エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第220話)

第220話:平均世帯と異なるシニア世帯の支出

 10大費目別に二人以上世帯平均に対する倍率を計算すると、高齢者世帯は「保健医療費」への支出が多く、世帯主が60代の世帯で平均より1.11倍、世帯主が70歳以上の世帯で平均より1.14 倍も支出していることがわかる。

 これを金額で見ても、二人以上の高齢者世帯は保健医療費として世帯主が60代世帯で月 14,659 円、世帯主が 70 代以降世代に至っては月 15,135 円となっており、二人以上平均の 13,227 円よりも月2,000 円近くも多くの支出をしていることがわかる。更に細かい費目別に見ると、特に「保健医療サービス」や「医薬品」「健康保持用摂取品」への支出が増えているようだ 。

 一方、高齢者世帯では「教育費」への支出が圧倒的に少なく、世帯主が60代の世帯で平均に対して0.16 倍、世帯主が70 歳以上の世帯で平均に対して 0.04 倍しか支出していないことがわかる。

 これを金額で見ても、高齢者世帯の教育費支出は世帯主が60 代世帯で月1,866 円、世帯主が70代以降世代に至っては月482円となっており、平均の 11,785 円よりも月1.1万円以上も支出が少なくなっていることがわかる 。なお、高齢者世帯の「その他の消費支出」も金額的にはかなり減 る が、内訳を見ると「仕送り金」が最大の減少要因となっているため、こちらも幅広い意味で子供にかかる負担が減ることを示していることがわかる 。

 また、「交通・通信費」も特に世帯主が70 代以上の世帯で平均に対して 0.62 倍と少なくなっている 。これを金額で見ると、高齢者世帯の交通通信費支出は世帯主が 60 代世帯で月 43,674 円と平均の42,107 円を上回っているが、世帯主が70代以降世代に至っては月 25,919 円となっており、平均よりも月 1.6 万円以上も支出が少なくなっている。

 そして内訳を見ると、特に「自動車関係費」や「通信費」が大きく減っており、運転免許を返納して自動車を手放すシニアが増えるといった年齢的な要因と、そもそも携帯電話やネットの利用が若年世代に比べて少ないシニアの世代的な要因が混在していることが背景にあることが推察され る 。

 更に10 大費目の中で、特に世帯主が70 代以上の高齢者世帯の支出額が平均より月 4,000 円以上減るのが、「食料」「被服 及び履物」「教養娯楽」となる 。そして、それぞれの支出減のけん引役となっているのが「外食」や「洋服」「教養娯楽サービス」となっており、主に外出を伴う負担が減る要因が大きいことがわか る 。

 このように、特に世帯主が 70 代以上の二人以上高齢者世帯の支出の特徴としては、「保健医療」支出が平均対比で月 2,000 円近く増え る が、一方で「教育」支出が 1.1 万円以上、「交通・通信」支出が1.6 万円以上、仕送り金減等により「その他の消費支出」が 7,000 円以上、「食料」「被服及び履物」「教養娯楽」がそれぞれ 4,000 円以上減ることから、トータルで月 23.7 万円と、平均世帯の月 28.7 万円から5万円以上も支出が減ることがわか る 。(第221話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第219話)

第219話:夏場の個人消費に悪影響をもたらす冷夏

 冷夏の影響としては、93年の景気後退局面が有名だ。景気動向指数の一致指数が改善したことを根拠に、政府は93年6月に景気底入れを宣言したが、円高やエルニーニョ現象が引き起こした長雨・冷夏等の悪影響により、景気底入れ宣言を取り下げざるを得なくなったという経緯がある。93年と言えば、日本は全国的に記録的な冷夏に見舞われ、特に東京の7-9月期の日照時間は前年比▲46%も減少した。

 また、2015年10月に予定されていた消費税率の引き上げにおいても、2014年7-9月期の経済成長率をもとに判断するとしていたが、2014年4月の消費税率引き上げやエルニーニョ現象が引き起こした天候不順の影響により予想外のマイナス成長となり、消費税率引き上げを先送りせざるを得なくなった。2014年と言えば、日本は全国的に記録的な天候不順に見舞われ、特に大阪の日照時間は前年を21%も下回った。

 以上の事実を勘案すれば、今年の夏も天候不順が続けば、日本経済に悪影響が及ぶことも否定できない。

 そこで、長雨や冷夏といった天候不順が具体的に日本経済にどのような影響を及ぼすのかを見るべく、近年で最も日照不足の悪影響が大きかった93年と2003年の7-9月期前年比の平均値を基に日照不足が品目別に及ぼす影響を確認してみた。

