清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第141話)

第141話:「落ちる」と「落とす」。主人公を忘れていることがあります。

 比較的昔から人気の焼鳥屋でのこと。30代と思しきビジネスマンの集団の一人が大声で「箸が落ちたので取り替えて下さ~い。」焼鳥屋で箸とは、串焼き以外に何かを食べながらのことかと思いつつ、瞬間的に耳に入ってきた言葉です。

 ふと、箸は「落ちる」ものなのかと・・・、誰かが「落とした」のではないかと思いました。それとも、テーブルがひどく傾いていて、自然と転がり落ちたのでしょうか。いや、先の言葉は何のためらいもなく発せられています。主体が箸になり、そこに働きかけた何がしかの力が何であったのかが不明瞭なままです。

 主体者は自分であり、自分のミスにより箸を落としてしまった、との思いは見られません。しかし、日常生活では当たり前のように使う言い回しです。「何もしないのに傘が壊れた。だから新しいものを買って。」子どもの言葉。「知らないうちにカメラが壊れた。買い換えなければ。」父親の言葉。

 そして「売上が落ちた。何とかしなければ。」経営者の言葉。「売れなくなった。なぜだろう。」企画マンの言葉・・・。取り上げればきりがありません。主体者がいるにもかかわらず、何となく客体化した言い回しです。

 本来は、「これといった手を打たなかったので、売上を落とすことになってしまった。」「顧客のことを考えることもなく商品化を進めて、失敗してしまった。」と言うべきところなのです。

 主・客の気づきは、自分の思いの中にもあります。そもそも箸は、誰かが何がしかの力を与えなければ「落ちる」ことはありません。明らかに「落として」しまったのだと思うのですが。(第142話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第166話)

第166話:重要な労働市場改革

 人手不足が深刻な状況になりつつある日本経済にとっては、短期的な需要サイドの政策だけではなく、サプライサイドの政策も重要である。日本の人口動態を考えると、特に2020年代後半以降は人口減少が加速し、労働参加率を更に引き上げなければ、経済成長率も非常に厳しくなる。

 実際に足下で、本当は働きたいが何がしかの理由で求職活動をしていないいわゆる就業希望の非労働力人口が360万人以上存在しており、これを考えると、出産、育児や介護等の対応が喫緊の課題になっている。

 このように、労働参加率を更に引き上げ、労働投入量を増加させる鍵は女性と高齢者の活躍が鍵となるが、個人的には外国人も重要と考えられる。

 そういう意味では、女性、高齢者、外国人の就業を阻害している最大の要因が日本特有の雇用慣行であり、同じ会社に長く勤めれば勤めるほど、恩恵が受けやすい就業構造を変えていくことが必要である。

 象徴は、正社員の賃金構造が年功序列となっていることであり、これを打破すべく一刻も早く踏み込みが必要な政策が、正社員の解雇ルールの明確化やホワイトカラー・エグゼンプション(ホワイトカラー労働者に対して労働時間規制の適用を免除する)のような労働市場の流動化を促し労働生産性を上げる政策である。実際にOECD諸国で、労働市場の流動化と潜在成長率の関係を見ると明確な関係がある。背景には成長分野に労働力が迅速に配分されること等により生産性が高まり、家計の収入も増えやすいことが推察される。ここは成長戦略の中でも最も踏み込みが期待される部分である。

 また、外国人の活躍については、全国各地の大学が外国人留学生を増やすことで地方創生にも結びつくと考えられる。諸外国との比較で見ても、日本が受け入れる外国人留学生の比率は低い。日本では留学生30万人計画という目標があるが、日本のインバウンドの消費だけで去年3.4兆円程度であることからすれば、我が国もオーストラリア等の政策を見習って、もっと外国人留学生の増加に力を入れるべきなのではないかと考えられる。(第167話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第165話)

第165話:デフレギャップ解消に必要な財政規模は最低4兆円

 日本経済に求められる経済政策を考える上で、1つ目安となるのは足下の需要過不足の規模である。内閣府が計測した昨年のGDPギャップは+0.4%となっているため、既に日本経済は完全雇用の状況にあり、需要刺激策は不必要ということになる。しかし、国際比較が可能なIMFのエコノミックアウトルックに基づいた場合、今年の日本のGDPギャップの見通しを見ると、世界経済の拡大が織り込まれているため、昨年よりGDPギャップは縮小するも、依然として4.0兆円程度の需要不足が存在することになる。そうだとすると、次の消費増税も織り込んで日本経済を考えると、デフレ脱却は少なくとも2019年度一杯までは厳しいことになる。消費増税という選択は、デフレ脱却と財政再建のどちらを重視するかによって重要な決断になってくると思われる。

 また、これまでのマネタリーベースの増加ペースの変遷を見れば、日銀が国債購入量を減らしても金利水準は維持できている。さらにはイールドカーブ・コントロール下の財政政策は、長期金利の抑制を通じてより需要刺激効果が出る可能性が高く、マネタリーベースの増加ペース拡大に伴う円安も期待できるため、そういった意味では、景気対策の財源は国債発行が望ましいと考えられる。

 なお、景気対策の規模としては、消費増税を実際に行うのであれば、駆け込み需要が出てくるため、消費増税の前に財政の規模はそこまで大きくしなくても良いとする向きもある。しかしその場合は、消費増税後にはそれなりの規模の財政政策を組み合わせなければならなくなるだろう。ただし、足下の状況でも景気対策を十分行わなければ、経済成長は厳しいと予想され、そもそも消費税率を上げる決断をするに当たって相当ハードルが高くなるような経済状況になる可能性もある。このため、消費税率を上げるにしても上げないにしても、景気対策が必要だと思われる。

