エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第57話)

第57話:中小企業のTPP活用策

 TPPを契機として中小企業が海外展開の拡大を検討する動きや、TPPを契機とした輸出・販路拡大への期待を寄せる事例が主に3つの方向で顕在化している。

 一つ目は、自社製品の輸出を拡大する期待である。経産省の調べによれば、長野県諏訪市に拠点を置く精密金属加工の専門メーカーでは、独自の金属接合技術を生かして自動車部品を製造しており、TPPを契機に日本から北米への自動車部品の輸出拡大を計画とのことである。また、愛知県一宮市の毛織物製造業では、TPPを見据えてベトナム繊維の国有企業と業務提携をした。TPPにより米国の繊維関税撤廃を見込み、日本でデサインや商品企画を実施し、高付加価値繊維は日本で生産する一方で労働コストの低いベトナムで縫製することでベトナムから米国へ輸出し、今後は原産地規則を満たす供給網の実現を目指している。

 二つ目は、国内へ出荷が増える期待もある。経産省の調べによれば、東京大田区で金型や測定器等の設計や製造、販売する企業では、主に自動車部品メーカー向けの金型や測定器具などを設計・製造・販売しているが、TPPにより取引先の自動車部品メーカーなどの輸出が拡大することで金型や測定器具などの受注拡大に期待を寄せている。また、東京都新宿区にあるエンジン部品等を製造するメーカーは、インドネシア等でベトナム向けの二輪車用エンジン部品を製造しているが、TPPの発行も見据えてインドネシア等から日本に生産の一部を移すことも視野に入れているようだ。これにより、同社に部品を納入する中小企業の納入拡大が期待されている。

 三つ目が、地域産品等の輸出拡大への期待である。経産省では事例として三点あげている。一点目が陶磁器であり、特に現時点で最大の輸出先国は米国であるが、現行税率が最大28%あり、TPPを活用するメリットがあるとしている。具体的には、岐阜の美濃焼等では近年の日本食ブームを背景に海外の展示会等で日本食とともに食器を紹介する動きがある。二点目がタオルである。現時点で米国9.1%、カナダ17%の高関税があり、これが撤廃されることで輸出拡大に期待が高まっている。具体的には、今治や泉州等では日本で糸から生産し、使い心地にこだわった高品質のタオルをブランド化する動きがある。三点目が高級洋食器である。具体的には、新潟県燕市ではノーベル賞の晩さん会で使用されるような高品質なステンレス製洋食器を製造しており、米国への輸出は現行税率で最大8.2%の関税がかかることから、高級品では関税撤廃はプラスとTPPの大筋合意を歓迎する向きがある。

 こうした期待が高まる中、TPP大筋合意を受け、政府内ではTPP対策の予算化の動きが進んでいる。ただ、TPPの発効には参加12か国が協定に署名し、議会の批准など国内手続きを終える必要があり、実際には2年近くかかるとみられている。従って、政府は発効に備え、中小企業の声に耳を傾けることで万全な対策をとるとともに、経営者側も環境変化を好機ととらえる姿勢が期待されよう。(第58話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。

http://www.seishun.co.jp/book/16673/

(ご購入は上のURLからもできます)

 

 

nagahama20161011企画提案、事後報告、業界予測──。自分のやりたい仕事を通すには、わかりやすさと説得力を兼ね備えたレポートをつくる力が欠かせません。でも、多くは「表やグラフを多用しすぎ」「論旨が脱線」「とにかく長い……」など、“残念なレポート”になってしまっています。長年、業界のプロや一般読者を対象に“読ませるレポート”を作成してきたエコノミストが、どんなレポートも見違える大原則を公開します。

原秀治の“わくわくイノベーション”コラム/柔らかい発想(第34話)

第34話:サービス・イノベーション

 イノベーション・モデルのパターンの中に、サービス・イノベーションがあります。簡単に言えば、「商品価値をどのように維持、増幅するか」です。

 つまり、上手に展開されたら、平凡な商品でさえ顧客が繰り返し求める魅力的な価値に引き上げることができるという考え方です。

 例えば、地域クラウドファンディングFAAVO福岡での魅力的な事例に、「古民家で保護猫が幸せを掴むカフェを作りたいプロジェクト」があります。

 動物の殺処分という問題を解決したいと動物専門の法律家として活躍している女性が、保護猫カフェと古民家カフェを合体させた新しいスタイルのカフェを企画して想いの実現に取り組んでいます。