 総務省「家計調査」への影響を見てみると、消費支出全体では前年比マイナスとなっており、消費全体には悪影響を及ぼしていることがわかる。特に足を引っ張っているのは、季節性の高い「被服及び履物」、交際費などが含まれる「諸雑費」、夏の行楽等を含む「教養娯楽」、ビールや清涼飲料の売上の影響を受ける「食料」、冷房の使用減等の影響を受ける「光熱・水道」となっている。

 従って、冷夏や長雨等の夏の天候不順は、外出の抑制を通じて「教養娯楽」や「諸雑費」といった支出に悪影響を及ぼす可能性がある。また、夏物衣料の影響を受ける「被服及び履物」や冷房器具の利用に関連した「光熱・水道費」、ビールや清涼飲料等の消費の影響を受ける「食料」といった季節性の高い品目に関する支出を押し下げるといえよう。

 そこで、過去の日照時間の変化が家計消費全体にどのような影響を及ぼしたのかを見るべく、国民経済計算を用いて7-9月期の実質家計消費の前年比と全国平均の日照時間の前年差の関係を見ると、両者の関係は驚くほど連動性があり、7-9月期は日照時間が低下したときに実質家計消費が減少するケースが多いことがわかる。従って、単純な家計消費と日照時間の関係だけを見れば、日照不足は家計消費全体にとっては押し下げ要因として作用することが示唆される。(第220話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第164話)

第164話:ビジネスパーソンは、今いる「場」を知ることが大切です。

 ビジネスの世界に身を置いていると、実にさまざまな人に出会います。発想豊かな人。発想は旧来型で面白みは何も無いのですが、いざ行動するとなると素早さを見せる人。アイデアも行動力もさしたることは無いけれども、決められたことを地道に実行するとなると、ルールにのっとって大過なくやり過ごすことの出来る人。多士済々です。

 ビジネスの世界では、その誰かが欠けても、ある一つの道筋がつくりにくいといったことがあります。また逆に、あの人は別にいなくても、他の誰も困ることはない、といった存在の人もいるもの。なぜ、あの人がこのメンバー(部門)に存在しているのだろう、と疑問に感じるような人もいます。

 これが、それぞれ個人の生活となるとさらに様々です。ビジネスの空間では活かされるキャラクターも、日常生活になると全く正反対の性格を見せる人がいます。ビジネスでは行動力溢れる人も、一歩離れると全くといって良いほど動きの鈍い人。その逆にもであいます。ビジネスの中にあっては動きが鈍い人が、いざ自分の家庭や家族のことになると、疾風怒濤の行動力を発揮する。

 そのような人が、お互いの生活観や人生観の話をし始めると、全く話の筋が通じなくなってしまいます。何故わからないのだろう?と疑問に思いつつ、これ以上議論しても止む無しと、何となく合意すること無いままに自分の思いのたけを一方的に話をして終わってしまうことが多いようです。

 どうやら、自分の立っている「場」がお互いに違うようです。立っている場とは、自分が見ている世界でもあります。職場にあっては、共通のビジネス目標を提示され、それに向かって自らの能力や個性を発揮していく「ビジネス場」があります。しかし、個人生活では自分の立場は自分で目標を設定した「生活場」になります。目標が違うのですから、当然振舞いも異なります。

 「場」をわきまえるのは、まさに今自分の立っている「場」を知ることです。「場違い」な振る舞いは、その場の空気すら悪くしてしまうものです。(第165話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第218話)

第218話:1993年以来の7月低温

 関東甲信から東北地方で気温の低い日が続いている。東京都心では全国的に冷夏となった1993年以来、7月に7日連続で最高気温が25度を下回っており、市場関係者の間では景気への悪影響を懸念する声も出始めている。

 この背景には、2018年秋から発生しているエルニーニョ現象の影響があるようだ。気象庁によれば、オホーツク海高気圧から流れ込む冷たく湿った風や梅雨前線の影響により関東を中心に日照時間が短くなっている一方で、暑さをもたらす太平洋高気圧がエルニーニョ現象の影響で本州に張り出せずにいるとしている。

 エルニーニョとは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度高くなる状況が、1年から1年半続く現象である。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。

