エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第50話)

第50話:原油価格下落の功罪

 2015年に中国経済が減速した最大の理由は、リーマン・ショック後の4兆元の景気対策が発端で、公共事業をやりすぎた結果、過剰設備、過剰債務となり、製造業を中心に冷え込んだことだ。人口動態をみても、中国の生産年齢人口は2012年にピークアウトし、高度成長から安定成長に減速する中で景気対策をやりすぎた結果、今、調整しているところである。中国はかつてのような世界の工場ではなくなり、人件費も上昇、生産拠点も東南アジア諸国に移行している。1人当たりのGDPも、日本の10分の1程度から5分の1程度にまで向上し、個人消費が増えサービス業などが好調になっている。最近、マーケットも気がついているが、中国経済を製造業だけでみると過小評価になる。

 2016年の中国経済は6%程度の成長で、トレンド的には減速するが、引き続き世界経済の牽引役となる。経済規模をみても、5年前に日本を上回ったばかりだが、2016年にはユーロ圏を上回る見通しとなる。中国経済が6%しか成長しなかったとしても、世界経済の15%以上のウエイトを占めていることから、その影響はアメリカよりも大きくなる可能性がある。

 ユーロ経済を見ると、2016年後半にギリシャで債務問題が再燃する可能性はないとは言えない。ただ、ギリシャの債務問題で、株が大きく下がったわけではなく、ギリシャ国債はほとんど公的部門がもっていることもあって、ギリシャの破綻に対する実態経済の影響は抑え込まれている。こうしたことを考えると、ユーロ圏での金融危機的なものはそこまで心配する必要はないと思われる。

 今、世界経済で起きている大きな変化は原油価格の下落である。原油価格が下がった理由の一つはアメリカのシェールオイル問題である。原油価格の上昇によって、シェールオイルの開発が促進されることから中東諸国、特にサウジアラビアがシェアを確保するために減産していない。また、イランの核開発協議の進捗もあって、イランも増産していることから原油価格は少なくとも2014年夏のような1バレル100ドルには戻らず、上昇しても50~60ドル程度と考えている。この程度の原油価格であれば、日本経済にとっても好条件で、原油安と円安によって2015年だけでも8兆円程度の所得の海外流出が抑えられている。8兆円といえば3%の消費税額と同じであり、2016年も交易条件の安定は期待できそうである。

 その一方で、原油価格の下落によって、産油国経済は非常に厳しい状況となっている。中東諸国は2011年春頃にアラブの春で政情不安定となったが、その後落ち着きを取り戻した。その背景には、原油価格の上昇による潤沢な財政を使ったばらまき的な政策があった。しかし、原油価格がここまで下がってしまうと、ばらまき政策が実行不可能となる。2015年11月13日のIS(イスラム国)によるパリ同時多発テロなどが起こった背景には空爆の影響もあるが、根底には原油の闇取引などによって資金調達を行っていたものが、相当厳しくなっていることもある。

 原油安は先進国を中心に、原油輸入国にとってはプラスで、世界経済にとってもプラスだが、産油国の政情の不安定さを通じたリスク、例えば、テロ活動などには2016年も注視すべきである。(第51話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。

http://www.seishun.co.jp/book/16673/

(ご購入は上のURLからもできます)

 

 

nagahama20161011企画提案、事後報告、業界予測──。自分のやりたい仕事を通すには、わかりやすさと説得力を兼ね備えたレポートをつくる力が欠かせません。でも、多くは「表やグラフを多用しすぎ」「論旨が脱線」「とにかく長い……」など、“残念なレポート”になってしまっています。長年、業界のプロや一般読者を対象に“読ませるレポート”を作成してきたエコノミストが、どんなレポートも見違える大原則を公開します。

原秀治の“わくわくイノベーション”コラム/柔らかい発想(第27話)

 

第27話:棚から牡丹餅はある?ない?

お正月に、毎年恒例の自家製お餅を食べました。

お餅を食べていて、「棚から牡丹餅」という諺と過去の体験を思い出しました。

両親は、私が中学生ぐらいまでは、山林を経営していましたが国外からの安い材木の輸入により国産材の低価格化が進み、現状維持では事業の継続が困難と判断して、一部の山林を伐採。茶園の生産と小さなお米の加工業(ライスセンター)に事業転換しました。

私は、学生時代の休日には家業の手伝いをすることで、ゼロからの事業スタートアップを体験することができました。茶園作りでは、石拾いから苗木の植林、肥料撒きなどにより汗をかきました。ところが、最初は植えた苗木が枯れるなど、努力しても失敗することもあるのだという学びを得ました。

