エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第149話)

第149話:経済成長率を押し下げる原油高

 原油価格が上昇している。ドバイ原油は昨年11月から1バレル=60ドル台で推移しており、経済活動に及ぼす影響が懸念されている。原油価格が上昇すれば、企業の投入コストが上昇し、その一部が産出価格に転嫁されるため、変動費の増分が売上高の増分に対して大きいほど利益に対する悪影響が大きくなる。また、価格上昇が最終製品やサービスまで転嫁されれば、家計にとっても消費者物価の上昇を通じて実質購買力の低下をもたらす。そうすると、企業収益の売り上げ面へも悪影響が及び、個人消費や設備投資を通じて経済成長率にも悪影響を及ぼす可能性がある。

 ドル建ての原油先物価格をみると、月平均のドバイ原油は昨年7月から上昇に転じ、今年1月までに+42.8%上昇している。一方、円も対ドルで昨年7月から今年1月までに▲0.7%減価(円安)しており、交差項の影響も含めれば、円建てドバイ原油価格はこの半年強で+43.8%程度上昇したことになる。

 そこで、家計への影響を見ると、タイムラグを伴って消費者物価へ押し上げ圧力が強まることがわかる。実際に、2006 年1月以降の原油価格と消費者物価の相関関係を調べると、円建てドバイ原油価格の+1%上昇は6か月後の消費者物価を約0.012%押し上げる関係があることが分かる。

 このため、円建てドバイ原油価格+43.8%上昇の影響としては、消費者物価を6か月後に43.8%×0.012%≒0.52%pt 程度押し上げる圧力となり、家計に負担が及ぶことになる。

 具体的な家計への負担額として、2016年度における二人以上世帯の月平均支出額約28.1万円(総務省「家計調査」)を基にすれば、0.52%pt の消費者物価の上昇は6ヵ月後の家計負担を28.1万円×0.52%≒1,453 円/月程度、年額に換算すると1.7万円以上増加させる計算になる。

 より現実的な経済全体への影響について、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2015 年版)」の乗数を用いて試算すれば、今後の原油先物価格が60ドル/バレル程度で推移した場合には、今後三年間の経済成長率をそれぞれ▲0.08%pt、▲0.05%pt、▲0.03%pt程度の押し下げにとどまる。しかし、今後の原油先物価格が70ドル/バレルもしくは80ドル/バレル程度で推移したとすれば、今後三年間の経済成長率をそれぞれ▲0.19、▲0.11、▲0.08%ポイント、▲0.30、▲0.18、▲0.13%ポイント程度も押し下げることになる。このように、原油価格の上昇はマクロ経済的に見ても、甚大な悪影響を及ぼす可能性がある。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第131話)

第131話:「がんりょく」には「眼力」と「顔力」の二つがあるようです。

 ここ数年の夏は、「猛暑」「酷暑」「炎暑」と徐々に形容詞のレベルが高くなる「暑い」日が続きました。気温が高くなると、何となくぼんやりとしてしまい思考力の低下をきたすようです。それがそのまま眼の力を落としてしまうのか、考えていない目は焦点も定まらず、力を感じさせないものです。

 眼の力のなさが、顔の造作全体に影響を及ぼすのでしょうか。ぼんやり顔で思考停止を感じさせる顔になることがあります。顔を見ても、威厳や威圧感を感じません。

 しかし今、暑さ寒さに関係なく力を感じさせない顔に出逢うことがあります。街の中での出逢いでもそうですが、最近TVの画面を通して見る、わが国の政治家諸氏の顔に感じるのは「顔力」の乏しさです。

 選挙のことだけを気にしているような先生方。同じテーマを繰り返して指摘し合う様子を見るにつけ、発言自体に力を感じないことがあります。

 顔に力を感じないと、未来を描いている顔に見えなくなってしまい、正面から現状の問題に立ち向かう雄々しい眼の力も感じなくなってしまいます。企業の経営においては、常に立ち至らない状況にならないように頭にも身体にも汗をかきます。

 顧客に向けて、新しい商品やサービスへの理解を得ようとする際のマーケティング担当者の「眼」と「顔」を見て欲しいものです。現実を直視する力があります。そして何よりも、未来を描こうとする遥か先を見る眼をしています。

 今、わが国で最もマーケティングを学ぶ必要があるのは、ひょっとすると国民から選ばれた議員諸氏かもしれません。

 マーケティングの原点は、自らの「顧客は誰か?」を考えること。考える顔には、人をひきつける「眼力」と「顔力」を感じさせるものです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第148話)

第148話:幅広い寒波効果

 前回、ラニーニャ現象により今年の冬も厳冬となっており、各業界に恩恵が及ぶ可能性があることを指摘した。

 事実、過去の経験によれば、厳冬で業績が左右される代表的な業界としては冬物衣料関連や百貨店関連がある。また、ガス等のエネルギー関連のほか、医薬品やマスク等のインフルエンザ関連も過去の厳冬では業績が大きく左右されている。そのほか、車等の防寒や凍結対策関連といった業界も厳冬の年には業績が好調になることが多い。さらに、鍋等冬に好まれる食料品を提供する業界や外食、コンビニ等の売り上げも増加しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの好影響も目立つ。

 過去の気象の変化が家計消費全体にどのような影響を及ぼしたのかを見るべく、国民経済計算を用いて10-12月期の実質家計消費の前年比と東京・大阪平均の気温の前年差の関係を見た。すると、10-12月期は気温が低下した時に実質家計消費が増加するケースが多いことがわかる。従って、単純に家計消費と気温の関係だけを見れば、厳冬は家計消費全体にとっては押し上げ要因として作用することが示唆される。

