エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第66話)

第66話:求められる財政政策

 足下の経済動向について、筆者は非常に危機感を抱いている。背景には、年明け以降の株価の下落速度が歴史的に見ても非常に大きかったことがある。実際、過去2か月間のピークからボトムまでどの程度株が下がったかを下落速度が大きい順に並べ替えると、過去最速の下落速度を記録したのがリーマン・ショックであり、その次がバブル崩壊となる。実にその次が今回の年明け以降の株下落であり、2000年以降のITバブル崩壊を凌ぐ落ち込みという意味でも、非常に大きなマーケットの調整が起こったことがわかる。

 さらに1年前との比較で見ても、1年前の日経平均株価は、1万8,000円台から1万9,000円台へと、上昇基調にあった状況に対して、逆に今年は大きく値を下げたということで、真逆の動きになっている。

 こうした状況は、既に実体経済にも影響が出ている。事実、街角景気指数とされる景気ウォッチャー調査を見ると、現状・先行き判断DIとも8カ月連続で好不調の分かれ目となる50割れとなっている。時期的に見ても、チャイナショックを発端としたマーケットの去年の夏以降の混乱というのが大きく影響していることが推察される。

 また、経済成長率を見ても2015年10-12月期はマイナス成長となっている。更に、経済成長率は鉱工業生産の変化率と関係が深く、これを見ると生産計画ベースで1-3月期の鉱工業生産が前期比マイナスになっていることからすると、場合によっては経済成長率が2期連続でマイナス成長となる可能性もあり、非常に厳しい状況といえる。

 さらに厳しい状況としては、アベノミクスの根幹はいかに好循環で賃金を上げるかというところだが、そこに赤信号が灯っている。

 春闘の賃上げ率の先行指標として、労務行政研究所が2月初旬に公表した賃上げ率を見ると、去年よりも下がる予測になっているが、これは調査期間が去年12月から年明けの1月前半までだったことからすれば、恐らく実際の賃上げ率は更に下がる可能性が高いと考えられる。17年ぶりの水準まで賃上げ率が上がった去年でも、毎月勤労統計ベースの名目賃金上昇率が+0.1%だった。それよりも賃上げ率が今年下がるということは、今年の名目賃金はマイナスの可能性が高い。つまり、このまま放置しておくと、今年の日本経済は相当厳しいことになることが想定される。

 以上を勘案すると、年前半に取り組むべき課題としては、需要刺激策が非常に重要だと考えられる。先般のG20でも、国際協調によりこの世界経済の難局を乗り切るために、全ての政策手段を用いるという政策協調がされたこともあり、日本もこれにある程度追従すべきだと考えられる。(第67話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第89話)

第89話:「きかくしょ」の意味変化は、マーケティングの進化でもあります。

 日本にマーケティングが紹介されて、すでに半世紀以上の時が流れました。その間に企業はさまざまなモノを生み出し社会に提供してきました。モノが不足状況の社会にあっては、同質的な商品を大量に提供することが企業の成長を約束していました。「標準・単純・専門」を合言葉に、大量生産・大量販売の仕組みが模索され、決められたことを決められた通りに実行することが、企業経営の根幹でもあったのです。そこにおける「きかく」はまさに「規格」。当たり前のことが行われるような処方が生み出されていった時代です。「きかくしょ」も「規格処」の字が充てられるでしょうか。

 時移り、モノが溢れる社会になると、不要なものはそぎ落とす、捨てる技術が注目されるようになります。言葉にはならないものの、自分の好みにあったモノを求めたいとする心理が一段と高くなっていきます。ましてやこれからは、モノに対して自らの識別眼を振りかざす多くの熟年層が登場してきます。自分規格に合わないものは排除するマインドです。決められたものを、決められた通りにつくれば善しの「規格」ではなく、細やかなニーズに適応し得る「企画」が必要になります。「企画」は読んで字のごとく「企て:発想や考え」を「画す:表現する」行為です。考えたものをどのように現すにしても、他者との意味交換がなされなければ提供者の意図は通じません。考えを表現する「書き(描き)物」が必要です。「きかくしょ」は「企画書」なのです。

