清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第112話)

第112話:現代の笏(しゃく)を持つ人は何を遺すのでしょうか。

 歴史の本に登場する貴族の肖像画の多くは、胸の前に短冊のようなものを持って立っています。日本人の多くが好きだという聖徳太子の像を思い起して貰えれば良いと思います。あの短冊は何のためのものかと思っていましたが、歴史の本によると、書簡をしたためるものであったり、その折々の備忘録を書き込んだりしたとの解説がありました。現代で言えば、メモ用紙のようなものでしょうか。

 昔の人は、何を書き込んだのかは知る由もありませんが、ちょっとした連絡メモは、そこに書き込んで渡していたのでしょうか。上長の話を聞き、忘れてはならぬとメモをしたのか、個人的な感想を書き記したのか。今となっては、具体的な内容は類推するしかありません。ただし、手に持つものは「笏(しゃく)」です。

 古代の「笏」のように品性を感じさせる持ち方ではないまでも、現代社会にも同じようなものはあります。「スマホ」「ケイタイ」です。現代の「笏」は、胸ポケットに入れたりバックに入れたりとさまざまですが、電車に乗っている時も、降りた時も眼は周りの様子に行くのではなく、自分の目の前の「笏」にいきます。しっかりと手に持ち、やや前かがみになって画面を覗き込みます。にやりとしたり、ぶっちょうずらになったりと、瞬間的に顔つきが変わります。次の瞬間にはせわしく指が動き始める、メモの打ち込みです。限られた時間の中での対応ですから、決して長文の手紙ではありません。その時々の気分が行き交います。昔の男性であれば、好きな女性に自分の想いを歌に託して送ったのでしょう。送られた女性からも、想いが言葉に流れて歌になって返される、「気分」ではない「気持ち」のやり取りがあったようです。

 形状は似ていても、現代の「笏」は「メモ機」でしょうか。であれば、狭い画面だけを見ているよりも、目線を広げた方が、もっと自らの世界は広がるだろうに、と余計なことを心配していると、私の「笏」がブルブルと震えだしました。(第113話に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第106話)

第106話:今年と来年で日本経済の将来が決まる可能性

 2017年は昨年秋から引き続き、日本の景気にとって非常に良好な状況が続いている。事実、昨年12月には日経平均株価が1万9千円台を回復し、今年は更に高値をつけていくのではないかと期待されている。企業業績も好調で、法人企業統計の経常利益では2016年7-9月期から2桁増益に転じている。

 こうした中、2019年の10月には、消費税率が8%から10%に引き上げられる予定である。政府としては、この大きなイベントを無事通過するため、景気に関しては、以下のようなシナリオを描いているのではないかと考えられる。

 今年2017年度の後半には、トランプ政権の拡張的財政政策のプラス効果が顕在化し、景気は年度後半から、誰の目から見ても好調な状態に上向いていく。

 そして、次の解散総選挙の前には、アベノミクスの成果として、デフレ脱却宣言をしたい。そのためには、それまでは株式市場を上昇基調のまま維持させ、物価も2%には達しなくても、はっきりとプラスになっている状況を作りたい。

 また、2019年10月の消費税率の引き上げでは、景気が多少下ブレするのは避けられないが、2014年4月の時のように冷水をかけるようなことは避けたい。可能な限り、1989年4月の消費税導入時のように消費税率を上げるマイナスの影響を受けても、景気が下向きにならないように景気に勢いを持たせておきたい。

 更に、黒田日銀総裁の任期が切れる2018年3月までには、出口戦略も模索できる状況に景気を持ち上げつつ、バブルにはならないようにコントロールしながら、2020年のオリンピックを迎えることができればベストとの青写真を描いているだろう。

 とはいえ、国内外に様々なリスクを抱えながらの経済運営となるため、綱渡り的ではあるが、全く実現不可能という訳でもないと、筆者は考えている。

 経済に関しては、旧民主党政権から安倍政権に変わったことによって、少なくとも綱渡りができる状況にまではなったのは事実であり、その点に関しては、素直に評価し、これからに関しても期待したいというのが本音である。

 確かに、デフレを脱却し、その後、東京オリンピックをつつがなく開催して、更にオリンピック後も景気を落ち込ませることなく、成長を続けるとなると、綱渡りにならざるを得ないのが現実だろう。

 しかし、少なくとも今年から来年にかけての綱はかなり太い可能性があるため、まずはこの間を利用して、しっかりとデフレ脱却と経済の好循環を図ることが、政策当局の出来ることなのではないかと考えられる。(第107話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

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