清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第139話)

第138話:「縁の連鎖」を見直して「知層」を発掘することも大切です。

 それにしても、ビジネスは「縁の連鎖」構造だと思います。さまざまな出会いの中で自分自身は生かされていることを実感します。自分が出来ることの何と狭く小さいことかということも思い知らされます。だからこそ、プロジェクトを円滑に進めるためには、専門性を持った人を知り、その知見やノウハウをいかにうまく使うかということが鍵になります。「分析脳」が中心の人や「発想脳」が中心の人などの多様な脳が、ある目的によってお互いの力を出し合おうと働きかけると、そこに連鎖構造が生まれて、新たな知見が偶発的に生まれてくることがあるものです。そんな原子の融合のような連鎖もあれば、違った縁もあります。

 人との出会いが「縁」のスタートです。何回か会って話をし、相手を深く知ると、まるで幼い時からの友人のような関係になることがあります。そこまではないまでも、ちょっとした会話から自分のビジネスへのヒントになる発想を得ることもあります。現在のビジネスは、過去に蓄積されたモデルを繰り返し学習するといった環境にはないと思います。そうではなくて、自分の頭で創造(想像)することが求められる環境です。今まで以上に、知恵の連繋が求められているのではないでしょうか。単なる情報を超えた、人的なネットワークも必要です。だからこそ、ビジネス縁の連鎖構造を創出した者が、マーケティングのリーダー役を担うことになるのです。

 知見が積み重なると、単なる経験を超えた自らの知恵になって重なり合っていくものです。さながら幾層にも積まれた地(知)層のようなものです。古代の遺跡を発掘するときに、どの地層から発見されたものかによって、おおよその年代を推定するそうですが、それと同じように、自らが持つ知識や積み重なって生み出された自分なりの解釈は、いつ、どのような学習を通じて重ねられたのかを、時に再発掘するのも良いかもしれません。

 マーケティングを手段として捉えてしまうと、新しい市場は早々拓けるものではありません。それよりも、自らの人生の「縁」を思い起こしながら「知層」を発掘すると、何か新しい発見があるものです。(第140話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第162話)

第162話:景気拡大と財政再建の両立に大きな課題

 長期金利はマイナス金利の影響で2016年3月からはマイナスに沈んだが、その後は日銀のイールドカーブ・コントロール導入により2016年12月からプラスに転じた後、現在は+0.0%台の水準にある。

 2016年9月から長期金利が上昇したのは、日銀がイールドカーブ・コントロールを導入したことと、トランプラリー等により景気が回復しそうだとの観測を反映した面が大きい。基本的に景気が良くなる期待が高まれば、物価上昇期待も高まり、金融緩和の出口の可能性が出てくるため、長期金利の上昇要因となる。

 ただ、近年では日銀のイールドカーブ・コントロール導入により日本と海外の間で長期金利の連動性が低下しており、海外の金利が国内の長期金利に及ぼす影響が小さくなっている。こうしたイールドカーブ・コントロールの枠組みは、世界経済が良いときは緩和効果が増幅されるが、世界経済が悪いときは金融引き締め効果にもなりうるため、金融緩和の効果を見通す上で海外の景気や物価、金利動向などの注視が必要だ。

 こうした中、日本の財政は深刻な状況にあるといわれている。経済協力開発機構(OECD)によれば、日本における一般政府(国と地方自治体など)の債務残高は名目国内総生産(GDP)比で200%を超え、主要先進国中で最大である。時系列で見ると、リーマンショックに伴う世界金融危機とともに急速に膨れ上がったことがわかる。

 ただ、新規国債発行額は2013年度以降減少に転じ、2018年度には33.7兆円まで低下する見込みだ。これは歳入面で企業収益増加により法人税収入が大幅に増えて税収が増加したことに加え、歳出面では社会保障の効率化効果が表れたためである。

 財政破綻を回避するには、名目GDP比で上昇が続く政府債務残高の持続的な上昇を止める必要があり、政府は2025年度に国と地方の基礎的財政収支の黒字化目標を先延ばした。基礎的財政収支とは、債務返済や利払い費を除いた歳出と、国債などの借金を除いた歳入との収支を指す。

