エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第37話)

第37話:個人消費が伸びないわけ

 アベノミクスの最大の成果は、異常な円高株安が是正されたことと、家計の収入および金融資産が増大したことだが、問題は個人消費が伸びていないことである。

 昨年はシニア層の消費がそれなりに増えたが、年明け以降は減っている。エンゲル係数が高いシニア層は円安の副作用で食料費の負担が増えている可能性が指摘できる。

 また、社会保障の効率化の議論がシニア層の財布の紐を締めていることも考えられる。これまでは現役世代がリタイア世代を支える構図であったが、これからは世代内で支え合いをする方向に進みつつある。こうした中、国が家計の銀行口座を把握して預金を持っているシニアには応分の負担をしてもらうと議論されていることが報道されたことも大きい。

 一方、2010年にアメリカで発表された学説によれば、社会人になった数年間に不況を経験すると、景気が良くなっても財布の紐はゆるまないようである。不況が続いた1990年代後半から社会に出た世代(ロストジェネレーション)は、少々収入が増えた程度では消費につながらない可能性もある。

 一方、国の経済のポテンシャルは「労働・資本・技術」で決まるとされている。経済学では、供給能力まで需要が追いつくことを完全雇用状態というが、そうなれば賃金が本格的に上がってくる可能性がある。現状では来年度後半には到達する可能性があるため、消費増税の有無にも左右されるが、再来年度以降は給料が上がり消費が伸びるのではないかと期待される。

 なお、一時的な特需だが、昨年度の補正予算のプレミアム商品券が各地で施行されている。再来年4月の消費増税前の駆け込み需要もある。また今年度も富の再分配政策として3兆円規模で補正予算が組まれると期待される。

 中国経済の減速により原油価格が下がっているが、それに加え、アメリカでシェールオイルが採れるようになり、産油国がシェアを奪われないために意図的に減産せずに価格を下げている。これは日本経済にとって大きな恩恵がある。ガソリン・軽油・灯油の価格が下がり、天然ガスが下がれば電気やガス料金、魚やハウス栽培の野菜・果物の価格も下がり家計の購買力を支える要因になることが期待される。

 日銀はインフレ率2%にいくような見込みが出てくるまで金融緩和すると言っているため、もう少し円安が進むと予想される。

 具体的には、1ドル120円から130円までになる可能性はある。しかし、来年夏に参議院選挙が控えていることと、円安で食料品の値段が上がって消費が押さえられていることもあるため、それ以上の円安には歯止めがかかると考えられる。(第38話に続きます)

永濱 利廣 氏
永濱 利廣 氏

 
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 永濱利廣

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経済は「環境」と「政策」に左右されます。 だから、それらが今とそっくりの時代がもしあれば、 今後の日本経済に何が起きるかを予測できるはずです。 しかし、そんな都合のいい時代があったのでしょうか。 実は、あったのです。 それが1986年と、2014年の日本です。 80年代後半、日本は未曾有の好景気に沸きました。 それと同様、今の日本は、黄金期の入り口に立っているのです。

【1986年→1989年】 原油価格が1/3に下落 史上最低の公定歩合 公共事業費が増加に NTT株公開 消費税導入 「死んだふり解散」で自民党圧勝 「前川リポート」による構造改革 ブラックマンデーと、その後の急回復

【2014年→2017年】 原油価格が1/2に下落 金融の異次元緩和 機動的な財政政策 郵政株公開 消費税増税 「アベノミクス解散」で与党圧勝 「日本再興戦略」による構造改革 中国ショックと、その後の急回復?

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第60話)

第60話:顧客から「私の店」「私のもの」と言って貰えること。

 季節を問わず、仲間とのコミュニケーションの場を求めて生ビールを飲み干すシーンがあります。1杯2杯と杯が進み、普段は小声の人までが声高に会話を始め、隣の集団の話題までが、聞くでもなく聞こえてくる空間になります。「ちょっと1杯」の誘い文句が、いつの間にやら「空いたジョッキがいっぱい」の状況。

 どうもビールの飲み比べだけでは物足りなくなってしまうようで、次なる店の物色が始まります。足もとがおぼつかなくなっている御仁もいます。何とか近場で気の利いた店はないか。スマホ・携帯の電話帳が活躍し始めます。また、エリア内の検索も始まります。情報社会の縮図が現出する瞬間です。そして仲間の内の一人が喜々として声を発する。「じゃ、僕の店に行きましょう。そう、俺の店に・・・」といった声。次なる店が決まり、皆の安堵の声と次への行動準備に移るという、よく出会う光景です。