 更に現在、人口減少が注目されています。特定の集団を対象にした市場の考えに止まらず、一人ひとりの個別的なニーズへの適応が要求されるようになってきています。モノをつくる企業サイドだけの考えを押し付けることが出来なくなってきているのです。使用者・消費者と共に何かを生み出す仕組みや場が必要です。語り合い、生み出す場。「企画所」とでも文字が充てられる創造の場が、現在の企画そのものではないかと思います。(第90話に続きます)

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

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マーケティング・テーマの変遷を見てこれからを考える。

第3回:マーケティング・テーマは、時代変化と共に、経営効率・効果を高める思考のガイド役として進化し続けている。

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マーケティングの進化を見直した。

日本のビジネス界にマーケティングが紹介されたのは前世紀の半ば1955年ころと言われ(公益社団法人日本生産性本部)、今や半世紀以上の時が流れたことになります。

今までマーケティング理論の殆どが、企業活動の効率性に主眼が置かれていたことで、その解釈にある種の偏りが生まれたことは否めません。

改めて時代を追って、マーケティングの注目テーマを整理してみると、わが国の産業の変遷までが見えてくるものです。(第4回に続きます)

 

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第65話)

第65話:マイナス金利と資産運用

 今回のマイナス金利導入は、日本で初めて金利がマイナスになったことで注目を集めたが、EUの中央銀行であるECBや、スイス、デンマーク、スウェーデンでは、すでにマイナス金利が導入されている。

 日本で、マイナス金利が適用されるのは、金融機関が日銀に保有している当座預金約二百六十兆円のうち10~30兆円である。残りのうち210兆円はこれまでと同じように0.1%の金利がつき、40兆円は金利ゼロである。マイナス金利で経営を圧迫された銀行がATMの手数料を上げるのではないかと心配する向きもあるが、マイナス金利が適用されるのは一部なため、今のところそれは考えにくい。

 ちなみに、マイナス金利が適用される10~30兆円は、日本のGDPの2~6%である。一方、ヨーロッパはユーロ圏のGDPの約8%にあたる額にマイナス金利を適用している。しかも日本の金利は▲0.1%であるのに対して、ユーロ圏は▲0.4%。国により状況が異なるため一概には言えないが、銀行の経営に大きな影響を与えることは考えにくい。

 そもそも銀行は、日銀が国債を高く買い取ってくれるため、今回のマイナス金利導入でもトータルで必ずしもマイナスとは限らない。マイナス金利導入後は銀行株が下がっているが、それは今回のマイナス金利導入が唐突すぎて、その意味を市場が解釈しきれていない可能性がある。ヨーロッパでは、マイナス金利導入の約一年前からその可能性が示唆されていたため、市場の混乱は限定的だった。

 ただ、預金金利は下がって利息がつきにくくなる。しかし、もともと預金金利は0.0数%で、ATM手数料を加味すれば実質マイナスになってしまう程度の水準だった。それが0.00数%になったところで、実質的に影響は限定的だろう。

 一方、ローンの金利も下がる。これは現役世代ほど有利である。シニア世代は住宅ローンを支払い終わっている世帯も多いが、現役世代は住宅や教育、自動車など何かと借金をする機会が多く、その分恩恵も大きいと考えられる。

 アベノミクスはデフレ脱却を目指した経済政策であり、今回のマイナス金利導入もその一環である。資金を積極的に動かす人や経済的に成果を上げる人がより恩恵を受けられ、ひいてはそれが日本経済にも良い影響を及ぼす仕組みとも言える。このため、少しでも資産があるのであれば、動かしたほうが個人としても企業としても良い循環を生む可能性が高まる。

 なお筆者は、少なくとも黒田総裁の任期が終わる2018年3月まではマイナス金利が継続されると考えている。つまり、当面は投資に有利な環境とも言えなくもない。このため、インフレヘッジの観点からも、株や外債、不動産などに投資をすることは意味がある。

 日本はまだデフレの渦中にあるため、今後、さらなる量的質的金融緩和やマイナス金利が進んでいく可能性がある。来るべきインフレに備え、この機会に資産運用を考えるべきだろう。(第66話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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60分でわかる「マイナス金利」
第一生命経済研究所
首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

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プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

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原秀治の“わくわくイノベーション”コラム/柔らかい発想(第41話)

第41話:結果は最後まで分からない

 先月、ある女性グループの想いと活動が、共感により広がりを見せたお話です。

 このグループは、8年前に地域の魅力・宝・誇りを多くの方に知ってもらい、「まちづくり」や「まちおこし」につなげたいと「日曜市の出店活動」を始めました。

 