その失敗の経験から再度チャレンジ。土づくりからやり直すことで、美味しいお茶が栽培できるまでの成功ストーリーも体験することができました。

ライスセンター経営では、開業からの数年は試行錯誤で、深夜の作業が続く年が続きましたが、経験を重ねる中で、①予約・②集荷・③加工・④配達などの物流の流れとリピーター客が確保されたことで、安定した経営を継続することを体験しました。

両親が「棚から牡丹餅はない。(労せずにして良いものを得るたとえ)」。自分達で切り開いていくしかないと言っていたのを思い出しました。

私は経営コンサルタントとして多様な企業や組織の人々と出会います。そもそも、棚から牡丹餅はないはずなのですが、棚から牡丹餅により守られている組織があります。

このような組織には、本物の牡丹餅を創リ出す楽しさと達成感を体験する機会を提供することが必要です。

ゼロベース発想により、働く目的を問い続ける場の提供と対話が必要な時代に直面しています。(第28話に続きます)

 

毎月開催している「わくわくイノベーション塾」では、参加者の想いと対話を重視した「オープンな共創の場」の提供により、皆さんと一緒に地域の未来を描いています。

 わくわくイノベーション塾の詳細は、下記リンクの「新着情報」でご覧になれます。

http://www.biznavi.co.jp/news/169.html

https://faavo.jp/fukuoka

原 秀治 氏

原 秀治 氏

株式会社ビズ・ナビ&カンパニー

シニア・コンサルタント 原 秀治

Eメール:shuji@biznavi.co.jp

URL: http://www.biznavi.co.jp/

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

☆原 秀治(はら しゅうじ)

☆所属コンサルティング会社

株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・シニア コンサルタント(MBA)

・FAAVO福岡(ファンド最高運営責任者)

・わくわくイノベーション塾(主宰者)

 

☆専門領域 (企業コンサルティング&研修講師)

・イノベーション発想法

・問題解決思考法(交渉術含む)

・問題解決型リーダーシップ

 

☆開催セミナー&研修(主な実績)

・「わくわくイノベーション塾」毎月開催

・「地域×クラウドファンディング活用セミナー」随時開催

・「問題解決思考法」研修

・「問題解決のビジネス交渉術」研修

・「問題解決型リーダーシップ」研修

・「ロジカル シンキング」研修

・「クリエイティブ シンキング」研修

・「アイデア実現!ビジネスモデル作り」研修

・「地方自治体の政策形成」研修

・「新入社員の心構え」研修

・「プレゼンテーション力」研修

 

☆株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・福岡市中央区舞鶴3-1-10 セレス赤坂門4F

・tel:092-761-6130

・HP:http://www.biznavi.co.jp/

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第74話)

第74話:「相身互い(あいみたがい)」という言葉を聞かくなくなりました。

 失われた〇〇年とも言われ、今世紀に入ってからの日本の社会は、何となく疲労感漂う顔付きや、未来を見ることのない眼を持った若者に出逢ったり・・・・。自分の気持ちを素直に出すことが出来なかったり、その想いを文字にすることが出来ない人が増えたりと、どうも現在、「考える力」が軟弱になった社会に住んでいるような気がします。

 だからでしょうか、相手のことや相手の立場を知ろうとせず、自分中心に世の中が回っているとでも思っているような人に出会う機会が増えてきました。街を歩いていると、都会では止む無く人とぶつかったり、大きなバックの角が当たったりすることは日常茶飯事です。しかし、その瞬間の会話がありません。ぶつけた方もぶつけられた方も無言。ただ、お互いに不愉快そうな顔をして行き過ぎるだけ。一言の「失礼」「ごめんなさい」を言う暇もないほど、先を急ぐ日々なのでしょうか。決してそうは思えないときが多いのですが。

 この国の文化は、お互いに痛みを分かち合う社会ではなかったでしょうか。「相身互い」の言葉があります。互いが互いの立場に立って考え、事にあたれば相互の理解が進むとの考えがあったはずです。いつの頃からか、そのような精神文化はどこかに行ってしまったようです。相手を思いやることがない社会では、当然相手の心の痛みや悩みは知るよしもないでしょう。人を傷つけても、自らの心が痛まないのかもしれません。

 マーケティングの根源は、顧客の立場を知ることに始まります。相手の立場に立って、その思考(志向)を読み解くことが必要です。まさに、自らも受け手に立って「相身互い」の思考回路を持たなければ、顧客に近づく施策など生まれないと思うのですが。(第75話に続きます)