 ところで「僕の店」「俺の店」「私の店」とは、どのような店のことでしょうか。発言した本人が経営しているわけではなく、投資をしたわけでもありません。また、家族が関与しているわけでもありません。ただ、数回にわたって行ったことのある店です。過去体験によって、その店の雰囲気やメニュー、更には料金までがだいたい予測できる。一緒に行くメンバーの、予算レベル、趣味の範囲、料理の好み・・・等々から判断して、自分なりに妥当と判断した店が「自分の店」でしょう。

 馴染み度の深まりは個人差はあるものの、過去の使用頻度・接触頻度と相関するようです。馴染み度が深まれば、それだけ安心感・納得感も深まりを増します。行く度に新しさを感じさせる店、楽しい会話の待つ店。顧客と店との関係は、自ずと密接なものになるものです。

 多くの顧客から「私の○○」と言って貰えること。マーケティングのなすべき役割は、「私の商品」「私の店」といわれるレベルへの創造行為と見ることが出来ます。(第61話に続きます)

清野 裕司 氏 オフィスにて
清野 裕司 氏 オフィスにて

株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
Eメール: maps@mapscom.co.jp
URL: http://www.mapscom.co.jp

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原秀治の“わくわくイノベーション”コラム/地域未来を考える(第13話)

第13話:物事を3つで考えてみる視点

私がロジカルシンキング(論理思考)で最初に学んだ基本的な考え方にMECE(ミッシー)があります。

MECEは、「モレなくダブリなく」と訳します。物事を考える時に1つではなく、3つの領域で考えてみるのです。

具体的に言いますと、経営資源では、人・モノ・金。経営分析では、自社・競合・市場。問題をさらに深く分析にする時も、「なぜ?」を繰り返し3つに分解して原因を探求していきます。

3つの領域で考える理由は、1つの領域のみでは、モレが出てくる恐れがあるからです。経営資源を人だけで考えていては、モノや金に関しての領域にモレがあります。

あるいは、アンケート調査などで、子供・大人・高齢者だと、大人と高齢者にダブリがあり、データの信憑性が低くなります。

では、なぜ2つではなく3つなのか。人は2つのことに関しては考えつきますが、3つ目が考えられないという傾向があります。理由の1つに対局で考える癖があるからです。

例えば、賛成と反対。右と左。前と後などです。

結論を出す時に、賛成か反対だけの選択しかない考え方と、賛成・反対の他に、代替案を出す選択肢があれば、お互いの納得感が高まることもあります。

ビジネス交渉では、勝ち(得)負け(損)で商談取引などの交渉に望む方もいますが、お互いの問題を解決するという考え方やお互いの得について対話する交渉方法の選択肢もあります。

3つで考える習慣が身につけば、思い込みを防ぐことにもつながります。選択肢の幅を広げることでアイデアや解決方法などの視野が広がります。代替案を考えられることで、リスクヘッジにもなります。他人から異論を主張された場合も感情ベースで反対するのではなく、異論に対して冷静に対応することができるようになります。

3つで考える。お薦めの考え方です。(第14話に続きます)

 

毎月開催している「わくわくイノベーション塾」では、参加者の想いと対話を重視した「オープンな共創の場」の提供により、皆さんと一緒に地域の未来を描いています。

 

  • わくわくイノベーション塾と地域クラウドファンディング(FAAVO福岡)の詳細は、下記リンクの「新着情報」でご覧になれます。

http://www.biznavi.co.jp/news/161.html

https://faavo.jp/fukuoka

原 秀治 氏
原 秀治 氏

 

原 秀治 氏

株式会社ビズ・ナビ&カンパニー

シニア・コンサルタント 原 秀治

Eメール:shuji@biznavi.co.jp

URL: http://www.biznavi.co.jp/

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☆原 秀治(はら しゅうじ)

☆所属コンサルティング会社

株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・シニア コンサルタント(MBA)

・イノベーション ファシリテーター

・地域クラウドファンディングFAAVO福岡(プロジェクトマネージャー)

 

☆専門領域 (企業コンサルティング&研修講師)

・イノベーション発想法

・問題解決法

・未来セッション

 

☆開催セミナー&研修(主な実績)

