エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第33話)

第33話:TPPのメリットとデメリット

 改めて、環太平洋経済連携協定(TPP)のメリット・デメリットについて確認してみると、まず一番身近なメリットは、食料品などの生活必需品の値段が下がることである。

 ここ数年で勤め人の賃金は上がってきたが、消費は増えていない。その要因の1つに、円安による輸入品の値上がりがある。輸入品には食料品など生活必需品が多いため、輸入品の値上がりが消費マインドの冷え込みにつながってしまっている。

 TPPが合意できれば、輸入食料品の関税が下がるため安く食材を調達できる。これは一般消費者にとっては大きなメリットになる。

 産業に関しては、端的に言えば日本がもともと強い産業が得をする。例えば、自動車や自動車部品などがその代表である。

 今、自動車や自動車部品には輸出するのに高い関税がかかっており、特に自動車部品やトラック等には関税が25%もかかる。TPPが合意したとしても、この関税はすぐには劇的に低くはならないが、段階的にでも低くなれば相当なメリットになる。

 更に、輸入食料品が安くなることに関連して、食料品産業や外食産業にもメリットがある。輸入してくる原材料が安くなるからである。

 同じ論理で、実は衣料品業界にもプラスに働く。今の日本では、衣料品は殆ど海外で製造して輸入しているが、その逆輸入にも10%の関税がかかる。それがなくなれば、海外で製造して輸入するときに関税が安くなる分、安く売れる。

 ほかにも、海外の公共事業への入札も可能になる。東南アジア等の国での国営企業保護政策の緩和や、投資家対国家間の紛争解決条項(ISDS)もTPPに盛り込まれるため、日本企業が他国での建築事業に積極的になることも見込まれる。

 一方、デメリットを被るのは日本の農林水産業や畜産業である。今回の交渉でも、日本における米や牛肉の関税の行く末が注視された。

 米には、ミニマムアクセスといい、最低限日本が輸入しなければならない量を定める制度がある。日本はそのミニマムアクセスを10万トンに定めることを主張していた。

 一方で、アメリカなどは17万トン、もしくは18万トンと主張してきている。米に関しては決着がついていないため、今後、米に関してはアメリカ等の主張をのみ、自動車部品の関税期間を短くしてもらうといったバーター交渉が行われる可能性もある。

 日本における牛肉への関税は、元の38.5%から9%へと下がる可能性が高い。国産牛肉と輸入牛肉の競争が激化するのは間違いない。これを「大幅に関税を下げられた」「当初関税完全撤廃を要求されていたが、それでも関税を維持できた」と判断するかは人それぞれであろう。(第34話に続きます)

永濱 利廣 氏
永濱 利廣 氏
 
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 永濱利廣

エコノミスト永濱氏の書籍をご案内させていただきます。書店やネット(下の写真をクリックしてください)でお買い求めいただけます。

永濱利廣著
永濱利廣著

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原秀治の“わくわくイノベーション”コラム/地域未来を考える(第9話)

第9話:水平思考は、イノベーションへのテクニック

水平思考というのは、1970年、創造的教育の研究者エドワード・デ・ボーノ博士が提唱した発想法です。

論理思考は、なぜ?なぜ?と掘り下げていくことで、原因から結果が生まれるという考え方ですが、水平思考は、問題に対する新しい見方を探す思考法です。

つまり、改善ではなく「全く別の方法をとること」なのです。

例えば、顔認識アプリなど、適切なコンテンツを適切な人に表示するため「人口知能」の研究に力を注ぐFacebook。機械に人間とは別次元のインテリジェンスを持たせることで世界の全ての人々をオープンにつなぐことを目指しています。

私の主なコミュニケーションツールは、通話やメール・LINEではなく、Facebookを活用しています。わくわくイノベーション塾の告知もFBイベントです。理由は、機能性など進化し続けていて、簡単にリアルなコミュニケーションをタイムリーに実現してくれるからです。

わくわくイノベーション塾でも、人口知能などテクノロジーによるソーシャルの未来を描いてみたくなりました。

もう一つの例では、この1、2年で日本でも爆発的な勢いでサービスを拡大している空き部屋マッチングサービスのAirbnb(エアービーアンドビー)があります。

体験などを求めて、ビジネスホテルや旅館以外の場所に低価格で泊まりたい旅行者と、個人の部屋や自宅、空き家・空き部屋を貸したい人をマッチングするサービスを提供しています。登録数は、世界190か国で140万件を超え、日本でも約8000件が登録されています。従来の宿泊ビジネスのモデルとは別の「空いているものを有効活用」と「特別な体験」を組み合わせた発想です。

このようにイノベーションとは、まつたく新しい見方や捉え方により、それを実行することなのです。(第10話に続きます)

 

毎月開催している「わくわくイノベーション塾」では、参加者の想いと対話を重視した「オープンな共創の場」の提供により、皆さんと一緒に地域の未来を描いています。

  • わくわくイノベーション塾と地域クラウドファンディング(FAAVO福岡)の詳細は、下記リンクの「新着情報」でご覧になれます。

http://www.biznavi.co.jp/news/159.html

https://faavo.jp/fukuoka

原 秀治 氏
原 秀治 氏

 

原 秀治 氏

株式会社ビズ・ナビ&カンパニー

シニア・コンサルタント 原 秀治

Eメール:shuji@biznavi.co.jp

URL: http://www.biznavi.co.jp/

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☆原 秀治(はら しゅうじ)

☆所属コンサルティング会社

株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・シニア コンサルタント(MBA)

