清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第96話)

第96話:マーケティングには、考慮すべき「間」があります。

 ビジネスは人と人との関係によって成り立ちます。ひとつのものをつくり上げるにしても、多くの人の関与によって出来上がる。材料が無ければ、いかに良いアイデアがあったとしても実行に移すことは出来ません。出来たものを販売する際には、その商品を扱う店や仕組みがなければ、この世に存在すること自体を誰も知らず消滅してしまいます。しかも、その関係の距離は自分にとって近い時もあれば、とんでもなく遠くに感じることがあります。心理面を考えれば、その距離はさまざま。

 距離としてみる「空間」の距離。生活の中での行動尺度にもなる「時間」の距離。そして何よりも、人と人との「人間」関係の距離。ビジネスは、この3つの「間」の取り方によって、バランスよく進むかどうかが決まっていくようです。

 新しい商品やサービスがどこで使われるのか。「間」違いない場所や使用方法がいきわたっているかを見ることが必要です。生活空間は多種多様。また、その商品がいつ使用されるのかの「時間」を想定したマーケティングはなされているでしょうか。さまざまなシチュエーションを明記した取り扱い説明を読んでも、使用者の側が意外な行動を取ることもあります。商品発売に関しては、いつ・どのタイミングで商品を並べるかといった「間」のとり方。「間」の良い販売は、商談自体がスムーズに流れるものです。そして何より面倒なのが3つ目の「間」の「人間」というしろもの。一人ひとりがまさに一人の「人間」。一筋縄にはいきません。皆が同じような価値観を持って暮らしているわけではありません。雑多です。その雑多から「間」延びすることなく、束の「間」に相手の心をつかむ。マーケティングへの期待も、その方法論の開発にあります。

 マーケティング・スタッフは、自分なりの価値観を鮮明にしておかなければ「間」抜けになってしまいます。自分の尺度。自分なりの「間尺」を持ったとき、新たな気づきが生まれてくるものです。(第97話に続きます)

法政2015年最終講義:2015.12.21

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

URL: http://www.mapscom.co.jp

books

清野裕司氏の書籍はアマゾンページからご購入いただけます。

(写真をクリックしていただくとアマゾンページに移動します)

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第76話)

第76話:期待される内需拡大刺激策

 安倍首相が伊勢志摩サミットで「リーマン級の危機」と発言したことが批判されたが、その後、ブレグジットが現実のものとなり、世界経済の不透明感が高まっている。こうした中、日経平均株価の変動率を見ると、最大の下落を記録したのが2008年9~11月にかけた「リーマンショック」となっている。そして次が1990年10~11月にかけた「バブル崩壊」であり、実に今年年明けの下落率が第三位となる。株価に連動する形でチャイナショックが起きた昨年夏以降、街角景気指数も11カ月連続で好不調の分岐点である50を下回っている。

 さらに8月に公表される今年4~6月期の経済成長率も熊本地震の影響に加えて、うるう年効果の反動で年率▲1.2%のゲタを履くため、高成長は期待できない。

 特に深刻なのは、2014年4月の消費増税以降、家計の収入が増えているにもかかわらず個人消費が低迷を続けているということである。背景には来年4月に再増税を控えていたことで消費マインドが委縮していたことが予想され、そうした意味では消費増税の2年半先送りは賢明な判断といえよう。

 こうした中、今夏に打ち出される大型補正の規模が注目される。目安は日本経済の需要不足の規模であり、内閣府が試算するGDPギャップにうるう年要因を調整すれば、昨年末時点では7.5兆円程度になると算出できる。これに熊本地震の被害総額が最大4.6兆円と試算されていることからすれば、すでに打ち出されている8000億円弱の補正予算を除いても、3兆~4兆円の復興予算が必要になる。これらを合わせれば、最低でも真水と財政投融資を合わせて10兆円規模の補正予算が必要になってくるだろう。これに日銀の追加緩和が加われば、消費増税先送りと相まって、今年後半の景気は持ち直しが期待されよう。