 そこで、1995年以降のデータを用いて10-12月期の東京・大阪平均気温前年差と家計消費支出の関係を見ると、10-12月期の気温が▲1℃低下すると、同時期の家計消費支出が+0.54%程度押し上げられる関係がある。これを金額に換算すれば、10-12 月期の平均気温が▲1℃低下すると、同時期の家計消費支出を約+3,235 億円程度押し上げることになる。

 従って、この関係を用いて今年10-12月期の気温が94 年および2010 年と同程度となった場合の影響を試算すれば、平均気温が前年比でそれぞれ▲0.6℃、▲0.7℃低下することにより、今年10-12月期の家計消費はそれぞれ前年に比べて+2,098 億円(+0.3%)、+2,430 億円(+0.4%)程度押し上げられることになる。このように、厳冬の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 なお、05年の時のように年明け以降の厳冬は、豪雪に伴う交通機関の乱れや農作物の生育などへの悪影響を通じて経済活動に悪影響を与える可能性があることには注意が必要だろう。

 また、異常気象は世界的な現象であることから、海外にも影響が及ぶことにより、穀物価格高騰を通じた悪影響も考えられる。世界的なラニーニャ現象により穀物価格が高騰すれば、08 年当時のように我が国食料品の値上げラッシュをもたらし、家計の購買力低下を通じて経済に悪影響をもたらしかねないことにも注意が必要だろう。(第149話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
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永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第147話)

第147話:今冬の厳冬、日本経済に多大な恩恵

 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生している。気象庁が12月11日に発表したエルニーニョ監視速報によると、ペルー沖の海面水温が低くなるラニーニャ現象の影響等で厳冬となる見込みとされており、気象庁の予報でも、東日本と西日本を中心に気温が低くなりがちと予想している。

 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象である。ラニーニャ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。近年では、2016年夏から17年春にかけて発生し、北海道を中心とした8月の長期的な大雨・豪雨 となったほか、1951年に気象庁が統計を取り始めて以来、初めて東北地方の太平洋側に台風が上陸した。また北日本では平年より7~10日早い初雪・初冠雪を観測し、関東甲信越では16年11月に初雪・初冠雪を観測した。このほか、17年1月中旬と2月中旬、3月上旬は日本国内のみならず、国外の多くで10数年に1度の北半球最大規模の大寒波が襲来した。

 気象庁の過去の事例からの分析では、ラニーニャ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが早まることで夏の気温は平年並みから高めとなり、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある、ということなどが指摘されている。

 実際、ラニーニャ現象の発生時期と我が国の景気局面の関係を見ると、1990年代以降全期間で景気回復期だった割合は73.9%となる。しかし驚くべきことに、ラニーニャ発生期間に限れば89.5%の割合で景気回復局面に重なることがわかる。

 実際、2005年のラニーニャ発生局面では記録的な寒波に舞われた。気象庁の発表によると、10-12月期の東京の平均気温は前年より1.37℃低くなった。この寒波効果で2005年10-12月期の消費支出(家計調査)は前年比+1.3%の増加に転じた。特に、暖房器具の売り上げが好調に推移したことから、家具家事用品が同+9.4%の伸びを記録した。また、冬物衣料を見ても、寒波効果は明確に表れた。同時期の被服及び履物支出は寒波の影響で季節商材の動きが活発化し、大型小売店でも冬物商材が伸長したことで回復が進んだ。保険医療の支出動向もインフルエンザ関連がけん引し、全体として好調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、寒波の恩恵が及んだ。05年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+2.3%と伸びが加速し、家計調査同様に家庭用機器の支出額が大幅に増加した。また、冬のレジャーの活況により娯楽・レジャー関連でも寒波が追い風となった。(第148話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第130話)

第130話:「現場力」は、ビジネスを動かす駆動力です。

 ビジネスにおいてよく聞く言葉の一つに「現場百回」があります。何事も、現場で起きている事実をつぶさに見ることによって、改めて新しい発想や方法が生まれてくることを言います。決して、机上の取りまとめには止まらないプラスαの何かがある。それが「現場」というもの。私は「現場百見」と言っています。

 わが国のビジネスモデルの多くが、この「現場力」を背景にして成り立っていることは、よく知られています。製造の現場、営業の現場、企画の現場、取引の現場・・・、そのどれか一つが欠けてしまうと、ビジネス自体が円滑に動かなくなるもの。「現場・現物・現実」の「3現主義」を持ち出すまでもなく、現場には様々な情報が埋もれています。何よりも、お客様に最も近いのがビジネスの現場です。

 過去の成功体験をベースにして新しい事業を考えても、なかなかうまくいかない、という場面に出逢います。その理由の一つに、現場自身の変化があるのです。たかだか5年前には当たり前だったことが、今では陳腐化し、従来のやり方が通じないことはよくあること。「こうなるはずだ・・・、けど」「あれ~っ、おかしいな、以前は大丈夫だったのに」といった言葉を聞くにつけ、現場変化への適応力の向上が必要と、自分にも言い聞かせています。現場は、ビジネスを動かしている「駆動」力なのです。

 ところが最近、どうも「現場」力が衰えているように感じます。バーチャルな世界での夢想と、実際にモノがやり取りされる現場が混在しているのでしょうか。公共の業務においても、守るべきことが守られていないと指摘されることがあります。警察官の対応や、受刑囚の脱獄。いつか映画で見たことのあるような場面に、現実の世界で遭遇してしまうからです。

 ビジネス力の根源は「現場」にある。日常生活における買い物も、「買い物の現場」=「買い場」でなされているのです。瞬間的な顧客との接点こそが、「現場」の力を生み出していることを忘れてはいけないと思います。(第131話に続きます)

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代表取締役 清野 裕司

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

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