・イノベーション ファシリテーター

・地域クラウドファンディングFAAVO福岡(プロジェクトマネージャー)

 

☆専門領域 (企業コンサルティング&研修講師)

・社会イノベーション

・問題解決思考

・問題解決リーダーシップ

 

☆開催セミナー&研修(主な実績)

・「わくわくイノベーション塾~地域の未来を考える~」毎月開催

・「地域×クラウドファンディング活用セミナー」随時開催

・「誰でも分かるアイデア発想法」セミナー

・「経営活動の問題解決」研修

・「問題解決のビジネス交渉術」研修

・「問題解決リーダーシップ」研修

・「やさしいロジカルシンキング」研修

・「クリエイティブ・シンキング」研修

・   地方自治体職員向け「政策形成」研修

・「新入社員の心構え」研修

・「プレゼンテーション力」研修

 

☆株式会社 ビズ・ナビ&カンパニー

・福岡市中央区舞鶴3-1-10 セレス赤坂門4F

・tel:092-761-6130

・メール:shuji@biznavi.co.jp

・HP:http://www.biznavi.co.jp/

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第55話)

第55話:「食べる」を通じて身に付けるものは何でしょうか。

 「食育」という単語に出会うことがあります。Wikipediaで検索すると、「様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること。単なる料理教育ではなく、食に対する心構え、栄養学や伝統的な食文化についての総合的な教育である。」とあります。

 昔から、教育の基本としてあるのは「知育・徳育・体育」。それぞれに、人として生きていくうえでの基本的知識や知恵の習得であり、他人や社会とのかかわりにおける倫理・道徳の醸成、更には、活動的に生きる源でもある身体の鍛錬を言っています。この3つの要点は、まさに「知を」育み、「徳を」育み、「体を」育むものであり、人が人間として生きていくうえでの基盤になるものと捉えることができます。「食育」はけっして「食を」育むわけではなく「食で」育むものと捉えられます。

 生物としてその生命を維持していくためにも、活力の源でもある「食する」行為がなければならないことは言うまでもありません。今日は「誰と」「何を」「どこで」「どのように」食べるかを考えることも、楽しいひと時です。好き嫌いのある人にとってみれば、「何を」が気になるでしょう。友との語らいでは「誰と」が気になるものです。生活の場面毎に「食」に関する思考や記憶があるもの。

 そんな想いで街を歩く。そこらに残飯が散らかっている道。手にコーヒーカップを持った人。電車の中に転がる、飲み終わった缶コーヒーと缶ビールの缶。

 食べることで、人間としての成長を期するのであれば、先ずはその前に、人としてのマナーを学ぶべきではないでしょうか。「食で・・・」果たして何を高めようとしているのかと、ふと考えることがあります。(第56話に続きます)

清野裕司氏講義風景:2015.08.18
株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
Eメール: maps@mapscom.co.jp
URL: http://www.mapscom.co.jp

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第32話)

第32話:TPP、今回を逃すと今後も締結できない可能性

 そもそものTPPの前身は、2006年に締結された4カ国の経済連携協定である。

 ニュージーランドをはじめ、当初から加入している4カ国はいずれも経済連携に積極的な国だったので、基本的に関税はすべてなし、という方向性で話が進んでいた。それにもかかわらず、あとから入ってきたアメリカや日本が「聖域」などと言って、関税撤廃に反対した。こういったことも、今回のニュージーランドの反発につながっているわけである。

 逆に、なぜ“途中乗車”の日米がTPPをめぐる議論を乗っ取るほどに乗り気なのか。1つは、これまで高い関税障壁を掲げていた国ほど、経済連携協定から得られる経済的利益が莫大だからである。TPPにおいては、一番利益を得るのは高い関税障壁を掲げていた日本とアメリカになる。

 加えて、日米はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗したい気持ちを持っている。欧米からしてみれば、AIIBは中国による、中国のための銀行である。環境問題や人権問題をまったく無視して暴走する可能性は否定できない。AIIBに歯止めをかける方法の1つに、環太平洋地域の中国以外の国々の間でビジネスの基本的なルールを統一し、連携を深めるTPPを締結することも考えられる。

 TPPは人やモノ、サービスが締結国間を自由に行き来できるようにする条約なため、締結国間での投資協定なども組みやすくなる。よって、中国の暴走しそうな投資を抑制する役割を期待でき、日米が乗り気になっているのである。

 最後に、もう1つ、日本がTPP締結に前向きになる理由がある。2国間だけで経済連携協定を結ぼうとすると、相手に有利な方向にうまくまとめられてしまうリスクがある。一方、多国間協定のTPPでは利害の対立する国と交渉をする際にも、利害が一致する国に「味方」になってもらいやすい利点がある。

 たとえば、もし日本とニュージーランドが2国間交渉をしていたとしたら、日本はニュージーランドの乳製品の関税撤廃の要求をはねのけるのに苦労したであろう。しかし、TPPでは、同じく乳製品の輸入を制限したいカナダやアメリカが日本の味方をしてくれた。

 日本としては8月末までにTPPの交渉を再開したいという気持ちがあった。しかし、8月頭には甘利明TPP担当大臣が「TPP閣僚会合の月内開催は難しい」との見解を示しており、“TPP漂流”の可能性も出てきた。このタイミングを逃すと、9月以降はアメリカで大統領選挙が盛り上がり始め、アメリカの政治家が有権者からの評判が芳しくないTPPから距離を置くことが予想される。(第33話に続きます)

永濱 利廣 氏
永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 永濱利廣

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永濱利廣著
永濱利廣著

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