 具体的な補正予算のメニューとしては、「最低賃金の引き上げ」「待機児童減の施策」「子育て支援のクーポン券」「外国人観光客の増加促進」そして、熊本震災復興を中心とした「公共事業」という施策が予想される。建設現場での人手不足が懸念されているが、国交省の統計によれば建設関係の人手不足は緩和している。このため、人手不足の緩和が公共事業の後押しになろう。

 米国にとっても、日本には内需拡大してもらいたいはずである。実際、積極的な財政支援を行った国の方が歴史的には上手くいっているという事例も見られる。事実、リーマンショック後のアメリカやイギリスの金融・財政政策とアベノミクスは似ている。財政健全化の状況を見るには、国の純債務のGDP比を見るのが正しい見方であるが、アメリカやイギリスはリーマンショック以降に先進国でもいち早くこの上昇を止めることに成功している。(第77話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。
60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
(ご購入はお近くの書店か本の表紙をクリックしてください。)

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第75話)

第75話:猛暑後はマイナス成長のジンクス

 過去の経験によれば、猛暑で業績が左右される代表的な業界としてはエアコン関連や飲料関連がある。また、目薬や日焼け止め関連のほか、旅行や水不足関連も過去の猛暑では業績が大きく左右された。そのほか、冷菓関連や日傘・虫除け関連といった業界も猛暑の年には業績が好調になりがちとなる。更に、飲料の販売比率の高いコンビニや猛暑による消費拡大効果で広告代理店の受注も増加しやすい。缶・ペットボトルやそれらに貼るラベルを製造するメーカーや原材料となるアルミニウム圧延メーカー、それを包装するダンボールメーカーなどへの影響も目立つ。更には、ファミレスなどの外食、消費拡大効果で荷動きが活発になる運輸、猛暑で外出しにくくなることにより販売が増える宅配関連なども猛暑で業績が上がったことがある。一方、食料品関連やガス関連、テーマパーク関連、衣類関連などの業績には、過去に猛暑がマイナスに作用した経験が観測される。

 そこで、国民経済計算のデータを用いて気象要因も含んだ7-9月期の家計消費関数を推計すると、7-9月期の気温や日照時間が同時期の実質家計消費に統計的に有意な影響を及ぼす関係が認められる。そして、過去の関係からすれば、7-9月期の日照時間が+10%増加すると、同時期の家計消費支出が+0.45%程度押し上げられることになる。これを気温に換算すれば、7-9月期の平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約+5,100億円(+0.8%)押し上げることになる。

 従って、この関係を用いて今年7-9月期の日照時間が94年および2010年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が前年比でそれぞれ++33.5%、+25.0%増加することにより、今年7-9月期の家計消費はそれぞれ前年に比べて+9,400億円(+1.5%)、+7,000億円(+1.1%)程度押し上げられることになる。

 ただし、家計消費が増加すれば、同時に輸入の増加等ももたらす。このため、こうした影響も考慮し、最終的に猛暑が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、94年並となった場合は+7,200億円(+0.6%)、2010年並となった場合は+5300億円(+0.4%)ほど実質GDPを押し上げることになる。このように、猛暑の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 しかし、10~12 月期は反動が予想されることには注意が必要だ。過去の例では、記録的猛暑となった94、10 年とも7~9月期は大幅プラス成長を記録した後、翌10~12 月期は個人消費主導でマイナス成長に転じているという事実がある。

 つまり、猛暑特需は一時的に個人消費を実力以上に押し上げるが、むしろその後の反動減を大きくする姿が窺える。猛暑効果により売上を伸ばす財・サービスは暑さを凌ぐ為に止む無く出費するものが多い。従って、今年も猛暑効果で夏に過剰な出費がされれば、秋口以降は家計が節約モードに入ることが予想されるため、秋以降は注意が必要だろう。(第76話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。
60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
(ご購入はお近くの書店か本の表紙をクリックしてください。)

