清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第151話)

第151話:「点と面と圏」。点の動きが変化を感じさせます.

 仕事柄、月に数回は東京を離れます。東海道新幹線か飛行機での移動が多い。新幹線の場合には町並みを見ながらの移動になるので、その折に改めて「都市部とそれ以外」の二項対立的な情景に接します。一極集中の弊害が言われながら、深い議論にまで至らぬままに時が過ぎていきます。

 そうこうしている内に、グレーの景観が途切れて緑色の景色に変わります。しばらくは緑が続きます。そしてまたグレー。そのことが繰り返されます。東京を中心としたグレーの面の広がりが、時代と共に大きくなっていることを実感するときでもあります。なかなかグレーの景観から離れることが出来ないと、眼が休まることがなくなってしまいます。更には、同質的な景観で面白みがありません。同じ景色を余儀なくされ、変化を楽しむどころではなくなるからです。東京を出てほぼ1時間ほどで、富士山が視界に入ってきます。異界を感じるときです。今までのグレー一色の景観から、緑も所々に見られるまだらの壁紙です。少し、ほっとした気分になるもの。

 面的な広がりを持つからこそ「圏」。首都圏とはまさに言い得て妙。その圏域が東に西に、そして北へと広がりを見せています。東京都の隣の千葉県に「東京ディズニーランド」があり、東京の中心部に入るのに数時間を要するのに、かつて「成田国際空港」は「新東京国際空港」といっていました。面の浸透は、いつか「圏」を無意識的に広域化するようです。そして、生活における壁紙状況をつくっていきます。あること自身が、無意識下に置かれてしまい、変化を身体で感じなくなってしまいます。幾つかの点的な存在が束になって面を形成しているにもかかわらず、その個々の点の存在を忘れてしまうものです。

 点の変化があってはじめて、景観や生活の変化を知るきっかけが得られるにもかかわらず、同質的な面の中に内包されてしまっては、変化への気付きの感度も鈍くなるのは止む無しかと思ってしまいます。

 点的な存在が個々に特徴を発信することに、暮らしの面白さも見えてくるものを、との想いを、点在する拠点を結ぶ線となる新幹線車中で思います。(第152話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第192話)

第192話:2019年の個人消費展望

 2018年の日本経済を一言で表現すると、一進一退だったといえよう。好調な米国経済やそれに伴う為替の安定に加えて東京五輪特需等もあり、大企業を中心に設備投資は好調だったものの、原油価格の上昇や自然災害が多発したことなどにより、個人消費の拡大が不十分だったということだろう。

 好調な企業業績期待を反映して、日経平均株価もバブル崩壊以降の最高値を更新した。それにもかかわらず景気回復の実感が乏しかった原因は、政府が積極的な賃上げ対策を講じた割に、賃上げ率が力不足だったことがある。

 また、エネルギー価格の上昇を主因に上昇した消費者物価が、家計の消費行動に対する慎重姿勢を誘発したこともあろう。

 こうした中、2019年の景気を占う上では消費税率の引き上げが大きなカギを握るだろう。特に、耐久財の買い替えサイクルに伴う需要効果は大きいと思われる。背景には、内閣府の消費動向調査によれば、テレビと新車の平均使用年数は9年強となっていることがある。

 テレビや新車の販売は2014年4月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で盛り上がったが、更に前に遡ると、2009~2010年度かけてはそれ以上に販売が盛り上がった。リーマン・ショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下でエコカー補助金や家電エコポイント政策が打ち出されたためだ。

 2019年はそこから9年を経過していることに加え、10月に消費税率の引き上げを控えていることから、その時に販売された家電や自動車の買い替え需要が期待される。

 特にテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んだため、買い替え需要はかなりあることが期待される。2020年に東京五輪が控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しする可能性があるだろう。なお、2019年の新天皇の即位に伴って、同年のゴールデンウィークが10連休となる。レジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性があろう。

 なお、今回の消費税率引き上げのマクロ的な負担増加額は、引き上げ幅が2%にとどまることに加え、既に決まっている軽減税率導入や子育て世帯への還付等の増税対策を考慮しただけでも、前回8兆円/年の約四分の一の2.2兆円/年にとどまることになる。

