清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第101話)

第101話:箍(たが)のゆるみが出ると、締まりがなくなります。

 政治の世界での顔ぶれが変わろうが、日々の生活の顔つきが変わるとは思われない環境に長く身を置いていると、何となく発想自体が陳腐化していくのでしょうか。21世紀も15年。余り浮かれることのない話題が多く氾濫する社会です。突発的な事件や事故が発生し、過去の体系や類型では推し量ることの出来ないアクシデントとでも呼べるようなことが横行する社会になってしまったように思えます。「まさかあの人が・・・」「こともあろうにあの会社が・・・」といったコメントを耳にすることが多くなります。

 今の社会に何とはなしの「ゆるみ」を感じざるを得ません。「気のゆるみ」「心のゆるみ」「油断」「慣れ」「当たり前」。警察官の犯罪、犯罪自体の凶暴化,幼児化、企業倫理観の喪失。何ともやりきれない気がします。

 何かのまとまりや基点がしっかりしていないように思えるときがあります。あるモノをあるべき姿に整える力が弱くなっているのでしょうか。まさに「箍(たが)のゆるみ」です。箍がゆるむと、木で組まれた桶は、その形を成さずに崩壊してしまいます。

 一本一本の木に息吹を与え、意味ある形につくっていくには、その一つひとつを結びまとめる力が必要です。

 統合(Integration)がさまざまな分野で言われています。マーケティングの分野でも、IMC(Integrated Marketing Communication)があり、戦略の統合化の言葉もあります。それは、単に結びつきだけを言うものではありません。多様な機能がしっかりと個別の力を発揮しながら、かつ結びついて新たな力を何倍にも発揮するさまを言います。

 マーケティング活動にも箍を明示することが必要です。人がその役割を担うことがあります。輝きを持つ商品(ブランド)かもしれません。そしてまた、未来に向けたビジョンがその役を果たすこともあります。箍を感じるマーケティングには、力があり、想いが伝わるものです。(第102話に続きます)

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清野氏 法政大学 講義風景

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第84話)

第84話:人材のコモディティ化で賃金は業界から業種格差

 今後の賃金の動向については、「人材のコモディティ化」も念頭に置く必要がある。人材のコモディティ化とは、労働力が差別化できず、沢山ある労働力のうちの一つということである。付加価値が低いため代替がききやすく、高い報酬が得にくいということである。

 グローバル化によって新興国から低賃金の労働が提供され、新興国でもできる仕事は新興国に流れた。その動きは止まることがなく、国内においても「ほかの誰かにもできる仕事」は給料が安くならざるを得ない。

 さらに考えなければならないのが、「AI(人工知能)」である。小売販売員、接客係などのサービス業だけでなく、会計士、上級公務員など、知的労働もAIにとって代わられると予想される。新興国の労働力という要素に加え、AIで拍車がかかるかもしれない。

 このことを踏まえると、給料を上げる、ある程度の水準をキープするためには、「専門性の高い仕事」が必要になる。つまり、「業界ではなく、職種」ということになる。

 例えば、運送業ではドライバー、旅行業でパック商品を販売したり、添乗したりする職種はコモディティと位置付けられるかもしれないが、各企業で海外進出なども含めて経営戦略を立てる職種は、コモディティ化せず、高い給料を得ることも可能である。

 もう一つ認識しておきたいのは、同じ業界であっても、賃金が上がる会社もあれば下がる会社があるということである。

 例えば電機業界であれば、デジタル家電に特化している企業は苦戦を強いられている場合もあれば、電力・鉄道・道路等を含むインフラ事業という武器も持っている企業など好調な企業もある。国内にも老朽化したインフラの更新、高耐久化の必要性があり、まだまだインフラが未熟な新興国は多い。

 デジタル家電では海外のメーカーに勝てない、価格競争にさらされる、という状況だとしても、インフラ整備の分野では、日本企業の技術力が必要とされる場面は多く、競争力も高い。そこにビジネスチャンスが見いだせる企業は強い、ということになる。部品を供給すれば新興国でも組み立てができるモジュール型の企業、とくに製造現場の仕事は賃金が上がりにくいが、同じ電機業界でもインフラ関連ができる企業でスペシャリストとして働ければ賃金は上がる可能性がある。

 電機に限らず、製造業は新興国から追随されるところは厳しいかもしれない。日本の技術力は確かだが、技術力が高いゆえにオーバースペックになり、価格競争で負ける、というところから抜け出せていない側面も指摘されている。3Dプリンターによって日本の強みである金型の技術も輝きを失いかねず、儲かるイノベーションが必要となっているといえよう。(第85話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

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