エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第132話)

第132話:消費増税使途見直しの影響

 2019年10月に予定する消費増税の使い道を巡って、増収分の一部を教育無償化・負担軽減に充当する自民党、10%への増税を凍結する希望の党で対立している。しかし、使途変更の効果についての実証的な政策議論は十分に行われていない。

 消費税率が8%から10%に引き上げられれば、5兆円の恒久財源が確保されることになっている。そこで、社会保障と税の一体改革に基づく財源の使途を確認すると、まず消費増税に伴う財源は、軽減税率を反映することで当初の6兆円から5兆円に引き下げられることになる。そして、総合合算分の4,000億円を見送ると想定すれば、社会保障の充実には1.05兆円の分配になる。

 また財源の使い道としては、消費税率引き上げによる社会保障費増に0.5兆円が、基礎年金国庫負担割合1/2化のために0.2兆円がそれぞれ分配されることになっている。

 以上より、借金返済に回る金額は、軽減税率導入ベースで見れば、3.3兆円の財政健全化効果があることになる。

 続いて、報道されている各政党の公約が使い道の変更に及ぼす影響について検証する。

 消費増税に伴う財源の使途変更は、公的部門から民間部門への所得移転を意味する。そこで、先に用いた消費増税財源の使い道を基に、各政党の使い道を推計すると、自民党は財政健全化分の半分を回すことによって社会保障の充実が1.7兆円増えることになる。

 一方、消費増税を凍結する希望の党の負担減額を試算すると、まず社会保障の充実分である1.05兆円が失われることになる。また財政健全化分では、増税自体を凍結する希望の党案では減少分が大きく、半分を社会保障の充実に回す自民党案では減少分が小さいといった特徴がみられる。このように、政党の違いによって社会保障の充実額や財政健全化に回る額が大きく変わってくることになる。

 そこで次回は、以上の推計結果をもとに、増税使途見直しがマクロ経済に及ぼす影響を試算してみたい。

(第133話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第131話)

第131話:望ましい消費増税の仕方

 マネーのグローバル化により世界の実質金利が収斂しやすくなっている。こうした側面から考えると、財政赤字の拡大はより金利が上昇しにくくなる方向に働くため、自国通貨の押し上げ効果は限定的となる可能性がある。将来が不安な上に、さらに国債発行が増えて政府の借金が増える、と市場が感じたら、自国通貨はむしろ増価しにくくなることも考えられよう。

 こうした中、財政再建にあたっては、歳出の徹底した効率化が不可欠となろう。ただ、日本は教育にかける予算が先進国中最低クラスであることからすれば、子供の教育のために国民に負担増を求めることへの批判は比較的少ないだろう。また、現在の安倍政権では経済成長を重視しているため、増税が可能となる経済環境が整う前には増税が実施されにくく、自ずと「景気配慮」が働くことが期待されている。

 この背景には、不況下で財政赤字を増税で賄い始めた場合、税収不足が拡大し続けてしまう可能性がある。不況下で増税を重ねれば、いずれ首が回らなくなるのは日本も海外も同じである。これが不況下での増税の最大の問題点である。

IMFの試算によれば、日本のGDPギャップはまだマイナスであり、デフレに完全に歯止めがかかっているとは言い難い。国内需要の回復による景気押し上げ圧力が弱い中で少子高齢化という課題もある。このような状況の下では、経済に対して緊縮財政によるショックを与えるのは適当ではないだろう。

 こうした中、消費税率の引き上げは、購入価格の上昇を通じて景気に悪影響を及ぼす。実際に行われなくても、そうした議論が盛り上がるだけで、個々の家計が将来の負担増に対する不安感を過度に高め、こうした不安は個人消費に悪影響を及ぼすことは、2014年4月の消費税率引き上げ後の状況からも実証済みである。もし、その結果として景気が低迷して税収が減少したら、いずれは財政再建の進展をも妨げる可能性もある。

 他の増税も同じである。従って、家計の負担増が個人消費や景気動向に大きな悪影響を及ぼすことのないように慎重に議論を進め、その結果、特定の時期を設定せずに、目標とする名目成長率や雇用者報酬の伸びが達成されたところで実施するのも一つの案だろう。 経済がこうなるまで増税しないというターゲットを示す方が国民の理解を得られやすい。具体的に、雇用者報酬の前年比が安定的(例えば3四半期連続)に2%を超えたら、例えば消費税率を2%上げる方針を掲げてもよいのではないだろうか。政局に左右されずにスムーズに消費税率の引き上げが可能になるものと思われる。

 ただ、日本経済がデフレに陥った90年代後半以降の名目GDPと雇用者報酬の前年比を見ると、2016年第1四半期から第4四半期まで4期連続で前年比2%を超えているが、2017年第1四半期で同1.0%にまで減速してしまっている。結局、消費税引き上げが可能となる経済環境を実現するには、先ずは完全なデフレ脱却が必要条件ということであろう。(第132話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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