清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第110話)

第110話:じっくり練り上げ育て上げる発想も必要だと思います。

 私は、普段から余りテレビに釘付けになる方ではなく、定時のニュースに耳を傾け、週に数本の番組に眼をやる程度です。番組を見るよりもCMを見る方が好きなのは、仕事柄かもしれません。送り手である企業や商品が、何とか視聴する人たちに近づこうと、あの手この手を使ってくるのを見ながら、その裏側に潜んだ送り手の想いを読み解こうとする癖があります。

 たまにテレビのバラエティ番組を見ていると、「お笑い」タレントといわれる人種に良く出会います。そしていつの間にか出会わなくなります。昨年はよく見かけたのに今年は・・・、といったタレントが多いように感じます。深い思考と長い鍛錬から繰り出される「おかしみ」をかもし出す芸ではなく、その時の時代の風に乗って揺れ動く芸だからでしょうか。短命も止む無しかもしれません。見る側も、瞬間的に笑えればよいとしているようで、さしておかしくもない動きや言葉に、回りにつられたような笑い声が聞こえてきます。

 いかに練りこんだ芸であっても、受け手の受信状況は多様です。新しい言葉や動きに出会うと、今までもてはやしていたことを、いとも簡単に捨て去って新しいものに拍手を送ります。スローライフがいわれながら、その気の変わりようは驚くほど早いのです。速射砲のごとき場面の転換を待っているように感じます。

 毎年登場してくる新商品も、そのような時代のうねりに巻き込まれていきます。研究開発に要した時間。マーケティング仮説設計に費やした知恵。そのようなことはお構いなしに、あっと言う間に店頭から姿を消してしまうものもあります。現在の小売店頭は、新しく登場した商品をじっくりと育てていこうなどという悠長な考えは皆無に近いようです。今日の売れ筋・明日の死に筋探しに躍起です。

 もう少し、ゆっくりとモノの良し悪しを見極めても良いのではないでしょうか。マーケティングは決して、奇をてらった面白さを提供するフレームではないのですから。(第111回に続きます)

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第101話)

第101話:今年と来年の政府の働きで2020年以降の日本が決まる

 もし社会保障改革が現内閣で上手く進むとしたら、どういう将来が見渡せるのか、考えてみたい。

 再来年の2019年10月には消費税の引き上げが予定されており、引き上げが行われれば、おそらく景気は一時的に後退するだろう。1989年の時のようにバブルになっていれば話は別だが、バブルが発生すると、その後の崩壊が問題になる。つまり、今年と来年が、日本経済にとってのボーナス期の可能性がある。

 更に、現在の安倍政権の政権基盤は磐石である。このように、政権基盤が安定している時ではないと、痛みを伴う改革は断行できないため、ある意味、社会保障改革を実施するための最大のチャンスが訪れているとも考えられる。

 2020年のオリンピックの後には、日本の経済成長にブレーキがかかることが予想される。そのため、それ以降の日本の成長に道筋をつけるためにも、今のうちに社会保障改革を実行することが必須となっており、更には成長戦略で息の長い成長を促す手立てを打っておくことが必要である。

 つまり、2020年以降の日本の進む道が、今年と来年の2年にかかっていると言っても過言ではない。

 2020年以降の日本を占う意味で、社会保障改革と並んで重要なのが、アベノミクス第三の矢である成長戦略である。

 アベノミクスの成長戦略には大きく分けると、「稼ぐ力を取り戻す」「担い手を生み出す」「岩盤規制の改革」「その他」という、4本の柱が掲げられてきた。

 そのうち「稼ぐ力を取り戻す」に関しては、それなりに進んでおり、すでに成果も出ている。例えば、法人税率も20%台まで下がり、コーポレートガバナンスコードも進んでいる。

 また、政労使会議は定期的に実施され、賃上げに関しては2016年まで3年連続で成果が上がっている。公的年金の運用方針見直しも既に実施されている。

 「その他」の観光に関しても進んでおり、2016年は日本を訪れる海外位観光客数が2400万人を突破した。この調子で推移すれば、政府が掲げている「2020年に訪日外国人客数4000万人」という目標は微妙だが、3000万人は余裕でクリアできる可能性がある。