 古民家を改修したカフェや動物も同伴できるカフェなどは、あらゆる地域に存在していて特に珍しくはありません。

 しかし、この「保護猫☓古民家カフェ」の特徴は、保護猫と人のふれあいをコンセプトにしていることです。

 具体的には、「猫を飼いたいけど飼えない飼い主」と「飼い主を待つペット」をマッチングする仕組みをビジネスモデルとして構築したのです。

 飲み物やスイーツという商品の品質、店舗のデザインや空間づくりなどのハード面も大切ですが、商品や店舗といったモノで差別化を図るのではなく、「猫の里親募集型」というサービスを組み合わせることで、競合優位性を高めることが可能となりました。

 ホームページ上でも、商品メニューの掲載を少な目にして、猫と人がふれあっている写真や空間を多く掲載することにより、猫ファンからの共感を得ることに成功したのです。

 お客様は誰で、お客様は何を求めていて、お客様が満足する価値をどう提供できるかを探求することがイノベーションにつながるのです。

 「商品価値をどのように維持、増幅するか?」イノベーションへの大切な問いです。(第35話に続きます)

 

毎月開催している「わくわくイノベーション塾」では、参加者の想いと対話を重視した「オープンな共創の場」の提供により、皆さんと一緒に地域の未来を描いています。

 わくわくイノベーション塾の詳細は、下記リンクの「新着情報」でご覧になれます。

http://www.biznavi.co.jp/news/175.html

https://faavo.jp/fukuoka

原 秀治 氏

原 秀治 氏

株式会社ビズ・ナビ&カンパニー

シニア・コンサルタント 原 秀治

Eメール:shuji@biznavi.co.jp

URL: http://www.biznavi.co.jp/

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

☆原 秀治(はら しゅうじ)

☆所属コンサルティング会社

株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・シニア コンサルタント(MBA)

・FAAVO福岡(ファンド最高運営責任者)

・わくわくイノベーション塾(主宰者)

 

☆専門領域 (企業コンサルティング&研修講師)

・イノベーション発想(未来シナリオ含む)

・戦略的問題解決(交渉術含む)

・意思決定と行動

 

☆開催セミナー&研修(主な実績)

・「わくわくイノベーション塾」毎月開催

・「地域×クラウドファンディング活用セミナー」随時開催

・「問題解決思考法」研修

・「問題解決のビジネス交渉術」研修

・「問題解決型リーダーシップ」研修

・「ロジカル シンキング」研修

・「クリエイティブ シンキング」研修

・「アイデア実現!ビジネスモデル作り」研修

・「地方自治体の政策形成」研修

・「新入社員の心構え」研修

・「プレゼンテーション力」研修

 

☆株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・福岡市中央区舞鶴3-1-10 セレス赤坂門4F

・tel:092-761-6130

・HP:http://www.biznavi.co.jp/

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第81話)

第81話:今は「ない」ことが繰り返される社会のよう思えます。

 通勤電車の車両の中で、高校生の男女が頬を寄せ抱き合って立っていました。通学途上でしょうか。そもそも学びの場に向かう姿勢には見えません。それ以上に公衆の面前での振る舞いとは思えない情景です。かといって「みっともない(=見るに耐えない)」からやめなさい・・・との声も上がりません。多くは眼をそらしています。それよりも、あたり構わぬ大きな声での会話。ひと時動物園のサル山の風情を感じます。

 その少し離れたところで、鏡を出して髪を整えているOLと思しき女性がいました。これもまた「みっともない」と本人は少しも「思っていない」。日本の女性の特徴であった「さりげない」おしゃれ感覚は、決して全てを「さらけ出さない」、ある一面は隠すところに風情があったようにも思うのですが。

 TVのバラエティ番組を見るでもなく見ていました。最近はやりのお笑いタレントが登場して「くだらない」「なさけない」という言葉が飛び交います。その「くだらない」内容を真剣な眼差しで見る観客と、その場の雰囲気を映像で見る自分も含めた視聴者。演じていることや会話自体が「くだらない」とは誰も言いません。多少のしかめっ面が見えるだけです。

 昼に定食屋に行きました。近隣の競争を意識して、質もそうですが見せかけのボリュームを競う店もあります。特段の「愛想もない」店のサービス。若い女性では到底「食べきれない」量をサービス、と言い切る店もあります。食べ残す。誰も「もったいない」などとは言いません。食べられない量を出す店が悪いのであって、自分には何の非もない、といった顔つきです。米一粒食べ残すことに「もったいない」と親に叱られた世代からすると、何とも「やるせない」思いがあります。

 朝から夕刻までの一日。「~ない」と思いながら、声に発して言う機会も「ない」ままに、目の前の風景が流れていきます。これも今の情景なのか、「しようがない」ことなのか。しかし、どこか「切ない」と思ってしまいます。(第82話に続きます)

 

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

URL: http://www.mapscom.co.jp

 

books

 

 

 

清野裕司氏の書籍はアマゾンページからご購入いただけます。

(写真をクリックしていただくとアマゾンページに移動します)