 今年、地域の大イベントの中で、日曜市の通りを四国の「よさこい」名門チームに踊ってほしいというプロジェクトを企画し実現しようとチャレンジしました。プロジェクトのきっかけは、四国の「高知の日曜市」での出会いの中でした。

 8年前、グループの代表が宿泊先ホテルの前の道路が朝起きたら歩行者天国となり、お店が約500軒並んでいた光景を見て感動したことでした。

これを自分の地域でもやれたらという想いが高まり、そこから、高知の日曜市との交流が始まったのです。

 そして、8年後の今年、地域での大イベント開催の機会により、「高知のよさこいを踊ってほしい」という想いが実現しようとしていました。

 

 そこで、よさこい名門チームの旅費交通費や諸経費を自分達の力でと考え、クラウドファンディグ(目標金額30万円、募集期間20日間)にも挑戦しました。

 クラウドファンディングのリリース初日から支援金を頂くなど順調なスタートでしたが、突然、熊本や大分での大地震が発生しました。女性グループは、イベント準備など多忙の中でしたが、地震災害のボランティア活動にも取組ました。

 

 それから数日後、クラウドファンディングの募集期限が残り2日となった時、私にメールが届きました。「原さん、地震などの震災がありクラウドファンディングの活動を一時停止していましたがこれから頑張ります。最後まで諦めません。あと2日頑張ります!」というメッセージでした。

 募集期限の3日前までは、目標金額30万円に対して10万程度(約30%)でしたが、残り1日となり100%を達成し、最終的には469,000円(156%)という嬉しい結果となりました。

 

 金額の大小よりも、たった1日で30%から156%にまで伸ばせたのは、野球で例えると、「九回裏2アウト、逆転サヨナラ満塁ホームラン」のようなものでした。

 

 要するに、ご支援や応援してくださった皆さんは、この女性グループの想いと日々の活動、そして今回の行動力を見ていたのです。そして、共感からFBでのシェア等の拡散により広がっていったのです。

 クラウドファンディングやイノベーションは、チャレンジする人の思想や使命感、モチベーション力と行動力が大前提となります。

 

 「あなたなら、途中で諦める?最後まで諦めない?」イノベーションへの大切な問いです。

 

・FAAVO福岡「日曜市プロジェクト」

https://faavo.jp/fukuoka/project/1193

・熊本&大分の復興応援プロジェクトの内容
https://faavo.jp/fukuoka/project/1251

 

☆わくわくイノベーション塾の開催日程

・天神会場 :毎月第3水曜日18:30〜20:00予定

・北九州会場:毎月第2土曜日13:30〜16:30予定

・久留米会場:毎月第3金曜日19:00〜20:30 予定

  • 各会場により、カリキュラム内容が異なります。随時、募集していますので、

お気軽に㈱ビズ・ナビ&カンパニー原までご連絡ください。

連絡先Eメール(原):shuji@biznavi.co.jp

 

原 秀治 氏

原 秀治 氏

株式会社ビズ・ナビ&カンパニー

シニア・コンサルタント 原 秀治

Eメール:shuji@biznavi.co.jp

URL: http://www.biznavi.co.jp/

FAAVO福岡:https://faavo.jp/fukuoka

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☆原 秀治(はら しゅうじ)

☆所属コンサルティング会社

株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・シニア コンサルタント(MBA)

・FAAVO福岡(ファンド最高運営責任者)

・わくわくイノベーション塾(主宰者)

☆専門領域 (企業コンサルティング&研修講師)

・イノベーション

・問題解決

・意思決定

☆開催セミナー&研修(主な実績)

・「わくわくイノベーション塾」毎月開催

・「地域×クラウドファンディング活用セミナー」随時開催

・「アイデア発想☓未来シナリオ」ワークショップ

・「問題解決思考法」研修

・「問題解決のビジネス交渉術」研修

・「ロジカル シンキング」研修

・「クリエイティブ シンキング」研修

・「アイデア実現!ビジネスモデル作り」研修

・「プレゼンテーション力向上」研修

・「ファシリテーション力向上」研修

☆株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・福岡市中央区舞鶴3-1-10 セレス赤坂門4F

・tel:092-761-6130

・HP:http://www.biznavi.co.jp/

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