エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第102話)

第102話:日本の発展のために避けて通れない移民の受け入れ議論

 日本の将来の成長を阻む大きな障害の一つが、人口減少に伴い成長を担う担い手が不足してしまうことである。

 アベノミクスの成長戦略の中で、50年後にも人口1億人を保持するという人口の見通しを、政府として始めて明らかにした。

 このように、政府が人口の目標を明らかにすること自体は有意義なことだが、残念なことに、中身を見ると具体的な方法論に欠けており、本当に実現できるのか?と首をかしげざるを得ない。

 日本人だけで50年後に人口1億人を保持するためには、女性ひとりあたりの出生率を2.07にまで引き上げなくてはならない。

 安倍政権としては、現段階の出生率1.42を、先進国で少子化対策が成功したと言われている、フランスやスウェーデン並みの1.8に引き上げることを当面の目標として公にしている。

 1.42から1.8まで引き上げるのも正直かなり大変だが、一応他国での成功事例が存在するため、物理的には不可能ではないともいえる。しかし、さすがに2.07となると、他の先進国でもなかなか類を見ない高い出生率のため、「現実的ではない」との批判は免れ得ないだろう。

 仮に出生率をあげることができたとしても、生まれてきた子供が世の中に出て働き出すまでには、20年前後の時間が最低必要なため、労働力の増加にはすぐにはつながらない。

 その間の労働力人口の減少を抑えるための方策として、今後強力に進めるべきなのが女性の活用である。

 総務省の労働力調査によれば、日本の場合、本当は働きたいが何がしかの理由で求職活動を行っていない女性が2016年7-9月期時点で265万人も存在する。そして、彼女たちが働きたくても働きに出られない最大の理由は、育児と子育てである。

 既に学童保育の受け入れ枠の増加や、待機児童ゼロ運動なども進められてはいるが、更にスピード感をもって取り組んでいかなくては、とてもではないが間に合わない。

 出生率を上げて人口減少を食い止めるには、日本は正直かなり遅きに失してしまった感が拭えない。

 外国人労働力の受け入れに関しても、技術実習制度の拡充などで枠を増やし始めているが、これはあくまでも滞在期間を設けた制度なため、一時的な労働力の人口の減少には多少の効果があるかもしれないが、抜本的な人口減少の問題の解決にはつながらない。

 そこで、今後の日本の人口問題を考える上で避けては通れないのが、移民の本格的な受け入れの議論である。今のところ安倍政権は移民の受け入れに関しては否定的なスタンスを崩していないが、本気で将来の人口維持政策を考える上では避けては通れないため、政権基盤が磐石なうちに議論を進めるべきだと考えられる。(第103話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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