 ちなみに、財政は大丈夫なのか?という意見もあるが、財政の関連指標はアベノミクス後、軒並み予想以上の改善を示しているというところからすると、早期の財政危機のリスクは殆ど考えられない。懸念されるのは、格付機関による国債の格下げである。2015年の9月にスタンダード・アンド・プアーズが格下げしたが、きっかけはその前に公表された2015年4-6月期のGDP成長率がマイナスになったことであり、アベノミクスに伴う経済成長が期待できなくなったことが理由とされている。しかし、2018年4月13日には、名目経済成長率が2%を超え、実質実効金利がマイナスであることで、政府債務残高が従来の予想よりも早く安定化するとの見方を反映して、日本国債の格付けアウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更した。こうした事例を踏まえると、財政再建を考えるうえでも経済成長重視の政策を進めていくべきと考えられる。(第166話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第140話)

第140話:店の予約対応にサービスの意味を知りました。

 渋谷の百貨店食品売り場での体験談から、顧客の声をどう解釈して対応するかが、サービス品質の差につながることを知りました。

 翌週に開催予定の月例勉強会用に、私の秘書が弁当の予約に出向きました。「カツサンド」で著名なとんかつ屋です。軽食なのですが、値段との関係で見れば、程よい量と彩りで今までも評判の良かったものを11個オーダーするのが目的です。

 2日後の夕刻受け取りに来る旨を告げて予約の依頼をしました。途端に販売員の目つきが変わったと言います。明らかに「めんどう」と思わせる顔つきになる。早々に彼女の後ろでサンドイッチをつくっている年長の男性と一言二言。振り返りざま、おもむろに口を開いて、「ご予約の場合は3日前までとなっております」との発声。もし、店でそのように決まっているのであれば、後ろの人との密談は何だったのかと首を傾げます。店頭には、そのようなガイドラインを示す案内一つあるわけではありません。

 秘書は止む無しと考え、同じ百貨店内の「のれん街」にある同じ店へと向かい、同じことを告げたそうです。そこにいた販売員の女性が申し訳なさそうな顔をして、「ご予約は3日前までになっているのですが、2日後の夕刻であればご準備できるかもしれません。ちょっと電話で確認をしてみます」との言葉。早速に電話をとり、なにやら頭を下げている姿。

 待つこと約2分。「ただいま確認を致しまして、準備が出来るとのことです。改めましてお客様のお名前とご連絡先を・・・」と無事にオーダーすることが出来たとのこと。

 同じ店である。同じブランドである。同じ商品である。つくっている所が違うのでしょうか。老舗名店の文字が、混迷した文字に見えてしまう予約対応の一コマです。(第141話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第164話)

第164話:実質賃金をプラスに持っていくには

 そもそもマクロ経済学上には「完全雇用」という概念があり、経済全体で非自発的な失業者が存在しない状態を示すとされている。そして、その状態における失業率を下回ると賃金上昇率が加速するということで「完全雇用失業率」と呼ばれている。従って、我が国でも非自発的失業者が存在しない失業率の水準が完全雇用失業率の目安となる。そこで、総務省「労働力調査」を用いて非自発的離職が存在しない場合の失業率を求めると、2010年頃までは3%程度で安定していたが、2017 年以降は2.1%まで下がっている。従って、完全雇用失業率の水準自体がここ7年で1%近く下がっており、賃金上昇率が加速するまで労働需給がひっ迫していない可能性が指摘できる。非自発的な離職者が多数存在しているということは、まだ労働供給の余地があることを示している。これが、失業率が下がっても賃金が上がりにくい理由の一つである。

 したがって、実質賃金をプラスに持っていくには、まず低下している完全雇用(非自発的離職者がいない)失業率水準にさらに近づけるべく、金融・財政政策の強化が必要となろう。

 また、日本で平均賃金の上昇を阻んでいるのは、人手不足感が低い企業や職種から人手不足感の高い企業や職種に人材が異動するような労働市場の流動化が乏しいことも一因と推察される。

 実際、厚労省「労働経済動向調査」の職種別過不足DIを見ると、管理や事務以外の職種で不足感が強いことがわかる。

 特に、労働市場の流動化を阻んでいる背景には、同じ会社で長く働くほど賃金や退職金等の面で恩恵を受けやすくなる日本的雇用慣行があると考えられる。

 また、特に就職氷河期世代では非正規で雇われた労働者も多い。そして、こうした非正規化が職場内訓練(OJT)の機会を減らし、若手で経験し、身につけるべきスキルを身に着けられなかったことで生産性低下を招き、結果として賃金を上がりにくくしている可能性もあろう。また、労使協調のもと、苦境でも賃下げしないことが、逆に賃上げを抑制してしまう日本企業独特の慣行もある。

 従って、職業訓練や支援金等を通じた転職支援の充実は、労働市場の流動化を高める経済対策としても有効である。また、労働市場の流動化を妨げている賃金や退職金制度における年功序列体系の改革を進めるためにも、正社員の解雇規制緩和も必要となってこよう。更に、賃金を柔軟に変動させる仕組みの導入や、経営戦略上必要な人材育成に企業が取り組みやすくなる環境を整備することも求められよう。(第165話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

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