エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第151話)

第151話:低迷する個人消費 これからさらに増える消費分野は?

 我が国の個人消費は2016年度の名目GDPで見て56.0%を占める最大の項目である。GDPの約7割を占める米国経済と比べれば、我が国の個人消費が景気に与える影響は小さい。しかし、その個人消費がここ数年低迷を続けており、日本経済の自律的な回復を阻害しているといわれている。このため、足元の日本経済を見る上で個人消費は最も注目を集める需要項目の一つとなっている。

 ただ、足元では高齢化が進む中で社会保障の効率化が当初の想定以上に進んでおり、先行きの所得不安や当面の社会保障負担の増大懸念が強まっていることも事実である。こうした構造的な抑制圧力は今後も根強く残るため、個人消費はしばらく伸び悩みが続く可能性が高い。

 個人消費が自律的に回復するには、所得や社会保障面などの将来不安を取り除き、それぞれの家計が安心して将来像を描けるような環境が整う必要があろう。

 四半期GDPでは、家計最終消費支出の内訳も公表される。そこで、2016年度の構成比を見てみると、自動車等の耐久財が8.5%、衣料等の半耐久財が5.3%、食料等の非耐久財が26.7%、交通、レジャー、家賃等のサービスが59.6%となっており、サービス支出が消費全体に占める割合が最大となっている。また、時系列で見ても消費の中身はこの10年で大きく変化しており、消費者の嗜好がモノの消費から携帯電話やインターネットなど情報通信を中心としたサービスの消費へシフトする中、個人消費におけるサービス支出の比率は高まる傾向にある。

 一方、人口構成の変化も重要性が高まっている。なぜなら、既に我が国では少子高齢化が急速に進んでおり、特に昨年から本格化している団塊世代の退職が消費構造をどう変化させるかが注目されているからだ。今後の個人消費を見る上では高齢者層の動きが一つの鍵を握っている。

 年代別の消費動向がわかる経済指標としては、総務省の「家計調査」が最も代表的だ。同統計は全国の約8000 世帯に対し、1ヶ月間の全ての収入と支出について家計簿を記入してもらい、金額を集計したものである。このため、世帯あたりの消費支出について詳細な品目や世帯主の年代をはじめ、様々な区分から網羅的に把握できる。

 そこで、2016年における世帯一人当たりの消費支出を費目別に世帯主の年代で比較すると、交通・通信費や教育費等では世帯主が60代の世帯が同50代の世帯を大きく下回っている一方で、保険医療費が50代世帯の約1.3倍の水準にあることがわかる。これは、高齢化によって病気や怪我をする可能性が高まるためだ。また、急増するのがリフォームなどの住居費で、50代世帯の約1.1倍となっている。

 従って、シニア世代は2040年まで増え続けることからすれば、今後は健康やリフォーム等の消費支出のシェアがより高まることが予想される。(第152話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第132話)

 第132話:ビジネス「のうりょく」向上に「3S」を組み込むこと①

 マーケティングを企業行動の中に取り込もうと考えている経営者もスタッフも、改めて振り返ってみて欲しいことがあります。企業で日々汗をかいていても、いざ仕事を離れれば、消費者であり、家庭人なのです。企業行動のガイドとしてのみマーケティングを捉えてしまうと、人間不在になってしまいます。

 つまり、「送り手」である企業の思考は見えてくるのに、「受け手」である顧客の思考が欠落してしまう恐れがあります。マーケティングは、「送り手」と「受け手」の良好な関係を生み出すことを主題にして、ビジネスを考える思考のガイドなのです。であるならば、「送り手」思考を持っただけでは、一方通行になってしまうことになります。自分自身が「受け手」の思考をもって、はじめて両者の関係の中に自分を置くことが出来るのです。

 今の時代の動きをマーケティングで解釈することが、変化への適応力を高めることに繋がります。マーケティングは特殊な方法論ではありません。変化を見据える眼を養うことです。マーケティング的な思考と行動が生きるのは、実は普段の暮らしの中にあります。マーケティングは自らの想いを投げかけ、対峙する相手との良好な関係を築く「思想」であり「実行」とみることができるのですが、発信者は時として、相手の存在を忘れてしまうようです。しかも、やりとりはモノに限るわけではなく、サービスの交換もあります。その際はモノが移動するのではなく、人の感情や気持ちなどがやりとりされています。ですから「交換」よりも「交感」と記す方が妥当でしょう。無形のものへの対価は、どれ程自分に対する思いやりを実感できたかによって決まるからです。

 現代社会におけるマーケティングは「交感」の仕組みをつくること。その起点はすべて「相手に対する思いやり」に他なりません。マーケティングを考え実践するには、変化に敏感に、人への思いやりを持つ心の力が必要と言えるでしょう。ですから、企業人であろうと家庭人であろうと、現代社会を生きていくにあたっては、さまざまな「のうりょく」が求められるのです。(第133話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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