方修正されている。このことから、7月下旬からの四半期決算発表では、経常利益計画の下方修正も出てくることが予想される中、上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。

 以下では、7月下旬からの四半期決算で売上高の上方修正が期待される業種を見通してみたい。19年度の業種別売上高計画前年比を前回1-3月調査と今回4-6月調査で比較し、この3ヶ月の修正状況を見ると、増収業種の中で最も上方修正幅が大きいのは、自動車賃貸業やスポーツ・娯楽用品賃貸業等を含む「その他の物品賃貸」であり、前年比+1.4%→+12.7%と+11.3ptの上方修正となっている。それに続くのが、洗濯・理容・美容・浴場業や旅行・家事サービス・衣類裁縫修理・物品預り・火葬墓地管理・冠婚葬祭業を含む「生活関連サービス」の同▲1.1%→+4.6%、「建設」の同▲3.3%→+1.2%と、いずれもこの3ヶ月間で大幅に上方修正されている。

 従って、特にサービス業の中でも企業の人手不足等に伴う所得の増加や働き方改革などに伴う余暇時間の拡大を取り込んだ企業では、四半期決算でも上方修正の可能性が高い業種として注目されよう。また、不動産も人手不足に伴うオフィス需要が旺盛のようだ。一方、足元の原油価格の下落に伴い、燃料調整費単価が下がる電気・ガス・水道業等では売上高が下方修正となることが予想される。

 続いて、経常利益計画から19 年度の業績を牽引することが期待される業種を見通してみると、増益率が最も大きいのは、原油急落に伴うマージン悪化や在庫評価損で昨年度が大幅減益となった「石油・石炭製品」の+59.2%ptとなる。それに続くのが、燃料価格や原料の古紙調達価格が落ち着いた「紙・パルプ」の+36.2%pt、昨年度に設備老朽化に伴う操業トラブルが相次いだ「鉄鋼」の+15.9%ptとなる。

 このように、今期の経常利益見通しでは、増益幅の大きい業種として、昨年度に原油をはじめとした市況価格急変動の悪影響を受けた紙・パルプや石油・石炭製品、電気・ガス、鉄鋼に関連する企業が期待される。これら以外の業種でも、人手不足の恩恵を受けやすい職業紹介・労働者派遣業が二けた増益計画を立てていることにも注目だろう。(第217話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

(ご購入はお近くの書店か上の「本の表紙」をクリックしてください。)