 前回は、2015年夏から2016年春にかけて発生しており、6月と8月後半に冷夏となり、北海道および東日本~西日本で8-9月を中心とした長期的な豪雨となった。

 最も被害が拡大したのは93年夏から冬である。日本は39年ぶりの冷夏となり、大雨や日照不足もあって稲作を中心に農作物に被害が出た。

 気象庁の過去の事例からの分析では、エルニーニョの日本への影響として、気温は西日本を中心に平年より低い地域が目立つことや、降水量は平年より多い地域が多く、西日本の日本海側や東日本の太平洋側で顕著となること、更には、梅雨明けは沖縄を除き遅くなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

 実際、エルニーニョの発生時期と我が国の景気局面の関係を見るべく、過去のエルニーニョ現象発生時期と景気後退局面を図にまとめてみた。すると、90年代以降全期間で景気後退期だった割合は25.4%に過ぎない。しかし驚くべき事に、エルニーニョ発生期間に限れば46.6%と通常の1.8倍の割合で景気後退局面にあった事がわかる。特に90年代以降で見てみれば、91~92年と93年のエルニーニョ現象は、91年3月~93年10月まで続いた景気後退局面に含まれる。また、97~98年のエルニーニョは、殆どの月が97年6月~99年1月まで続いた景気後退局面に含まれている。更に、2012~2013年のエルニーニョも多くの月が景気後退に含まれており、2018年秋以降のエルニーニョ局面でも、2018年11月から景気後退に入っている可能性がある。

 潜在成長率が4%程度あったとされる80年代までなら、気象要因が景気動向に大きな影響をもたらすことは想定しにくかった。しかし、90年代以降になると、バブル崩壊により潜在成長率が2%程度、最近では1%程度に下方屈折していると言われる状況では、気象要因により景気動向に大きなインパクトが生じることも十分に考えられよう。(第219話に続きます)

永濱 利廣 氏

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第217話)

第217話:6月短観から見た19年度業績見通し

 7月1~2日にかけて公表された6月短観の大企業調査は、6月下旬にかけて金融・保険を除く資本金10億円以上の大企業約1900社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目される。

 まず売上高を見ると、19年度は下期にかけて伸び鈍化となるものの、前回調査からは上期下期とも+0.5%ポイントの上方修正となっている。一方、経常利益は19年度上期で減益率が大幅に拡大しており、前回調査からの修正率も▲5.8%ポイントとなっている。ただし、下期に関しては前年比で+1.6%と増益に転じる見込みは変わってない。このことから、企業は業績の底を今年度前半と見ており、今年度後半は持ち直すと予想している。

 つまり、産業全体で見れば、売上高の半期ごとの伸び率は19年度下期に伸び鈍化に転じるものの、経常利益については19年度下期に増収増益を計画する姿に変わりは無い。特に、年度後半に向けて半導体電子部品を含む情報関連財の在庫循環の底打ちが見え始め、収益回復への市場の期待が高まれば、株式相場の押し上げ要因となることも期待されるだろう。

 続いて、6月短観の売上高計画を基に、上方修正が見込まれる業種を選定してみたい。結果を見ると、製造業では「鉄鋼」「生産用機械」、非製造業では「物品賃貸」を除く全ての業種で増収計画となる中で、前回調査から最大の上方修正率となっているのが「鉄鋼」の+28.5%である。それに続くのが「木材・木製品」の同+8.1%、「通信」の同+2.7%であり、素材業種の上方修正が目立つ。

 従って、19年度の業績見通しにおいては、こうした業種に関連する企業について売上高計画が注目されよう。特に今回は、昨年度に設備老朽化に伴う操業トラブルが相次いだ「鉄鋼」に加え、「情報通信」も引き続き旺盛な日本企業のIT投資意欲の恩恵を受けそうだ。

 続いて、6月短観の経常利益計画から上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、上方修正幅が最も大きいのは燃料価格や原料の古紙調達価格が落ち着いた「紙・パルプ」の+11.5%となる。それに続くのが、インバウンドに加えて10連休や改元の恩恵を大きく受けた可能性がある「宿泊・飲食サービス」の+8.6%、鉄鉱石や原油価格上昇の恩恵を受けやすい商社を含む「卸売」の+7.5%となる。

 このように、今期の経常利益見通しでは、上方修正が期待される業種として、インバウンドや改元・10連休の恩恵を受けたサービス関連に加えて、昨年度に原油をはじめとした市況価格急変動の悪影響を受けた紙・パルプや、資源メジャー減産に伴う鉄鉱石価格の高止まりの恩恵を受けやすい商社を含む卸売関連が期待される。

 これら以外の業種でも、既存ビルの稼働率改善に伴う賃料増加等により、オフィス市況が好調な不動産も上方修正となっていることにも注目だろう。
 
永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
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