清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第95話)

第95話:朝のコーヒーショップでは「窓際」族によく出会います。

 時に朝一番でコーヒーショップに立ち寄る時があります。早朝からのミーティングに備え、今一度資料を確認したり、息を整えるためです。そこで、さまざまな人種に出会います。

 私と同じように、さも朝の会議に向けての資料に読みふけるビジネスマン。お客様のところに行くのでしょうか、自社商品のカタログと見積書を開いて電卓の指が忙しい営業マンらしき男性。つい先ほどまで飲めや歌えのカラオケ宴会の(朝)帰りと思しき若者集団。

 その無批判的な会話を耳にしながら窓際に目をやります。自分もそうですが、パソコンを開いて情報検索やメールのやり取りをしようと考えると、なぜか窓際のほうが都合がよさそうに感じてしまうもの。決して電波の状態を考えるのではなく、何となく外界に近い方が良さそうな印象を持ってしまうようです。

 同じように考える輩は多いようです。窓際のカウンター席に着くと、やおらパソコンを開き、ネットを繋ぎます。情報検索を始める人。朝一番で、あるいは昨夜遅くに届いたメールを読み、その返信に忙しい人。同じような行動を取る人たちと一緒の空間にいると、自分がコーヒーショップにいることすら忘れてしまいそうです。

 その同じ列に、同じような体勢で外を見るでもなく、コーヒーを飲むでもなく、目の前の画面に見入っている女性がいます。パソコンの画面ではなく自分の顔が映し出された鏡です。出勤前でしょうか、あるいは顧客訪問の前なのでしょうか、入念な指捌きが続きます。すぐ近くにいる大学生と思しき若者集団の声高な会話も意に介せず、ひたすらに大きな鏡に向かって格闘中です。(第96話に続きます)

 窓際でパソコンの画面を見る人。鏡の前の自分の姿と格闘している人。その姿勢が、カウンターを前にして同じであることにおかしみを感じます。パソコン画面は、ネットを繋げば世界に広がる素通しの窓。化粧に余念のない女性の前の鏡は、自分に反射する投影の窓です。同じ窓でも、映し出すのは外と内。朝のコーヒーショップで見る「窓際族」に、今の時代を感じることがあります。

法政2015年最終講義:2015.12.21

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第73話)

第73話:年金制度改革の行方

 経済的に余裕のある高齢者の社会保障費を引き下げるのと並んで、おそらく年金の支給開始年齢の引き上げも近く実施されると考えられる。

 支給開始時期が65歳まで引き上げられるのは、基礎年金の部分が2018年、報酬比例部分が2030年だが、これを68歳にするという議論が進んでいるのである。しかし、実は年金のそもそもの仕組みを考えるとあながち暴挙とも言えない事実がある。

 日本の年金制度ができたのは、昭和36年のことであり、当時から年金の支給開始時期は60歳だったが、当時の平均寿命は68歳。つまり、年金の平均支給期間はたったの8年だった。一方、現在の日本人の平均寿命は80歳を超えているため、支給開始が60歳のままだと、平均20年以上も年金を受け取ることになる。もともと8年支給する前提で考えられた仕組みで、20年間も支給しようとすること自体に無理があるのは疑う余地がない。このような状況の変化を勘案すると、支給開始時期を70歳近くに引き上げるのは、まったく妥当性を欠いた話ではない。

 実際、欧米では平均寿命が日本より短いにもかかわらず、年金の支給時期を米国は2027年に67歳、イギリスは2046年に68歳に、ドイツでは2029年に67歳に引き上げが決まっている。

 なお、今後の経済状況次第では、既に行われているマクロ経済スライドを物価下落局面でも実施することや、消費税率引き上げ時にマクロ経済スライドを修正することも、無視できない財政収支改善効果をもたらすことが期待されている。

 これらの改革は国民の痛みが伴うので、あまりに大胆に実行されてしまうと、いくら現役世代の収入が増えても、全体としての消費が増えず、結果として景気の腰を折ってしまいかねないリスクとなりうる。

 但し、安倍首相は2015年2月5日の参院予算委員会で、財政健全化の目安となる基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年に黒字化させるとの政府目標について「『国際公約』だと一度も申し上げたことはない。」と明言し、更に「そもそも計画経済のように約束してがちがちに固めてやると、結果がかえって悪くなることもある。大切なのはこの方向に向かって進んでいくことであり、国民生活を豊かにしていくことだ」と発言している。この言葉が本心であるとすれば、経済の腰折れに繋がるような社会保障改革を推し進めるようなことはないのではないかと期待される。

 もちろん社会保障改革が全く進まなければ、2020年をまたずに、国債の信任が下がって金利が跳ね上がったり、日銀の金融緩和の出口が困難になったりするリスクもあるため、こちらも一応は注意しておいたほうが良いだろう。(第74話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第94話)

第94話:マーケティングは「縁」を生み出し育てることです。

 自らのビジネスライフを振り返ると、実に多くの人との出会いがあって今があることを実感します。小さなきっかけで出会った人が、その後は生涯の友となり、あるいは生涯のライバルになることもあるもの。その一つひとつが自分にとっての人生の節目でもあります。今は異界に住む両親が出会ったことも縁。そのふたりの許に生まれ育ったのが人生の始まりの縁。考える基礎を導いて下さった多くの師との出会いの縁もあります。

 まさに「縁」が繋がって、今の自分がいることを思い知ります。一人の力の範囲は限られています。だからこそまた、新しい出会いを求めてプロジェクトの編成が可能になるのです。「働く」ことは「傍を楽にすること」とも言います。ただ、出会っただけでは縁には繋がりません。その後にお互いが知り合い、理解し合い、共感し合い、信頼し合うようになって、「縁」が「絆」へと昇華していきます。半分のものが糸で結ばれて「絆」。時々の縁がより強くなっていくには、そこそこの時間を要するものです。お客様との出会いから、その後のお付き合いによって「縁」は強く太くなります。

 またさまざまな人たちとの「宴会」は楽しみの時と空間です。他人同士の会話も弾みます。ただ、会話をする場ではなく「縁」を知る場の「縁会」。誰かとの繋がりが更に広がる会です。横に広がったり、斜めに広がったり。単なる「宴(うたげ)」を超えて「縁(えにし)」を生み出すことになります。異分野の人同士が集まっての交流では、瞬間的な挨拶と比較的表層的な会話が行き交います。ただ、その後が続かないこともありますが、縁を知る場は、その後の広がりも繋がりを持ったものになるものです。

 「縁会」は会話も弾む時。その場は、誰かと誰かが繋がっている、一種の安堵感にも似た穏やかな空気に包まれます。お客様との会話の場も実は「縁会」の場なのです。(第95話に続きます)

法政2015年最終講義:2015.12.21

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

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