マーティング思考と実践を他に見立てて考える。

第7回:マーケティングは常に相手を思い遣る思考を持つもの。

seino0714
マーティング思考と実践を他に見立てて考える。

マーケティングの基本思考は「相手の喜ぶコトを考え、実践し続けること」にあります。相手は、モノやサービスを購入・使用してくれる「顧客」に限ったものではなく、プロジェクトを共に推進する仲間や外部のパートナーでもあります。

相手は何をしてくれたなら喜ぶのかを考えるためには、相手を細やかに知ることが必要になります。相手を思い遣るためには自分の出来ることを見極めることも必要です。してみると、マーケティングの基本は、「人を思う恋」の道や、「人が生きる」日常の思考にも似ています。

一人ひとりが、マーケティングを何かに見立てて考えると何に行き当たるのかを思うと、発想はさらに広がります。(第8回に続きます)

 

______

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

URL: http://www.mapscom.co.jp

books

清野裕司氏の書籍はアマゾンページからご購入いただけます。

(写真をクリックしていただくとアマゾンページに移動します)

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第74話)

第74話:猛暑、厳冬をもたらすラニーニャ

 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生している。気象庁が6月25日に発表した7-9月の3か月予報によると、ペルー沖の海面水温が低くなるラニーニャ現象の影響等で猛暑となる見込みとされており、内閣府が公表する景気ウォッチャー調査でも効果を期待するコメントが出ている。

 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年より1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象である。ラニーニャ現象が発生すると、地球全体の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向がある。最近では2014年夏から冬にかけて発生し、スリランカで大雨となった。日本では西日本〜北日本の日本海側で10月を中心に暖秋となり、12月から翌年の2月上旬までを中心に寒波と長期的な降雪となった。最も影響が拡大したのは94年と2010年の夏である。94年は日本で過去最高・観測史上1位の猛暑・暖秋となり、2010年は21世紀日本で観測史上1位の猛暑となった。気象庁の過去の事例からの分析では、ラニーニャ現象の日本への影響として、梅雨入りと梅雨明けが早まることで夏の気温は平年並みから高めとなり、冬の気温は平年並みから低めとなる傾向がある、ということ等が指摘されている。

 実際、2010年のラニーニャ発生局面では記録的な猛暑に見舞われた。気象庁の発表によると、6~8月の全国の平均気温は平年より1.64度高くなり、1898年の統計開始以来最高の暑さとなった。この猛暑効果で7月のビール系飲料の課税数量は前年比2カ月連続プラスとなった。コンビニ売上高も麺類や飲料など夏の主力商品が好調に推移したことから、既存店前年比で7月以降2ヶ月連続プラスとなった。

 また、小売業界全体を見ても猛暑効果は明確に現れた。7月の小売業界の既存店売上高伸び率は猛暑の影響で季節商材の動きが活発化し、百貨店・スーパーとも盛夏商材が伸長したことで回復が進んだ。家電量販店の販売動向もエアコンが牽引し、全体として好調に推移した。

 小売業界以外でも、猛暑の恩恵が及んだ。外食産業市場全店売上高は7月以降の前年比で2ヶ月連続のプラスとなり、飲料向けを中心にダンボールの販売数量も大幅に増加した。また、ドリンク剤やスキンケアの売上好調により製薬関連でも猛暑が追い風となった。さらに、乳製品やアイスクリームが好調に推移した乳業関連も、円高進行による輸入原材料の調達コスト減も相俟って好調に推移した。化粧品関連でも、ボディペーパーなど好調な季節商材が目立った。一方、ガス関連は猛暑で需要が減り、医療用医薬品はお年寄りの通院が遠のいたこと等により、猛暑がマイナスに作用したようだ。

 以上の事実を勘案すれば、仮にラニーニャ現象により今年の夏も猛暑となれば、各業界に恩恵が及ぶ可能性がある。(第75話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。
60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。
(ご購入はお近くの書店か本の表紙をクリックしてください。)