基礎的財政収支が均衡すれば、その年の政策に必要な経費を税収で賄え、必要な公債発行は過去の債務の元利払いに充てる分だけになる。さらに名目GDP成長率と債務の名目金利の水準が等しくなれば、債務残高はGDP比で一定となる。

 2018年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支は当初予算ベースで約10兆4000億円の赤字となっている。これをもって、日本の財政は依然永続的に維持できる状況になく、赤字解消のために歳出削減や増税が必要であるとする向きもある。ただ、歳出削減や増税は景気を抑制する効果があり、現在のように先行き不透明感が高まっている中での増税は、税の大幅な自然減収に結びつく可能性もある。

 事実、日本は橋本政権時の1997年に景気が底割れし、増税にもかかわらず財政構造改革自体が頓挫した経験を持つ。同じ過ちを繰り返さないためにも、政府は景気動向を慎重に判断し、景気拡大と財政再建が両立するような政策運営が求められる。(第163話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第161話)

第161話:日銀の「ステルステーパリング」が家計や為替に与える影響

 日銀が公表する「マネーストック」は、金融機関以外の企業や個人等が保有している通貨を合計した統計であり、物価と並んで実体経済の状態を示す指標とされている。しかし、近年は実体経済との関係が不安定となっている。

 マネーストックの中で最も代表的な統計は「M2」である。これは、現金と要求払預金を示すM1に、定期性預金と外貨預金と譲渡性預金を合わせたものである。そして、M2に金融債、銀行発行普通社債、金銭信託、その他の金融商品等を加えたものが「広義流動性」と呼ばれる。

 2017年度の後半以降はM2も広義流動性もマネタリーベースの伸び鈍化により鈍化傾向にある。これは、日銀がステルステーパリング(中央銀行が密かに量的金融緩和を縮小)を行っていることにより、マネタリーベースの伸びの鈍化がマネーストックに波及していることを示す。ステルステーパリング前の2016年はチャイナショックや英国の国民投票リスクを意識してリスク性資産から現預金へのシフトが見られ、M1の伸びは加速したが、2017年以降はM2や広義流動性の伸びが鈍化する中でもM1の伸びが減速している。このように、実体経済が減速感の兆しを強める中、資金取引を包括的にとらえるマネーストックの先行きにも不透明感が漂っていることは、日本経済の先行き懸念材料の一つである。

 一方、外国為替相場は、短期的には国際貿易や資本・金融取引から生じる外国為替取引の需給関係によって決まる。国際貿易では輸出でドル建てのもうけが出れば円に換えようとするため、円の需要が増え円高圧力が高まる。

 しかし、近年では国際貿易より国際的な資本・金融取引の規模が拡大し、影響力を増している。そうした取引は投資した資金から将来どれだけの収益が上がるかに基づいて行われ、金利の低い国から高い国へ資金が流れやすい。このため、為替相場は自国と外国のインフレ率を加味した実質金利の差の影響を強く受ける。

 実際、日米間の金利差と為替相場の動向を見ると、2013年以降は金利差の拡大で、円安・ドル高に進んでいる。しかし、2014年の後半以降は金利差が縮小したが、日銀が量的緩和政策を強化したため、円安ドル高となった。その後、2015年半ば以降からチャイナショック等により金利差見合いで割安だった円が増価し、2016年秋の米国大統領選挙を受けた金利差拡大でドル高円安に進んだが、足元ではトランプ政権に対する不透明感の高まりなどで、金利差拡大する中での円高ドル安相場がもたらされている。

 各国通貨の交換比率である為替レートが注目されるもう一つの理由は貿易への影響である。円高になれば円建てで同じ価格でも輸出時にドルに直すと割高となり、輸出競争力が失われ、やがて景気の下押しにつながる。一方、円高には海外からの輸入品に対する購買力が拡大する恩恵があるが、日本は経常黒字国であり、円高は景気に悪影響を与えやすい。このように、為替相場は経済の動きを受けて変動する一方で、貿易や金融取引を通じて経済に影響を与えている。(第162話に続きます)

永濱 利廣 氏

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経済調査部 首席エコノミスト
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第138話)

第138話:マーケティング思考と行動は「あい」の複合だと思います。

 毎年12月に、その年の様子を言い表す漢字一文字が京都清水寺で発信されます。ここ数年は心躍る文字に出逢うことが少ないような気もします。昨2017年の第1位は「北」。何となく寒々しい想いが浮かんできます。2016年は「安」、その前が「金」です。