・「わくわくイノベーション塾~地域の未来を考える~」毎月開催

・「地域×クラウドファンディング活用セミナー」随時開催

・「誰でも分かるアイデア発想法」ワークショップ

・「戦略的思考(問題解決)」研修

・「問題解決のビジネス交渉術」研修

・「問題解決リーダーシップ」研修

・「やさしいロジカルシンキング」研修

・「やさしいクリエイティブシンキング」研修

・   地方自治体職員向け「政策形成」研修

・「新入社員の心構え」研修

・「プレゼンテーション力」研修

 

☆株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・福岡市中央区舞鶴3-1-10 セレス赤坂門4F

・tel:092-761-6130

・メール:shuji@biznavi.co.jp

・HP:http://www.biznavi.co.jp/

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第36話)

第36話:日本経済の現状とリスク

 このところ、世界経済は中国の減速によって大きく動いているが、日本の景気は比較的悪くないと考えられる。しかし、強いところと弱いところがまだら模様となっている。

 牽引役は設備投資であり、前年比+3%以上で計画されている。もうひとつの牽引役は財サ輸出(モノ+サービスの輸出)で、外国人観光客が日本でお金を消費する「サービスの輸出」が増加している。

 外国人観光客は、アベノミクスが始まる2012年までは年間約800万人だったが、2014年には1300万人、今年は1800万人を超えると予想され、2016年には政府が東京オリンピックまでに目標とする2000万人を超える可能性が高い。

 外国人観光客が増えた最大の理由は、今年1月に中国人向け観光ビザの発給要件が緩和されたからである。その後、ブラジル人、モンゴル人向けの発給要件も緩和されており、将来的にインド人向けの要件も緩和されれば、更に観光客が増える可能性が高い。

 一方、モノの輸出は中国を含めアジア向けが良くない。アメリカ向けは4~6月期は下がったが、アメリカ経済自体は堅調である。最大のリスクは中国経済である。

 現在の中国経済は日本を抜いて世界第2位、GDPで日本の2倍以上になっている。世界のGDPの約15%を占める中国が減速すると、日本への直接的な悪影響よりも間接的な影響が大きい。日本の輸出の約20%がアメリカ向け、2番目が中国で18%程だが、韓国や東南アジアは更に中国への輸出依存度が高い。中国はエネルギーの消費量も多いため、エネルギーを輸出している資源国のダメージも大きい。

 もうひとつのリスクは、世界的に株価が暴落しており先送りになったが、将来アメリカが利上げをするのは確実である。基軸通貨のドルの供給量が減ることになるため、困るのは経常赤字の国で、新興国にとっては厳しい状況になる。

 反面、中国の経済が減速すると原油価格が下がるため、日本のように海外から原油を輸入している国はプラスになる。さらにアメリカが利上げをしてドル高円安になると、日本経済全体で考えればプラス効果のほうが大きく、特に製造業のウエイトの高い地域は恩恵を受けやすいと思われる。

 なお、中国の株価が下がっている背景として、中国は年明け以降、金融緩和や利下げなど矢継ぎ早に景気対策をして、その効果がようやく秋口頃に出てくるかと思っていたときに、勝手に株をバブルにして崩壊させたり人民元の切り下げをしたりしたため、市場関係者はリスク性の高い資産から引き上げたことがある。ただ、実際の経済データが10月の下旬に出て反転すれば、マーケットの混乱は沈静化すると予想する。(第37話に続きます)

 

永濱 利廣 氏
永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 永濱利廣

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経済は「環境」と「政策」に左右されます。 だから、それらが今とそっくりの時代がもしあれば、 今後の日本経済に何が起きるかを予測できるはずです。 しかし、そんな都合のいい時代があったのでしょうか。 実は、あったのです。 それが1986年と、2014年の日本です。 80年代後半、日本は未曾有の好景気に沸きました。 それと同様、今の日本は、黄金期の入り口に立っているのです。

【1986年→1989年】 原油価格が1/3に下落 史上最低の公定歩合 公共事業費が増加に NTT株公開 消費税導入 「死んだふり解散」で自民党圧勝 「前川リポート」による構造改革 ブラックマンデーと、その後の急回復

【2014年→2017年】 原油価格が1/2に下落 金融の異次元緩和 機動的な財政政策 郵政株公開 消費税増税 「アベノミクス解散」で与党圧勝 「日本再興戦略」による構造改革 中国ショックと、その後の急回復?