 ここに、①キャッシュレス決済によるポイント還元、②プレミアム付商品券、③住宅購入支援、④自動車購入支援、等の増税対策も加味すれば、短期的な負担増加額は更に少なくなることが示唆される。なお、一部報道にあるとおり、軽減税率などを除く新規の対策が総額2兆円を超えることになると、その対策が発動されている間の増税の影響は各種増税対策でほぼ相殺される可能性もある。(第193話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第191話)

第191話:暖冬が各業界に及ぼす影響

 過去の経験によれば、暖冬で業績が左右される代表的な業界としては冬物衣料関連や百貨店関連がある。また、電力・ガス等のエネルギー関連のほか、製薬会社やドラッグストア等も過去の暖冬では業績が大きく左右されている。自動車や除雪関連といった業界も、暖冬の年には業績が不調になりがちとなる。鍋等、冬に好まれる食料品を提供する業界やスーパー、食品容器等の売り上げも減少しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの悪影響も目立つ。一方、屋外娯楽関連サービスや鉄道、外食に加え、コールド系の飲食料品の販売比率が高いコンビニなどには恩恵が及ぶ可能性がある。

 そこで1990年以降のデータを用いて、10-12月期の全国平均気温を説明変数に加えた実質消費関数を推計し、冬場の気温がマクロの家計消費に及ぼす影響を試算してみた。これによると、10-12 月期の実質家計消費と気温との間には、気温が+1℃上昇する毎に同時期の家計消費支出が▲0.6%程度押し下げられるという関係が見られる。これを金額に換算すれば、10-12 月期の平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約▲3,784億円程度押し下げることになる。

 従って、この関係を用いて今年 10-12月期の気温が記録的高温となった2015年と同程度となった場合の影響を試算すれば、平均気温が平年比と前年比でそれぞれ+1.2℃、+1.8℃上昇することにより、今年10-12月期の家計消費は平年および前年に比べてそれぞれ▲4,521億円(▲0.7%)、▲6,772億円(▲1.1%)程度押し下げられることになる。このように、暖冬の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 なお、今回の試算では、エルニーニョで2015年並みの暖冬となったことを前提に試算しているが、これまでの歴史を見ても分かるように、エルニーニョが発生したからといって、必ず暖冬になるわけではない。しかし、実際に暖冬になれば、気象要因により家計の消費行動に大きな変化が及ぶことも十分に考えられる。2015 年の場合、前年の低温の反動や暖冬に加えて、チャイナショックに伴う株価の下落や消費マインドの低迷も手伝って、同年10-12月期の家計消費支出(除く帰属家賃)は前期比年率▲2.7%ととなり、同時期の経済成長率は前期比年率▲1.2%とマイナス成長に陥った。

 また、エルニーニョは世界的な現象であるため、エルニーニョが海外経済にも影響を及ぼすようなことになれば、日本からの輸出減を通じても日本経済に悪影響を及ぼしかねない。

 以上の事実を勘案すれば、今後の景気動向次第では、減速感が明確になりつつある日本経済に暖冬が思わぬダメージを与える可能性も否定できないだろう。特に足元の個人消費に関しては、自然災害や株価下落等のマイナスの材料が目立っているが、今後の個人消費の動向を見通す上では、エルニーニョによる暖冬といったリスク要因も潜んでいることには注意が必要であろう。(第192話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第150話)

第150話:生活コストは生活者の目線で考えることがビジネスの大前提です。

 日常の生活においてもビジネスにおいても、何事にもお金の動きがついて回ります。まさにコストのかかることばかりです。しかし、使うお金も納得できるものと、必ずしも納得できず何とも理不尽と思ってしまうものとがあります。

 自宅で使っていた家電製品のひとつに不具合がおきた時のこと。さしたることもなく、部品が古くなったので新しいものを購入しなければならなくなっただけでした。しかし、長く使ったものなので、交換したい部品があるかどうかが判然としません。昔であれば、近所の電器屋に行き製品番号を確認して貰い純正部品を頼んでおけば、1週間から10日ほどで店を経由して手許に届いたものです。しかし、最近は頼むべき電器屋がありません。