 さまざまな横文字が氾濫する中で、改めて漢字の持つ情報力を感じさせることがあります。その文字ひとつを見るだけで、何となく自分自身の生活や過去の体験が浮かんでくるものです。「薔薇」という字は書けなくとも、あの花が浮かんできますし、「憂鬱」という文字を見ただけで、何となく気分も暗くなる、といった類です。

 でば、「マーケティング」を漢字で表現すると、どのような文字があてはまるでしょうか。企業に限らず、さまざまな組織行動の多面的な視点を複合しているマーケティングを、一文字だけで全て語ってしまうのは無謀なことかもしれません。モノや情報の流れを円滑にする行動を捉えれば「流」という文字が当てはまるかもしれません。

 他者との関係を円滑にする循環思想と捉えれば、「還」といった文字も一面を言い当てているように思えます。

 一方マーケティングは、出会いの場の創造と演出とも考えられます。とすると、どうやら「あい」の音の漢字が当てはまりそうにおもいます。
 
 「会」:人が何かのモノやサービスに会う。
 「合」:その人にマッチした商品やサービスを考える。
 「逢」:親密な関係に出逢う。/「相」:常に相手のいることを考える。
 そして「愛」:他者への優しさをいかに現すかは本人の愛情表現。

 変化への適応を考えるマーケティング。そこに変化を見る「マーケティング・アイ」が必要なのも、「あい」を考える必要性を教えているのかもしれません。(第139話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第160話)

第160話:求められる機動的な財政政策

 足下の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、2月以降の株価の下落速度がアベノミクス以降で見ると非常に大きかったことがある。実際、2012年12月のアベノミクス以降の日経平均(月平均)の下落幅を大きい順に並べると、過去最大の下落幅を記録したのがチャイナショック第二弾であり、その次がチャイナショック第一弾となっている。実にその次が2013年6月のバーナンキショック後と今回の株価下落であり、非常に大きなマーケットの調整が起こったことがわかる。

 こうした状況は、既に実体経済にも影響が出ている。アベノミクスの根幹はいかに好循環で賃金を上げるかというところだが、そこに赤信号がともっている。今年の春闘の賃上げ率を見ると、金融システム不安で経済が大きく混乱した1998年以来の水準となりそうである。しかし、1998年度の名目賃金上昇率は一般労働者の所定内給与で+0.8%にとどまった。一方で、原油価格の上昇などにより今年の消費者物価指数の上昇率が1%程度となる可能性があることに加えて、働き方改革の影響もあり残業代収入が減っていることからすれば、今年の実質賃金は2年連続のマイナスの可能性もある。つまり、このまま放置しておくと、今年の日本経済は相当厳しいことになることが想定される。

 以上を勘案すると、日本経済が取り組むべき課題としては、需要刺激策が非常に重要だと考えられる。既に2017年度の補正予算という形で政策がまとめられているが、事業総額を見ると2.7兆円とアベノミクス以降最小規模にとどまっている。相対的に財政規律への配慮が見られる予算となっているが、2016度補正に比べて公共事業費は少なく、非常に力不足である。

 一方、公共事業について、よく建設現場で人手不足ということを言われてきたが、建設労働者の労働需給判断DIを見ると、不足感は緩和の方向にある。また、日銀がイールドカーブ・コントロールを導入している面からも、今、安倍政権始まって以来、最も機動的な財政政策の効果が出やすい時期になっていると考えられる。

 このため、公共事業も一定割合は増やす必要があろう。具体的には、特に介護施設や保育所の増設については昨年度の補正予算では不十分であるため、そうした方向性の増額も考えられるだろう。また、国内の空港整備や港湾インフラといった日本全体の国際競争力が増すような公共投資であれば、国民にも理解される可能性が高いと考えられる。

 さらには、数年前にトンネルが崩落した事故もあったように、老朽化インフラの整備も重要である。日本のインフラは50年以上前に建設されたものが多くを占めるため、老朽化インフラ整備については、本気で取り組めば甚大な需要が存在する。こうしたメニューを上手く取捨選択して、いかにワイズスペンディングという形ができるかが重要であろう。(第161話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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