清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第117話)

第117話:生活者の「ご近所」を知ることは暮らしを知る糸口になります。

 現代の都会生活では、自分たちの生活は自分たちなりにデザインするものとして、身近にいる他者に対して、さほど関心を示さなくなったようです。長く隣り合わせにくらしていながら、その隣人の名前すら知らずに過ごしている場合もあるのですから、そこの家族構成は知るよしもありません。家路を急ぎながら、たまたま同じ方向に歩く普段見かけない人に出会ったと思えば、隣りに住む人であったなどという話を聞くことすらあります。

 そもそもわが国の文化には、近所との深い付き合いがあったはずですが、いつの間にか希薄になり、それ以外の分野での「5つの近所=ご近所」が出来てきてしまったようです。

 1つには「情報的近所」。一度も直接会ったこともなく、会話を交わしたこともないにもかかわらず、テレビを通して毎日のように顔を見ていると、いかにも自分の身近な友人の一人にでもなったように感じる近所感。吉本興業の芸人などは、近所の一人かもしれません。

 2つには「時間的近所」。デリバリーの拠点がどこにあるのかは承知しないにもかかわらず、頼んだピザは30分程度で自宅にまで届きます。時の短さは、個人的に近所の店です。

 3つには「空間的近所」。次々にオープンする開発された地域があります。丸の内、日本橋と旧来の街が様を変えました。そのような同質的地域に足を踏み入れると、同類の人種ばかり。何となく自分もその中の一員と信じて安心するのでしょうか。

 4つには「精神的近所」。距離的に離れて暮らしているが、常に身近な存在である田舎暮らしの両親や、学生時代の友人などは、この部類の近所でしょう。

 そして5つには「人間的近所」。年齢的には離れていても、その人の生き方や行動に共感を覚えるような、個人に対する近い意識です。

 こう見てくると、まさにさまざまな近所意識があるものです。敢えて5つの近所感から「5(ご)近所」とでも言えるでしょう。マーケティングを展開する企業は、生活者にどのような近所感を提供しようとしているのか、常に考慮しておきたい点のひとつです。(第118話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第118話)

第118話:10円の円安で1.2兆円の実質所得増加

 今回は、円安による影響や対策について考えてみたい。

 まず、大胆な金融緩和に伴う円安により、輸入物価が上がり、家計に悪影響をもたらすとの批判がある。実際、過去10年間のドル円レートと消費デフレーターの関係をみると、ドル円レートが10円円安になると、3四半期後の消費デフレーターを約+0.67%押し上げるとの関係がある。つまり、2016年の家計消費(除く帰属家賃)が約243兆円であることからすれば、円が対ドルで10円円安になると、3四半期遅れて家計負担を年額で243兆円×0.67%≒+1.6兆円程度増やすことになる。これは、10円円安が進めば、国民一人当たりの負担が年間約1.3万円程度増えることを示唆する。

 ただ、円安にはメリットもある。まず、国内の雇用機会を増やす。事実、過去10年間のドル円レートと就業者数の推移をみると、就業者数がドル円レートに遅れて明確に正の相関関係にあることがわかる。そこで、過去10年間のドル円レートと就業者数の関係をみると、ドル円レートが10円円安になると、12か月遅れて就業者数が+30万人程度増加することになる。更に、過去10年間のドル円レートと雇用者報酬の関係をみると、ドル円レートが10円円安になれば、4四半期遅れて雇用者報酬が年額で+2.8兆円増加することになる。

 なお、円安になると仕事が増える背景には、円安に伴い国内で生み出されたモノが相対的に割安になることがある。このため、輸出関連産業では製品の競争力が増し、販売数量が増えることで人手が必要になる。また、輸入代替産業においても競合する輸入品の価格が上がるため、国産品の需要が高まり雇用が必要となる。更には、国内のサービスも価格面から競争力を増すため、外国人観光客の増加などにより、サービス産業への需要も高まるため、雇用が生み出される可能性が指摘できる。

一方、雇用の質の面についても、アベノミクス初期段階に増加した雇用者数の多くが非正規と批判された。しかし、2015年秋以降は正規雇用も増加に転じており、2015年後半以降は非正規を上回る増加を示している。従って、アベノミクスに伴う雇用の増加を非正規と決めつけるのはもはや誤りであり、むしろ正規雇用の増加がけん引しているといえる。

 結果として、10円の円安は家計負担を1.6兆円増やす一方で、2.8兆円の雇用者所得の増加を通じて、実質的には1.2兆円程度の所得増加をもたらすことを示唆する。

 更に円安の恩恵は、株高などを通じて家計の金融資産の増加にも結びついていることが明確に表れている。実際、日銀の資金循環統計によれば、円安が進む前の2012年9月末から昨年末までに180兆円以上増加している。その関係を定量化すれば、過去10年間のドル円レートと家計の金融資産の関係から、ドル円レートが10円円安になると、家計の金融資産が+37兆円増えることになる。これは、アベノミクスで40円以上円安が進んだことにより、家計の金融資産が150兆円近く増えたことを示唆する(119話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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