 しかし残念ながら、これら以外に関しては、成長戦略はまだまだ全然進んでいないと言わざるを得ない。今後は、雇用、医療・介護、農業といった三大岩盤規制にどの程度発破をかけられるかがカギを握ろう。また日本の発展のために、将来的には移民の受け入れ議論も避けては通れないだろう。(第102話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第100話)

第100話:財政リスクは2020年に顕在化の可能性

 2020年はオリンピックの開催だけでなく、プライマリーバランスを黒字化させるという、国が掲げている大きな目標を達成させる期限の年でもある。内閣府では、ベースラインケースと、経済再生ケースという2つのシナリオを使って将来の基礎的財政収支を計算している。ベースラインケースでは、名目経済成長率を1%台前半、経済再生ケースでは3%台後半で計算している。しかし、見通しでは3%台後半の名目経済成長を繰り返しても、2020年までにはプライマリーバランスはプラスにはならない。

 これには、ひとつからくりがあり、今紹介した内閣府の試算では税収弾性値が極端に低く見積もられていることがある。税収弾性値というのは、名目GDPが1%増えると、税収が何%増えるかを示すもので、政府の試算では1%程度とされている。しかし、例えば2015年度の場合、日本での税収弾性値は1.5%であったため、内閣府の試算は少し厳しすぎる。ただし、税収弾性値を適正なものにしても、2020年のプライマリーバランスの黒字化が厳しいことには変わりない。

 その最大の理由は、膨張し続ける社会保障費である。日本の社会保障費は少子高齢化の影響で、2012年から2025年の13年の間に約39兆円増えると見込まれている。そのうち半分を占める医療費を中心にした社会保障の効率化は避けて通ることができない。

 そのため、納税者番号制度を利用し、国民一人ひとりの所得、将来的には資産状況を把握し、経済的に余裕のある高齢者には応分の負担を求めていく方向に制度を変更することになると見込まれている。

 この制度の変更は、国民の痛みを伴い、反対の声が上がることが必至で、すんなりと実現できるか、極めて疑わしいと言わざるをえない。しかし、先程も説明したように、社会保障の効率化は2020年プライマリーバランス黒字化のためには欠くことができない。

 このように、2020年のプライマリーバランスの黒字化は余談を許さない状態にある。しかし、一方で、日本国債の金利は低位で安定している。その理由の一つが日銀自ら国債を大量に購入していることである。改めていうまでもないが、日銀による国債保有額を永遠に増やし続けることはできないため、いずれは日銀も量的緩和を終了させて、「出口」に向かわなければならない。もし、日銀が出口に向かっているタイミングで2020年のプライマリーバランスの黒字化ができないことが判明したら、金利が跳ね上がってしまうリスクが全くないとは言えない。

 つまり、そもそも経済成長率が停滞しやすい五輪が終わる時期と、世界中が注目しているプライマリーバランスの黒字化に答えがでるタイミングがちょうど重なる可能性が高いため、もし社会保障改革が上手く進まなかった場合は、2020年台後半の日本経済には暗雲が立ち込めてしまう可能性があることには注意が必要だ。(第101話に続きます)

永濱 利廣 氏

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第109話)

第109話:体言だけのやり取りでは、会話に情緒がなくなってしまいます。

 日本語の文法は「尾括(びかつ)文」といわれ、結論を最後にもってきます。自らの意志を告げるのも、英語に代表される「頭括(とうかつ)文」のように、主語+述語といった端的なものではなく、案外持って回ったような言い方をすることがあります。だからこそ、最後に発する言葉が他人の心に強く残って、発信した人自体への評価に繋がったりするのです。