 しからばと、インターネットで製造メーカーのホームページを検索してみます。該当製品の写真が見つかり、更にクリック。やっと行き当たった先のコメントは「製造中止」の一行でした。止む無しと問合せすべき部署を探してみます。「お客様相談」のコーナーが記述され、0120の電話番号も書かれていました。早速掛けてみます。番号案内の声。なかなか人の肉声に出会うことが出来ません。やっと繋がって案内係の人に聞いてみる。「こちらは新製品に関する案内をしております。部品のお問合せは受け付けておりません」と、つれない答が返ってきました。であればどこに掛けるのか。教えてもくれません。再び、購入時のパンフレットに眼をやると、小さな数字が眼に入ってきました。電話番号です。そこに問い合わせる。やっとの思いでたどり着きました。

 部品は取り寄せてくれるとのこと。値段は400円。やれやれ助かった。送って貰えればと頼むと、「送ることは出来ません。取りに来て下さい」とのコメント。何たることと思いつつも、その場所を尋ねます。同じ区内ですが、バスで向かえば往復で420円程かかります。しかし、他に手立てはありません。部品到着の連絡を待つだけです。

 この間にかかった時間は約3時間。購入する部品代は400円。取りに行く交通費が420円。はてさて、部品一つが手許に届くのに、どれ程の生活コストを費やしたことになるのでしょうか。家電メーカーのマーケティング・スタッフは、先ずその制服を脱いで、生活者の目線で計算をして欲しいものです。(第151話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第190話)

第190話:暖冬をもたらすエルニーニョ

 世界的に異常気象を招く恐れのあるエルニーニョ現象が発生している。気象庁が11月9日に発表したエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖の海面水温が高くなるエルニーニョ現象の影響等で暖冬となる見込みとされており、気象庁が11月21日に公表した向こう3か月の予報でも、全国的に気温が高くなりがちと予想している。

 エルニーニョ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度高くなる状況が1年から1年半続く現象である。エルニーニョ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。

 近年では、2015夏から2016年春にかけて発生し、北海道を除く北日本で平年より10日-14日以上遅い初雪・初冠雪、沖縄では12月に長期的な高温を観測した。また12月は日本国内のみならず、国外の多くで北半球最大規模の大暖冬となった。

 気象庁の過去の事例からの分析では、エルニーニョ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが遅くなることで夏の気温は低めとなり、冬の気温は高めとなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

 実際、エルニーニョ現象の発生時期と我が国の景気局面には関係がある。というのも、過去のエルニーニョ現象発生時期と景気後退局面を図にまとめると、90 年代以降全期間で景気回復期だった割合は26.1%となる。しかし驚くべき事に、エルニーニョ発生期間に限れば46.7%の割合で景気後退局面に重なっており、エルニーニョ発生時の景気後退確率は1.8倍となることがわかる。

 特に、2015年のエルニーニョ発生局面では記録的な暖冬に舞われた。気象庁の発表によると、10-12月期の全国平均の気温は前年より+1.2℃程度高くなった。この暖冬の影響で2015 年10-12 月期の消費支出(家計調査)は前年比▲3.2%の減少に転じた。特に、被服履物が冬物衣料の売り上げが不調となったことから、同▲11.5%の落ち込みを記録した。また、交通関連を見ても、暖冬の影響は明確に表れた。同時期の交通・通信支出は暖冬の影響で冬のレジャーやタクシー利用が落ち込み、車関連でもスタッドレスタイヤ等の冬物商材が落ち込んだことで売り上げが低迷した。保険医療の支出動向も製薬関連が落ち込み、全体として低調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、暖冬の影響が及んだ。2015年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+0.3%と伸びが急速に鈍化し、家計調査同様に被服履物の支出額が大幅に減少した。また、冬のレジャーの低迷により娯楽・レジャー関連でも暖冬がブレーキとなった。

 以上より、エルニーニョ現象により今年の冬も暖冬となれば、各業界に影響が及ぶ可能性があるといえよう。(第191話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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