 

清野氏 法政大学 講義

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司

Eメール: maps@mapscom.co.jp

URL: http://www.mapscom.co.jp

 

books

 

 

 

清野裕司氏の書籍はアマゾンページからご購入いただけます。

(写真をクリックしていただくとアマゾンページに移動します)

 

 

エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第49話)

第49話:2015年は中国経済の失速と所得低迷が予想外

 2015年の経済状況を振り返ると、予想通りとなったのは米国の利上げである。利上げ時期までは予想通りではなかったが、2015年末に利上げが行われた。全般的には、ある程度の円安水準が維持される一方で、原油価格が低水準で推移したこともあり、企業業績が最高益を更新する可能性が高まっている。株価も2014年末の1万8,000円弱から4月に15年ぶりに2万円を超え、世界同時株安もありその後下回ったが、2015年末には1万9000円程度にまで回復している。この部分はほぼ想定通りといえる。

 その一方、経済成長率が4-6月期にマイナス成長となったことは予想外であった。これだけ企業業績が良ければ、成長率はもう少し上がると考えていた。

 この背景には大きな誤算が2つある。1つは中国経済の減速である。中国経済の減速は予想以上となり、それに伴って輸出が弱くなり、いわゆる生産調整的な動きもあって、4-6月期にマイナス成長となった。2つめは賃金が思った以上に伸びなかったことである。企業業績も良く、2015年春闘も良い結果となったわりには、ボーナスを含めて賃金が期待ほど増えず、それが個人消費の抑制につながった。加えて、企業側をみても設備投資計画は強いわりに設備投資が増加しなかった。企業業績が良いわりには企業マインドが好転しなかったことも予想と異なった。

 ただし、その後をみると7-9月期はプラス成長に転じ、在庫がマイナス寄与となったことから、在庫調整が進んだことで10-12月期もプラス成長が持続する可能性が高い。

 そういった意味では景気後退とはいえないものの、7-9期までの状況をみれば回復とはいえない。2015年度としては1%程度成長すると予想されるが、当初はもう少し高い成長率になると思っていた。やや期待外れである。

 単純に賃金・所得が増えない以上に、2014年4月の消費税率の3%引上げの影響が大きかったと考えられる。賃金が本格的に回復しない中での消費税率3%の引上げが、単純な駆け込み需要と反動だけでは説明できない家計への重石となったことをあらためて実感した。

 消費税率は2017年4月に10%への引上げが予定されているが、消費税率引上げの前までに、経済活動をいかに力強くするかが重要になる。

 2016年の日本経済で最大のカギを握るのは賃上げであり、GDPの約6割を占める個人消費の回復が重要課題で、黒田日銀総裁も春闘の動向には非常に注目していると発言している。

 懸念しているのは、中国発の世界同時株安もあって、足元の設備投資、機械受注も一時的に冷え込んでいることもあり、2016年の春闘はあまりいい結果とならない可能性がある。そうなった場合、2017年4月の消費税率引上げに耐えうる経済環境が整わない可能性がある。安倍首相のこれまでの発言を聞く限りでは、2017年4月の消費税率の引上げはよほどのことがない限り、実施される可能性が高いことから、2017年の景気はさらに心配になるだろう。(第50話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。

http://www.seishun.co.jp/book/16673/

(ご購入は上のURLからもできます)

 

 

nagahama20161011企画提案、事後報告、業界予測──。自分のやりたい仕事を通すには、わかりやすさと説得力を兼ね備えたレポートをつくる力が欠かせません。でも、多くは「表やグラフを多用しすぎ」「論旨が脱線」「とにかく長い……」など、“残念なレポート”になってしまっています。長年、業界のプロや一般読者を対象に“読ませるレポート”を作成してきたエコノミストが、どんなレポートも見違える大原則を公開します。

PR 永濱 利廣 氏 新刊のご紹介

nagahama20161011

お世話になっております。

さて、1/7に永濱先生の書籍が出版されましたので、案内させていただきます。

何卒よろしくお願いします。

http://www.seishun.co.jp/book/16673/

(ご購入は上のURLからもできます)

 

 

 

 

 

企画提案、事後報告、業界予測──。自分のやりたい仕事を通すには、わかりやすさと説得力を兼ね備えたレポートをつくる力が欠かせません。でも、多くは「表やグラフを多用しすぎ」「論旨が脱線」「とにかく長い……」など、“残念なレポート”になってしまっています。長年、業界のプロや一般読者を対象に“読ませるレポート”を作成してきたエコノミストが、どんなレポートも見違える大原則を公開します。