 「あの人は優しい人だ」とか「きつい人だ」といった言い方も、案外最後に発した言葉の強弱で評価されていることがあります。

 言い切りの言葉は、聞く側にとって強い印象を与えます。状況を語る場合にも、「市場の停滞が続いている」という表現よりも、「市場状況は停滞」と体言で切った方が強く感じます。ビジネス・プレゼンテーションの際でも同様のことが言えますが、ところが最近は、日常の会話の中で体言止に多く出会います。ファーストフードの店先では、日常茶飯事です。

 「コーヒー。ショート。」とオーダーする客。「120円になります。」と店側。なぜ「~になる」のだろうかと首をかしげていると、続いて客側が「あっ、それとポテト」。「サイズは?」と店。「M」。文章にすれば紙一枚も要さず、たかだか数行で終わってしまいます。それほど、口を開くのが億劫なのかと思ってしまいます。メールやLINEのやり取りに慣れ過ぎたのか、短文の、と言うよりも単語でのコミュニケーションです。体言止の前の、「体言」だけでのやり取り。言葉に情緒を感じません。

 マーケティングは、ある現象や事象を説明し、未来を読む思考と表現の体系です。とすれば、単語のやり取りだけでは説明しきれません。聞く側に心地良く、かつ理解を進めることが出来る表現を、体言だけに頼らずに表現する力が、マーケティング・スタッフには必要なのです。(第110話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第99話)

第99話:正しい消費者物価の見方

 家計が消費するモノやサービスの価格を指数化した総務省の「消費者物価指数(CPI)」は、日本で最も代表的な物価統計である。しかし、我が国では消費者物価指数の動きが経済活動と乖離しているとの指摘が多い。この理由として、消費者物価指数の、①経済活動の需給と関係ない非市場取引を含む、②パソコンやカメラの時価に品質調整を施す―などの点が経済活動との乖離をもたらすことが指摘されている。

 消費者物価指数では、賃貸と自己所有の居住活動を整合的に捉えるため、自己所有の家でも家賃を払う想定で架空の帰属家賃を計上する。さらに、需給とは全く関係ない公共料金も計上される。

 実際、財・サービス分類別の消費者物価指数をみると、サービスが上昇傾向にあるのに対し、持家の帰属家賃や公共料金は下落傾向にある。つまり、昨年夏以降の生鮮食品を除いたコアCPIの下落は非市場取引価格の下落が寄与しており、これが経済活動との乖離を生み出している。

 また、消費者物価指数では、品質向上が著しく製品サイクルが極めて短いパソコンやカメラについて、品質調整済みの価格変動をヘドニック法により求める方法を採用しており、こうした調整も経済活動との乖離をもたらしている。ヘドニック法とは、例えばパソコンのHDD記憶容量が1TB増えたとき本体価格は5%上昇するという関係が推計できた場合、HDD記憶容量が1TB増えた新製品が出れば、実際のパソコン本体価格を5%割り引いて価格を比較するとみなす統計処理である。つまり、パソコンの値段が変わらなくても、HDD記憶容量が1TB増えれば、消費者物価指数では価格が5%下がったと計上される。

 しかし、向上したパソコンの機能をすべて使いこなしている利用者はどれだけいるだろうか。利用者が活用しきれていない品質向上の分は、需要側からみれば架空の価格下落にすぎない。従って、品質調整も含んだ消費者物価指数のインフレ率は現実よりも過小推計され、需給と合わない一因になっている可能性がある。

 以上の理由から、消費者物価指数と現実の経済活動との間には大きなギャップがある。実際、コアCPIインフレ率は2015年7月からマイナス傾向にあるが、非市場取引部分を簡便的に除去したコア市場取引CPIのインフレ率をみると、コアCPIインフレ率がマイナスの間もプラス傾向を維持している。つまり、小売り段階での需給はコアCPIインフレ率の下落が示すほど緩んでおらず、こうしたコア市場取引CPIの動向を加味すれば、コアCPIの下落は非市場取引の下落に起因する側面が大きく、実際のところ小売り段階での物価は下がっていない可能性がある。(第100話に続きます)

永濱 利廣 氏

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